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プルーフ・オブ・ライフ /
Proof of Life /
Lebenszeichen - Proof of Life

Taylor Hackford

2000 USA 135 Min. 劇映画

出演者

David Morse
(Peter Bowman - ダム建設の技師)

Meg Ryan
(Alice Bowman - ピーターの妻)

Pamela Reed
(Janis Goodman - ピーターの姉)

Russell Crowe
(Terry Thorne - プロの交渉人)

David Caruso
(Dino - テリーの仲間)

Gottfried John
(Eric Kessler - 人質になっている元外人部隊のメンバー)

Mario Ernesto Sánchez
(Arturo Fernandez - 最初の交渉に関わる男)

Tony Vazquez
(Marco こと Fred - 交渉相手)

見た時期:2006年3月

要注意: ネタばれあり!

それまで教科書的に清く正しく生きていたメグ・ライアンが、何を思ったか家庭を捨ててラッセル・クロウに走るという珍事のきっかけと言われる作品です。映画の方は蓋を開けてみるとあまりヒットしませんでした。バーグマンのロッセリーニ事件と違い、ライアンの不倫事件は不発に終わっています。

当時は映画以外の出来事があれこれ取り沙汰されましたが、メグ・ライアンはどうやらこの映画に関係無く、当時の家庭生活に疑問を抱いていた様子。あの頃暫く前亭のデニス・クウェイドが主演する映画がいくつかできましたが、結局それも最近は引き潮。また、当時ラッセル・クロウに惚れこんだ女性はメグ・ライアン1人ではなかった様子で、何であんな無骨な男がいいんだろうなどと思った記憶があります。ライアンはその後これまでのイメージと違う作品にいくつか出ましたが、スマッシュ・ヒットは無し。最近はまたロマンチックなコメディーに戻るとかいう話も聞こえて来ています。しかしすでにリース・ウィザースプーンのような強力な後継者ができてしまったので、彼女の将来は未知数。

日本ではどのぐらいヒットしたのか分からないのですが、ドイツでは伝説にまでなっている代表作恋人たちの予感に出演していた時の彼女は今と全然違うアウトフィットです。いつの頃からかあのブロンドの清潔そうなスタイルが始まって、長い間それを維持していました。しかしそれはラッセル・クロウ騒動以後止めた様子。顔全体がガラっと変わっています。45歳になった今、若いおなごの姿では合わないと思ったのかも知れません。プルーフ・オブ・ライフはちょうど40歳にさしかかる頃。そろそろイメージを変えたかったのかも知れません。周囲はまだこのまま行けると思っていたのかも知れませんが。

星に想いをの時はまだあの彼女らしいかわいらしさを出していました。他にできる人がいなかったため、彼女がああいう楽しく明るい役を一手に引き受けていたという印象が強いですが、実は彼女の弁によると、出演作のうちコメディーは3分の1程度なのだそうです。シティ・オブ・エンジェルの頃から彼女は変わりつつあるような印象でしたが、いやはやイメージというのは大変な困難になる事もあるのですね。

イメージ・チェンジをはかって参加したいくつかのプロジェクトがありましたが、いずれも不発。プルーフ・オブ・ライフでもチェンジを狙っていた様子。コメディー性の全く無い物語です。夫が誘拐され、家で彼の帰りを待つ妻という役どころ。筋はお粗末と言ってもいいぐらい単純で、《ネタばれあります》と大々的にのろしを上げてストーリーを書こうにも字数の水増しもできません。外国勤務の技師が地元のゲリラに誘拐され、プロの交渉人が彼を取り戻すというだけの話ですから。あ、もう結末がばれちゃった。

ライアンは取り敢えず美しく、デビッド・モースは主演の2人の邪魔をしない程度にしっかり人質としての存在感を出しています。カルーソーは主演でも行ける人ですが、ここではクロウの気心の知れた相棒という役に徹底して、それらしく見えています。しかしストーリーは金の工面、交渉の行き詰まりなどあまり派手でない部分に長い時間をかけているので、メリハリに欠けます。実際の誘拐事件というのは無論こういう忍耐の要る出来事なのでしょうし、劇的な事ばかり起きては困りますが、映画にするとなるとやはり2時間をゆうに越えるので、何かしらの工夫が必要だったかも知れません。

私にとっての収穫は南米の風景。どうやら現地に行って撮影をした様子で、山岳地帯がたっぷり見られます。日本にいた時似たような景色の所を歩いたこともあるので、何だかうれしくなってしまいました。山のこちら側に立って、あちら側を見る、その辺に少し霧が出ている、空は澄んでいる日もあれば曇っている日もある・・・ああ、いい気分・・・。日本にもそういう場所がたくさんあります。

映画の中でのライアンとクロウは1度キスをするだけで、不倫をした様子はありません。クロウ演じるテリーが保険を払う会社のバックアップが無いのに戻って来てリスクを犯すところが彼の彼女に対する愛情。クロウが後ろ盾が無いまま命を賭けて仕事をやり遂げると、仕事の対象である夫が生きて戻って来るので、彼女は手に入らないというのが運命の皮肉。それでもやるのが健さん、じゃなかった、クロウ。どうやら最後にクロウとカルーソーが新しい会社を興すつもりらしく、今度の成功はそのいい宣伝になり、一応なぜ無料奉仕をしたのかについては辻褄が合わせてありました。

最大の収穫である壮大な山岳地帯の風景に続き、もう1つまあ、良かったかなと思えたのが長年捕まったままの人質。1人は元外人部隊にいたドイツ人で、モースと一緒に脱出。逃げ切ります。もう1人は後で救出されるイタリア人の神父。あまり長く捕まっていたため頭がおかしくなる寸前という役どころ。モース救出の横っちょに出て来るだけですが、こういうエピソードをカットしてしまうとさらに現実味が減ってしまいます。ゴットフリート・ヨーンはテレビ出演の多い人で、一応名の通った役者です。ベルリン人。

最後は奇襲攻撃、銃撃戦、ヘリによる脱出とドンパチになりますが、敵はバズーカを持っているのにヘリで無事に帰って来れてしまうというのもやや現実味に欠けます。結局こういう大掛かりな設定にしても描きたかったのはライアン、クロウのラブ・ストーリーだったのかと気抜けしてしまいます。

身代金を値切るため敵との交渉にはかなり時間を割いていましたが、交渉の巧みさ、おもしろさではそのものズバリのタイトルの交渉人や、フォーンブースの方が映画としてはおもしろかったです。クロウは英国の特殊部隊出身という役で、戦闘シーンで手際よくふるまうのですが、それも物語りの中心では無いので、最後にちょっと出て来るだけです。交渉の途中に推理を働かせるシーンがあり、おもしろくなりそうだと思ったら、すぐそれは終わってしまい、2時間以上あるのに、重点を絞っていないため、個性の無い作品に仕上がってしまいました。ラブ・ストーリーとしても、寡黙なクロウが地味に役目を果たすわけですから、映画としてのメリハリはつけようがありません。

モースが助かった後クロウがライアンに、(交渉の途中で国の大物が嫌がる事をしたから)速やかに国を去るようにあれこれ指示を出します。それも内容的には現実に沿ったアドバイスなので、本で読んだりするのでしたらいいかも知れませんが、映画で画面にすると平坦になってしまいます。

結局印象に残ったのは景色だけだったのです。その代わりこの大盤振る舞いの景色は劇場の大きなスクリーンで見るのを勧めたくなるようなすばらしいスケールです。6年も経った今ではちょっと遅いですが。どこかの野外映画館でやらないかな。登山の好きな人にもお薦めです。

後記: 離婚後8年ほど経ってライアンが真相を語ったとか言われています。不倫が離婚理由だったのではなく、夫婦生活はクウェイドの度重なる浮気でとっくに破綻していたのだとか。当時彼女は口を閉ざしていました。クウェイドは離婚騒ぎ直後から次々にA級とB級の中間程度の作品の主演、重要な共演者になり、俳優としては活動的になっています。それと反比例するようにライアンは下降線をたどっています。クウェイドの薬物問題の解決にライアンが寄与している事を考えるとあまり恩義を感じない人なのかとも思います。ライアンの離婚後の写真を見ると人が変わったように顔が腫れているように見えます。

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