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パパラッチ / Paparazzi

Paul Abascal

2004 USA 84 Min. 劇映画

出演者

Cole Hauser
(Bo Laramie - 最近アクション・スタートしてブレークした俳優)

Robin Tunney
(Abby Laramie - ボーの妻)

Blake Michael Bryan
(Zach Laramie - ボーの息子)

Dennis Farina
(Burton - 刑事)

Daniel Baldwin
(Wendell Stokes - パパラッチ)

Tom Hollander
(Leonard Clark)

Kevin Gage
(Kevin Rosner)

Tom Sizemore
(Rex Harper - パパラッチのボス的存在)

Andrea Baker (Emily)

Jordan Baker
(Kelley - 医者)

Donal Gibson
(Wilson - 保安官代理)

Chris Rock
(ピザ配達人)

Mel Gibson
(怒りを押さえる治療を受ける患者)

Matthew McConaughey (本人役)

Vince Vaughn (本人役)

見た時期:2007年5月

ネタばれあり!

★ どういう話

原題も日本語タイトルもずばりパパラッチ。アクション・スターがパパラッチに悩まされるという筋 です。

実話を混ぜているのだろうなあと思わせる脚本です。カメオで出ている人には過去に嫌な経験があったのでしょうか。

スターにも色々あって、何でもありのめちゃくちゃな生活を送っている人から、自宅に戻れば普通の人という人まで、贅沢の限りを尽くすむちゃくちゃな人から、無名時代と同じく地味な考え方の人までいます。パパラッチに襲われるのが当然だと思える俳優はごく僅か。話題作りをするマネージャーがいて、パパラッチとはナーナーというのもあるかも知れません。とにかく最近の様子を見ていると、俳優という仕事を選び、主演クラスになってしまうとプライバシーと引き換えとの覚悟が必要なようです。自分の担当しているスターを守るマネージャーもいるようですが、いつも上手く行っているわけではないようです。

ピアス・ブロスナンかと思えるような1人の俳優を使ってストーリーが展開します。チャンスに恵まれこれからアクション・スターになる普通の夫、妻、子供が新居に移り、まだこんな贅沢ができるのかと信じられない様子のシーンから始まります。間もなくレッド・カーペットも踏むことになり順調に有名になって行きますが、それと引き換えに子供がパパラッチの対象になってしまいます。

前半は俳優のキャリアの上昇、パパラッチ・トラブルの開始から夫人と子供が巻き込まれた大事故まで。後半は捜査側と家族を守りたい俳優の反応。

全体は笑い事ではない・・・という話なのですが、息抜きにユーモアが入ります。メル・ギブソンがカメオで登場するシーンです。ギブソンが制作に参加しています。彼は実生活でストーカーやパパラッチには嫌な目に遭っています。それでこういう作品の制作に関心を持ったのでしょう。俳優は超有名どころを避け、若手の主演とベテランの脇役を置いています。それで浮かせた制作費をうまく使ってまとまりのいい作品に仕上げています。時間は84分と最近の映画にしては短めですが、言いたい事はきちんと伝わって来ます。監督の初仕事です。

★ オトシマエのつけ方

長い間平和にやってこられた日本出身の私はこういうオトシマエのつけ方には賛成できません。時々アメリカ映画にある《やられたら自分でやり返す》というストーリーです。こういった方法は欧州でもあまり賛同を得ることができません。時代が大きく変わり、自分でオトシマエとい考えも選択肢の1つになるのかも知れませんが、自分をそういう時代に合わせるのではなく、できればそういう物騒な世の中を平和に持って行きたいものです。ま、そういう希望的観測は横に置いて、少なくともどういう事情で事件が起きたかについては納得の行く説明になっています。そういう実情がはっきりした上で起きた事件でも欧州の人は重い腰を上げません。日本人も多分そうでしょう。ただ、パパラッチの問題がエスカレートしていることは事実で、それに対する対策が間に合っていないのは分かります。強権を行使する国ではそういう事件は無いでしょうが、その代わりに独裁政権なので、普段の普通の生活も強く制限されてしまいます。こっちも良くない、あっちも良くない状態で、経済の発展した国でもせっかくの《自由》が使いこなせていないことを露呈してしまいます。

★ パパラッチ

この間調子のいい映画を作ったばかりのヒュー・グラントが最近逮捕されました。以前ですと俳優がカッとして人を殴ったなどというゴシップを見たら、行儀の悪い奴だとか、大人になっていないなどと思ったでしょう。しかしパパラッチという職業があり、そのためにターゲットになった人が死ぬことすらあると知ってからは、こういう事件が報道されると《悪いのは俳優の方》という固定観念は捨てました。ジャッキー・ケネディーの頃からパパラッチという職業が知られるようになり、私の耳にも時々入るようになりました。当時のパパラッチはまだそれほど悪質ではなかったようで、あるカメラマンは散々追い掛け回したジャッキーに対する賛美を本にして出しています。

近年のパパラッチはそれに比べひどくレベル・ダウンした様子で、レディー・ダイは亡くなりましたし、二コール・キッドマンもいつまで本人の忍耐が続くのかとこちらが心配になるほど狙われた様子です。ブロンドのアホ娘もいますが、ブロンドの我慢会女優もいます。この映画の記事を書く数日前にはサンドラ・ブロックか彼女の夫が自動車でひき殺されそうになったというニュースを読みました。ブロックはドイツではドイツ系でドイツ語が分かるというのでファンが多いですが、キャーキャー言うミーハーファンではありません。日本ではまあまあという程度でそれほど盛り上がっていません。しかしアメリカでは毎年(映画だけのカテゴリーではない中)全米でファンから最も愛される女性に選ばれるような人。そのためパパラッチやストーカーの標的になることもあるようです。

今回のブロックの事件はストーカーだったようです。メル・ギブソンも長い間ストーカーに悩まされ、家族にも危険があったそうです。映画パパラッチで彼はストーカー被害とパパラッチを組み合わせたのかも知れません。こんな映画を作ると賛同を得る反面恨みも買うでしょう。どうやら賛同した人たちは悪役やカメオ出演という形で支持を示した様子です。

★ ストーリー

映画は何人かの俳優を混ぜて作ったのかと思えるようなボー・ララミーがアクション・スターとして有名になるところから始まります。レッド・カーペットを歩くようになり、新居は奥さんが心配するほど豪華。これまでの苦労が報われた瞬間です。家族は妻とまだ小さい息子。浮ついた生活をしている人ではないので、すぐ観客の支持を得ます。

普通の家庭生活を送りながら契約した作品に出ていたボーはある日を境にトラブルに巻き込まれます。息子がスポーツをしているところを見ていたら、パパラッチが息子の写真を撮り始めたのです。「自分を撮るのはいいが息子はやめてくれ」と一旦は話をつけるのですが、そんなルールを守る人たちではありません。それに怒ったボーは相手に手を出してしまいます。

すると殴られた男はそばにとめてあった車のドアをノック。急にドアが開いて数人のパパラッチにばっちり写真を撮られてしまいます。理由の如何に関わらず先に手を出したら負け。加害者として処理されてしまい、加害者としての義務がドーっと出て来ます。仕方が無いとあきらめてボーは心理トレーニングに参加したりします。

パパラッチ側はエスカレートして、賠償金を要求して来たり、さらに追い掛け回したりします。これではいくら温和な性格の人でもいつか堪忍袋の緒が切れるだろうという進展の仕方です。いくつかのゴシップを思い出すと、映画で描写しているのは事実だろうと思えて来ます。

間もなくボー一家はレディー・ダイとそっくりの状況で交通事故に巻き込まれ、息子重態意識不明、妻重症内臓切除、本人も軽傷ですがその場ではほとんど意識不明となります。気を失う直前、最後の記憶はパパラッチがシャッターを切っているところ。

警察も乗り出して来て捜査に当たります。その結果立件するほどの材料が無く、断念。パパラッチはその後も減りません。ただ刑事からの情報で相手側がある程度組織立っていること、前科のある人が一味に混ざっていることが分かります。

この後は完全なアメリカ映画で、自分でオトシマエという運びになります。手際良く相手をやっつけるので鬱憤晴らしにはいいと思いますが、真似をしてそういう解決法を選んでいいという話ではありません。ボーはブロスナンを思わせるようなスキャンダルの少ない家庭の父親。その彼が策 をめぐらしパパラッチを片付けて行くのです。担当刑事は偶然の重なり過ぎに気づいており、もしやと思い始めています。しかしボーの事情を良く知っているので、証拠品と思えるものを本人に返してしまいます。

また1人パパラッチが死にます。殺人ではなく、警官に撃ち殺されてしまいます。しかし彼がそういう目に遭うように仕掛けた人物がいたかも知れない・・・、と刑事は考えます。しかし証拠がはっきりしない。刑事は刑事なりにバランスを考え、あちらも逮捕されなかったからこちらも逮捕しないと考えたのか・・・、こういうあいまいなシーンにデニス・ファリナは良く合います。

ボーの事件に関係して残っているパパラッチは2人。刑事も怪しんでいますが、2人は震え始めます。攻撃が最良の防御とばかりにボーの住まいに忍び込み、マイクとカメラを仕掛けることにします。その間にボーは相手の住まいに押し入り、3人目をバットで殴り殺してしまいます。その罪を4番目に擦り付けます。

ギブソンはこういうスカッとしたケリの活劇が好きらしいですが、事と次第によってはやってもいいという印象を与えるようではまずいです。主人公のボーは良識のある普通の男性に描かれていて、家族がここまでひどい目に遭わなければ、自分の手を汚すことはない好感の持てる人物に描かれています。ギブソンが映画作りで憂さを晴らすのは良いかも知れませんが、見ている方はちょっと考えてしまいます。

日本の必殺シリーズの方がいくらか工夫がしてあり、あまり人が真似をしようという気にならない作り方。アメリカ映画を見ていると、頭では「その気持ち分かるけれど・・・」体がついて行けない作品が時々あります。パパラッチの問題は俳優にとっても深刻なので、コメディーやパロディーというのはあまりいい手段ではありません。ギブソンがこのテーマと真剣に取り組んでいることを考えてもおちゃらかスタイルは合いません。

全体を考えるとマイナス評価もあるのですが、良かったと思ったのはパパラッチが功を競うジャーナリストではないという点を見せてくれたこと。1つの例を分かりやすく説明してくれています。レディー・ダイが死んでもう十年近いというのにようやく今年パパラッチの撮った写真は買わないとある国のメディアが言い出しました。十年遅いです。

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