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2003 USA 116 Min. 劇映画
出演者
Nicolas Cage
(Roy Waller - 詐欺師)
Sam Rockwell
(Frank Mercer - 詐欺師)
Alison Lohman
(Angela - ロイの娘)
Bruce Altman
(Klein - 精神分析医)
Bruce McGill
(Chuck Frechette - 詐欺の被害者)
Jenny O'Hara
(詐欺の被害者)
Steve Eastin
(詐欺の被害者)
Beth Grant
(詐欺の被害者)
Sheila Kelley
(レジの女性)
見た時期:2004年3月
DVDで見てもかなりきれいだったので、劇場で見たらさぞかしと思えるような画面でした。人形町界隈では昨年評判のいい作品だったので期待していました。結論から言うと、おもしろい作りで、画面の美しさには感嘆。さすが職人芸を持った監督、広告関係の仕事のキャリアが生きています。撮影に関しては最高点をあげてもいいでしょう。おもしろい脚本をみつけて来たという点でも合格点。いいキャスティングだったという点でも合格。騙され方はまあまあ。時々変だなあと思い始めていたら、案の定という展開が何度かありました。しかし全部は見透かす事ができなかった。そういういくつかのカテゴリーを総合してみると合格映画です。感激しなかった、次の日には薄っぺらに見え始めたというのが難点。どうしてなんだろうと考え始めているところです。
★ 画面は良かった
最初の最初、イントロでまだタイトルなどが出ているところから「素晴らしい」とうなりました。エイリアン、ブレードランナーなど暗い画面で世界を制覇、ハンニバルでは明暗を半々に使い分けて世界を制覇。今度は明るさを強調して世界を制覇。それでもちゃんと各画面ではメリハリをつけるために影に注目しているし、明るい画面でも全体をただぼんやり明るくするのではなく、光がきらきらするという形にして、メリハリを出しています。どの画面をストップして見ても絵になっているというのが感想。その上配色が上品で、まるでベルリンのバウハウス美術館にいるような気分になります。ベルリンに来た人は天気の良い日に午前中行ってみて下さい。工具・リフォーム材料店のバウハウスではありませんからお間違えのないよう。ドイツ人もああいうデザインは好きな方ですし、私もモダンな趣味の時はああいう配色が好きなので、監督の画面には点が甘いです。
★ 親子連れ詐欺がテーマ
ちょっと古い映画をパクったような面がありますが、上手にこなれていればそれは構わない。しかし彼女を14才と信じるのにはちょっと無理がありました。すると案の定・・・。精神分析医が私生活に関与するはずはないと思ったら、案の定・・・。母親を一切登場させないのはなぜだろうと思っていたら案の定・・・。どういうわけか分からなかったのですが、フランクとチャックが組んでいるような気がしました。そうしたら駐車場で追って来たので、やっぱり・・・。しかしその先もつるんでいるとはかなり後になるまで分からなかった。ですからプロットは半分合格。意外性は充分残っていました。
音楽は誉めている人もいますが、私の趣味には合わないので失格。しかし、あの画面にぴったりマッチしていると感じる方の方が多いでしょう。
★ 主演はケイジ
ニコラス・ケイジは色々なキャラクターを演じて来ていますが、最近はヒットが多いようです。ヒットと言っても賞を貰ったとか、興行収入が多かったという意味ではなく、観客が本人にマッチしているような印象を受ける、納得するという意味です。以前は何でこんな役を引き受けたのかとあきれるような役もやっていましたが、最近では丹念に演じている、本人もやる気になっているような役が増えています。
ロックウェルは昔わりと注目していたのですが、最近は私の好みからややずれて来ています。しかし成功を重ねているという意味では、喜ばしいことです。フランクの役は彼の持ついいかげんそうな雰囲気にぴったり。アリソン・ローマンは最近見る機会があったのですが、今後どういう風になるか楽しみです。
とまあ、ミステリー・クラブの人間をここまで騙し、映画ファンをここまで感嘆させたのですから悪い作品ではありません。しかし何かが足りないのです。次の日の蒸発度が、似たようにしゃれた画面でややミステリーが絡み精神分析医も登場するパニック 脳壊より強かったのです。デザインや配色を勉強するためにもう1度見ようという気にはなるのですが、ストーリーが印象深かったからもう1度見ようという気にはならないのです。上手に騙されたから、もう1度見てやろうというのでもない。それですと、ユージュアル・サスペクツやメメントの方を取ります。
監督のインタビューでは最近大掛かりな作品が多い中、こういうのもやってみたかったとかで、小さいから手を抜いたとかいうのではありません。インタビューを聞かなくても職人芸が至る所に見え、数ある作品の中でも宝石のような輝きを持っています。これだけ出来のいい映画だからそれ以上要求するのは無理と考えるべきなのか、これほどの監督だからあと少し行けたのではと考えるべきなのか迷ってしまいます。
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