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シッピング・ニュース /
The Shipping News /
Schiffsmeldungen

Lasse Hallström

2001 USA 111 Min. 劇映画

出演者

Kevin Spacey
(R.G. Quoyle - シングル・ファザー、新聞のコラムニスト)

Julianne Moore
(Wavey Prowse - シングル・マザー、幼稚園の経営者)

Judi Dench
(Agnis Hamm - クォイルの叔母)

Cate Blanchett
(Petal - クォイルの妻、バニーの母)

Rhys Ifans
(Beaufield Nutbeem - 新聞社員)

Pete Postlethwaite (Tert Card - 新聞社員)

Alyssa Gauber
(Bunny - クォイルの娘1/3)
Kaitlyn Gauber
(Bunny - クォイルの娘1/3)
Lauren Gauber
(Bunny - クォイルの娘1/3)

見た時期:2002年7月

2002年 ベルリン映画祭参加作品

ベルリンでの評価は高いです。出演者の名前を見ただけで「これは凄い」と私も思いました。ベルリン映画祭にも出品され、いずれは見ようと思っていました。近所に住んでいる映画好き、ケビン・スペーシー・ファンの女性も夢中になっていました。

いずれ普通の映画館に回って来ると考え、映画祭はパス。映画館で公開していた時は、いずれ小さな安い映画館に回って来ると考えパス。予定通り小さい映画館に回って来たので見に行きました。

第1印象。「この映画で得をした俳優は少ない」と思いました。最初予定されていたキャスティングにしなかったのは正解かも知れません。トラボルタとか、同じケビンでもコストナーの名前が挙がっていたそうです。この2人だと主題がボケてしまうように思います。スペーシーがこの役を望んだのも、彼を起用したのも成功と言えるでしょう。でないとカタストローフェ、ディザスターになったかも知れません。

「この映画に出演して得をしたか」と思われるのはケイト・ブランシェットとライス・アイファンズ。ブランシェットは地味な性格の役とか、元々は弱い女性が強くなって行くような役をやっていましたが、バンディッツではエキセントリックな主婦でした。ここでもその路線です。こうやって2、3本ずつ違う性格の役をやってレパートリーの広さをアピールするのは戦略上上手いと思います。アイファンズはこれまでどちらかというとへんてこりんな役で見たことが多かったのですが、ここでは比較的まともな役で、姿もなかなかカッコイイです。彼もまた違うレパートリーをアピールできて良かったと思います。今回は珍しく同情を引く役です。

逆に「またか」と思わせるのが他の人たち。スペーシーはアメリカン・ビューティーに続きシッピング・ニュースでも成功にほど遠いダメ男。丹念に演じていますから本人は力を入れています。気が弱く、ケイト・ブランシェット演じるところの悪妻に押されっぱなし。ブランシェットは嫌になると亭主をポイ。子供だけは連れて行ったので、まあ、母親としては普通かと思いきや、違法な養子エイジェントに6000ドルで子供を売り飛ばして、新しい男とトンズラ。その途中に事故死。この部分の彼女の演技はなかなか良いです。

またかの2番目はジュディー・デンチ。この人は多方面から高く評価されている人ですが、私が見たのは 007 (Goldeneyeワールド・イズ・ノット・イナフ)、ショコラシッピング・ニュース。この4つを見ると全部同じでぱっとしません。いつも同じ表情。《ミニマリスム》という言葉があります。最小限のアクションしかしないけれど最大限の表現をする時、例えば簡素な描き方で多くを語る4コマ漫画とか、ほとんど何も言わず視線だけで多くを語る俳優とかに使います。彼女、その線を狙ったのかも知れませんが、あまり深い内容は伝わって来ませんでした。

そしてジュリアンヌ・ムーア。ブギーナイツビッグ・リボウスキーの頃の彼女は個性のある女優だと思っていました。私見ですが彼女はハンニバルでこけたと思います。数ある候補者の中からがんばって役を勝ち取ったのは立派ですが、演じた役では個性が出ていませんでした。観客がジョディー・フォスターと比べるから損をしているのは確かですが、あの役をケイト・ブランシェットにやらせたらブランシェットはフォスターの事など考えずブランシェット風のクラリスを作り上げたと思います。ヘレン・ハントでもクラリスの役が務まったと思います。この作品中笑っても泣いても歯をむき出すだけで、いつも同じ顔のムーアは個性を出していませんでした。(後記: 彼女はその後めぐりあう時間たちでも個性の無い演技。最近は調子が悪いのでしょうか。)

アメリカ映画ですが、作りは英国風。出演者にもかなり英国人やオーストラリアのブランシェットが入っており、イングリッシュ・フレーバーがあります。土地は黙秘の舞台に近く、寒々とした田舎の海岸地方。普通のアメリカ映画とはまったく違う雰囲気です。監督が欧州の人だということで、選んだ題材も地味です。ストーリーはよく考えるとドラマチックで、田舎の目立たない土地で実は代々どんなドラマが起こっているか、横溝正史の犬神家と比べてみたくなります。

最後に「ここまでやるか!」と一言。娘のバニーを3つ子に演じさせています。この3人はちょっと前にも有名な映画に出ています。3人で1つの役を演じるのは未成年の俳優を保護する労働法のためでしょう。子役は毎日勤務時間内に数時間教師について勉強をしなければならず、大人の俳優のように夜通し撮影などということは禁じられています。当たり前の話ですが、普通の子供が学校に行くのに近い条件を守らなければなりません。理論的には大人の撮影に合わせるために子供を3人用意すれば良いわけです。それをやってしまったんですね。彼女たち当分3つ子という利点を生かして大きな映画に出る機会があるでしょうが、成人してからはどうするんでしょう。

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