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Buongiorno

Melo Prino

2005 I 5 Min. 劇映画

出演者

Domenico Lannutti (男)

Domenico Lannutti
(鏡の中の男の像1)

Domenico Lannutti
(鏡の中の男の像2)

Domenico Lannutti
(鏡の中の男の像3)

Domenico Lannutti
(鏡の中の男の像4)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

要注意: ネタばれあり!

ファンタの中には必ず1コマか2コマ短編の特集があります。以前は2コマあって、ドイツ版、海外版と分けている時期もありました。プロの作った本格的な作品もあり、新人が初めて作った物もありました。

最近は以前のようなおもしろい作品が減り、枠も1コマに落ちついています。今年は長編と同じく、新人に力を入れており、デビューという人が6人。9本のうち6人がデビューということになります。この他短編集の枠外にもう1人デビュー監督の短編が出ています。

新人をこんなに駆り集めて青田刈りをやっているのかと言われそうですが、今年のもう1つの特徴は、新人のくせに完成した作品を持って来るという点。青田刈りではないのです。

その良い例がここにでご紹介する Buongiorno。毎年ファンタを見終わると、私的なベスト5とか、ベスト10を考えるのですが、Buongiorno は2位です。短編がベスト10に入ることはこれまでなかったのですが、見事2位です。本当は1位にしても良かったのですが、1位に選ばれた作品はストーリーの舞台が Buongiorno より広いため、あちらを1位にしました。Buongiorno はアパートの洗面室だけで起きる出来事なのです。

イタリア人は陽気だと良く言われますが、ユーモアのセンスがあるという話は聞きません。別にユーモアなどを持ち出さなくても毎日の会話が陽気に明るく進めば、それで楽しい1日を送れるからでしょう。しかし Buongiorno を見ると、イタリア人にもちゃんとユーモアが備わっていることが分かります。それもなかなかのセンス。

主演のドメニコ・ラヌッティーはムサイ中年男で、イメージの検索を入れると大きな写真が上がって来ます。Buongiorno ではムサイ男には似合わないモダンな洗面所で歯を磨き始めます。普通の男が朝普通に起きて、普通の事をやるわけです。

ネタばれ開始。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

ところが鏡の向こうの男、つまり鏡の向こう側に映っている自分の像がこちら側の生身の自分の思った通りに動かないのです。自分が顔を上げれば、鏡の向こうの男も顔を上げる、自分が手を横に伸ばせば、相手も横に伸ばすと思っていたのに、鏡の向こうの男は勝手な事をやり始めるのです。しかし顔を見ると確かに自分。同じ服装ですし、同じくムサイ・・・。

「ええっ?」と思いながらも用を済ませ、洗面所を出ます。気になるのでまた戻って来ると、その男は一応鏡の向こう側にそれらしく映っています。「本物が来たぞ!」というわけで、鏡の像も一応男に調子を合わせているのです。でも男が行ってしまうと、好き勝手な事を・・・。

男が気になってまた戻って来ると、また調子を合わせ・・・。でも男が行ってしまうと、2人目、3人目、4人目・・・も出て来て、好き勝手なことを・・・。

ネタばれ終了。

これをブラッド・ピットやマット・デイモンにやらせず、ドメニコ・ラヌッティーにやらせたところがまずすばらしいセンスです。そして思いついた筋書きが単純明快で分かりやすい。観客はあれこれ考える間もなくさっとストーリーに入って行けます。セットも監督のセンスをうかがわせます。ムサイ男をモダンなバス・ルームに。そしてかなり鮮明なカメラ。

全てがうまく混ざり合った結果会場は爆笑。たった5分ですが、こんなに楽しい思いをさせてくれる作品はそう多くありません。短編特集の中で突出していただけではなく、今期見た全ての作品の中で2位に着けました。短編はDVDを買いたくてもまず手に入りません。劇場で見たくてもこれを上映する映画館は恐らく無いでしょう。私は今年短編集をパスして、長編を1本見ようかと迷ったのですが、友人一同が「おもしろい作品が2、3本あった」と言ったので、仕方ないと見に行ったのです。Buongiorno を見逃さずに済んだのは幸いでした。これで1人でこっそり思い出して、笑いをかみ殺せる作品を心に、来年のファンタまで過ごせそうです。

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