映画のページ

フォーン・ブース /
Phone Booth /
Nicht auflegen!

Joel Schumacher

2002 USA 81 Min. 劇映画

出演者

Colin Farrell
(Stu Shepard - 出版関係の会社員)

Radha Mitchell
(Kelly Shepard - ステューの妻、写真家)

Katie Holmes
(Pamela McFadden - ステューの恋人)

Keith Nobbs
(Adam - ステューの助手)

Kiefer Sutherland
(電話の主、狙撃犯)

Dell Yount
(ピザ配達人)

Forest Whitaker
(Captain Ramey - 事件の指揮にあたる警部)

James MacDonald
(警察の交渉人)

Paula Jai Parker
(Felicia - 売春婦)

Arian Waring Ash
(Corky - 売春婦)

Tia Texada
(Asia - 売春婦)

John Enos III
(Leon - ポン引き)

見た時期:2003年前8月、ファンタ

2003年 ファンタ参加作品

後記: 事実が映画を越えることがあるので驚きます。
連続狙撃事件を覚えている方もおられるでしょうが、今度は爆弾事件です。 フォーン・ブースと似たような事件がアメリカでまた起きています。事件を読んでしまうとフォーン・ブースのネタが割れるので、1番下に書きます。

ストーリーの説明あり

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

参加作品でありながら、ベルリン・ファンタでは見られないことになっていました。それもそのはず、ファンタ開始前に一般公開されるからです。その券に当たるという幸運が舞い込み見てしまいました。なかなか気合の入った作品です。

ステューはニューヨークでカッコ良く働いている。頭が切れ、助手は彼にあこがれの目を向けている。助手はステューに一心に尽くす。ステューはいろいろな人物を知っていて1日中電話しまくり、いろいろな話をつける。礼にコンサートのティケットを用意して、重要な情報を得る、いいネタを新聞や雑誌に売り込むなどということを忙しくこなしている。助手に金をやり「パリっとした背広を着ろ」などというので、助手からはますます尊敬されてしまう・・・。

女性にももて、美人の写真家の夫人のほかに、ちゃっかり独身だと偽って若い女の子と不倫をしている。彼女はステューが独身だと信じている・・・。

・・・といった人物紹介から始まります。「以前は携帯を手に1人でしゃべっていると精神異常かと思われたものだが、現代では携帯はステータス・シンボル・・・」と年配の監督は年配の人間を代表して一言冒頭にコメントも入れています。そういった具合に現代生活を描写しておいて、事件が始まります。

ステューは毎日同じ時間に公衆電話ボックスから不倫相手のパメラにデートの電話を入れるという習慣がありました。公衆電話だと携帯の請求書に通話記録が残る心配がないのです。せこい男ですが頭は切れます。日本の電話はどうか知りませんが、外国の電話ではそこの番号を知っていれば、公衆電話にかけて来ることができます。ステューがボックスに入っている間にピザ屋がピザを届けに来ます。こういう事もタイミングをきっちり計れば可能です。ミュータント・タートルズ(続編はつまらなくなりましたが、劇場映画第1作は傑作です)でもご承知のように、ピザ屋さんはどんな変な住所にでも届けに来ます。

次に今終えたばかりの電話のベルが鳴り出します。よく考えずに電話が鳴れば自動的に受話器を取ってしまうのが普通。で、彼も。ここからミステリー開始です。悪役専門のキーファー・サザーランドがここでも目一杯活躍。今回の悪役には気合が入っています。彼が犯人だというのは最初からばれています。テーマはフーダニットではないのです。

悪党サザーランドはすぐ手の内を明かします。ステューは見張られている、電話ボックスから出ると撃ち殺す、言う事をきけ・・・です。ステューは最初は強気。サザーランドはそのあたりもお見通しで、ステューがどういう状況にいるかを証明するためにちょっと例を見せます。で、ステューも納得せざるを得ません。同じ年にリンダ・フィオレンティーノ主演でそっくりの設定の映画がありますが、展開は全く違います。

電話ボックスを長時間占領しているので他の人から苦情が出ます。ウエストというタバコの宣伝に出てくるようなグラマーな女性がバンバンドアを叩いて文句を言い始めます。応援に2人の同僚を呼んで来ても3人で囲んでも効果無し。それで上司を連れて来ます。「これは業務妨害だ」とあれこれ言っても、ステューの方は命がかかっているので出るのを拒みます。すると相手はエスカレートし、バットを持ち出してガラスを叩き、実力で彼を電話ボックスから連れ出そうとします。狙撃犯はステューに質問。「男を殺って欲しいか」。何度か聞かれ、ステューはついに「イエス」と言ってしまいます。すると言葉通り上司は狙撃され、ほぼ即死。狙撃犯の腕は確かです。

背に腹は換えられないとステューはポケットの携帯から警察を呼び出します。しかし狙撃犯にはすぐばれて耳を撃たれます。それとは関係無く「上司がステューに殺された」と信じている3人の女性、死体が道に転がっているのを見た一般市民が通報。警察がドーっとやって来て周囲を囲みます。

警察側で指揮を取っているのは運良くソフトな人当たりで有名なフォレスト・ウィタカー。これまではあまりにもソフト過ぎてちょっとどうかしているのではないかとまで思わせるような役が多かったですが、フォーン・ブースでは冷静沈着で、事を荒立てない、相手に配慮しつつ、しっかり自分の頭で考えることのできる警部。やっと彼の良さが出るような役が回って来ました。優しさをきりっとした態度で包んでの登場です。

後記: ところがそういう彼にしっくり来る役をあっという間に飛び越して凶暴な国家元首の役に行ってしまいました。彼の場合振り子が極端に振れるようです。それでオスカーが来たので本人は喜んでいるのかも知れませんが、彼のイメージに合うのはむしろフォーン・ブースの刑事役の方です。

同時に登場するのが交渉人。(防弾チョッキを着て)ケビン・スペーシーと同じ出で立ちだったので、ああ、これは交渉人だとすぐ分かりましたが、こちらは強硬派。彼はステューを説得することに自信があり、これは自分の仕事だと思っています。ウィタカーは暫く先入観を入れず状況を見た結果、何か別な理由で男が電話ボックスに居続けると見抜きます。天才的にぱっとひらめくのではなく、いろいろな要素を頭の中で吟味して・・・というタイプです。何か納得が行かない・・・という考え方。こういう人が警察にたくさんいてくれると助かりますが、先日のダーク・スティールみたいなのもいるんですよね。

さて、上司を殺された3人の売春婦は(上司はポン引き)パニックもあり、常識的な考え方をするという事もあり、てっきりステューが犯人だと思い込んでおり、警察をけしかけています。そしてステューのズボンからチラッと見える物は拳銃だとしきりに言い張っています。この誤解は非難できません。そういう風に考えるのが普通です。

狙撃犯はステューの状況がどんどん悪化して行くことはお見通し。しかし自首、投降などは禁止、ステューには次々と無理難題を吹っかけて来ます。これを1つ1つ解説していると時間がかかりますし、非常事態の中でのステューの発想も作品のおもしろみの1つなので、ばらしません。サザーランドの声は当然ながら吹き替えのドイツ語。しかし彼がじわりじわりとステューの首を締めるような事を言ってサディスティックに楽しんでいるのはステューの演技からも伝わって来ます。

さて、現場は担当警部のパトカー、部下のほかにスワット、交渉人、電話関係の技師、テレビ・レポーターとスタッフ、野次馬で大変な騒ぎです。狙撃犯は技術にかなり強く、電話が簡単に逆探知できないように最初から計画してありました。サザーランドを出すのならそのぐらいはやらないとおもしろくありません。

現場にはステューの妻も飛んで来ますが、ステューは「彼女はストーカーで、自分に付きまとっているだけだ」と言い張ります。しかしこの手は身分証明書などで間もなくばれてしまいます。警部は徐々に問題の裏に何があるのか訝り始めているところで、とにかく部下やスワットに「撃つな」と指示を出します。交渉人とは管轄問題が起き、電話を傍受しようにも裁判所の許可が要り、時間がかかり過ぎます。電話ボックスに突進して来た妻を止めようとした時、警部は妻の額の真中に赤い点が浮かぶのを見てしまいます。「ははあ、これが原因だったのだ」と納得。しかし顔には全く出さず腹心の部下に「絶対に上を見るな」と念を押しながら、付近のアパートを探すよう指示を出します。

赤い点は仏教徒の印でも、エイリアンでもありません。スナイパーが照準を合わせていたのです。このあたりからステューにも反抗心がむくむくっと湧いて来て、携帯で妻の電話を呼び出します。妻は電話ボックスでステューがどんなことを話しているのかを聞き、警部に電話を渡します。これでとにかく事件の本当の姿は警察側にも判明。

しかしではどうやってステューをボックスから救い出すか。それを書いてしまうとネタばれ。で、ぐっとこらえて書きません。終わりの方あまり早く席を立たない方がいいです。

さて、この映画凄く良くできているのですが、気になったことを4つほど。まず夫人は「(安全のため)車の中にいろ」と言われているのになぜ何度も外へ出て来るのでしょう。なぜせっかく電話ボックスのステューが携帯で妻への連絡に成功したのに、彼女が警部に報告した後すぐ切ってしまったのでしょう。他の映画で見たようなライフルのような形をした集音マイクを使えばこの程度の距離なら少なくともステューの話ぐらいは聞こえると思うのですが、なぜそういう物は使わなかったのでしょう(こういうのを使用する時も裁判所の許可がいるのかな)。最後に、彼の顔をテレビ中継車は大写しにしてすでにオンエアしているのになぜ聾唖者をスタジオに呼んでくるなり、警察が分析するなりして、彼の唇を読まなかったのでしょう。

ドイツ語に吹きかえられた映画でアメリカ人が口を動かしているのを見ていると時々英語の台詞とは違う事を言っているのが分かります。素人でもこんな調子なのですから、唇を読む専門家を呼んで来て翻訳させれば、少なくともステューがどんな会話をしているのかぐらいは分かり、警部の役に立ったと思うのです。しかしそのような枝葉末節を忘れさせるぐらいスリルのある作品です。 運悪くこの作品公開しようという時期にアメリカでは本物の狙撃犯がうろつき、10人を超える犠牲者が出たのでアメリカでは公開を延期。

後記: アメリカで実際に起きた事件

2003年8月28日に変な首輪をつけられた男が銀行強盗をし、警官につかまりました。男は首に爆弾をセットされ、仕方なくやったと主張。警察が爆発処理を準備しているところで時間切れ。容疑者は死亡。容疑者の手には容疑者宛ての銀行強盗の指示書と銀行員に渡す指示書が。8月31日にはこの容疑者の同僚が自宅で死亡しているのが発見されており、死因はまだ不明。

爆弾や首輪のロックは非常に特殊、精巧なものだそうで、FBI が一般からの情報を待っているところです。

フォレスト・ウィタカー警部、出番です。

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