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クリストファー・ウォーケンはコメディーに向くか

Christopher Walken

1943 New York, USA

ロバート・デ・ニーロと同い年、同じ町の出のクリストファー・ウォーケン。芸能界のキャリァはかなり長いようです。アニー・ホールに出ていたようなのですが、全然気付きませんでした。私が名前をはっきり知ったのはオスカーももらったディア・ハンターからです。時々名を残すような映画にも出ているようです。そういうのに限って見ていなかったりします。しかし出演作は結構たくさん見ました。ひいきにしています。

 ・ ドミノ
 ・ ステップフォード・ワイフ
 ・ キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
 ・ ゴッド・アーミー 3 聖戦
 ・ タイムトラベラー きのうから来た恋人
 ・ スリーピー・ホロー
 ・ マウス・ハント(しつこいようですが、井上さんのページへ)
 ・ バスキア
 ・ サーチ&デストロイ
 ・ ニック・オブ・タイム
 ・ パルプ・フィクション
 ・ トゥルー・ロマンス
 ・ 007 / 美しき獲物たち
 ・ ディア・ハンター
 ・ アニー・ホール

有名になった頃は二枚目をやっていたようで、ディア・ハンターでは人の同情を一身に集める好青年、ベトナムに行き精神に異常をきたした兵士という役でした。この作品には注目すべき俳優がズラリと揃い、戦争が普通の市民の生活をどれほど引き裂くかという暗い話を熱演していました。監督とウォーケン、その他スタッフがぞろぞろオスカーをもらい、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープもノミネートを受けています(監督、主演3人の計4人で現在までにオスカー受賞7回、ノミネート17回。特に俳優3人にはこの作品ではずみがついたようです)。

ウォーケンにはその後暫く本人に合わないような役も回って来たようです。ボンド映画の悪役を見た時はもうこの人はだめになるかと思いました。しかしニューヨークを根拠地にしたのが良かったのでしょうか、10年ほど私が忘れている間におもしろい映画に出ていました。映画を作られた順番に見ているわけではないので、いくらか前後しますが、90年の後半から見た映画はみな傾いた役ばかりで、ちゃんとコメディーだと銘打っていない映画でも、彼の役は何かしら変です。コメディアンは映画界ではシリアス・ドラマの俳優よりやや低く評価される、ウォーケンはコメディアンではない、などの遠慮があってか、彼につけられるレッテルは「個性派」。 ディア・ハンターの時のようなまじめな二枚目青年役はもう一生回って来ないのかと思われます。オスカーもらって道を踏み外してしまったことは確かなようです

パルプ・フィクションの「この時計は・・・」で始まるエピソードはドイツでは今でもジョークとして通用します。バスキアで意地の悪いインタビューをしていたはずなのにバスキアに見事うっちゃりを食わされるジャーナリスト、「これぞねずみ駆除の専門家」とうならせるプロフェッショナルぶりでねずみを追い掛け回した結果発狂に追いやられる気の毒なねずみ捕獲業者(下へスクロールして下さい)。スリーピー・ホローでは笑いを取るのはジョニー・デップの役割ですが、あの首なし男をクリストファー・ウォーケンがやっていると聞いただけで笑いがこみ上げて来るのですから、コメディアンとして底力があります。ゴッド・アーミー3 / 聖戦はシリーズの3作目。最初の2作は見ていないのですが、変な天使ガブリエルをやっています。天使にしてはひどく貧乏臭い格好をしていて、ポンコツ車に乗って地上の自由を満喫しているため、天国のルールをおろそかにするという、これまた彼にぴったりの役です。「君の瞳は一万ボルト、地上に降りた最後の天使」が彼だとすると、心細いです。しかし後半はがんばっていてウォーケンには珍しくアクション映画でした。

最新作はキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン。他にズラリと並んだコメディアン的な役と違い、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンでは成功できなかった商売人。自分は惨めな思いをし、息子の「成功」を内心喜び、警察に息子を密告しない父親というウォーケンとしては不思議な渋い役でした。他の作品では自分を笑うような面もあるアイロニーが含まれた役が多いですが、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンは表面的に見ると笑え よく考えると泣ける役です。(後記 作品リストはその後更新してあります。)

コメディアンでないウォーケンですが、90年代以降はどうも上手にカムフラージュしながらコメディー路線を突っ走っていたようです。上手さから言うと、デ・ニーロよりはるか上を行っています。

彼の友達に意外な人物がいます。ロバート・ワグナー。ワグナーは元々二枚目で売り出し、50年代後半、60年代前半はそれで通していました。今で言うブラッド・ピット的なスーパー・アイドル、超二枚目。周囲に言われて結婚、周囲に言われて離婚。そのあたりでキャリアもこけてしまったようです。その後軽いタッチのコメディー路線で復活、テレビ・シリーズは大人気になりました。オースティン・パワーズにはレギュラーで出演し、現在もコメディー路線です。私生活では家庭を大事にする人だったようです。一度オスカーもらってしまうと、大波に呑み込まれてしまうようですが、一度人気の超頂点まで登り、その後一度横っちょに追いやられたワグナーと何か共感できる点があったのでしょうか。結局2人ともその後はマイペース、めでたし。

古い事件

2011年になって、古い事件がコールド・ケースとして再調査になりました。

ロバート・ワグナー、ナタリー・ウッド夫妻とクリストファー・ウォーケンは友人ということになっていました。しかし去年の報道によると、ナタリー・ウッドは2人の男性にからむ三角関係にあり、ワグナーとウォーケンは喧嘩になっていたとのこと。その喧嘩に嫌気が差してウッドは3人が乗っていた船を去った後溺死体で発見されたという説明になっていました。30年も前の話です。ウッドはまだ美貌の43歳。

自殺説、他殺説、事故説などさまざま噂が飛び交いましたが、ワグナーとウォーケンの間では何かしら話がついていたのか、あるいは明らかな事故だったのか、とにかく2人がもめたという話は伝わっていませんでした。またウッドに関してはウォーケンとの不倫説も流れていましたが、ロバート・レッドフォードの名が挙がったこともあり、その反面ワグナーがわりと温厚な性格らしく、たまにもめても元の鞘に収まるようなカップルだったのかも知れず、真相についてはこれだという決定打は伝わっていませんでした。少なくともワグナーはウッドに2度結婚を申し込み、2度結婚するような人でした。

30年経って話が蒸し返された直接の原因は、事件の起きた船の船長。ところがジャーナリストが騒ぎ始めて間もなく、警察が「ワグナー氏は容疑者ではない」とはっきり発言するなど、不思議な展開になっています。ワグナー氏でないと警察が言うからには、物証があるのでしょう。となると残るのは船長自身とウォーケン。ウォーケンからは一切発言が出ていません。その反面、ウォーケンが改めて警察に呼ばれてと調べを受けたという話も聞こえていません。となるとこの騒ぎは一体なんだったのでしょう。芸能活動を制限して自分の子、ウッドの子、2人の間の子をシングル・ファザーとして育て上げたワグナーは偉いと思っていたので、もしこれがガセネタだったら、罪作りな話です。

ウッドは泳げなかったらしく、水恐怖症でもあったので、1人で船を漕ぎ出してという話もちょっと不思議ですが、どちらかが殺したのなら、それにしては2人の間にいさかいが全く無いのも不思議。過失死となると、ウッド1人で死んだ、残りの誰かがちょっとぶつかったら落ちてしまった的な話も考えられ、とにかく当事者が何か言わない限り謎のままです。警察がやたらはっきり「○○は容疑者ではない」と発言したのも不思議と言えば不思議。当時すでに何かはっきりしていて(書類上もきっちりオトシマイがついていて)、それを当時大声で言わなかったという話なのでしょうか。ちなみにウォーケンは今度の出来事にめげず、映画をどんどん撮っています。

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