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Non-Stop: Sin escalas /
Sans arrêt

Jaume Collet-Serra

UK/F/USA/Kanada 2014 106 Min. 劇映画

出演者

Liam Neeson
(Bill Marks - エアー・マーシャル)

Julia M. Ebner
(Olivia Marks - ビルの娘)

Anson Mount
(Jack Hammond - 2人目のエアー・マーシャル)

Julianne Moore
(Jen Summers - マークスの隣の乗客)

Scoot McNairy
(Tom Bowen - 犯人と疑われた男)

Nate Parker
(Zack White - コンピューターのシステム分析士)

Corey Stoll
(Austin Reilly - ニューヨーク警察の警官)

Linus Roache (David McMillan - 機長)

Jason Butler Harner
(Kyle Rice - 副操縦士)

Michelle Dockery (Nancy - スチワーデス)

Lupita Nyong'o (Gwen - スチワーデス)

Cameron Moir (スチワード)

Omar Metwally (Fahim Nasir - 医師)

Shea Whigham (Marenick - マークスと話す捜査官)

Quinn McColgan (Becca - 1人旅の少女)

Corey Hawkins (Travis Mitchell - すぐ言う事を聞かない乗客)

Frank Deal (Charles Wheeler - 犯人扱いされる乗客)

Bar Paly (Iris Marianne)

Edoardo Costa (Herve Philbert)

Jon Abrahams (David Norton)

Amanda Quaid (Emily Norton)

Beth Dixon (トイレに入った老女)

Lars Gerhard (ドイツ人の父親)

Oliver Lehne (ドイツ人の息子)

Michael Thomas Walker (Michael Tate)

見た時期:2014年8月

要注意: 結末を含むネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ スペインの映画

監督は最近絶好調のカタロニアの映画人。ファンタにも作品が来ていますし、ニーソンと組んだ アンノウンも彼の作品です。これまでの作品に比べフライト・ゲームはテンポもパワーもアップしています。犯罪映画ですが、犯人も動機も上手に隠してあり、後半の後半になるまで分かりません。加えて飛行機を何とか救わなければならず、乗客を無事に着陸させることができるかというスリルも加わり、手に汗握るという言葉がぴったりの作品です。最近ダメな作品が増えている中、この作品は久しぶりに元気な映画だという印象を受けました。

英米、カナダ、フランスなどが出資しており、スペインは関係ありませんが、監督はカタロニアの人で、カタロニアからは近年スリラー、SF、犯罪、幽霊など様々なファンタ向きのジャンルの作品が出ています。主演には彼のために脚本を書いたのかと思えるほどぴったりのリーアム・ニーソンを再び迎え、英語圏仕様になっています。所謂ハリウッド映画に比べ《お約束》が少なく、出演者も顔だけ見てこの人は怪しそうだ、この人は善良そうだと最初に思っても、見事に予想が外れることがあります。他の作品で普段善人、悪人を演じているからという事では判断できません。その辺はハリウッドに比べ欧州のお金が入っていると大人向きの決着が期待できます。

★ 絶好調のニーソン

リーアム・ニーソンはヴァネッサ・レッドグレイブの娘と結婚。子供も2人得、結婚生活は10年以上持っていました。喧嘩をしたと言う話も無く、幸せそうだったのですが、ある日突然夫人が事故死。休暇中に頭をぶつけ、家で強い頭痛がし、そのまま入院。昏睡状態に入り本人の希望で死亡。無理な延命はしないでくれと事前に言ってあったそうです。これには母親のレッドグレイブも夫のニーソンもかなりの衝撃を受けたようで、私も暫くニーソンは引退でもするか、舞台俳優にでもなって世間に出て来なくなるかと思いました。

ところが、彼女の死後仕事では絶好調。そして私はまさか彼がこの年でアクション・スターになるとは思いませんでした。それも時間を限られた犯罪映画で。シナリオがしっかりした作品に出るようになり、犯罪映画の中でも質がいいように感じます。同世代の私としてはこんなおっさんがアクション・スターに生まれ変わったのだから自分も頑張らなくちゃと思います。

主演としての彼の良さは、よれよれのくたびれ切ったおっさん状態から「こりゃまずい」とか「なんだか変だ」と気づいて、頑張りを見せる所です。そういう作品が多いですが、彼と同世代の人間としてはそこに共感を覚えます。

★ 謎の本質が後半まで見えない

事件はニーソン演じる主人公マークスがロンドン行のボーイング767に乗り込むところから始まり、緊急着陸で終わります。

マークスはよれよれのおっさんで、職業はエアー・マーシャル。しかし冒頭の1分間で彼の調子は最悪、子供を無くし、現在はアル中状態、仕事をする気もゼロという事が分かります。このシーンの脚本の手際の良さは見事です。元々はニューヨーク警察勤務だったようですが、へまでもして左遷された様子です。

この機には彼の他にもう1人エアー・マーシャルのハモンドが乗り込んでいて、2人は拳銃を携帯しています。その他に普通の乗客としてニューヨーク警察の警官ライリーも搭乗。アラブ人の医者も乗っていて、事件に巻き込まれます。

飛行機が離陸して間もなく、マーシャルは匿名のメイルを受け取ります。金を言われた通りに送金しないと20分ごとに客を1人殺すという予告。そして皮肉なことに犯人と思しき人物が同僚のハモンドだと思えて来ます。マークスは彼と格闘になり、殺してしまいます。これで予告通り1人死亡。彼は何者かに脅迫されて、アタッシュケース一杯の麻薬を機内に持ち込んでいました。

送金が無ければ20分おきに1人ずつ殺すという脅迫内容なので、これだけで終わるはずはありません。相手側の要求で金を振り込む先はマークス自身の口座。という事は彼に疑いがかかっても仕方ない状況。彼は娘の死後生活が荒れ果てていて、職場でも必ずしも評判のいい人物ではありません。

脅迫が来ている事はパイロット、スチュワーデス、当局に伝えてありますが、当局はマークスの言う事をなかなか信じず、送金などもっての外というスタンス。マークスは機内で眠らずスマホをいじっている乗客をあぶり出し、名前をチェックして行きます。しかしそうこうするうちに時間切れで次の犠牲者が。よりによって機長。アラブ人乗客の医者を呼んで聞いてみると毒殺の様子。

経過説明を受けていない乗客の中にはマークスに機がハイジャックされたと考える者も出、911の時のように乗客が協力して犯人を取り押さえなければ行けないと考え、相談を始めます。当局の方は大金の振込先がマークスの口座なので彼がハイジャック犯ではないかと考え始めています。乗客の中には機内の様子をスマホで地上に送信する者も現われ、マークスが怪しい、いや、犯人だという風に話が進んで行きます。

しかしマークスの隣に座った乗客のサマーズの機転で、乗客の1人ホワイトがコンピューターのシステム分析士だという事を聞きつけ、マークスの指示を受け、機内でスマホを使って彼に連絡して来るのが誰かを探り始めます。その結果ウィーラーという男に疑いがかかり、ウィーラーはマークスに拘束されます。ところがウィーラーは20分目に口から泡を吹いて死亡。本人は生前「あれは自分の携帯ではない」と主張していました。

操縦室という言わば密室で殺された機長は、外から穴があけられ、そこから撃ち込まれた針の矢のような物で死んだらしいという事をマークスが発見。ウィーラーも似たような手口で殺された様子。

息をつく暇もなく、次は機内に仕掛けられた爆弾が爆発するという方向に話が進みます。私もここは気づいたのですが、爆弾はコカインの隠された鞄の中にありました。なあるほど、1つの犯罪の証拠を見つけてしまったら、普通その中にもう1つ何かが隠されているとまでは疑いません。うまい脚本だなあと思いました。また、エア・マーシャルなら武器を機内に持ち込むことは許されていますし、空港のチェックもあって無きがごとし。爆弾も持ち込もうと思えば一般の乗客よりはやり易いでしょう。

アメリカ本土や欧州なら緊急着陸し、乗客を避難させて爆発物の処理をすればいいのですが、大西洋を横断中の飛行機ではそう簡単に着陸はできない。その上爆発まで30分しか残っていません。次善の策としてマークスは爆弾を後部に移し、乗客は前の方に移動させ、爆弾の上にたくさんの荷物を乗っけて爆発力を弱めようと考えます。加えて高度が8000フィートを切ると、機内と外の圧力差が小さく、損害が少なくて済むと考え、副操縦士や当局に機の高度を下げるようにと説得しますが、誰も彼の言う事を聞きません。仮にマークスの話を信じたとしても副操縦士はマークスと当局の間で板挟み状態。

マークスを犯人と考えた乗客はついにマークスを襲い、マークスはあわや命を失うという所まで。しかしようやく状況の説明をしたため、彼に協力しようという人が出ます。また、地上にビデオを送信していた少年の携帯を取り上げて、画像を見た時に誰がウィーラーに濡れ衣を着せたかを発見。ついに真犯人が判明します。それは1度疑いが晴れたはずのボーエンという男。父親が2001年の同時多発事件で命を失ってから政府に恨みを持っていました。あの時セキュリティーの網をかいくぐっていくつもの飛行機をテロに使わせてしまった落ち度を責めています。つまり金の問題ではないわけです。共犯者は携帯のネットに詳しいホワイト。2人はちょっと前まで兵士でもありました。

2人がマークスと言い争っているうちに意見の相違が。ボーエンは自爆の覚悟もありますが、ホワイトは生き延びるつもり。2人はパラシュートを用意しています。首尾良く仲間割れを起こさせることに成功。とは言っても機内で発砲されるので観客は気が気ではありません。

ボーエンがホワイトを撃ち、マークスがボーエン相手に忙しいちょうどその時、空軍の飛行機にスクランブルをかけられたかのように左右に並ばれ動きが取れず、当局からも高度変更を禁じられていた副操縦士は、「ええい、どうにでもなれ」とばかり、マークスの言う通りに高度を落とし始めます。と同時に荷物で囲まれていた爆弾が時間切れで爆発。急に根性を見せ始めた副操縦士は必至でアイスランドに着陸を試みます。爆弾で穴が開いたまま着陸を試みる飛行機の様子は、ハワイで屋根が吹っ飛んだ飛行機の着陸を思わせます(アロハ航空243便)。

マークスは奇跡のようにボーエンの頭を吹っ飛ばし、ボーエンに撃たれた時は怪我だけだったホワイトは爆弾と一緒にさようなら。

ハッピーエンドではありますが、そこに至る道が紆余曲折だったので、見ごたえがあります。出来事が複雑で、なかなか犯人が分からないところはさすがと思いますが、犯人たちの動機と人柄の描き方が(脚本)やや軽く、あそこまで見事にマークスを振り回し、どちらの側についているか判然としない共演者を揃えてあるので、最後ももうちょっと重くしても良かったかなと思います。とは言うもののかなり後になるまで犯人も動機もばれないので、楽しめます。

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