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Sois cool  ♪ฺ

F. Gary Gray

2005 USA 118 Min. 劇映画

出演者

John Travolta
(Chili Palmer - やくざ)

James Woods
(Tommy Athens - レコード会社のプロデューサー)

Uma Thurman
(Edie Athens - トミーの妻)

Vince Vaughn
(Raji - リンダのマネージャー)

The Rock
(Elliot Wilhelm - ラジの用心棒)

Christina Milian
(Linda Moon - ラジと契約している3人組ソウル歌手の1人)

Cedric the Entertainer
(Sin LaSalle - レコード会社のプロデューサー)

Sahar Simmons
(シンの妻)

Andre' 3000
(Dabu - シンの手下)

Harvey Keitel
(Nick Carr - レコード会社のプロデューサー)

Alex Kubik
(Roman Bulkin)

Serdar Kalsin
(髭のロシア人)

George Fisher (Ivan)

Brian Christensen
(毛深いロシア人のやくざ)

Danny DeVito
(Martin Weir - チリの友人)

Debi Mazar
(Marla - 刑事)

Tom Hamilton (Aerosmith)

Brad Whitford (Aerosmith)

Joey Kramer (Aerosmith)

Russ Irwin (Aerosmith)

Steven Tyler (本人役)
Joe Perry (本人役)
Wyclef Jean (本人役)
Fred Durst (本人役)
Sergio Mendes (本人役)
Gene Simmons (本人役)
RZA (本人役)
Margaret Travolta (Marge)

見た時期:2005年3月

監督は交渉人ミニミニ大作戦を作った人で、現在はミニミニ大作戦の続編を作っている最中です。トレードマークの小型車はしっかり出て来ます。これを作品中ユーモアとして使ったつもりだったのかも知れませんが、笑いのボルテージがあまり上がりませんでした。

ミニミニ大作戦と比べると Be Cool はちょっと毛色の違った作品で、なぜゲット・ショーティーの監督がそのまま続編を作らなかったのか不思議に思えます。世間には「デビートがほとんど出ず、デビート抜きのトラボルタはおもしろくない」と書いている人もいます。私は逆に前のゲット・ショーティーがあまり楽しめず、今回の方が笑えたので、特に不満はありません。10年前はまだあまり映画に関わっていなかったので、洒落が分からなかったというか、洒落を気にしている暇が無かったとも言えます。ここでは Be Cool を続編でなく単一の作品として見た感想にします。

この日は珍しくはしごの日で、次に見た作品が深刻。先に他愛ないお笑いを見て、その後に人生を考えさせられるような作品だったのは幸いです。逆の順番ですと Be Cool が十分に楽しめなかっただろうと思います。

筋は他愛ない話で、10年前に映画界に打って出たやくざが今度はひょんな事から音楽界に進出。持ち前の図々しさと強引さでむちゃくちゃやり放題という筋です。音楽の世界は映画より乱暴で、命に関わることが多いという大筋を、笑いを挟みながら出しています。ストーリーの説明はこれ以上必要無いぐらい単純です。

おもしろいのはサービスてんこ盛りの横っちょの効果。井上さんやうたむらさんも喜びながら笑うのではないかと思われます。出演者の所をご覧下さい。本人の役でスターが色々登場します。リンダという3人組の歌手の1人をチリが気に入って、ソロ・デビューに力を貸すという筋なのですが、映画の中で誉めるほどリンダの歌がうまくないのがちょっと問題。その上ドイツのサラ・コナーに似た歌い方で、あまり長く聞いていたくないような曲が出て来ます。リンダは50年代、60年代式のソウルを歌わせるか、もっと新しいものでもアップテンポの曲に向いていて、バラード系はあまり良くありません。ダンスの方ももっとできのいい人がたくさんいます。しかし Be Cool では彼女を才能ある将来を嘱望されるスターの卵ということにして進みます。その周囲に登場するのが各方面のベテランで、皆で彼女を引き立てています。

チリがそういう商売に手を出した理由はエディー。エディーは知り合いのトミーの妻でしたが、トミーはチリの目の前でマフィアに射殺されてしまいます。音楽業界は映画業界よりドンパチ、出入りが激しいということを冒頭から示します。トミーを演じるジェームズ・ウッズは数分で死んでしまいますが、強い印象を残します。未亡人になったのがウマ・サーマン。

彼女の登場シーンではちょっと皮膚癌の心配をしてしまいました。ドイツにもサーマンとそっくりの体質の女性が結構いるのですが、彼女が冒頭演じているように肌を真っ赤になるまで焼きたがる女性が多いです。太陽に長く当たらないと病気になってしまうのは確かですが、白人でブロンドの女性があそこまで焼くと、他の人種の人より肌を傷めるリスクが上昇します。そして年を取った時に固い皮のようになってしまいます。皺も出やすくなる。それなのに映画だけでなくドイツの社会を見ていても、よりによってそういう女性が日光浴をしたがるのです。太陽の光と栄養分を結び付け効果的に使うにはあそこまで焼かなくてもいいんですけれどねえ。

タランティーノがサーマンにいい仕事を捧げるように、チリもエディーのために一肌脱ごうと決心します。サーマンというのは得な人です。彼女のいいところ はそういう男性を尊重して、話に乗ってあげるところ。Be Cool はタランティーノ抜きではありますが、パルプ・フィクションの同窓会のような面が あります。ハービー・カイテルも出ているのです。そしてサーマンとのダンス・シーンがあります。長い間踊るシーンはやらなかったトラボルタですが、ダンス がうまいという評判はずっとついて回っていました。それを証明してくれるシーンで、見ていてカッコイイなあと感心します。中年男の色気丸出し。サーマンは やや負けています。彼女はパルプ・フィクションの方がカリスマ性があっておもしろかったです。しかし10年、11年と長い時間を置いて、再び油の乗り切った2人 を見るのはいいものです。

お笑いのサービスも忘れておらず、ランニング・ギャグが続き、アホ、バカ、トンマな事件の連続です。ロシア・マフィアを徹底的におちょくり、やられ る時に鬘が飛んでしまったりします。ジェームズ・ウッズとトラボルタの生え際を良く観察していると、きれい過ぎて高級鬘か植毛かと疑いたくなってしまうの ですが、ロシア・マフィアの方は不細工でばれてしまうという趣向です。ラップ系のレコード会社のボスは、大邸宅に住み、小学生の子供の前ではいい父親を演 じています。ですから娘が現われると人殺しも中止。その上この男は超インテリ(凄い学歴)で、町のチンピラとはわけが違います。それを世間にばらすぞとチ リに脅されるというのがおかしい。しかしロシア・マフィアに「この黒んぼめ」とののしられて堪忍袋の緒が切れてしまい、飛び出した言葉がスゲ−知的、政治 的発言。明日から子分につまはじきにされること請け合い。

リンダを苛めているマネージャー、ラジには用心棒がいます。チリと対立するはずなのですが、本人は俳優になるという夢があり、チリが映画界に顔が利 くので時々買収されてしまいます。そして最後にはニコール・キッドマンと共演かという話まで舞い込むため、ラジの言うことを聞かず、チリになびいてしまい ます。(キッドマン、ポスター出演)

こういったわけで他愛ない、アホと言われれば「はい、その通りです」と認めざるを得ない作品ですが、2時間たっぷり笑いました。なお、終わる寸前に 筋とは関係なくスターがぞろぞろ顔を並べますので、すぐに帰らずそこもゆっくりご覧下さい。深刻な映画はぜひその後にご覧下さい。

 

サラ・コナー

ドイツ出身の歌手で、使い方を誤った良い例。両親はアメリカ、スコットランドの血を引く。

ソウル歌手としての育ち方は理想的。ご幼少の頃から教会でゴスペルを歌っており、家庭環境もソウル三昧。20歳前半でブレーク。順調にレコードを出す。ドイツでは良いも悪いも判断せず、ラジオ局は誉めまくっていました。

2003年にはアメリカ・デビューの試みもありますが、体調不良で失敗。しかし無事に最初の子供を出産。欧州では地道に成功を重ね、テレビでも名を成す。ついでに同じ業界の夫も成功。

問題なのは彼女自身のせいなのかプロデューサーのせいなのか分かりませんが、自分を枠にがっちり嵌めたような歌い方をすること。

ブロンドの白人ではありますが、ソウルを歌うに足る声を持っています。ロング・トーンも行け、ソウル歌手として売り出すツールは揃っています。しかし歌い方が完璧に米語の真似をし過ぎてアメリカ人でないとばれてしまうロシア人の話す英語のような感じで、ソウルをテープで聞きまくり、コピーしまくった挙句の不自然な仕上がりというイメージが付きまといます。情感を込めて歌うふりが上手な歌手に仕上がっています。

歌手の歌い方にプロデューサーが口を挟むことも多い世界なので、原因が誰にあるのかは分かりません。ラジオの扱いを見ていると業界全部でサラ・コナーという作品を作り上げた感があります。となると Be Cool/ビー・クールとかぶる点もあります。

実はこのぐらいの実力を持った白人、ブロンドの女の子をベルリンで見たことがあります。彼女もサラ・コナーといい勝負の実力の持ち主で、私が見た頃はまだ高校生。学校のバンドが腕を上げたので、酒場のコンサートに出演しました。夜の出演のためか、指導の先生もついていて、バンド全体が良かったですが、彼女はその中のソロ歌手。なので人の目は彼女に集まります。

学校のアマチュア・バンドなのでこの程度でいいやと思ったのですが、プロとの差がついていたのはバンド全員が楽譜をきっちりそのまま演奏した痕跡が見え見えだったこと。アドリブのはずのパートもです。ソロの歌手も隅々まで練習してその通りに歌っていました。プロの歌手は要点を決めて残りはその場の雰囲気に合わせて自由に歌います。

サラ・コナーとこの高校生歌手は命綱をつけてサーカスをやる、あるいは補助車をつけて自転車に乗るような感じ。失敗は無いのですが、自由に動いていません。高校生歌手はレコードを売るわけでも、ギャラを取るわけでもないので、それでいいですが、サラ・コナーはそこから踏み出さないとダメです。

本人があまりにも完璧に有名歌手のコピーをしたのが原因なのか、うるさいプロデューサーが彼女の自由な発声を妨げたのかは今のところ分かりません。

最近は《ラジオをつけるとサラ》という状態はなくなりましたが、それでもネームバリューは相当なもので、今後もレコードを出していくと思います。

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