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Bone Tomahawk

S. Craig Zahler

USA 2015 132 Min. 劇映画

出演者

Kurt Russell
(Franklin Hunt - 保安官)

Kathryn Morris
(Lorna Hunt - フランクリンの妻)

Richard Jenkins
(Chicory - 保安官代理)

Evan Jonigkeit
(Nick - 保安官代理)

Matthew Fox
(John Brooder - 町のインテリ男、女たらし)

Patrick Wilson
(Arthur O'Dwyer - 牧場主)

Lili Simmons
(Samantha O'Dwyer - アーサーの妻、医学の知識がある)

Sean Young (Porter - 町の住民)

Sid Haig (Buddy - 泥棒)

David Arquette (Purvis - 泥棒、町で逮捕される)

Jeremy Tardy (Buford - 町で殺された男)

Zahn McClarnon (教授と呼ばれるインディアン)

見た時期:2015年12月

2015年冬のファンタ参加作品

ストーリーの説明あり

ストーリを紹介します。謎解きの作品ではありませんが、誰が死ぬかは書きます。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ これがデビュー作!?

驚いたことに監督のデビュー作品です。映画を撮ったのはこれが始めて、脚本はこれで2本目。本職は作家のようです。カート・ラッセルとは仲がいいようです。また、ミュージッシャンでもあり、映画だけに人生を捧げていないようです。

静かにストーリーが進行し、インディアンとの大戦争などは無い作品ですが、背骨がしっかりしているという印象を受ける力作です。出演者のバランスもいいです。短く感想をまとめると「渋い西部劇」です。

無理に粗を探すと、インディアンの体格がアジア大陸から徒歩でアメリカ大陸に渡って来た人のようではなく、足の長い白人の体格をしている点。インディアンの出番は少ないので、さほど気になりませんが。

★ あらすじ

メキシコに近いカリフォルニアが舞台。明治20年頃。ブライト・ホープという町に時々近所の山に住む人喰いインディアンが現われ、住民が拉致されるようになります。牧場を営む男の妻が拘留中のならず者の怪我の世話をしに留置場に行った所、彼女とならず者はそのまま行方不明になってしまいます。保安官と保安官助手に加え、足を怪我していてちゃんと歩けない夫も消えた妻を捜しに出ます。そしてもう1人難しい男ジョンも同行します。ジョンはやたら自尊心が高く、情け容赦が無い人物。誇らしげに「これまでにインディアンを116人殺した」とのたまう。相手を殺すにもそれなりの公正さを保つ保安官に比べ、ジョンは即断。事情など歯牙にもかけません。

インディアンが現われるきっかけを作ったのは、町の外を徘徊する白人の泥棒たち。通りかかる人を襲っては殺し、持ち物を盗んでいたのですが、この男たちにインディアンが気づいて追って来るようになり、人々が平和な生活を送っていたブライト・ホープに行き着いてしまいます。

町から連れ去られたのは副保安官ニック、アーサーの妻で医学の心得のあるサマンサ、留置場に拘留されていたならず者パーヴィス。町に適応しているインディアンの話から人喰いインディアンの住処は分かりますが、非常に危険だから近づくなと警告も受けます。

行き先の見当は大体ついていて、普通なら馬で5日ほど行った場所。まだ全く開墾されていない土地なので、道中何かあると野垂れ死にします。しかし拉致された人たちの命の危険を考え、その行程を3日ほどで行くつもりにしています。なので出発前から1人足を負傷しているのがきつい。

足を怪我したアーサーを連れているだけでも大変な上、ある夜襲われて馬を奪われてしまいます。そこからは徒歩。足手まといになっているアーサーは、さらに足を怪我し、一向は彼を置いて行こうという話になります。アーサーにアヘンを飲ませ、その場にとどまらせ、3人だけでインディアンの住む洞穴に向かいます。アーサーは自分のペースで後を追います。

洞窟を発見した3人ですが、弓矢を使うインディアンに襲われ、全員怪我をします。

3人はアーサーが万一の時のために戦えるよう銃と、自殺用のダイナマイトを残しておきます。アーサーは側にある死体から喉の骨を取り出し、それを使って笛のような音を出し、インディアンの気を引きます。

3人は結局捕虜になり、洞窟の牢に入れられてしまいます。そこでニックとサマンサに再会。しかし一緒に捕まっていたパーヴィスはすでに食べられていました。次の犠牲者はニック。ジョンも頭の皮を剥がれ、全裸にされて体をトマホークで真っ二つにされてしまいます。実は彼が116人もインディアンを殺したのは、近親者を2人殺されていたからです。

ほとんど勝ち目の無い中、3人とサマンサはここで出来るだけ多くのインディアンを殺して、後から追って来るアーサーに生き残りのチャンスをと話し合います。持っていたアヘンを酒に混ぜ、2人のインディアンに飲ませることに成功。

アーサーは怪我にもかかわらず(どうやって山の中腹にある洞窟にたどり着いたのかは謎のままですが)保安官たちが囚われている所までたどり着きます。

それからも熾烈な戦いが続きますが、最後はほとんどのインディアンが一行に殺され、残るは3人。白人の方も何人か殺され、残ったのはアーサー、サマンサ夫妻、保安官と保安官代理の1人。しかし保安官は大怪我をしていて一緒に脱出は無理。

まだ3人のインディアンが生きているので、保安官に銃を持たせ、とりあえず動ける3人は洞窟を後にします。暫くすると洞窟から3発の銃声が響き渡ります。

映画には保安官を救出に行くシーンはありません。洞窟からかなりの距離の所で銃声がするので、その後3人が救出に向かうのかは分からないまま終わります。

★ 白人の立場をはっきりさせた作品

この作品はずっと以前の西部劇のような、銃で撃たれているはずなのに大して出血せず、シンボル的に死ぬ演出ではありません。かと言ってマカロニ・ウェスタンのような血みどろでもありません。また、ひところのようなリベラル派の白人によるインディアン虐殺を批判するスタンスでもありません。

視線をカリフォルニアに住み、農業を営み、治安を確立した白人の町の住民という所に置いています。変にモラルで遊ばず、そこに人が住んでいた、町から人が拉致された、取り返しに行くという単純な理由を決め、それに合わせた白人の行動を描いています。

インディアンの側からはインディアンとしての主張があるでしょうが、それは別な映画で描いてくれというスタンスです。ここに出て来るインディアンはたまたまカンニバリスト。アメリカは広い所で、多くのインディアンが別々な場所に暮らしており、一生の間1度も接触の無い部族もあったことと思います。人肉を食べる種族があったのかなど詳しいことはこれから勉強しないと分かりません。また、食料が足りないから人肉を食べるのか、殺した相手を食うことによって相手の力も自分が得るというシンボル的な意味があるのかも分かりません。

★ 暑いのか、寒いのか - 服装では分からない世界

ここに登場するインディアンはほとんど全裸で、体に石灰のような白い塗りつけています。足がかなり長く、大柄で、白人のような体型です。

白人の方は長袖のスーツ、長ズボンか、女性は長いスカート姿。

チラッと聞いた話では、平均気温が26度を超えていると全裸でも暮らせるそうです。またごくまれに低温の地域でも全裸で暮らした種族があったとも聞いています。作品の舞台はメキシコに近いカリフォルニアとされているので、気温は比較的高いと考えてもいいかも知れません。ふんどしをさらに小さくしたような物を身につけているのは映倫などの検査を通すためでしょう。インディアンがあのような姿で暮らして行けるとすると、白人はちょっと厚着をし過ぎかなと思います。ただ、中東のアラビア人のように暑いからこそ長袖、裾の長い衣服をつけるということもあり得ます。

明治の20年代前後というとすでに色々な物が発明されていたと考えられます。

ジョンがしょっちゅう使う望遠鏡は1500年代に遡ります。映画の中ではドイツ製らしいです。懐中時計は15世紀頃からあるようです。アメリカでは1830年頃蒸気機関車が走り始めていますが、この作品には出て来ません。まだアメリカでも鉄道が敷かれた地域は偏っていて、全国津々浦々となるには間があります。コルト銃が発明されたのはこの作品より50年から60年前。なので全米に広がっていてもおかしくありません。この作品に出て来る男たちは皆持っています。日常生活で時々武器を使用しなければならない時代でした。ライフル銃の元祖は1600年代だそうですが、火縄銃でなく西部劇で使われるような近代的な銃は19世紀の間に欧州で開発されたようです。会社としてのコルトもこの方式を取り入れています。

時代考証をどこまできちんとやったのかは不明。町の建物が近代的な印象を与えますし、インディアンが作っている牢の格子もちょっときれい過ぎる感じです。とは言うものの、他の西部劇に比べると不平不満はあまり出ません。多少時代考証やプロットに穴があるかも知れませんが、全体のハーモニーが良く、楽しめる作品です。

★ ホラー映画?

この作品をただの西部劇と分類する人は少なく、ホラー映画、ホラー西部劇などと言われています。私はホラーという肩書きをつけるのには反対です。確かに殺された白人の白骨死体などがあり、頭の皮を剥がれてしまうのは見ていて気持ちのいいものではありませんが、当時はこうだったのではないかという感じのリアルな作風で、妖怪、鬼の類は出て来ません。当時はこんな感じだったのではないかと思わせる作品です。

賛否が分かれた作品らしく、アメリカではブーイングもあったそうです。ファンタの会場ではほぼ満点。見た人は皆満足そうで、これといった批判は耳にしませんでした。

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