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ラガーン /
Lagaan /
Once upon a time in India /
Lagaan - Es war einmal in Indien

Ashutosh Gowariker

2001 Indien 225 Min. 劇映画

出演者

Aamir Khan (Bhuvan - 英雄)

Gray Singh (Gauri)

Rachel Shelley (Elizabeth Russel - 心優しい植民地主義に反対の英国人女性)

Paul Blackthorne (Andrew Russel - 心優しくない植民地主義に賛成の英国人、エリザベスの兄)

Suhasini Mulay (Yashodamai)

Kulbhushan Kharbanda (Rajah Puran Singh)

Raghuvir Yadav (Bhura)

その他約一万人

見た時期:2002年7月

日本ではもうかなり前からブレークしているインド映画ですが、どういうわけかベルリンではボリウッドという名前がようやく最近メディアで聞かれる程度で、実際の映画はほとんど入っていません。これまでのインド映画と言えば、貧困などを扱ったシリアスなものばかりです。そういう作品でも入って来るのは、東アジアの映画に比べて非常にまれです。

その状況を打破しようというんでしょうか、ラガーンという映画が間もなく公開されそうです。複雑なストーリーはなく、英雄がおり、時々周囲の状況をけろっと忘れて歌い踊り出すという、話に聞いていた通りの展開です。この手の映画を見るのは初めてで感心しました。

まずはこの長さ。目いっぱい長い普通の劇映画の倍ありました。それで途中で休憩。サンドイッチとコーヒーをご馳走になりました。そしてインドでは有名人、ドイツでは無名人の主演俳優の力量に感心。歌えて踊れてバンデラス、エヴェレット、ダウニー Jr. を足して3で割ったような水も滴るいい男、女性陣も同じく。こういう人がインドにはたくさんいるんだそうですね。みな仕事に慣れているようで、楽々とこなしていました。英雄の勧善懲悪話で、軽いストーリーですが植民地時代の状況、複雑な宗教問題、階級問題がしっかり入っています。

使われるのがヒンズー語だというので、これは分らない、4時間字幕を読み続けなければと覚悟していましたが、実際見てみたら、フランス語で悩まされた8人の女たちよりは分かりやすかったです。ヒンズー語なんて勉強したことはないのですが、子音が英語と同じ言葉がいくつも飛び出して来るし、あまりややこしい母音がない、そしてストーリーが分かりやすく、複雑な議論がなかったので言語アレルギーにならずに済みました。英国の植民地というので時々英語もあり、頭はそこで息抜きしていました。

かねてから英国には大根役者はいないのだろうかと不思議に思っていたのですが、いました。悪役のアンドリュー・ラッセルに扮しているポール・ブラックソーン(経歴が全く不明なのでもしかしたらオセアニアの出身なのかも知れませんが英国式のアクセントで話していました)。妹に扮したレイチェル・シェリーは無難な役で、演技が上手いのか下手なのか分らないのですが、驚いたのは台詞からあっという間に歌に変わってしまい、楽々と歌をこなしていたことです。ユアン・マグレガーが突然ミュージカルをやり始め、その辺のプロの歌手より歌が上手いので驚いたばかりですが、俳優の層はかなり厚いようです。

ストーリーは意地の悪い植民地支配者のラッセルと村の若者ブーヴァンがクリケットで一騎打ち。ブーヴァンが勝てば向こう3年間無税、ラッセルが勝てば税が3倍になるという途方もない話。ビクトリア女王の時代の貧しいインド人農民がクリケットなどを知っているわけはありません。だからラッセルの勝利は目に見えています。そこに邪魔に入るのが英国のフェアプレー精神。機会均等でなければ行けないというのでラッセルの妹が村人にクリケットのルールを教え始めます。試合まで3ヶ月。クリケットは11人でやるらしいのですが、最初は数人しかメンバーが集まりません。次々と選手になりそうな人をリクルート。苦境から始まるスポーツ物という意味では陽だまりのグラウンドタイタンズを忘れないと比較してもいいですが、規模が違います。試合を見に来る農民の役で出演したエキストラはもしかして5桁ぐらいいたのではないかと思います。

クリケットはインドでよく知られているスポーツですが、私は英国のスポーツ番組で勝敗をレポートしているのを聞くだけで、どういうスポーツかほとんど知りませんでした。野球と似ているんですね。ピッチャーとバッターみたいなのがいて、投げられるボールを平たいカヌーのオールみたいなものでかっ飛ばし、野球では四角く塁を回るのに対して、クリケットではウィケットという棒を立てた所を行ったり来たりします。なぜインドでこんなスポーツの話を、とはじめ唐突に思いましたが、ビクトリア女王が即位する少し前クリケットというスポーツができ、徐々にポピュラーになっていったんですね。インドの農民の話ですが、英国で流行っていたから支配階級の英国人がこのスポーツをインドに持ち込んだとしても不思議はないわけです。もしクリケットを習いたいと思う人がいたらこの映画ぜひお勧めします。前半は選手のリクルートと練習、休憩の後後半は試合がたっぷり見られます。

後記: 最近ベルリンにはインドから移住して来る人が増え、いよいよインド映画ブレークかと思ったのですが、ちょっと早まったようです。この作品はハリウッド以外の所から来る映画をよく上映する小さな、ほとんど知られていない映画館で上映され、ほとんど宣伝はされませんでした。

後記の後記: 2010年末までにDVDの分野ではインド映画も定着し、店では有名な作品は見かけるようになりました。

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