映画のページ
2015年12月
以前夏のファンタが終わった後にアジア特集があった年がありました。今年は夏のファンタには間に合わず、次の春のファンタには遅過ぎる時期に出る作品を集めた白夜祭が行われます。
夏のファンタは観客に取っては過去よりたくさんの作品が見られるように変更されましたが、主催者側から見ると参加作品が若干減っていました。その埋め合わせのつもりもあったのかも知れません。友達に会う機会が1回増えるので、そちらも楽しみです。
形式は春のファンタと同じで、12月の週末2日間開催。参加作品は恐らく10本でしょう。そうだとすると出揃いました。
なお、開催時期がボンド映画などメジャーの新作と重なるらしく、ハンブルクでは会場が確保できず、ハンブルクだけ開催されません。
仕事、健康、そこへ井上さんのパソコンの急病も加わってアップが遅れましたその間にファンタも終わりましたので、予告から結果までをまとめて出します。
主催者は正直な人たちで、開催直前まで通しのパス以外はほとんどティケットが売れておらず、大失敗になるのではないかと心配したそうです。通しのパスは前金なので、数十人が買えばとりあえず会場を押さえるお金は出るのですが、やはり座席が全部埋まってくれる方がいいわけです。
そこへ11月にパリでとんでもない事件が起こったので、大勢の人が集まる場所を避ける傾向が出るのではないかという普段無い要素も加わっていたので、主催者の危惧は理解できます。
実際私自身が町を歩いてみると、クリスマス市場の人出が例年の半分ぐらいの印象を受けます。フランス人は直接攻撃を受けた国なのでリベラル派が怒り、是が非でもテロに屈せず町に繰り出すぞという意気込みだそうですが、ドイツ人はちょっと感じ方が違います。根拠のある危機に際しては家族や友人の身の安全を第一に考える冷静さを持ち合わせているらしく、今年は外出を控えている感じです。また、一箇所にどっと人が集まらないように、ショッピングセンターなど色々な場所に小ぶりのクリスマス市場を開いています。
もう1つ外国人の私の目から見て、ドイツにはフランスやイギリスのような殺気立った摩擦がありません。どういうわけか時たまネオナチと言われる頭丸坊主の男たちが現われたりするのでメディアでは世界中に知れ渡りますが、日常生活ではそういう場面に出くわしません。職場や学校では頭にスカーフをつけたイスラム系の若い女性たちが他の人たちと溶け込んで一緒に勉強していますし、店のレジに座っていたり、町中を歩いていて、揉め事になっていません。スカーフはつけていますが、教育の場や職場には女性が進出を始めています。
私も健康上の理由から日の強い日はスカーフをしないと行けないのですが、ドイツは幸いなことに理由のいかんを問わずスカーフは禁止になっていません(フランスでは禁止)。スカーフは何もイスラム教の人だけが着けるのではなく、西洋の普通の女性がおしゃれをする時に被った時代もあったのですよ。グレース・ケリーやケネディー駐日大使のお母さんの時代を思い出してください。首や顔に火傷を負った人にもちょうどいい紫外線防止策なのですよ。フランスには行きにくくなったなあと思います。
外国人労働者は首を切られる時1番に選ばれてしまう不利さはありますが、ドイツ人もガンガン首を切られて、一緒に苦しい生活を乗り切っていました。最近は仕事を選ばなければ徐々にまた働くチャンスが増えています。なので下層階級には目立った差別意識が無く、「お互い苦しいなあ」という視線を交し合っています。ドイツのお金で外国人に失業保険や生活保護を支払っているという不満が出たことはあるのですが、ふと考えてみるとその税金や社会保険は外国人労働者も払い込んでいるし、ドイツ人がもらう年金も外国人労働者が払う掛け金も含まれているのだと気づいたのかも知れません。いずれにしろ一触即発感は無いです。
ドイツ人は外国人でもきちんとしたドイツ語を話せば人として付き合ってくれるので、摩擦が他の国より少ないのかも知れません。また、外国人がドイツ語を習いたいと思うと、各種の補助があり、本人負担ほぼゼロできちんとした語学教育を受けることができます。なので今の世代では仕事の世界に踏み込む出発点でドイツ語が分からない人というのはまず無いです。
そのわりには映画館にトルコ映画がかからないのが不思議ですが、今年のファンタにはトルコ映画が初めて参加しました。監督が来ていたので、「ドイツ語を話さないトルコ人に初めて会った」と冗談に言いました。監督とは英語で話しました。彼の方が私より英語は達者なようです。彼はドイツにいるトルコ人がドイツ語を話すことは知っていました。
イスタンブールの人で、トルコ人だと自分の方から言わないと、アメリカ人か、イギリス人かなと思うような感じの人です。この若さで映画を1本仕上げるとはとても思えない学生風の気さくな人です。
最近各国で移民問題が大きくなっていますが、ドイツに来たトルコ人は比較的うまく行った例かと思います。無論不況が来て失業者が出ざるを得なくなると、真っ先に首を切られるのは外国人労働者ですが、トルコ人はだからと言ってどっと犯罪に走るなどという事がなく、町に溶け込んでいます。私の住んでいる地区はトルコ人の多い場所で、毎日トルコ語を耳にします。
そのわりに町で見かけないのがトルコ映画。色々作られてはいるようですが、たまにベルリン映画祭に出て注目を浴び、またすぐ下火になってしまい、トルコ映画が一般のロードショーに出ることはまずありません。ファンタでも私はトルコ映画を見た記憶がありません。恐らくトルコ人はテレビか DVD で見ているのでしょう。私の前を素通りしていた感じです。
同じ監督の短編を長編にリメイク。
トレイラー: 冒頭は私も良く見かける、普通のおじさんたちが楽しそうに話をしているシーン。その後車に何かがぶつかり、一転してホラーシーンになります。雰囲気が欧米系のホラー映画と全く違い、新鮮に感じます。どういう展開になるんだろう。
後記: 監督が来ていました(上参照)。前半は私も知っているトルコ人の普通の生活を描いています。年長者の方が若い人より幅を利かせ、年長者が若い人の面倒を見たり、一緒に歌ったり。日本の年功序列と似た感じです。そこにすでにちょっと伏線があり、後半はど〜っとホラーの世界に突入します。ホラー映画としては力強い出来です。
この作品はファンタのファンの間では合格と見られるでしょう。今後も作品を送って来ればと思います。
トマホークというのはアメリカ・インディアンが使っていた斧のこと。持ち込んだのは欧州人で、改良したのがインディアン。
ドイツ人のような名前のアメリカ人が監督。西部劇。カンニバリストに捕まったと思われる人たちを救出に向かう4人の男たちの物語。出演者に有名人の名前がちらほら。珍しくショーン・ヤングの名前も挙がっています。西部劇で使われるトマホークは元々のトマホークです。ミサイルはこの名前を取って命名されたものです。
トレイラー: 怪我をした仲間を助けようとしているシーンから始まります。古い時代の西部劇で、撮影にかなり気を使っています。あの時代が本当にこうだったのかは分かりませんが、画面だけでも見る価値がありそう。
後記: 怪我をした仲間を助けようとしているように見えたシーンは、全然別の意味を持っていました。今回のファンタの中では上位に入る力作です。一般の映画館でも通用するかも知れません。
カンニバリストという点より、インディアン退治に向かう4人の男たちの動きが主題になっています。まあ、捕まえた白人の捕虜を食べてしまうのですから退治に出かけないといけませんが、町を襲って来る敵という捕らえ方で良いでしょう。同じ状況は中国の城壁の中で暮らす市民と外から襲って来る騎馬族風に置き換えても同じ。
町にいる時から足に大怪我をして早く歩けない男が4人のうちの1人なのでやや足手まとい。この男に絡んで一ひねりがあります。
全体の雰囲気を楽しむべき作品で、1800年代を描いているそうです。町の建物ややや私の想像より近代的でした。男たちの衣装は50年代、60年代のテレビのカウボーイ番組よりきちんとしていて、見る価値があります。
トレイラー: 無い!
トレイラー: 開催直前に見た!わけが分からなかった!?
後記: あとで。
後記: デビッド・リンチ・ファンにはもろ手を挙げて好かれそう。アンチ・リンチの私は大喜びはしないけれど、リンチ・オリジナル作品よりはおもしろかったです。監督のスタイルが統一されていて、監督の決めた枠に入り易く作られています。そこがリンチとの大きな違い。
完成度から言うと冬のファンタのベスト3に入る。1位ではないけれど。
主演はあのジュリア・ロバーツの姪。悪役で有名なジュリア・ロバーツの弟エリックの娘。エリックは妻と離婚し、娘は母親に引き取られています。
監督はあのアンソニー・パーキンスの息子。お父ちゃんは20歳台の中頃から有名になり、イケメン・スターとして世に知られるようになった人。有名女優との共演も多かったのですが、ヒッチコックのサイコに出たのがけちのつき始め。ハリウッドと反りが合わず、フランスへ脱出。70年代に入り、ようやく人目を気にせず暮らせるようになったようで、結婚、舞台俳優、脚本家、監督としての仕事に移るのですが、スキャンダルも出てちゃんと羽ばたくに至りませんでした。60歳台にたどり着いたばかりの時にエイズで死亡。夫人とは20年近く夫婦関係が持ち、死が2人を分かつまで一緒でした。1番最後の作品がアルジェントに決まっていましたが、出なくて良かったかも。夫人、後の未亡人は911事件で死亡。アメリカン航空の便に乗っていたそうです。息子が2人いて、長男がサイコの続編でお父ちゃんの役の子供の部分を演じ、この作品ではついに監督になりました。
非常に寒い土地にある寄宿制女子学校(エリート向け中学高校通しの学校)。冬休みに入り家族が迎えに来るはずなのに取り残される2人の生徒。そこへ変な女性が現われる・・・。
トレイラー: 私はいつの間にかかなり寒さに強い体質に変わり、ベルリンで雪が降り、正しい冬になると、夏の事はすっかり忘れて楽しい日を過ごしますが、この作品のような味気ない建物、味気ない町に住むとなると、冬が嫌いになりそうです。
後記: 最初は単純な殺人事件に見えます。寄宿舎に住む少女が舎監を殺したりします。暫く見ているとわけが分からなくなります。もしかしたら1人の少女の人格が分裂して、頭の中で2人になり、それを2人の俳優が演じているんだろうか、なんて。
少なくとも1人の少女は両親が事故死したため、2月になっても家族が引き取りに来ないのです。他の少女たちは両親が来て、引取り、新学期まで自宅で楽しい時を過ごします。なので主人公の1人は気がふれてしまったのか、時間が事故の直前で止まってしまったのか、なんて。
変な女性の役がジュリア・ロバーツの姪のエマ・ロバーツ。
パーキンスは親父さんへのオマージュと考えたのか、主人公の殺人の凶器はナイフ。
欧州に来たアメリカの4人のカウンセラーと子供たちを凶暴にする細菌の戦い。
トレイラー: キャーキャー言って襲ったり襲われたりするシーン。狭い場所でサバイバルの戦いが繰り広げられる感じ。
後記: かなり出来が悪く、フェスティバルの始めに出たのは正解。トレイラー以上の見所は無かったです。
花婿が悪霊に取り付かれ結婚式だというのに困ったことになる話のようです。イスラエル式の結婚式が見られそう。
トレイラー: 結婚シーンから始まります。トレイラーで十分謎が描けています。使われる言語はポーランド語、イッディッシュ語、英語なので、ポーランド語以外の部分は字幕無しで行けそう(イッディッシュ語は古い南ドイツの方言とよく似ています)。
後記: 見ようによっては結婚式以外に何も起きないので退屈な作品。しかし古い村の風習や言語に関心があると、おもしろく感じます。筋は単純。成仏し切れていない女性が、かつて結婚を熱望した男性の生まれ変わりかと思われる男に目をつけて、黄泉の国へ掻っ攫ってしまいます。後に残された嫁の家族はいい迷惑。
冬のファンタはバイヤーに売れなかった作品が集められていました。この作品も言語の関係もあって売れにくいかも知れません。演技もストーリーも悪くないのですが、吹き替えをどうするかが課題。
馬鹿でかい蜘蛛が現われて火を噴く SF。馬鹿馬鹿しくておもしろそう。
トレイラー: 本当に馬鹿馬鹿しくておもしろそう。
後記: このジャンルとしてはまあまあ。主人公がルーザーの中年男。カリフォルニアを救う大ヒーローに転身。
フランスの人里離れた田舎道で連続殺人犯がお仕事中。そこへそんな事を知らないヒッチ・ハイカーが2人登場。そこはやばいんだって。
どんでん返しがあると紹介されています。
トレイラー: 俳優のしゃべり方が学芸会みたい。「危険だ、何とかしなければ」だって。
後記: おもしろい作品で、プロットの切れから言うとベスト3に入れてもいいぐらいですが、売れないと思います。
理由は言語。シナリオが凝っていて、フランス語のよく分からない英国青年という設定も推理小説的には出来がいいのですが、ドイツで売ろうとすると、フランス語か英語の部分のどちらかをドイツ語に吹き替えなければなりません。残った言語はオリジナルのままにしておいて字幕をつけなければなりません。その間に重要なプロットがぼやけてしまいそう。英語とフランス語の両方をある程度理解できる人向きの作品で、オリジナルのまま聞くのがベスト。ドイツには時々英語とフランス語がその程度に理解できる人がいますが、一定の世代の一定数だけ。東の人は英語よりロシア語の方が理解できる人が多いですし、フランス語まで飛び出すとぴったりの観客層はかなり限られてしまいます。
アイディアは良くて、ショーダウン間際の種明かしもすばらしいのですが、言語の壁は厚そう。
原作はホラー小説。3000年の科学技術が大発展した架空の王国が舞台。佐藤姓の人間が増え過ぎたため、国王が鬼ごっこをさせ、人数を減らす計画を立てるというのが全体の枠の設定。何度も映画化されているようです。2015年版の監督は原作を読まずに撮影。タイトルだけパクって内容は独自とのこと。
佐藤を殺すのではなく、女子高生が殺される設定になっています。極端にグロテスクにしてあるとのこと。原作では負け組は処刑されることにはなっているのですが、暴力描写は無し。園の映画では血みどろシーン続出。私はこの監督とは相性が悪いので気に入るかどうかは疑問。ネットの記事を見ていると原作も批判されていて、監督はけちょんけちょん。
トレイラー: 物凄くあほらしい作り。
後記: サマー・キャンプと一緒にワースト・ワンを争う作品。冒頭のシーンはゴースト・シップのパクリだと言ったら、私に賛成してくれた人続出。この作品を初日のゴールデン・タイムに持って来た意味が分かりませんでした。サマー・キャンプを最初に置くなら、この作品は最後に置くべきでした。
トレイラー: 無い!
後記: 疲労困憊で部分的にしか見られませんでしたが、見た部分はファンタの作品としては合格。
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