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2011年6月26日 - 7月17日 ドイツ開催
出場選手
海堀あゆみ (GK)
福元美穂 (GK)
山郷のぞみ (GK)
近賀ゆかり (DF)
矢野喬子 (DF)
上尾野辺めぐみ (DF)
岩清水 (DF)
鮫島彩 (DF)
田中明日菜 (DF)
熊谷紗希 (DF)
沢穂希 (MF)
宮間あや (MF)
川澄奈穂美 (MF)
阪口夢穂 (MF)
宇津木瑠美 (MF)
安藤梢 (MF)
丸山桂里奈 (FW)
大野忍 (FW)
永里優季 (FW)
高瀬愛実 (FW)
岩渕真奈 (FW)
佐々木則夫 (監督)
見た時期:2011年7月
★ サッカーの表彰式が無かった!
えええ!!!表彰式が放映されなかったんですって?
知らなかった!
下に書いたように決勝に近づいて初めて女子サッカー・ティームの功績を知り、慌てて注目したので、あまり強く言えないのですが、日本では表彰式が放映の際カットされていたと聞きました。
もちろん何で???と思いますが、私もちょっとさびしいなと思ったのは国旗も君が代も最後は無かったこと。私は表彰式を見ながらそのことの方を考えていました。これにはしかしちゃんと答がありました。まずそちらからご紹介。
★ 最初は真面目に、最後はパーティー気分
勝った後は日米とも国旗も国歌もありませんでしたが、始まる時にあったようなのです。
ご存知のように私の所はインフラが整わず、この時大慌てであれこれやっていたので、男子の時のように番組の始めからゆっくり見る事ができませんでした。しかし対戦前に両国の選手が集まり、そこで両国の国旗が掲げられ、国歌も演奏されたようなのです。どうやら歌詞は無しでメロディーだけですが、どちらも厳かな感じで、お互いを尊重した上でイザ戦闘開始・・・という運びだったようです。
試合が終了して、片方のチームが悔し涙を流す時にはその気持ちを逆なでしないためか、国旗も国歌も無しで、いきなり表彰式でした。
ここからが国内で普通の局からは放映されなかった部分らしいのですが、私は最後ぎりぎりでインフラが正常化したのでばっちり見ました。11メーター(PK)と表彰式だけまともに見られたと言っても言い過ぎではないほど、試合自体は見るのに苦労しました。
表彰式は男子でおなじみですが、フェア・プレー賞や得点王などにトロフィーが与えられ、2位のティームに銀メダル、そして1位のティームに金メダルと優勝トロフィーが与えられました。
何しろ初めてだったのでまだ沢が凄い選手だという認識はありませんでしたが、キャプテンだということで優勝トロフィーを受け取ったのは無論沢選手。その前にフェア・プレイ賞を受け取りに出たのも沢選手。得点王も沢選手。
★ 後日談もついでに
間もなく月末、試合が終わって1週間以上経ちましたが、ある日医者に行ったら、受付の女性が「そなたは日本人であるか」と訊くので、「いかにも」と答えたら、「日本選手は凄かった」と言われました。始め何の話かと思ったら、女子サッカーのことでした。この診療所はこの日生まれて初めて行ったのですが、見ず知らずの私にその人は自分の興奮を語りました。ドイツは今回の勝利に一般的には冷ややかなのですが(日本に粘られて負けたのだから仕方ない)、下に書いたように日本のユニホームを来たドイツ人を見かけたり、町の一部は日本を評価しているようです。
最後の試合はドイツがレフェリー以外入っておらず、フランクフルトで行われたので、ベルリンはそれほど大騒ぎでなかったようですが、フランクフルトはどうだったのでしょう。
なでしこJAPAN という名前を知ったのは去年か今年。日本人の女子サッカー・ナショナル・ティームのニックネームだそうです。日本の女子ティームが国際試合に初出場したのが1981年なので私が知らないのも当たり前。少し前日本を発ち、ドイツで生活を始めたばかり。安アパートに1人で住み始め、テレビ無しの生活は日本で慣れていたので無いまま。知人が気を利かせて壊れかけで国営の第2チャンネルしか入らない大きな白黒テレビを譲ってくれましたが、勉強が忙しく、どんな番組があるかも知らないので、殆ど使わずじまい。ましてサッカーなど男の選手でも無関心。
私のサッカー歴はこういう風にして始まりませんでした。
★ 無知もいいところ
インターネットのニュースでなでしこジャパンという名前は聞いたことがありました。女性がサッカーをするという話はベッカムに恋してを見て知っていましたし、何でも男のする事はやってみようというドイツ女性が「男もすなる、蹴鞠といふものを、女もしてみむとて、するなり」と考えるのは時間の問題と思っていました。先駆者は発祥の地英国で、前々世紀に始まります。しかし今のようになるまでには紆余曲折があり、まだ女性が地面に届くような長いスカートをはいていたり、着物が普通の衣類だった時代にはいきなりサッカーというわけにも行かなかったのでしょう。女性のサッカーが本格的になる前に女性の地位がある程度男性と並ぶようになる必要があったようです。というわけで発展が本格化したのは1960年頃から。意外なことに西欧、アメリカはスタートが遅れています。
私も高校で男子が盛んにサッカーをするようになったり、テレビ番組が作られた時代に成長したので、釜本の名前を知っており、日本にベッケンバウアーとミュラーが来日して友好試合をしたなどという話は自分の経験として知っています。これが60年代から70年代にかけての話。女性の話はまだ聞いたことがありませんでした。どうやら FIFA が女性の方も認め始めたのが70年代初頭。なので私が知らないもの当たり前。女性自身が組織などで頑張り始めたのは80年代後半だったらしく、私は日本にいませんでした。FIFA が女子ワールドカップを始めたのは90年代から。そんな事私が知るわけもありません。
私に取ってサッカーは遠い世界。ドイツ人が大騒ぎするのを横目で見ていただけ。ですので男性のサッカーに注目したのもつい最近の話です。ですので女子サッカーなんて、まだアマチュアみたいなものだろうと思い込んでいたのですが、あるきっかけで急に私の目に飛び込んで来ました。
★ 町でふと見かけた
7月に入ったある日、町を歩いていたら乗用車のサイドに小さな国旗を掲げた車が。ベルリンではこういう車が走るのは、サッカーの国際試合が行われる時だけ。小さな旗を左右の屋根に取り付けて走る車が増えます。男子の世界選手権や欧州選手権の時は町じゅうにそういう車が走っています。この日見かけたのは1台でしたが、「なんじゃこれは」と思ってインターネットを見てみました。すると何と日本がドイツを倒していたのです。ということはこの車はドイツを応援していた応援団の燃えかす。お気の毒に・・・。とは思ったもののちょっと信じられませんでした。
だいたい日本女性がランクのどの辺にいるのかも知らず、男子やその辺の映画などを総合するに、英国やドイツが強豪なのだろうと勝手に想像していたので、まさか日本の女性がドイツを破って準決勝に出るとは思っていませんでした。次がスウェーデンだというのはこの時知ったのですが、スウェーデンも強豪に思えました。とは言っても私には何の予備知識も無かったので、まさに独断と偏見。
そして驚いたの何の、日本はスウェーデンも破ってしまい決勝進出。さらに驚いたのは当たる相手がアメリカだということ。アメリカ人というのはアメリカン・フットボールが大好きで、サッカーは屁とも思っていない国だと思い込んでいたのです。しかしまあ男子は最近ちょっとサッカーに力を入れ始めているので、女性もその気になったのかとは思いましたが、まさか世界一をこれまで2回取っており、初回の優勝国だったなどとこの私が知るわけもありません。
その上、日本は1999年にアメリカに9点の差をつけられて、日本が持つ対戦最悪記録2つのうちの1国がアメリカだったという事を後で知りました。私は鬼畜米英とは言いませんが、こうもけちょんけちょんにやられると、ムカッと来ます。
そのアメリカと同じぐらいドイツが強いのはまあ分かるとして、ドイツが3連勝を狙うのも想像がつくとして、それを日本が下すというのは想定外でした。
★ たとえ女子でもドイツは真剣
何となく強そうだと思っていたスウェーデンを下し、アメリカとの大戦、失礼、対戦が間近という日、近くの薬局に行ったら、おまけがおいてありました。ドイツは薬品が高いので、買いに行くとティッシュペーパー、試供品などおまけをくれます。重要なサッカーがあると、ハンザプラストが数枚入った小さな紙の入れ物をもらえます。表にはサッカーの写真が。そのケースを開けると、サッカーの対戦相手がずらっと並んでいて、どこかの国が勝つたびに勝敗を記入できるようになっています。それが薬局に置いてあるということは、現在重要な試合が行われているということです。つまり、ドイツの人はわざわざそういうおまけを印刷してただで配るほど重要な試合だと思っているということです。なので旗をつけた車が走っているのも当然。知らないのは私1人・・・。
★ いよいよ決勝戦
とは言え、決勝の前にそういう重要な試合があることが分かり、日本が最後まで残っていることが分かり、17日を楽しみにしていました。日本の方にはお気の毒。しかしドイツではゴールデン・タイムに放送されます。
うちはインフラが整っておらず、テレビがありません。ですので近くの飲み屋に行って大型スクリーンで見ようかと思ったのですが、あいにく雨。ですので家で FIFA が公認した放送局のライブをインターネットで見ようと準備をし始めました。最初は上手く入ったのですが、1度切り替えたらそれ以降はトラフィック・ジャムになっていたらしく、ひどい画面と音質。諦めずましな接続を拾おうとしながら、音声はラジオに。画像がよく見えないので試合状況はインターネットのテキストによるライブを読みながら。考えられる限りの最悪のインフラでしたが、それでも試合がどうなっているかは分かります。
★ 無気力戦
実は両チームとも気合が入っていたのですが、試合運びは無気力戦かと思えるほど進まず、アメリカがボールを長い時間握ってはいましたが、点数は全然入りません。どちらも顔の表情は冴えず、有体に言えば厳しい試合でありながら見ている方は退屈。前半は無得点。
インフラの状態が直らないまま後半戦へ。後半も半分ぐらい終わり、相変わらず見る方に取ってはいささか退屈な状態。そこへ突然アメリカが1点決めてしまいました。その頃までに解説者のコメントからアメリカは世界一強いティームで、ドイツが2位。日本は4位で、スウェーデンは5位であることが分かりました。日本は意外と上の方なんだ・・・ふむふむ。しかし優勝は米独でほぼ独占状態ということが分かりました。日本が4位というのは意外でしたが私が知らなかったのも無理ありません。世界ランクが4位でも、FIFA の女性サッカーが始まってからまだ1度も4位以内に入ったことがなかったからです。常連の米独、3位にはなったことのあるスウェーデンの方が分がいいのは確か。ですので、日本はこれで終わりか、まあ、初めてこんなに上まで来たのだからそれだけでも快挙・・・などと思い始めた後半36分目。
★ 気力戦
日本がゴールを決めました。ドイツでは「トア、トア!!!」と絶叫することになっているのですが、アナウンサーはわりと冷静。
私は土俵際で1点返したのは偉いとこれまた冷静に受け止めました。聞こえて来る解説などを総合すると、日本はここまでの道のり、タナボタとは程遠い粘りの試合で来ているようでした。ドイツ戦は延長戦。スウェーデン戦は負けていたのを後で逆転。
後半でアメリカに追いついてしまったので、またもや延長戦。延長前半でアメリカが1点入れたので、また「これまでか」と思った私ですが、何と延長後半でまた追いついてしまいました。喜んだの何の。やたら背の高い選手を相手にどこまで体力が持つのか分かりませんが、11メーター(PK戦)なら互角。それまでに日本のゴールキーパーがオリバー・カーンの弟子かと思うような人だと分かっていたので、これは勝ち目があると思い始めました。そして3本目を決めるかもしれない熊谷の顔を見た時は、行けると感じました。彼女が入らなくてもまだ日本には余裕がありましたが、この女性の顔には何かここで1点入れるという気概が見えました。
色々な情報はこの日の解説者のコメントから入ったのですが、日本が勝つとは誰も思っておらず、勝敗がついた後ややしらけた感じでした。私は日本人なので大喜びですが、ドイツの放送では皆半歩引いたような、ストレートな祝福でないような印象が残りました。優勝した大和なでしこもどことなく押さえが効いたような喜び方。
私はそれを見てプロだなという風に感じました。これでいいのです。勝ったんだ、そして顰蹙を買うような荒れた試合にはならなかった・・・。そして何よりも私がいい印象を受けたのは、震災ボーナスとは言えないところ。震災があったので、確かに同情票はいくらかあったのかも知れません。しかし延長戦や11メーターに持ち込んでおり、逆転もしています。つまり、誰かにプレゼントされた点ではない。取られてしまってから取り返している、あるいは粘りに粘って相手に点を入れさせなかった。ご祝儀相場ではない。
男子の試合を見ての話ですが、日本の女性たちはまだ攻撃力はそれほどついていないように思えます。相手に点を入れさせない守りは良かったと思います(最終戦しか見ていないのでその範囲の話です)。特に光っていたのはゴールキーパー。彼女にはオリバー・カーンに近い才能があり、それがちゃんと試合で使われています。ですので彼女にベスト・ゴール・キーパー賞が行かなかったのは残念です。
しかし大量得点の賞だけでなくフェアプレー賞も来たのはうれしかったです。東北の人と同じで日本がきちんとルールを守るところを見せてくれ、それがこういう場で認められたのは、国の誇りと言えます。
★ 最後に回復したインフラ
トラフィック問題が解消したのか、11メーターに入ってからインターネットのライブがよく見えるようになりました。ですので、ゴールキーパーの活躍がとてもよく見えました。それで彼女がオリバー・カーンの後を追っている才能あるキーパーだという話ができます。もし最初からよく見えたら、もっと他の選手の才能も見えたかも知れません。
★ どことなくドイツのティームと似ている
はっきりどこがと言えないのですが、クリンツマン指揮下の新生ドイツ・ティームが誕生した頃とどことなく似ています。ドイツはクリンツマン監督の時、若い選手を発掘し、大胆に使い、ドイツのサッカーをがらっと変えました。クリンツマン監督は続投する意思が最初から無く、何度も説得されましたが、アメリカに戻ってしまいました。しかし彼は最初から副監督を置き、監督方法を指南していて、現在はその監督で機能しています。
当時ドイツでは新しい手法のクリンツマンと古い人たちの間に大きな確執があり、メディアは大騒ぎしていましたが、クリンツマンが国を盛り上げ若い選手が生き生きとしているのを見て、世間の方が先に納得してしまいました。
日本の女子は日本人からは応援されていて、国内ではそれほどトラブルは無かったようですが、まさか優勝すると思っていなかったのは私1人ではないと思います。選手に使われるお金も大きく削られてしまったという話が優勝直後から聞こえて来ましたし、楽な道のりではなかったようです。にもかかわらずなでしこが日本人にもたらしたフレッシュな雰囲気は、ドイツが新生チームに生まれ変わった瞬間と似ています。
外国のメディアは熱狂でもべた褒めでもなく、まずは勝者がドイツでもアメリカでもスウェーデンでもないという現実を飲み込まなければ行けなかったようです。短い間を置いて誉め言葉が出始めました。本当はここ1、2回ベスト4やベスト2まで来させて、いずれはまあ1回ぐらい優勝させてやろうぐらいに思っていたのかも知れません。日本もそう思っていたのかも知れません。しかし選手たちはまだ体力があるのだから、まだ時間が残っているのだからと頑張ってしまった・・・。その時の雰囲気に呑み込まれなかった、私はここに勝利の理由があると思いました。そこがプロ。
★ お先に失礼
「男もすなる、日記といふものを、女もしてみむとて、するなり」などと女のふりをして日記を書いていたのは実は男。「男もすなる、蹴鞠といふものを、女もしてみむとて、するなり」と鞠を蹴り始めたのは女性。ちょっと真似をして見たら男性より先に世界一になってしまった・・・。
★ 翌日のベルリン
ドイツは早々と負けてしまったので、決勝の日には旗をつけた車は見かけませんでした。まあ、そんなもんだろう、日の丸を持っているドイツ人などいるはずもないしと思っていたのですが、意外な出来事が。
翌日、用があってバスに乗っていたのですが、井上さんがこちらに来た時に宿を取った目抜き通りの停留所でなでしこのユニホームを着たドイツ人らしき若者が乗り込んで来たのです。驚いたのなんのって。ワッペンから何から何まで日本選手のトリコーと瓜二つ。ベルリン人ではなく、ドイツ人だとすれば他所の町から来たような雰囲気の人でしたが、確信犯的に日本のユニホームを着て堂々とバスに乗り込んで来ました。
少なくとも世界に1人外国人の男性のなでしこファンがいることを確認した瞬間です。
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