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マニトの靴 /
荒野のマニト /
Der Schuh des Manitu /
Manitou's Shoe /
El Mocasín del manitú /
El Tesoro de manitú

Michael Herbig

2001 D 87 Min. 劇映画

出演者

Michael Herbig
(Winnetouch / Abahachi - 双子のインディアン)

Christian Tramitz
(Ranger - 白人)

Marie Bäumer (Uschi)

Sky Dumont
(Santa Maria - 悪漢)

Hilmi Sözer (Hombre)

Rick Kavanian (Dimitri)

Tim Wilde (John)

Sigi Torpoorten (Jim)

Irshad Panjatan (酋長)

Robinson Reichel (Joe)

Oliver Wnuk (Jack)

Friedrich Schönfelder
(Narrator)

見た時期:2002年2月

速報: あろうことか、日本でも公開!

前に紹介した記事に多少訂正を加え、加筆しました。タイトルを日本語にすると「マニトゥーの靴」となります。それの意味するところはあまり深く考えないで下さい。

映画好きのドイツ人が「こんな映画があるのは国の恥だ」とまで言って見に行くのを止めてくれた作品です。その人の言う事は正しかったです。まあ、よくこんなばかばかしい映画を作ったものだ、そこにまたあの砂漠のライオンUボートアイズワイドシャット の Sky Dumont が出演する気になったものだ、それもあのドイツで有名な立派な出版社と何かしら親戚関係にあるらしい Dumont 氏が・・・と、あきれていたのですが、映画館に入った時から雰囲気はいつもと全然違いました。早々と席に座って、みんな何かを期待するかのようにおしゃべりしながら、ポップコーン食べながら待っています。子供まで来ています。インテリそうなおじさんも座っている。大学のドクターみたいな雰囲気でした。

この映画をパロディーにしたのかと思われる新聞のCMを見たことがあるので、一般受けしていることは確か。公開されてからの観客動員数はかなりなものだという話を聞いていました。そういうくだらない映画は入場料の安い所で見ようと思っていたので、ちょうどよかったです。またもや懸賞に当たってしまいました。

さて、映画はドイツで有名な作家カール・マイのスタイル。カール・マイというのは6000万部ぐらい売れた作家。今から150年ほど前まで刑務所に入っていて、出所してから本を書き始めた人です。この作品の主題に使われた「ウィネトゥ」はドイツ人が勝手に想像しているウエスタン(フランス人が勝手に想像しているウエスタンはこちら)。アパッチの酋長ウィネトゥと白人の男が義兄弟の契りを交わし、苦楽を共にするというストーリー(マイクという白人の少年とルニというインディアンの少年が親友になるという話はこちら)。前々世紀の終わり頃に書かれました。特に文学ファンでない私でもカール・マイに夢中だという人の話を聞いたことはありますから、ドイツではとても有名だと考えてかまわないでしょう。

映画にはウィネトゥはウィネタッチ、加えてアバハッチという双子の兄弟が出て来ます。演ずるは監督兼プロデューサー御自身。相棒の白人はレンジャーという役名になっています。原作のオールド・シャッターハントの代わりなのでしょう。こういう枠を取っておいて、あとははちゃめちゃです。まずこの2人があろうことか大西部できつ〜い南ドイツ訛りを話します。アメリカ南部に引っ掛け、南ドイツの訛りをテキサス訛りの代わりと解釈したようです。インディアンの部落は落ちぶれていて、斧も馬もありません。悪漢が出て来るのですが、それがへんてこりんな優男サンタ・マリア。当然これは Dumont の役目。恐らく原作のサンターのつもりなのでしょう。これ以上は無理というぐらい目いっぱいにやけたナルシストを演じています。今にも「鏡よ鏡、世界で1番カッコイイ男は俺に違いないだろうな」と言いそうな出で立ちです。インディアンのヒーロー、アバハッチと双子の弟ウィネタッチはまったく波長が合いません。そこへ当然のことながら美女ウシーが現われ、怪しげなメキシコ人が現われ、いちいち挙げていたら切りがありませんが、ジャッキー・チャンが大西部に現われて話が混乱するのと似たような展開です。ウシーは白人のしかもドイツ語の名前の女性ですが(ウルズラ、アーシュラーの略)、これは原作のオールド・シャッターハントの憧れのインディアン女性 Tsho-Tschi のつもりなんでしょう。映画の中ではアバハッチの幼馴染ということになっています。ま、いろいろ深く考えさせられる作品です。

元々ドイツ語圏の観客しか念頭に置かないで作ったようで、その上肩が凝るようなテーマは全部省いたようですが、笑い転げて家に帰る途中あごの筋肉が変になってしまいました。最初にこの映画に触れた時「今週中まだやっているので、もう1回見に行こうかと今考えているところです」と書きました。その決心は変わっていませんでしたが機会がありませんでした。


監督のミヒャエル・ヘルビッヒはこの映画を作る時ヒットしていた(自分で作った) Erkan & Stefan をちょっと追い抜いてやろうぐらいに考えていたそうです。実際に作ってみると物凄いヒットになり、8200万ほどのドイツ人のうち1700万人以上が見たと言われています。他で1300万ほどだという話も聞きましたが、国民の10人に1人以上が見ていることだけは確かなようです。ドイツ中の大きな映画の賞は全部貰い、今ダイレクターズ・カットが公開されています。これで次の予算が取れたのか、監督は新しい作品を企画中。「いくつかのアイディアがあるけれどスター・トレックのパロディーにするかもしれない」とインタビューで言っていました。

後記: 行きました、大枚はたいてダイレクターズ・カットに。行った甲斐ありました。かなり手を入れて、話が前より分かりやすくなっていました。昔々あるところに・・・という始まり方で、アバハッチの先祖、誕生、ご幼少の頃などがセピア色のフィルムで出て来るので、登場人物の人間間系が前より分かりやすく、テレビ番組を知らなくても分かるように変えてありました。

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