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2004 F/I/Sp/UK 130 Min. 劇映画
出演者
Nicky Naude
(Théophraste Lupin - 泥棒、ルパンの父親、ルパン三世の曽祖父ちゃん)
Marie Bunel
(Henriette Lupin - アルセーヌ・ルパンの母親)
Romain Duris
(Arsène Lupin、
別名 Raoul d'Andrézy - 泥棒)
Guillaume Huet
(アルセーヌ・ルパン、子供時代)
Aurélien Wiik
(Jean Lupin)
Eva Green
(Clarisse - ドゥリュー・スービーズ公爵の娘、ルパンの従妹)
Adèle Crech
(Clarisse、子供時代)
Robin Renucci
(ドゥリュー・スービーズ公爵 - クラリッサの父親)
Kristin Scott Thomas
(Joséphine - カリオストロ公爵夫人)
Mathieu Carrière
(Duc d'Orléans - 王位を狙う公爵)
Pascal Greggory
(Beaumagnan - 怪しい男)
Patrick Toomey (Léonard)
Françoise Lé'pine (公爵)
Philippe Lemaire
(枢機卿)
Valérie Decobert
(汽車の中の女優)
見た時期:2005年8月
文字通りの怪盗ルパンの物語です。推理小説の虜になる少し前、小学校の図書館にある本を読み漁っていました。ホームズより前に読んだのが怪盗ルパンでした。少年少女向けに易しく書かれたもので、わくわくしながら読んだのを覚えています。結局はその後読み始めた推理小説の方が良くて、自分でも知らないうちにミステリー・クラブに向かって一直線だったのですが、その少し前にフランス独特の推理だけでない、大ロマンをちりばめた作品にも触れました。
そのルパンをかなり原作に近く映画化、しかも子供向きでない作りだと聞いたので、散々迷った挙句にルパンを選びました。
ルパンはフランスが世界に誇ってもいいキャラクターで、日本からはルパン三世も登場しています。私はルパン三世の大ファンで、漫画嫌い、アニメ嫌いだった頃から例外としてルパン三世を挙げていました。三代目になればああいういい加減な男が登場するだろうと本当に思わせてくれます。おじいちゃんも三世も実は本気を出す時は大真面目、普段はできる限り楽しく暮らしたいようですが・・・。
原作は実に50篇以上あり、それを全部映画化するのは無理。ルパンではルパンの親子、親戚、恋人関係と、カリオストロ伯爵夫人とのやり取りを中心にしています。それだけでもかなりの量で、映画は2時間を越えています。フランス人は通り一遍のヒーローはあまり好きではないと見え、ルパンもちょっとひねくれています。泥棒が本職なのですが、盗む相手は世間からあまり同情を集めない輩。ややロビン・フッド的傾向があります。その上、スーパーマンやスパイダーマンのように男女関係では清潔、純情というのでは決してなく、やや女たらしの傾向があります。必ずしも清廉潔白、真っ白でないというところがフランスの流儀。
さて、フランス、イタリア、スペイン、英国製のルパンは大人向きの話。特に大人のムードを悪役のクリスティン・スコット・トーマスが良く出しています。私、この人好きでないのですが、カリオストロ伯爵夫人は嫌われていい役です。その辺をしっかり理解して上手に演じています。 これまでに彼女が演じている役はどれも陰険だったり暗かったりでした。それを外交的な笑顔しか見せない彼女が演じるので、決して形を崩さない人なんだなあという印象が私の中にできてしまっています。我を忘れて取り乱すとか、陽気に大口開けて笑うというタイプの役はまだ見たことがありません。しかしシゴニー・ウィーヴァーやメリル・ストリープぐらいの器の人が無理をして自分のイメージに合わない役に挑戦しているのを見ると痛々しく感じるので、クリスティン・スコット・トーマスが今後も冷淡な役で進むのに反対ではありません。 主演のルパンに収まった俳優はニヤニヤ笑うのであまり好きになれませんでしたが、ロマン・デュリスという人です。フランスでは有名なようです。純情でありかつ年上のマダムとの情事も楽しむという得な役です。と、まああまり好きになれない2人の主演ではありますが、それでもこの作品見所があります。
ECは住民の8割近くが何らかの形で2ヶ国語ぐらいは分かるという場所ですから、当たり前なのかも知れませんが、この作品を見ていて驚くのは俳優の語学力。スコット・トーマスは有名なハリウッドの作品に英語で出ていますが、ルパンではフランス語で通しています。彼女は昔フランスでアルバイトをしていたこともあり、80年代後半からはフランス人と結婚しています。さらに王位を狙うオルレアンの公爵に扮しているマシュー・カリレー。彼は一応ドイツ人で、ドイツで1番きれいなドイツ語、標準ドイツ語が使われる町ハノーファーの出身です。ドイツではドイツ語で映画やテレビに出演します。しかしフランスの映画にフランス語で出られるほど語学は堪能という話です。今年のファンタは火傷とカメラのシーンが多いのですが、カリレーも体にアルコールをかけられ、火をつけられ、窓から突き落とされてしまいます。やれやれ、今年は厳しい年だ(ぶつくさ)。
あらすじを書こうとすると長くなるのでそれはカット。大筋はルパン三世のひいじいちゃん(ルパン0世)の死の謎を解こうとするルパン1世、王の地位を狙う政治的な陰謀、泥棒をしている最中に《十字架を集めると財宝が当たる》という謎にぶつかるルパン、そしてどこに行っても出くわす謎の貴婦人カリオストロ伯爵夫人が入り乱れてという話です。
レトロ風の機械が大好きな私には楽しい2時間でした。テロ活動も出て来るのですが、それもレトロな描き方。もちろん1800年代の後半からが舞台ですから、趣味でレトロをやっているのではなく、当時を描こうとしての結果ですが、船から小物に至るまで楽しい品々が出て来ます。家具、調度品、衣装にもたいそうお金を使ってあり、ゴージャスです。スコット・トーマスの衣装も扇情的な手のかかったレースなどが使ってあり、女優としては楽しい仕事だったことでしょう。その上秘密の隠れ家に財宝がちりばめてあるというシーンがあり、小説を読んでいる人にはこれも楽しい場面です。子供の時に小説を読んで、大きくなったという人にお薦めの作品です。
あのにやけ男からルパン三世という孫が生まれたという意味では納得できるキャスティングです。フランスでもルパン三世は知られているとのことなので、もしかして、そこから逆算して、ああいう孫ができるためにはこういうにやけ男が爺っちゃまでないと行けないと思ってのキャスティングでしょうか(まさか!)。しかしこのにやけ男に女が陥落というところが納得できません。こちらの年齢にもよるのでしょうが、ああもニヤニヤされると、ロマンチックな気分になる前に「嫌な奴」と蹴っ飛ばしてしまいたくなるのです。好みの問題だというのは分かりますが、ロン・パールマンがいいなどという人間には向かないのです。当代切っての色男のキャスティングというのは難しいものです。例えばアラン・ドロンの若い頃ですと、自分が好きか嫌いかに関わらずイケメンだという点には同意します。多くの女性がため息をつくでしょう。ただ、あの顔ですと、ルパンの図々しさが出ず、ミスキャスト。上にも書いたようにルパンは長編、短編を含め膨大な数の物語があるので、ロマン・デュリスで続編が作られるかも知れません。若くて元気そうなので、数本は行けるのではないでしょうか。英国がジェームズ・ボンドで稼いだのだから、フランスがルパンで稼いでもいいと思います。色々な小道具もレトロでやってくれた方が私は楽しくていいです。
正直なところヴィドックの方が怪人、事件の謎、レトロの三拍子揃っていて、わくわくしました。原作のかせをはめられているからか、生誕100周年で気合を入れ過ぎたのか、ルパンは今一つ何かが欠けているような気がしました。しかしこれからもどんどんこういうタイプの映画を作ってもらいたいです。ちゃんと見に行きますから。
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