食べ物のページ

とどさんへ

ドイツ人は何を食べているか

考えた時期:2003年12月

返事を書こうと思ったのですが長くなりそうなので、こちらに移しました。

ベルリンさん、UtamさんRESが遅くてすみません。

謝ることないですよ。

年内に納品しなければならない急ぎの本業(?)が入ってきたので オタオタししておりました。

そういう時って誰にでもあります。忙しい時はみんな自分の事を優先という風に行きましょう。

永田農法:簡単に言えば極端に水と肥料を制限することによってその作物をより美味しく、栄養価も高いものにする農法。うちではトマトとかぼちゃで試みて良い結果を得ています。
できるだけ多くの人に食べて欲しいが気軽に買うには高過ぎる。  →気軽に買える種類を用意する。安くて美味しいのをね。

消費者の味方!

ベルリンさん

はい!

いつもフルーツ情報ありがとうです。

いえ、どういたしまして。

なんだか行ったこともない市場が目に浮かんで来るようでドイツ人やトルコ人の雑踏を思いうかべながら楽しみにしております。思った以上に街には果物があふれているのですね。

最近はトルコ人だけでなく、ドイツ人になった外国人が多く、その国の人がその国の文化を持ち込んで来てくれるので、種類が多くなり、楽しくなっています。

昔、ドイツからの帰国子女である友人が話してくれたのですが。ドイツの子供達ってすっごい質素な食生活なんですよ。年中じゃがいもとパンばっかり食っているんです。子供はソーセージなんかもめったに食べやしません。って聞いていたので「食」に関する物資はあまり豊富ではないのかと 思っておりました。少なくとも子供達には。

ドイツの食事は質素

・・・というのは傍目には本当の話に見えます。質素と言えば質素なのですが、ちょっと視点を 変えると、「なかなかいい」「これでいい」とも思えます。

日本からドイツへ来てすぐ典型的なドイツ式の食事を始めると何だか殺伐としていて、「これはかなわん」という 気持ちになります。で、私も来た当初少し試して見ましたが、そればかりではやって行けないような気分で、スパゲッティーなどを自分で作っていました。「早朝6時からスバゲッティー作って大学の授業の1時間目の前に大皿平らげてから来る」と言ったら呆れられてしまいました。勉強する時はお腹が空くのです。1時間目は8時に始まります。

和食も洋食も中華もごちゃ混ぜで、そのうちにトルコ料理やエジプト料理などの真似も始め、 雑食していましたが、量が多く、とにかく何でも食べまくっていました。ところが何事にも 転機というのがあるのですね。

この5年ほど、そういうのは週末にして、普段はドイツ人にも好まれるスウェーデン式の乾パン、じゃがいも、オート麦、黒パン(うちは真っ黒な黒パンでなく、少し色の薄い物)など いかにもドイツ的な、一見無味乾燥な食物の方が良くなってしまったのです。ああいうのを毎日 食べていると、たまにクロワッサンなどを食べた時に「素敵な味だ」と思うようになります。

では、乾パンやじゃがいもがまずいかというそうではなく、あのおいしさがたまらなく いいということが20年経った最近分かり始めました。今日もそれでじゃがいも 1.5 キロ買って来ま した。パンでもフランスパンなどのおいしさは、普段黒パンを食べていると余計よく 分かります。それにも理由があるのです。ああいう一見無味乾燥なパンが下地になっている と、上に乗せるチーズやハムの味が引き立ちます。ドイツにはチーズ嫌いの私でもおいしいな あと思えるような種類がたくさんあり、ハム、ソーセージの類はちゃんと探すと安くてもすばらしく おいしい物があります。その数の多さは日本の干物やお漬物の種類が多いのと似ています。その上これまたおいしい西洋からしや白わさびがあるのです。

子供がソーセージも食べないという話はちょっと不思議に思えますが、確かにソーセージに 夢中になって街路でぱくついているのはおじさんたち。あれ、ビールに良く合うのかも知れません。ビールはドイツの規則では一応大人の飲むものという事になっています。 規則守っている人少ないみたいですが。

そのビールがまた簡素でおいしいです。最近お酒の類は一切やらなくなってしまいましたが、 以前は学生と飲みに行ったり、80年代には教授とゼミの学生で言語学の研究旅行と称して1週間ほど、実はビールの研究旅行に出かけたこともあります。ドイツとチェコのビールは世界一です。チェコでもごく当たり前の名も無いビールを田舎の山の中で飲んだことがありますが、これまた簡素ですばらしい味でした。ドイツ人はこのスタイルが大好きです。

本来のドイツの食事は世界のグルメなどを追求している人には非常に地味に見えて、悪く言えばまずい 物を食べているような印象を与えてしまうかも知れません。見た目が派手でないことも あるでしょう。外国料理には味だけでなく色にも気を使っているものがいくつもあります。ドイツの料理は出来上がると茶色、グレー、薄汚れた黄色に見える物が多く、にんじんやブロッコリーなどを副える時も、煮過ぎて色が褪せていることが多いです。ビタミンCの含有量という点ではあまり人に薦められないです。いずれにせよドイツの食事の外見にこれといって感激した記憶はありません。ところがこれが全然違う、誤解だと分かったのは、上に書いたように最近の話。そこに至るまで20年以上住み続けないと分からない部分というのもあります。

例えば日本人が本当に好きなのが すき焼きやカツどんや刺身でなく、ご飯、漬物、味噌汁だというのと似ています。ああいうベースになる 物があるからこそ、たまに食べる刺身が引き立つ、というような理屈です。

私がある日突然自由意思、自ら好んでドイツのパンやじゃがいもを食べ始めた時は自分でも 驚きました。さらにエスカレートしてスウェーデンの乾パン。以前ならあんな物食べさせ られたら災難だと感じたでしょうが、今では毎週買い込んでいます。

どこかの報道で見た話ですが、何十人かの学生を実験台にして、半分には長期に渡って毎日クロワッサンなど、最上のおいしいパンを、残りの半分には乾パンを与えたのだそうです。すると早々と音を上げたのは乾パン組ではなく、クロワッサン組だったのだそうです。乾パン組はこのまま半年実験を続けても平気という勢いで、元気一杯。クロワッサンを貰って最初大喜びしていたグループはしょんぼり退散。20年経った今私にもこの気持ち実感として分かるのです。

主食の話ばかりしましたが、肉料理などについても「いかにもドイツ的」と言われる物は地味で、それだけ頻繁に食べても飽きない物が多いです。狂牛病で泣く泣く諦めましたが、私が好きだったのが、若いドイツ人なら鳥肌たてながら跨いで通ると言われる血のソーセージ。腸の中にどろどろで真っ黒な牛の血が詰めてあるという恐ろしい代物なのですが、これをザウアークラウトと呼ばれる日本で言うと漬かり過ぎた白菜のお漬物を千切りにしたようなものとじゃがいもをつけて食べるとおいしいのです。学生食堂でこれが出ると、他は100人ほどの列ができていても、ここだけは3人ほど。ほとんどが外国人です。しかしこれはれっきとしたドイツの食べ物。これはしかしドイツのクラシックな食事の話。ドイツ人が食べる外国料理という話題になると、話が逆転します。

後記: 諦め切れず肉屋さんに乗り込んで行って、血のソーセージはどの動物から作っているんだと聞いてみました。朗報です。豚だと言うではありませんか。じゃ、ってんでまた食べ始めています。

ドイツの食生活はこの30年ほどの間に恐ろしく変わりました。そのうちの20年を私も一緒に経験しています。とどさんの知り合いの話のような食事は今も続いています。その反面外国の食事に興味を示す人も増え、かなりの物が入って来ています。これは歓迎すべき傾向なのですが、問題があるとすればドイツ人がまずいものにも文句を言わず従順に食べている点。これには私も驚きますし、イタリア人、トルコ人などおいしい物を食べている国から来ている人も驚いています。

ドイツには山ほどイタリア・レストランと中華料理店があるのですが、出している物は本国の人なら決して食べないような代物。それでも延々客はやって来て食べ続けます。日本ですとグルメの店は確かにおいしい。そういう店にはベルリンでは滅多にぶつかりません。私はおいしい店を探す基準として本国の客が入っているかという点に重きを置いています。イタリア人の客、イタリアにいたことのあるドイツ人が来るイタリア・レストランとか、中国人が入り浸っている中華料理店。

それに比べドイツの伝統的な食物は招かれて行ったりして誰かの自宅で食べると、本当においしい物に出会うことがあります。レストランでもそうひどい物を出す店はありません。またドイツ人は昼食などに自宅からパンにチーズを挟んだものなどを持って来る習慣があります。そういう物を食べている方が、変なジャンク・フード(ファーストフード)より健康で良いです。ドイツ人が朝食によく食べる鳥の餌と言われるオート麦なども健康には最高です(スイスから始まったとの話です)。

最近ドイツの消費者保護大臣が嘆きながら言った言葉をご紹介。

「ドイツ人は世界一高級な、立派な台所を持っているが、最低の物を食べている・・・」

これは「ドイツ人はキッチン・ユニットには高いお金を払う用意があるが、食べ物にたくさんお金を払う用意はない」という風に解釈することもできます。私の経験では伝統的な物を食べている限り、値段は安くとも必ずしも悪い食べ物という風には考えられません。需要が大きいからパンやじゃがいもは安いです。にんじんも1キロ以上入って65セント(85円程度)などという安さで、果物の代わりににんじんを生でかじっている人もいます(リチャード・ギアもやっています)。しかし安いから、料理をしないからと言って悪い物だと言うことはできません。

大臣が何を言いたかったのかは伝聞なので分かりませんが、ドイツ人は清潔な、病院の手術室のような台所に大金をかけ、そのピカピカの台所を汚さないために料理は諦めているのではないかと、ふと思ったことがあります。 ドイツ人が朝と夜食べるのはパンのスライスにバターを塗り、その上にハム、チーズを乗せるか、ジャムを塗るだけ。温かい物としては紅茶かコーヒー。そして朝食に卵がつけば上出来です。朝食にオート麦+ミルクとかクヴァークと呼ばれるヨーグルトに似た物だけで済ますという人もいます。こういう食事をするためにああいう大掛かりな台所家具を整える必要があるのか・・・という疑問は20年間頭から消えません。

この辺が難しいところ。私も恐ろしく設備の整ったすばらしい台所を何度も見たことがあるのですが、それを上手に使いこなして、毎日グルメの食事をしている人というのにはお目にかかったことがありません。私の家とか知り合いの家は台所がいつも散らかっていて、キッチン・ユニットは買わず、壁に横長の板を2.5メートルの長さに何段も渡し、そこにいろんな物を乗っけています。引出しや棚にしまってドアを閉めてしまうと、何が入っているか忘れてしまい、使わないまま1年、2年・・・10年などという事になります。それでスパゲッティーでもナッツでも紅茶でも常に見える所に置いておきます。

生まれ故郷に親戚が大勢住んでいて、私も毎年遊びに行っていたのですが、そこの台所も設備という点ではドイツの下層階級よりお粗末。その代わり自分で漬けた漬物、自宅で作った野菜、たけのこなどがあり、常に季節の物を食べることができました。できたらできたら食べて、次を作るので、道具でも材料でもきれいな棚にしまっておく暇はありません。この辺がドイツと日本の違いなのかと思います。

そうそう、弟は無事に帰ってきました。 天気が悪くて寒くて閉口したようですが、それでも北欧からドイツ に至る電車の愉しさ、氷河鉄道の風景をうれしそうに話してくれました。 北からイタリアに至る旅、なかなか良さそうで いつか我々もやってみようと思っています。

そうなんです。井上さんにも最初の旅行は夏を薦めたのですが、ドイツから北は生まれて初めての旅に夏以外の時期を選ぶと悲しくなってしまいます。半年ほど日が長くて楽しい時期を過ごした後、残りの半年は鬱気味で過ごすというのが普通です。それで欧州の人は暗い半分を陽気に過ごそうと工夫していて、パーティーなどは冬に集中する傾向があります。しかし旅行者ですとパーティーに紛れ込むチャンスが見つからないので、難しいです。

電車は最近では日本と同じように普通の座席が並んでいるものも増えましたが、私が大好きなのはコンパートメント。6人ぐらいが1部屋に入っているので、旅行中に知り合いができたりもします。以前はドアが重く、古い車両が多かったですが、最近では IKEA が作ったのかと思うような新型も増え、車内も明るくなっています。ずいぶ長い間車内の設備では日本の新幹線に負けていましたが、最近は日本に勝負を挑んでいるようです。

[2003年12月6日 23時31分1秒]

とまあ、話が長くなってしまいすみませんでした。

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