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ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン! /
Hot Fuzz /
Arma fatal /
Hot Fuzz - Zwei abgewichste Profis /
Hot fuzz - Ostre psy /
Valusad võmmid /
Vaskabátok

Edgar Wright

2007 UK 121 Min. 劇映画

出演者

Simon Pegg
(Nicholas Angel - ロンドンのエリート警官)

Martin Freeman
(Met Sergeant)

Bill Nighy
(Kenneth - ロンドン警察の警視)

Steve Coogan
(ロンドン警察の警視)

Jim Broadbent
(Frank Butterman - 警視)

Nick Frost
(Danny Butterman - 田舎ののんびり警官、警視の息子)

Julia Deakin
(Mary Porter)

Paddy Considine
(Andy Wainwright - やる気の無い警官)

Rafe Spall
(Andy Cartwright - やる気の無い警官)

Tom Strode Walton
(未成年飲酒者)

Troy Woollan
(未成年飲酒者)

Rory Lowings
(未成年飲酒者)

Elvis (白鳥)

David Threlfall
(Martin Blower - アマチュア俳優)

Lucy Punch
(Eve Draper - アマチュア俳優)

Ron Cook
(George Merchant - 村の有力者)

Adam Buxton
(Tim Messenger - 村の新聞記者)

Anne Reid
(Leslie Tiller - 花屋)

Timothy Dalton
(Simon Skinner - スーパーマーケットの持ち主)

Graham Low (大道芸人)

Kevin Wilson
(スーパーの肉屋兄弟)

Nicholas Wilson
(スーパーの肉屋兄弟)

Peter Jackson (サンタ)

Cate Blanchett (Jeanine)

Joe Cornish
(Bob、本職脚本家)

Stephen Merchant
(Peter Ian Staker - 白鳥の持ち主、本職監督、脚本家)

Robert Popper
(本職プロデューサー)

見た時期:2007年6月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ 作った人たち

2004年のショーン・オブ・ザ・デッドで大成功を収めたトリオの作品。監督のライトは90年代の後半からもっぱらテレビで活躍していた人です。5年ほどのブランクの後、2004年から映画の方に乗り出し、ショーン・オブ・ザ・デッドで大ブレーク。ライバル作品と言えないこともないランド・オブ・ザ・デッド にはゾンビ役で出演しています。ショーン・オブ・ザ・デッドではゾンビのエキストラが大勢必要だったらしく、監督自ら出演しています。映画に乗り出してからもいきなりビデオになった作品がいくつかあるので、彼の名前はもっぱらショーン・オブ・ザ・デッドと、今回大成功したホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!で知られることになるでしょう。日本では残念ながらスターが出演しているドーン・オブ・ザ・デッドランド・オブ・ザ・デッドの方が知られ、ゾンビ映画のパロディー版に当たるショーン・オブ・ザ・デッドは無視された感があります。残念です。

負けたのはスター不足のせいだと悟ったのでしょうか。ライト、ぺグ、フロストはまわしを締め直し、スター動員で2回戦に挑みます。 ライセンス・トゥー・キルのジェームズ・ボンドだったティモシー・ダルトン、 パイレーツ・オブ・カリビアン(2以降)、アンダーワールド:エボリューション他有名な映画連続出演のビル・ナイ、 有名な作品に何度も出ている大ベテランのジム・ボロードベント、イン・アメリカ 三つの小さな願いごとブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男で主演、あるいは重要な助演だった上に、間もなくボーンアイデンティティーの続編に出るパディー・コンシダイン、 かなり有名な作品に出ているスティーヴ・クーガン、そしてどこに出ていたのか分からなかったのですが、何とケイト・ブランシェットとあの超大物ピーター・ジャクソンが出演しています。

これだけの人がさっと集まったというのは、人で言えば人徳、ここは作品なのでショーン・オブ・ザ・デッドの作品徳のせいでしょう。

ぺグ、フロストはライト監督と仲が良さそうです。そしてショーン・オブ・ザ・デッドに出演した俳優を再起用しています。続投組は キャストのリストに載せておきました。また本業がプロデュースとか監督という人も出ています。これを見るとホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!を気に入って参加している人が多いという印象を受けます。

★ 引用しまくりはパクリか

タランティーノがレザボア・ドッグを作った頃ならそう言う評価を受けたかも知れません。タランティーノがしっかりと道を築いてくれたおかげで、最近の監督は楽をしています。パクリまくることが先輩に対する敬意だという路線がタランティーノのおかげで確立しています。しかしそういう路線を選ぶにしても物語の骨の部分に自分の描きたい事が入っていないとだめです。ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!なら大丈夫です。

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!はパロディー路線なので他の作品からの引用が多く、聞くところによると30作ほどの名が挙がっています。私も納得するタイトルもありますが、もれていると思われる作品もあります。映画関係者が名指ししているのは以下の通り。かなり微に入り細に入りこだわっています。自分が見ていない作品もあり、見ていても引用と言うより、こういうシーンなら誰が作っても似るのではと思うものもあります。

・ 荒野の用心棒
・ 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
・ アダムズのお化け一家(古いテレビシリーズ)
・ The Munsters (古い方のテレビシリーズ)
・ ダーティハリー
・ ダーティハリー4
・ わらの犬
・ 燃えよ!カンフー (テレビシリーズ、映画もある)
・ チャイナタウン
・ ブラニガン
・ マペットショー(テレビシリーズ)
・ タクシードライバー
・ オーメン(古い方となっているが、新しい方も同じ)
・ マッドマックス
・ シャイニング
・ 狼男アメリカン
・ バイオニック・マーダラー
・ He-Man and the Masters of the Universe (古い方のテレビシリーズ)
・ 特捜刑事マイアミ・バイス (テレビシリーズ)
・ クロコダイル・ダンディー
・ リーサル・ウェポン
・ ダイ・ハード(1)
・ シンプソンズ
・ グッドフェローズ
・ ワイルド・タウン/英雄伝説(リメイクの方)
・ Comic Relief 2007: The Big One (TV)
・ ハートブルー
・ バッドボーイズ2バッド
・ ジュラシック・パーク
・ トレインスポッティング
・ マトリックス レボリューションズ
・ ショーン・オブ・ザ・デッド

《間接利用》

・ ブルージーン・コップ
・ アウト・フォー・ジャスティス
・ バックドラフト
・ 第一容疑者 (TV)
・ トゥルーライズ
・ レオン
・ 未来は今
・ サドン・デス
・ Judge Judy
・ ロミオ&ジュリエット
・ ロスト・ハイウェイ

この中にはセリフを使ったというものから、入った店で見たビデオのタイトルなども入っているので、シーンを似せたものばかりではありません。もれているのではと思える作品もあります。私は例えば欧州では全く有名にならなかった爆笑オーストラリア映画 You Can't Stop the Murders で交通違反を取り締まるシーンや、踊る大捜査線のスリー・アミーゴズのシーンにそっくりの場面があって楽しく笑いました。また、この村にはプリズナー・ナンバー6の村かと思わせるようなミステリーもあり、至る所に工夫が見られます。また、真似とは言い難いのですが、トランスポーターの主演の取るアクションのポーズを意識しているのではと思えるシーンもあります。モザイクのようにちりばめた引用も見事ですが、しっかりと中心のテーマは追いかけるようになっていて、連続殺人か左遷されたエリート警官の被害妄想かも知れないという含みのあるミステリー性も見事です。私は残念ながらドイツ語で見たのですが、これは英語だったら楽しみが倍増するかと思っています。ショーン・オブ・ザ・デッドも英語版で見ると爆笑シーンが増えます。

★ ではストーリーに行きます。

ロンドンで犯人検挙率が平均を上回る400%という数字をはじき出したエリート警官ニコラスが同僚から嫌がられ、負傷がチャンスとばかりに田舎へ左遷されます。成績が良く、非が無いので左遷という言い方は合わないのですが、同僚にも上司にも煙たがられ、これまでの村の歴史で1度も犯罪が無かったと言われている土地サンドフォードに送られて来ます。

キャラクターの練れた脚本という意味ではショーン・オブ・ザ・デッドを踏襲しており、彼がなぜ恋人と上手く行かないかも分かるように描いてあります。田舎へ来て翌日から出勤というのにもうその前の晩に法律違反をした人を捕まえてしまいます。良く訓練ができていて、すぐ犯罪を見破ってしまうので、田舎でも成績は優秀ですが、周囲の受け止め方がロンドンと違います。

ロンドンならば捕まえることはいいとされ、被疑者は留置場へ送られ、警官はすぐ書類作りになります。ところが田舎では被害者が許すと言い、不起訴になってしまいます。このズレを毎日身をもって体験するのでニコラスは気が晴れません。彼とコンビを組むことになったダニーはそれでも各種の訓練を受け優秀なニコラスを尊敬し、彼がロンドンで経験したであろう危険な任務についてあれこれ聞きます。ニコラスはダニーに取ってはヒーローです。

ダニーや署の同僚、上司だけでなく、村全体が毎日昼寝をしているようなのんきさで暮らしています。ニコラスが未成年がタバコを吸っただの酒を飲んだなどと言って捕まえて来ても、酒場の親父や村の人は、子供たちが酒場にたむろしている限り目が届く、それ以上の悪さはしないと、こちらも納得せざるを得ないような理屈を言います。

ある日村で芝居が上演され、主演の2人が車でやって来ます。道中スピード違反でニコラスが捕まえるのですが、結局それも村の中ではナーナーで片付いてしまいます。ところが芝居上映の翌日2人は交通事故を起こし、首が飛んで死んでしまいます。現場に急行したニコラスとダニー。ニコラスは状況を見て「どうも変だ」と言い出します。例えばブレーキをかけた形跡が見られないのです。村の人はしかし「これは不幸な事故だ」と言います。皆それで満足している様子。

どうも変だと言えば確か到着した夜豚箱に放り込んだはずの酔っ払いが翌日消えていました。しかし警察も村の人々も意に介していない様子。

ダニーは警察署長の息子。警察署にはその他に数人の長老とダニーの他に数人若い警察官がいます。近所を監視する会の者、警官などが1日中その辺をぶらぶらしていて、時効警察の署内を小規模にしたようないい加減さです。一生懸命何かの調査をやろうという雰囲気ではありません。お互い長い間の知り合いで、この人たちは村の退屈な生活の縮図でもあります。赴任直後の重要な仕事が、消えた白鳥探しだったりします。

冷静になって考えると妙な出来事もあります。隣近所の生垣のことで揉め、警察が呼ばれて見に行ったついでに大量の武器が発見され押収。

ニコラスには怪しいと思える《不幸な自動車事故》の直後、町の有力者の家が火事になり、持ち主が焼死します。前日の夜ニコラスたちは泥酔している有力者を家に送り届けたばかりでした。観客にはクリムゾン・リバー2 黙示録の天使たちに出て来るような怪しい影が見えるのですが、ニコラスとダニーはそんな事は知りません。殺人放火事件は《不幸な火の不始末》となってしまいます。仕事熱心なニコラスだけは「何か変だ」と思います。

村の教会でバザーがお祭りが開かれた時、村の新聞記者がニコラスに最近村で起きている事の情報を提供しようと試みます。村では評判の良くない誤字脱字の多いジャーナリストなのですが、村でただ1人の記者。約束の時間ぎりぎりにニコラスが現われると、記者はその瞬間にオーメンそっくりの出来事に巻込まれ死んでしまいます。

仕事熱心なニコラスは書類作りも苦にならず、アーカイブで古い新聞をめくるのも苦になりません。あれこれ記事を見ているうちに個人的な事で花屋へ行く用事ができます。その花屋の持ち主から有力な情報を得ます。ところが彼女も翌日村を去る予定だったのにニコラスと話した直後に死んでしまいます。彼女から得た情報というのは近くに建設されるバイパスに関する話でした。これまでに《事故》で死んだ人たちはその土地買収に深く絡んでいました。利権、談合という方向に手がかりが見つかりかけた直後花屋は死んでしまいました。

こうなるとニコラスには動機十分の連続殺人に見えて来ます。容疑の濃かったスキナーを捕まえに行きますが、彼にはばっちりアリバイがありました。平和な村に住んでいると信じている村人は「この村に殺人などあるはずがない」と思っていて、ロンドンから来てしがらみの無いニコラスが客観的に見ても誰も耳を貸しません。これまでロンドンで激務をこなし、アドレナリン全開の緊張の中で暮らしていたニコラスの考え過ぎという可能性も否定できません。

間もなく殺人鬼らしき男がニコラスの前に姿を現わします。連絡を取り合っている者がおり、明らかに犯人は複数。もし花屋の女性の情報が確かだとすると、利益を受ける人間が複数なので、犯人の側が複数というのは十分考えられることです。手がかりを追ってたどり着いたのは近所を監視する会の会員たち。村でちゃんとした職業についているか店をやっている人たちです。なぜこんな立派な人たちが連続殺人を・・・とニコラスは訝ります。ちょっと前までの推理はどう関連するんだ、この人たちが受益者なのか・・・?消えた酔っ払いと若者との関連は?そんな人たちも含めた全員がバイパスの件で結びついているのか・・・?はて?

と考えているところへ犯人の側からはっきり理由が示されます。えええ???そんなことで???そこでこれまで助演、脇役だったダニーの事情が前に出て来ます。えええ???そんなことで???彼が悪いの???と驚愕の理由付けが行われます。

ここから急に推理小説風だったのがアドレナリン全開の大アクション映画に変身します。最近見た映画の中ではダイ・ハード4.0 のみがホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!を上回るアクション映画です。映画の冒頭で大量の武器を押収してあったので、銃も弾も十分あります。その上退屈し切っていた若い警官もやる気十分。ヒートを思わせる銃撃戦になります。

この話は全部冗談で、最後はハッピーエンドなのですが、でたらめに考えた筋ではなく、良くまとまっています。

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