〔5〕

私の顔を窺うように上に向けていた、
登喜子の顔に私の顔を覆いかぶせる。
ここで彼女が戸惑ったり、不安がるようなら、
やめるつもりでいた。迷っているのなら止めるべきだから。

彼女は、目を閉じた。それは、私に救いを求める表情であり、
私を受け入れる合図でもあり、全てをゆだねるという意思表示でもあった。
私は、この表情を見て彼女の全てを救うことを決心した。
「いいのね。あなたの言う救い。それは心も体もと受け取って」
「もちろんです、兵藤さん」

彼女は目を閉じたまま返事を返してきた。
ここまで来て、彼女を受け入れないわけには行かない。
私は、顔を少し横に向け、そのまま下にゆっくりとさげ、
登喜子の唇を感じる。少し乾いたような感じの唇。
全神経を唇に集中する。登喜子を知りたかった。
私に救いを求める彼女の全てを知りたかった。

登喜子は登喜子で、私を求め、私を知ろうとする。
気がつくと、唇のわずかな隙間から、
可愛く、登喜子の舌が、私の唇を触っている。
私は、その舌を迎え入れるがごとく、
口を開く。どうやら、キスは初めてではないらしい。

そのまま、直接私の舌を目指して入ってくると、
舌の下から、口内全てを這っていく。
私の方も登喜子の舌に自分の舌を絡める。
お互いの柔らかく動くものを押し付けあうかのように、
口と舌での挨拶が続く。

私の唾液が、下にいる登喜子の口の中に伝わっていく。
彼女はそれを嫌ともせずに、喉下する。
(愛しい)彼女がする全ての行動が、私に愛しいものと写りはじめる。
(愛してあげる。登喜子…)

「ツーっ」と、透明な糸を口から伝わらせながら、唇を離す。
そして風呂に入ることを提案をする。
「一緒に入りましょ。我が家のお風呂は広めだし、どう?」
実際、父親が、家の広さに似合わない広さの、
風呂場をどうしても望んだため、二人で入ってもなお、
余裕があるスペースがある。

「一緒に入りたいです。兵藤さんの体、洗ってあげます」
そういって、目をきらきらと輝かせるような表情をする。
笑顔で心を、両腕でしっかりと体を抱きしめる。
そして、すぐに彼女を解放し、風呂場へと向かう。
洗面所に着くと、私は、お風呂にお湯を入れる。

「少し時間がかかるから、その間…」
そういうと、彼女の紐リボンに手を掛け、ゆっくりとほどいていく。
そのまま、ブラウスのボタンに指をもっていき、一つ一つ、
ゆっくりと、開いていく。彼女のほうが、若干背が低い。
少し顔を上に上げるような形で、私の行動をじっと見守っている。

全てのボタンを外し終えると、ブラウスは、
少しあげられた登喜子の腕を抜け、上半身から離れる。
そのまま、万歳をするような格好で、タンクトップも、脱がす。
白い肌が私の前に現れる。少し汗ばんだ、
柔らかそうな肌。私は自分がその肌に吸い付きたくなるのを
抑え、続いて、スカートを脱がせる。

「登喜子の肌、綺麗。羨ましいぐらい」
「私、自分の肌がどうかなんて考えたことありません」
「なら私が教えてあげる。あなたの肌は、人を寄付ける肌。
ただ、白く、美しいだけじゃない。その絹のような肌触りを
思わせる肌が、どんな人をも魅了出来るわね」
お世辞なんかではなかった。実際、彼女の肌は、
私自身の彼女に対する意識を特別なものに変貌させていく。

彼女の背中に手を回し、ブラジャーのホックに手を掛ける。
登喜子は胸の前に手をあて、外されてもいいようにする。
ホックを外すと、ブラは登喜子の手の中に落ちた。
大きいとはいえないが、お椀をひっくり返したような形のいい胸。
私は、登喜子の手にあるブラジャーを取り、上半身を全て
私の目に収める。登喜子も、隠そうとはしない。

「私ね、下着売り場で働いているの。だから、色々な人の胸見てきたけれど、
あなたみたいなすばらしいな身体つきの子、はじめてみたわ。
やせすぎず、肉もつきすぎていない腕。大きくはないけれど、弾力を感じさせる胸。
腹筋で引き締まったお腹…」
そういって、言っていく部分に手を当て、なでるように肌の上を滑らせていく。
登喜子の息使いがわずかに荒くなり、体も、桜色を感じさせる色に変わりつつある。

そのまま体と手を下へと移動させ、
両手の親指を、最後の一枚にかける。
一瞬の間を置き、一気に足元におろしていく。
それがふくらはぎのあたりで止まると、
登喜子は自分から足を動かし、
片足ずつ、脱いでいった。

下から、登喜子の顔を見上げると、
登喜子と顔があった。恥じらいの表情と、
喜びの表情。その二つが混ざったような顔をしている。
私は、立ち上がると、すばやく自分の服を脱ぎ始めた。
Tシャツとタンクトップを腕から落とすと、そのまま、ジーパンの
ファスナーをさげてる。ズボンと一緒に下着も脱ぐ。
そして、残ったブラジャーを外して裸になる。

「登喜子に比べると、貧弱な体格で恥ずかしいよ」
頭に手をあて、ちょっと照れた表情をする。
別に裸を見せることに抵抗感を感じる年ではないが、
彼女の裸と比べると、見劣りすることは否めない。

「そ、そんなことないです。私、見とれていました。
兵藤さんだって、スタイルばっちりじゃないですか?」
「お腹は出てるよ。かえるのお腹」
登喜子は私にぶつかるように抱きついてきた。
「こうしてもらえるだけで幸せです…」

お風呂に湯がたまるまで、私は、彼女と、
お互いの肌と、体温と、早まる鼓動と、
高まるこの後の期待とを感じあう時間に費やしていた。
そして、それらを感じあえることを、幸せだと確かに感じていた。


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