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ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝 /
The Mummy: Tomb of the Dragon /
La Emperor Momia - La tumba del emperador dragón /
La Momie - La tombe de l'empereur dragon /
A Múmia - O Túmulo do Imperador Dragão /
A Múmia - Tumba do Imperador Dragão /
Die Mumie - Das Grabmal des Drachenkaisers /
Hamunaptra 3 /
La Momia 3 - La tumba del emperador dragón /
Mumien - Drakkejsarens grav /
Mumien: Drage-kejserens grav /
La Mummia: la tomba dell'imperatore dragone

Robert Cohen

2008 USA/D 112 Min. 劇映画

出演者

Brendan Fraser
(Richard O'Connell - 元諜報部員)

Maria Bello
(Evelyn O’Connell - リックの妻)

Luke Ford
(Alex O'Connell - リックとエヴェリンの息子、留学中)

John Hannah
(Jonathan Carnahan - エヴェリンの兄、上海のクラブの持ち主)

Jet Li/李連杰
(Han - 皇帝、古代)

Anthony Wong Chau-Sang
(Yang - 将軍、現代)

Michelle Yeoh
(Zi Juan - 魔女、古代)

Isabella Leong
(Lin - ジ・ジュアンとミンの娘)

Russell Wong
(Ming Guo - 将軍、古代)

Liam Cunningham
(Mad Dog Maguire)

David Calder
(Wilson - 教授)

Jessey Meng
(Choi)

Tian Liang
(Li Zhou)

見た時期:2009年1月

★ ミイラの由来

ドイツ語では《ミイラ》と言うとエジプトに関わるものに限られています。そのためスコーピオン・キングあたりまでは The Mummy や Die Mumie で構いませんが、舞台が中国になるとちょっと問題。日本語の《ミイラ》は土地に関係無く《保存されている死体》を指すので、中尊寺のミイラや中国のミイラに使っても大丈夫です。外国語で使われる《ミイラ》という言葉はアラビア語から来ていますが、日本で使われている言葉は《ミルラ》というエジプトのゴム樹脂に由来します。ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝に出て来るのは中国のミイラです。

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では死体が保存されているという意味でミイラとなるのですが、実際は古代の皇帝が魔女の呪いで鉄の固まりか石になってしまったものです。魔女とは言っても悪人ではなく、永遠の命について知識があったり、重傷の怪我人をあっという間に治療する力のある女性で、その力を悪用はしません。まあ、ケルト人のドルイド僧や中国の漢方医学を心得た人のようなものでしょう。

権力欲に取りつかれた皇帝に呼び出されて永遠の命の秘密を探る手伝いをさせられますが、その時に知り合った将軍との恋が災いして、将軍を失ってしまいます。自分も死にかけ、その時に皇帝に呪いをかけたため、ミイラ誕生。皇帝と同時に何万もの兵士もミイラになってしまいます。ハムナプトラはどれも御伽噺だという事を思い出して下さい。

美術の人が何を参考にしたのか分かりませんが、どことなく古い昔日本の天皇と一緒に古墳に葬られた埴輪を思い出させる雰囲気があります。

★ 全部見たぞ

話はハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝から始めますが、ミイラ・シリーズは全部見ました。スピン・オフと言われていますが、スコーピオン・キングも立派なミイラ・シリーズと言え、私はインディアナ・ジョーンズのようにムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝が4作目という見解です。

インディアナ・ジョーンズが私の印象では4作目で最高の出来に思えるのに比べ、ミイラ・シリーズは4作目で絶滅の危機に瀕したと思います。最初の2作の監督は制作に回っています。スコーピオン・キングでもソマーズ監督は制作に回っていますが、主演のドゥエイン・ダグラス・ジョンソンがミイラ・シリーズのスピリットを立派に継承していて、大いに笑えました。今後まだ2つか3つ作るという話もあり、少なくとも次回作はペルーのミイラの話になるとのことです。ソマーズ監督に再登場してほしいと考えているところです。

このミイラ・シリーズはボリス・カーロフの大ヒット作ミイラ再生のリメイクです。リメイクは今回のミイラ・シリーズのみではなく、カーロフ版と最新作の間に別なリメイクも作られています。

今回のシリーズの第1作ハムナプトラ/失われた砂漠の都は ブレンダン・フレイザーがジャングル・ジョージで成功を収めた後(私には成功に思え、今でも彼の代表作に数えています)、コメディー分野でコマをさらに一歩進めた作品でした。フレイザーはシリアス・ドラマでも非常に繊細な役をこなせる人ですが、ブロック・バスター常連の大スターは目指していなかった様子です。かといってコメディー分野に閉じ込められることも嫌い、適度にコメディーとシリアス・ドラマの間を行ったり来たりしています。

主演の2人が掛け合い漫才をやるので気に入っていたのですが、奥方を演じるレイチェル・ワイズはこの役があまり好きでなかったらしく、早くから降板が噂されていました。ハムナプトラ/失われた砂漠の都で見ず知らずの2人が知り合い、ハムナプトラ2/黄金のピラミッドで結婚し、息子が1人。スコーピオン・キングはこの一家抜きで話が進み、3作目のハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では叔父さんも含めて家族全員が登場します。

しかしワイズは降りてしまい、マリア・ベロがレイチェルの役をやっています。残念ながら合っているとは言えません。ベロは他の作品では良い演技を見せたり、役を正しく解釈しているので、彼女の責任なのかは簡単には言えません。

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では監督が交代しており、主演のフレイザーもあまり乗っていない様子です。

★ アジアの資源の無駄遣い

フレイザー、ベロだけではありません。アジアからは錚々たるメンバーが顔を揃えているのですが、これだけの国際スターや香港スターを何という使い方するんだ、と見終わってカッカしております。その俳優を私が好きか嫌いかの問題ではなく、それそれ確立した分野のある人たちで、使われ方がいいと、かなりな線が期待できる人たちです。

☆ ジェット・リー

海外に出ると悪役が来るジェット・リーはご存知(大陸)中国の誇るアクション・スター。子供の頃から武芸に励み、25年以上映画界にいるという名人。1998年からハリウッドにも進出。中国語圏では英雄、海外では悪役と演じ分けているのか、あるいはハリウッドは外国のスターには取り敢えず悪役をふるのか、他にもこういうケースが時々見られます。

いくつか作品を見ましたが、世界中から笑われても私にはブラック・マスクの悲劇的な役がぴったりに思えます。妙ちくりんなマスクをつけていたので笑われましたが、性格俳優とは言わないまでも、幸せでない男を良く演じていたと思います。

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では権力欲に取り漬かれた皇帝の役なのですが、権力欲、残忍さが十分に顔に出ていません。戦いのシーンも振り付けが見え見えで迫力に欠けます。特殊撮影も多く、彼がそこにいる価値が見えて来ません。もうちょっと使い方を考えた方がいいと思いました。

リーはちょっと前に見た時代劇、戦争物でも上昇志向の強い武士を演じていましたが、やはり欲でカリカリする役に向いていないように感じました。長いキャリアを常にトップで歩み国民的スターの地位を保っているのですから本当は権力志向が強いのかも知れませんが、演技をしている時にはそういう表情が現われていません。陰険な男の役にもあまり向いていない感じがします。同じ事はジャッキー・チャンにも言えます。2人とも中国でこれ以上上の地位は無いというぐらいの大スターになるまで頑張ったのに、人が良さそうに見えてしまうのが不思議です。私に人を見る目が無いのか、善人のままでもトップに上り詰めることができるのか・・・謎です。

☆ アンソニー・ウォン

インファナル・アフェア無間序曲終極無間であれほどの印象を残したウォン。何じゃ、この扱いは。彼は長い台詞もちゃんと言える俳優ですぞ。半分英国人なのでもしかしたら英語もちゃんとしゃべれるのではありませんか。ジェット・リーとはブラック・マスクで共演もしています。作品数はかなり多くて、私に1番印象に残っているのはインファーナル・シリーズ。

☆ ミシェール・ヨー

こういう名前なので香港人と思われそうですが、実はマレーシア人。香港映画にも出ます。1997年からハリウッド映画にも出ています。ちょっと前には環境問題にうるさい学者の宇宙飛行士という役でサンシャイン2057 に出ていました。

☆ イザベラ・リョン

彼女もこういう名前なので香港人と思われそうですが、元マカオ人。マカオは返還されたので、現在は中国人。歌と芝居の掛け持ちをやっていて、the EYE 3 などに出ています。

☆ ラッセル・ウォン

アメリカ人。アンソニー・ウォンと同じく半分欧州系の人です。ロミオ・マスト・ダイではジェット・リーと共演しています。日本人の役をやることもあるようです。

☆ ジョン・ハナー

最初の2作で個性を出していたのがジョン・ハナー。彼はフレイザーと一緒に3作に出ています。このシリーズはまだペルーのミイラに引き継がれるので、次回も出るでしょう。フレイザー、ハナーとの契約が成立するのならソマーズ監督を呼び戻さないと今後劣化します。

ハナーは英国人で、演技は達者。その彼にハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝でははしゃぎ過ぎの役を与えてしまい、彼らしさがなくなっています。

☆ ルーク・フォード

フレイザーの息子の役のフォードはオーストラリア人。そのためこれまであまり噂が聞こえて来ていません。俳優業に入ってからまだあまり時間が経っていないこともあるでしょう。68年生まれのフレイザーの息子を81年生まれのフォードがやっているので、それほど間違っているとは思えないのですが、2人の間にあまり大きな年齢差が見えないようなメイク、そしてフレイザーの役がちょっと大人気ないお父さんなので、どうも2人が父子という設定がしっくり来ません。マリア・ベロの息子というのもちょっと無理があります。

フォード自身はインディアナ・ジョーンズ的な冒険の役をきちんとこなしているので、フレイザー、ベロ夫妻の設定をもう少し年を取った風にするか、フォードをもう少し子供っぽくするしかなかったはずです。しかしフォードにはロマンスが絡むので、14歳の少年というわけには行かず、大学に行くぐらいの年齢でなければ行けません。1946年という設定で、当時の大学生を演じると、実際にはフォードの演じている青年以上に大人びていたでしょう。となると、フォードの両親の役の設定の方を変えるしかありません。

監督(脚本家?)はそのあたりをきちんと調整しておらず無理なまま通しています。

★ 特殊効果

ミイラ・シリーズは元から特殊効果、コンピューターを駆使して作ってあり、その事自体には文句はありません。しかし今回のコンピューターの作業はあまりにも型にはまっていて、おもしろくありませんでした。砂漠で砂が雲のように形を作って襲って来る方がおもしろいです。古代の中国人の兵隊がずらずら並んだり、埴輪のように硬直してどこかに収まっていたりするのですが、動きが画一的で楽しさが出ていません。

何万もの兵に襲われるフレイザーたちの対応も違和感が漂い、演じている人たちが全然乗っていないように見受けられます。アホなストーリーで無茶苦茶な理論だったザ・コアでも特殊効果が使われましたが、監督、スタッフ、俳優たちはオバカ映画をエンジョイしようと決心して取り掛かっていたようで、見る側には楽しい雰囲気が伝わって来ています。ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝でもその方針にすればかなり行けたのではと思います。特にフレイザーはあのアホ映画ジャングル・ジョージで特筆すべきアホな印象を残した人です。

★ 蛇足

過ぎたるは・・・と言いますが、余計な説明が入ってミステリー要素が殺がれてしまうことがあります。スパイ稼業を引退して悠々自適の生活を退屈しながら送っているオコンネル夫妻の所へ政府からもう1つ仕事を引き受けてくれと説得に来る男が話の発端です。しかし2人がスパイだったなんてこれまでのいきさつで気付いた人はいるだろうか、あるいはどこかで言われても覚えている人がいるだろうかと思いました。

レイチェル・ワイズは確か図書館で働いていたはず。エブリンの叔父のジョナサンが時々怪しげな行動を取って茶々を入れることで話がミステリアスになったり混乱していたわけで、あまりこの辺をはっきりさせない方がいいように思いました。

★ チベットを扱いたかったのか

最近世界情勢に呼応してチベットを直接、間接に扱う作品が出ます。ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では善玉、悪玉御一行がシャングリラに向かいます。

シャングリラというのはジェームズ・ヒルトンの小説失はれた地平線の舞台で、小説の中では理想郷とされています。ずっと以前から愛読している作品なのですが、映画失はれた地平線の《監督バージョン》 は失われたそうです。現在ではフィルムの一部や音声が残っているだけで、完全な物は無いそうです。

人の話によるとチベットのシャンバラがモデルなのだそうです。私の知っている話では欧米人が乗っている飛行機のパイロットが入れ替わっていて、予定のコースを大きく外れ、シャングリラという場所に来てしまいます。チベットだろうというのはこの小説を初めて読んだ時でも分かったのですが、山の上の人里離れた場所で、地理的な条件や人々の生活が描写されています。それだけでもかなりエキゾチックでおもしろいですが、その上にあっと驚く秘密が登場します。

リックたちの乗った飛行機は雪山に不時着するのですが、ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝のいくつかのシーンがこの小説を参考にしているなあと思えます。失はれた地平線の設定は映画監督を惹きつけるらしく、いくつかの冒険映画にぱくったと思われるシーンが出ます。欧米の植民地っぽい考え方をする人たちの会話が多いので、アジア側から見ると時々カチンと来ますが、それでもこの作品は出来のいい俳優と特殊撮影で再リメイクしたらどうだろうと思います。それほどシャングリラの描写が人を惹きつけます。

小説はヒルトンの知り合いの冒険談を参考にして書かれ、1933年に発表され、映画化は1937年のフランク・キャプラが最初です。時代が時代だったため政治との関わりが避けられず、どういう形なのかは分かりませんが反日宣伝にも利用されたそうです。キャプラはあれこれ批判を食ったり、上映時間を短縮する羽目になったりで、カッカしていたそうです。

時代は大きく変わり、現代では日本はあまり問題ではなく、チベットと中国の方が大きく扱われるようになっています。私もチベットは大丈夫なのかと去年からずっと心配しています。中国を誇る大スター、ジェット・リーがハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝では権力欲に取りつかれた2000年前の中国皇帝を演じ、2度命を落とします。その場所がよりによってチベットらしきシャングリラ。初映画化から70年以上経っても政治はついて回ります。

★ あらすじ

上に少し書いたように2000年前に権力欲に取りつかれた皇帝、忠実な将軍、魔女の間で揉め事があります。オトシマエは将軍は処刑、魔女は皇帝に刺されて瀕死の重傷を負ってチベットへ逃げ帰る、皇帝と万単位の数の兵士は魔女の呪いで石と化してしまうという形でつきます。

2000年後の1946年、半ば引退して退屈な生活を送っていたリック、エブリン夫妻は、政府から頼まれて上海へ考古学上重要な品を届ける役を仰せつかります。上海では重要人物が鉢合わせ。エブリンの兄がクラブを経営、そこにはエブリンたちの息子アレックスが顔を出しており、アレックスの信頼する教授も町で博物館をやっています。そしてアレックスを密かにつけまわしている中国人の若い女性。教授と通じている中国の軍部。

届けた品があると古代の呪いで石と化している皇帝を蘇らせることができるため奪い合いになります。で追っかけっこが始まります。ここからは殆どが鬼ごっこかドンパチ。夫婦喧嘩、親子喧嘩、カーチェース、万単位の槍などを持った兵士相手にピストルを撃つなど、演出のやりようによってはかなり愉快になり得ました。残念ながら今回はずさんな仕上がりです。混乱させるなら徹底的にやれば良かった、プロットをきちんとやるつもりならもう少しチェイスなどの時間配分に気を配れば良かったなどと愚痴がこぼれます。

ま、最後にジョナサンが手にした物が次のストーリーに繋がるので、そちらに期待しましょう。監督、戻って来い!

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