〔9〕

初めて出会ったその日に関係を持ってしまった二人が、
そのまま別れることは出来なかった。

登喜子は、もともと部活に入っておらず、また、受験生ではあったが、
塾通いもしておらず、比較的、時間に余裕があった。
私は、たまたま、友人との休みが上手く調整できず、ほとんど8月いっぱい、
休みは予定が入っていなかった。

そんな二人が、時間に都合をつけ、
私の家で互いを愛し合うようになったのは、
自然な流れだったのであろうか。
登喜子とであって、もうそろそろ一ヶ月が経とうとしている。
さすがに毎日は無理だが、3・4日に一度は関係を持つ。

そんななか、私は、ある恐怖を抱いていた。
私は、登喜子のバージンを守っている。
いつも、ぎりぎりのところで、自らを止めていた。
だが、それを出来なくなっている自分がいる。

登喜子は、私を完全に特別な人としている。
おそらく、愛情にも似た感情を抱いている。
私は素直にそれを受け入れられない。
受け入れてはいけないのだ。
…だが、もう歯止めが利かなくなってきている。
自分でもなぜと問うてもわからない。
確実に、私も登喜子に愛情を抱き始めている。

(いけない、このままでは…)
休みの日の午後、登喜子が私の家にくることになっている。
一昨日の夜も、登喜子は家に泊まり、お互いの体を激しく愛し合った。
「陽子さん、私、陽子さんのこと愛しています」
初めて聞いた登喜子からの「愛している」という言葉。
それを聞いて、私は決心したのだ。
私の過去を登喜子に話そうと。

話して、登喜子と別れるべきなのだ。
私は、罪深き人間だ。登喜子を救うなんて、
殊勝なことを出来る人物ではないのだ。

約束していた時間より少し早く、玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、日に日に明るさを増す登喜子の笑顔があった。
「陽子さん、お邪魔します!」

私は無言で登喜子をリビングに通す。
登喜子は怪訝そうな顔をしていたが、
仕事で疲れていると思ったのか、特に気にしていない様子だった。
隣り合ってソファーに腰を落ち着けると、私は口を開いた。



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