映画のページ

ダークナイト /
The Dark Knight /
Batman - El caballero de la noche /
Bianfu xia - Heiye zhi shen /
Batman - O Cavaleiro das Trevas /
Batman 2 - El caballero de la noche /
El Caballero oscuro /
O Cavaleiro das Trevas /
Il Cavaliere oscuro /
Le Chevalier noir /
The Dark Knight: Le Chevalier noir

Christopher Nolan

2008 USA 152 Min. 劇映画

出演者

Christian Bale
(Bruce Wayne - 青年実業家)

Michael Caine
(Alfred Pennyworth - ウェイン家の執事)

Morgan Freeman
(Lucius Fox - ウェインの会社の技術担当者)

Maggie Gyllenhaal
(Rachel Dawes - 検事)

Gary Oldman
(Jim Gordon - 警部補)

Melinda McGraw
(Barbara Gordon - ジムの妻)

Nathan Gamble
(James Gordon Jr. - ジムの息子)

Aaron Eckhart
(Harvey Dent - 検事)

Heath Ledger
(The Joker - 悪党)

Cillian Murphy
(Jonathan Crane - 悪漢医師、別名スケアクロウ)

Eric Roberts
(Salvatore Maroni - マフィア)

Monique Curnen
(Anna Ramirez - 警官)

Ron Dean
(Wuertz - 警官)

Chin Han
(Lau - 悪徳税理士)

Nestor Carbonell
(Mayor Anthony Garcia)

Ritchie Coster
(The Chechen)

Anthony Michael Hall
(Mike Engel)

William Fichtner
(銀行のマネージャー)

Edison Chen
(香港警察の関係者)

見た時期:2008年10月

後記: オスカーは亡くなったヒース・レジャーに行きました。演技は地味ですがいい俳優でした。バットマンでは珍しく派手な演技でした。それで目立ちオスカー候補に挙げられたのかも知れません。ご存知のように急死。周囲も納得して彼にオスカーをあげることにしたようです。今後の演技に期待というわけに行かないので、良い考えだったと思います。生きていれば恐らくバットマンを越える演技を見せる機会もあったでしょう。

★ 順序が逆でも楽しめる

先にダークナイトを見て、出来の良さに驚いてすぐ1つ前の作品を見てしまいました。ダークナイトを見終わって上映時間を知り唖然。かなり長いはずですが、気付きませんでした。

冒頭のアクション・シーンを見ただけですぐ引き込まれてしまいます。ストーリーは適度に複雑になっており、悪党ジョーカーの予想のつかない行動のおかげで十分ハラハラします。

★ ノーランの過去

ノーランはお気に入りの監督で、8作中5作を見ました。バットマン以外の作品は予算規模は小さいのですが、非常に良い出来のものがあり、どの作品もその辺の下手なブロックバスターよりずっとましです。

特にほとんどノーバジェットと言ってもいいほど節約して作ったメメントがぶっ飛びます。発想がユニークなだけでなく、ジリ貧バジェットが却って幸いし、セットや特殊効果以外の所に気合を入れ、説得力のある出来上がりです。連れて来た俳優も見た4作の中では群を抜いていいです。その次に良かったのがインソムニア。主演の1人だったロビン・ウィリアムズに目を見張ります。《コメディアンがたまにシリアス・ドラマをやると怖い》といういい例です。

バットマンはこれまで2作作ると監督が交代していますから、ノーランもここで止めるかも知れません。しかしちょっと惜しいなあと思います。クリスチャン・ベイルも健闘していて、警官、執事など常連の登場人物とのバランスを上手に保っています。ベテラン俳優の功績でしょう。もう1作ぐらい作っても私は文句言いませんが、どうでしょう。

★ 重要なのは悪党

バットマンで大切なのは悪党と前のページでも書きましたが、ダークナイト ではヒース・レジャー。なかなか熱演していますが、オスカーというほどではありません。しかし予想外の死でどうやらオスカーがもらえることに決まりそうです。そうなると死後受賞の2例目になります。

私には彼があと1、2回ジョーカーを演じればオスカーのレベルに達しただろうと思えました。レジャーに実力があることは以前から見当がついていました。ダークナイトを見た時点でレジャーが死んでいることは知っていました。熱演ではありますが、オスカーを取るほどの見せ場が用意されていなかったように思います。

オスカーでは俳優がその作品で名演技を見せることが重要ですが、俳優が実力が示せるような見せ場をスタッフが用意しないと賞には届きません。そういう意味では健闘したとは言え、レジャーがこれでオスカーというのはちょっと無理かと思いました。ここで良い所を見せておいて、あと1、2本頑張り、ある日彼のために書いたようないい脚本ができて受賞というのが、これまでの例に近いと思いました。さらに言えば、そういう役である年に取り損ねた場合、次の年にあまりパッとしない作品で受賞という例もあります。もしかするとバットマンでは再登場を予想して脚本家もレジャーも余力を残していたのかも知れません。

ところがレジャーが死んでしまい、次の年ということが不可能になったので、「じゃ、あげようか」という話になったのかも知れません。いずれにしろ、実力はそれなりにあった人なので、オスカーを香典にするのは親切かも知れません。クリスチャン・ベイルが代わりに受け取ったりすると盛り上がっていいですね。

ベイルは執事や刑事と共に輝く悪党を引き立てる役回りなので、ベイルがバットマンでオスカーということは恐らくは無いでしょうが、話題になるのは今後の発展のためにいいかも知れません。

★ ノーランの好み

偶然なのでしょうか、ノーランはオセアニアから来た俳優を主演に使うことが多いです。本人は英米人で、バットマンでは英国系の俳優も多用しています。スターを使わず役者、俳優というタイプを使うのも特徴。要するに筋に重きを置いているのです。せっかく多額の予算をもらえたので、では、ということでしょうか、バットマンではアクション・シーンも多く、セットにもかなりのお金をかけています。メメントインソムニアの後いきなりこういう大規模な仕事となると、切り替えが大変なのではと思うのですが、近年こういう切り替えを見事にクリアした監督が多いです。

★ 受難の俳優

最近バットマンに関わった俳優がトラブルに巻き込まれたという報道が続きました。

そのトップがヒース・レジャーの死。今年の1月でした。自殺とは言われておらず、睡眠薬などのカクテルだったとだけ報道されています。普段服用していた睡眠薬、安定剤、そこへ風邪薬も加わり、それぞれきちんと医者から処方されていたのですが、組み合わせるとまずいことになる時があるとは考えなかったようです。

ちょうど私生活で失望するような出来事があり、死亡の頃ベストなコンディションでなかったようです。御年28歳。それもあって「普通ならオスカーはまだくれないだろう」と書いたのですが、実力から言って「いずれは」と思っている人は多かったと思います。「ジョーカーの役は危ないぞ」とジャック・ニコルソンから注意を受けていたようです。ニコルソンはジョーカーをできるだけ漫画チックに受け取るように努め、お笑いにしてしまいましたが、彼なりの出口を探していたのかも知れません。レジャーは生真面目な人らしく、ちょっとまじめに取り過ぎたのかも知れません。その分説得力はありましたが、命を落としてしまっては行けません。

後記: 2009年夏にはマイケル・ジャクソンが似たような死に方をしました。ジャクソンも睡眠薬の常用がエスカレートしており、日本式の考え方ですと事故死。彼も自殺とは言われておらず、才能には恵まれていました。

それに比べるとまだいい方ですが、クリスチャン・ベイルは家族を巻き込んだ訴訟問題に巻き込まれ、モーガン・フリーマンは交通事故で重症。その時一緒だった女性が妻ではなく、夫妻は去年暮れから別居していて、現在離婚の準備中。

後記: ニーソンの夫人の受難の話も加わります。

★ 俳優の気合

・・・といった災難が撮影後重なっていますが、作品自体は150分を越える長さなのにまとまりが良く、久しぶりの佳作と言えます。前作から続投している人もいます。バットマンの周辺の人はほとんど続投で、交代が目立ったのはレイチェル。

☆ 代役になったレイチェル

トム・クルーズ夫人が紅一点という役どころで、スパイダーマンのダンストのような役割です。女性を可愛い、可愛くないで評価しては行けないという考え方もありますが、彼女抜きでこのストーリーを押し通すと、かなり暗く悲惨なムードになります。

その彼女、ダークナイトの撮影スケジュールが遅れたとかで参加できず、ギレンホールに交代。どことなく雰囲気が似ているので、ホームズがちょっと年を取るとこういう感じかなというタイプの女性に仕上がっています。若くて初々しい役どころがバットマンビギンズで、その後仕事をこなして行く検事という役に変わっています。

☆ バットマン周辺はほとんど続投

まずバットマンの執事のケイン、ウェイン社元重役のフリーマン、警官のゴードンを演じるオールドマン。ここで注目はオールドマン。

主演のバットマンが同じ人でほっとしました。変わったりするとイメージがずれてしまい戸惑います。クリスチャン・ベイルは何と3作連続でノーラン、ケインと仕事。バットマンはシリーズなので納得しますが、間にもう1つ作品が入っています

そしてゲーリー・オールドマン。ちょっと変わった人で、ある時イギリス人だと知ってびっくりしたものです。何しろ積極的にアメリカの大きな政党を応援しているのです。演じる役は狂人やエキセントリックな人物が多く、これまで全く平均的なキャラクターを演じたのを見たことがありませんでした。その分演じる役は印象に残るものが多く、負のキャラクター専門という感じでした。イギリスの俳優だとすると演じられる役の範囲はもっと広いのかなと思っていたところ、今回は珍しく善人で勤勉な刑事の役を演じています。

一見難しそうに見える異常者や狂人の役を何度もこなしてしまい、一般に知れ渡った後で、凡人を演じるのは逆をやるより難しいでしょう。オールドマンを知っている観客は当然ながら彼が何かやらかすだろうと思っているからです。

私の持論は「異常者や狂人の役の方が凡人より易しい」というもので、異常者なら普通と違う事をやるのが当然。それが普通の人と違ってさえいればどんな事をやっても観客は納得するので、好き勝手に演じられます。それに比べ一般人、凡人を演じる時は普通に見えなければならず、その枠内で観客を説得するだけの演技が求められるので、却って難しいだろうというものです。

それに加えエキセントリックな役で一般に知れ渡ってしまった俳優が後になって普通の考え方をする人物を演じるとなると、「今日演じるのは普通の人なんだ」という点で観客を納得させ、その上好感の持てる人物に見えなくては行けないので、二重の負担にはならないだろうか・・・などと考えていたのですが、当のオールドマンはさっさとこなしてしまいました。

ケイン、フリーマンはそれほど難しい役ではありませんが、手を抜かずきっちり演じています。この2人を見ていると、ランクでは似たり寄ったりのベン・キングスレーよりは実力があると感じます。

敵の方ですが、今回はヒース・レジャーが大活躍。上に書いたように遺作に近いことになりました。もう1つ撮影していた作品があるそうですが、バットマンは幸いなことに撮り終えていました。オスカーがどうのと書きましたが、そういう話を別にすれば、気合が入っています。

悪人の側では出番は少ないのですがスケアクロウのキリアン・マーフィーが登場します。彼はバットマンビギンズでは大活躍でした。

3作目をやるつもりなのかは分かりませんが、噂は出ています。主演の周辺がきれいに固まっており、気合は入っていても気負い過ぎが無く、私も珍しく3作目に賛成です。

ヒース・レジャーを死なせず、どこかで登場させることができれば良かったですが、彼自身の登場は不可能になってしまいました。気合の入った演技を代行する人が見つかるかどうか。それをするぐらいなら別な役を登場させた方がいいと思いますが、作る側もそういう流れになっている様子です。

俳優に気合が入っていながら観客を緊張させないためにはかなりの経験か才能が必要ですが、ここまでの2作はそれができているように思います。

★ もう1人の悪役

元からの悪役はヒース・レジャー演じるジョーカーで、これはジャック・ニコルソンが演じた由緒正しい役。もう1人バットマンの中では比較的知られている悪役がいます。2つの顔を持つ男デントで、ダークナイトではアーロン・エッカートが演じています。前半はレイチェルと同じ職場で、一緒に悪と対決する役割。ところがあるショックをきっかけに悪に目覚めてしまい敵になってしまいます。

そのきっかけが語られるあたりで体に火がつき、重症の火傷を負うのですが、現実と非現実が混ざり合ったシーンです。画面に出る程度では後で病院で見るような大きな傷にはならないだろうというのが非現実的かと思える点。映画には出ないけれどもっと大変な事も起きていたんだということならまあ納得します。逆に何かの出来事で非常に重症を負うとああいう感じの傷も考えられるとは思いました。ただし、そういう傷のまま町中をふらついたりすることはあり得ないだろうということでまた非現実的。

火傷で1番医師が真剣に気にするのが感染症です。傷が開いたまま町をうろつけないのはもとより、病院内でも隔離されているはずです(伝染病の場合は患者が他の人に移さないようにするために隔離しますが、外科の重症患者の場合は患者に一般人の持っている菌が感染しないように隔離します)。しかしデントが顔に乗っけている湿布のようなガーゼはまた現実的で、傷口が乾いたりしないように乗せてあります。包帯をミイラのように巻いたりせず、またバンソウコウで貼り付けたりしていないところが本当っぽいです。火傷に関してはこれまで映画でかなりいんちきなシーンを見たので、ちょっと感心しました。しかしまたここで変だと思うのは、デントほどの緊急、重症の患者の病室に病院関係者でない人が訪ねて来られる点。これほど重症なら訪ねる人は病院指定の服を着て、滅菌していないとだめです。

まあ、現実味を持たせようと努力の跡は見られます。

★ ストーリー

普段ならここからストーリーの紹介に入るのですが、最近時間が無く、そこまで手が回りません。これまで書いてきたようにできのいい作品なのでご自分でご覧になって下さい。

★ 結論

途中で何度も書きましたが、このスタッフ、キャストでもう1本ぐらいは見てみたいものです。安上がりにしないために、数年間を置いて、出来のいい脚本を作ってからでもいいです。こちらは待ちます。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ