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ヒュー・グラントはコメディーに向くか

Hugh Grant

1960 London, UK

向きます。

現在までに50本ほど出演しているようですが、大ヒットしたフォー・ウェディングまでにも、いろいろな作品に出演しています。本人は思い出したくないような作品もあるようです。フォー・ウェディング以降の出世ぶりは世界的に有名ですからここにわざわざ書く必要はないでしょう。マーケティング、ビジネスの達人のガール・フレンドがついていたおかげなのかも知れませんが、ギャラは大幅にアップ。老後の心配はいらないようです。

・ 日の名残り
・ フォー・ウェディング
・ ノッティングヒルの恋人
・ 恋するための3つのルール
・ ブリジット・ジョーンズの日記
・ アボウト・ア・ボーイ
・ ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月
・ ラブソングができるまで

この人の偉いところは自分が二枚目半の役で受けていることを自覚し、そのイメージに沿って活動しているところ。スマッシュ・ヒットが決まるまではいろいろな役をやったらしく、1つにはお金のため、また「俳優としては役が来るだけ幸せで、何もする事が無く毎日ぶらぶらしている時期があった」と本人もインタビューで語っています。オファーが来るありがたみを知っているんですね。

ガール・フレンドと2人して話題を作り、次から次からヒットを出し、ギャラもどんどん跳ね上がって行くので、2人に関して暗い噂が流れたこともありましたし、本人がスキャンダルを作った時期もありました。しかしそんな事でめげる人ではなかったらしく、現在もヒット作品を作っています。

顔がきれいなだけでは売れないことを知っているのでしょう。職人肌の名優でないことも知っているのでしょう。そして女性に受けること、特定の層の女性に受けることも知っているのでしょう。その辺を上手に利用して、イメージをいきなり壊すようなことはせず、飽きられないように徐々に違うバリエーションに移って行く戦術を使っているように見えます。誰の知恵か分かりませんが、それを文句を言わずにやっているのは昨今珍しいことです。不思議なことにケーリー・グラント以来「美男が二枚目半をやる」というのがここ暫く絶えていたのですが、名前が同じだったからそういう事を思いついたのでしょうか。ジョージ・クルーニーがケーリー・グラントのセンを狙ったかとも思いますが、あちらは何となく路線に乗り切っていないようです。ヒュー・グラントは90年代中頃から路線をきっちり決めていますが、これが成功の秘訣かも知れません。

この人を見ていて好ましいと思うのは、無理をしないところ。フォー・ウェディングでも地で演じているのかというぐらい自然な感じで「はっきり言い出せない男」をやっています。ジム・キャリーのように本人がコメディーを演じるのではなく、周囲の事情がおかしいというタイプのコメディーですが、そこで困った顔をして立っていると決まる人です。恋するための3つのルールではかたぎの青年がマフィアの娘と知らず女性を好きになってしまい翻弄される役でした。ここでも彼がコメディーを演じたのではなく、周囲がおかしかったです。ちなみにここで顔を見せたジョー・ヴィテレッリはマフィアの用心棒にぴったりのご面相ですが現在コメディー路線まっしぐら。ロバート・デ・ニーロの乳父の役を2度も引き受けています。ヒュー・グラントはその後も自然路線で、ブリジット・ジョーンズの日記ではブリジットをいいかげんに扱う浮気男。実は彼の名前が出た時、私は彼がいい男を演じるのだと思いました。ストーリーを知らずに先に映画を見たのですが、いい男は実はヒュー・グラントではなくコリン・ファースでした。ヒュー・グラントはドイツ人がアーシュロッホと呼ぶタイプの男、簡単に言えば糞野郎です。

ここでグラントはちょっとだけ方向転換をしたようです。次に見たのがアボウト・ア・ボーイですが、ブリジット・ジョーンズの日記はそのための準備だったのかと思うようないい出来でした。両方とも二枚目でないと務まらない役ですが、フォー・ウェディングのような悪意のないナイーヴな男ではなく、確信犯の無責任男を演じています。そしてちっちゃな子供にしてやられます。この戸惑いぶりがただの二枚目俳優では務まらないような、いかにも地という感じです。こういう役にすんなり入れる俳優はあまりいません。

ラブ・コメディーのベテランというとメグ・ライアンを無視することはできません。彼女がラブ・コメディーのプリンセスだとすれば、ヒュー・グラントはプリンスでしょう。大きな違いは、ライアンはそのイメージを払いのけようと苦労しているところ。グラントは払いのけようとしないところ。グラントは見せないだけでもっと他の役もやれるのかも知れません。しかし売れているうちは無理にそれを変えないと決めたようです。ロビン・ウィリアムス、マーチン・ランドーのように高齢になってからがらっと違う役を貰えることもあるでしょうし、一生を1つのイメージにかけ、それで勝負するというのも悪い考えではありません。まだ後継者が現われたわけではないので、当分この路線で行けるのではありませんか。またおもしろい作品を撮ったら見に行きます。

後記: ・・・と言っていたら不発弾が1発。

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