映画のページ
2023年4月20日 〜 23日
春のファンタ見てきました。
これまでのファンタの様子を春のファンタに盛り込もうとしたら長くなり過ぎたので別な記事にしました。そちらには1987年に始まったファンタの現在までの様子を私見で書きました。
ちょっと前から会場が変更になり、うちから近い場所になりました。私が参加を始めた頃はその会場から近い場所でしたが、ドイツ統一後家から遠い場所に引越し。深夜最終回が終わって、終電に飛び乗り帰宅。時には終電も無くて夜バスで帰宅ということをやっていました。待ち時間も合わせると1時間近くかかり、ベルリンとしては長い時間です。
最近原点回帰でもしたのか、また家から近い場所に戻って来ました。西ベルリンの繁華街の中心地で、以前はここでベルリン映画祭が行われていました。なので、現在でも何軒か有名な映画館が残っています。
とても助かるのは映画館付近にいくつもスーパーがあり、休憩時間に飛び出して行ってサンドイッチを買うことができるぐらいの距離なことです。ファンタに参加し始めた頃は学校関係の仕事をしていたので、ファンタ開催中は夏休み。準備をする時間は十分あったのですが、現在はサラリーマン。スケジュールが合わないと仕事が滅法忙しい時期と重なり、ファンタのためのご飯を準備する時間が取れないことがあります。そういう意味では新しい会場は天国です。
コロナや戦争はフェスティバルにも色々悪影響をもたらしましたが、1つだけ良い影響かなと思うことがあります。
制裁のため旧ソ連の国や、現在のロシアからの作品を取り寄せるのが難しくなり、国によっては娯楽映画を作っている場合でない所もあります。そんな中多くの監督、制作者がビデオ・メッセージを送って来るようになりました。
悲しいのはあるロシア人監督。私もざっと聞いたことがありますが、ロシアにもウクライナにも元々親戚だったり、友人だったりする人が結構な数います。仕事の関係などでたまたまどちらかの国に家や職場がありますが、普段は行き来していた人たち。そういう人たちの行動が現在は制限されており、と言うか、弾が飛び交っている場所に行くのは危険なので、芸能活動ができずにいます。監督の1人が、ビデオ・メッセージでそういう話をしていました。
この監督の作品は2本見ましたが、めちゃおもしろく、笑い転げました。状況が収まったら次の作品も見たいですが、果たして家族や友人がこういう状態に置かれた後で、コメディーを作る精神的な余裕があるかは分かりません。まだドイツに作品を送って来られるぎりぎりの時にメッセージを送って来ました。
ビデオ・メッセージという手段はコロナが生んだ副産物ですが、この方法は遠い所に住んでいてドイツに簡単に来られない監督にいいチャンスを与えてくれます。また、ベルリンやハンブルクにだけは何とか来られても、全部の都市を回れない場合もいい手段です。また、監督の人となりをチラッと見る機会にもなり、観客としてはうれしいです。
コロナや戦争が収まった後でも冒頭に数分メッセージをつけるのは続けてもらいたいところです。
春のファンタ、作品が出揃いました。4日、17本。冬のファンタも開催されているので、年間の本数としては増え始めています。
所々です・ます調と、だ・である調が混ざっていますが、ご容赦を。細かい所を直している時間がありません。
今年のアカデミー賞にドイツがやたらノミネートされ、前代未聞の4冠。アカデミー賞では時々変な決定があります。今年はドイツの首相が訪米して何か約束したことの見返りかなと心配中。
オスカーを取った作品は第1次世界大戦中の話で、元ネタは小説ではありますが、作者の実体験を反映した物語。Blood & Gold は第2次世界大戦末期の話で、悪党が宝捜しをする話だそうです。まだ詳しいことは分かっていません。
過去ファンタには滅多に来なかったドイツ(語)作品ですが、去年は何本か来ていました。まだ他の国と比べるとイデオロギーが強く反映していて、一般人がすっと楽しめる作品ではありませんでした。ドイツが両大戦に至る経緯を理解した上で作られた映画にはまだ出会ったことがありません。ファンタに来るドイツ語作品が非常に少ないことと関係しているのかも知れません。
ファンタもハリウッドもドイツについてやや方向転換をしている感じは伝わって来ますが、他の国の作品のように、一定のイデオロギーがあってもそれを上手に消化して、ストーリーに上手に組み合わせて行けるかが今後の課題。
監督: 短編から始め、テレビ、音楽ビデオを経て、長編を作り始めています。これまでは最近の1作を除いて全部コメディー。
ストーリー: 1945年。親衛隊に追われた脱走兵ハインリッヒを農婦エルザが助ける。暫くは仲良く行くが、やがて金(きん)が話に絡む。脱走兵は娘に再会もしたい。
トレイラー: 出演者が "Wo ist das Gold?"(金はどこか?)と言い続ける。愉快。ドイツ映画にしてはおもしろそう(ドイツ語では Geld はかねで Gold はきん)。
トレイラーの後記: トレイラーは笑えます。本編を見ようかという気になります。なので本編の方、もう少し頑張って貰いたいところ。だめとか悪いと言うのではなく、ここまでできるのなら、もう少し行けたのではと思うところです。
後記: 関係者が舞台に登場。客席にサクラがいたのか一応拍手がわきましたが、作品はぱっとしませんでした。ドイツの作品は思想性を強く打ち出し過ぎたり、ナチスを悪者にしておけば話がそれで収まってしまうなど、偏り方がワン・パターンで、広がりや深さに欠ける傾向が今も強いです。ドイツの映画産業自体がそれほど繁盛しているわけでもなく、現在は隣の州にある映画スタジオが米国に買われてしまい、独自の決定ができなくなるらしいという話をラジオで聞いたばかり。この先もあまり輝きそうにありません。
ただ、この作品がこの順番で登場し、その後もいくつか "Wo ist das Gold?" がテーマになる作品が出たので、そのきっかけとしては良かったと思います。
映画を見る余裕ができたのは渡欧してから10年以上経ってから。中にはいいなと思えるドイツ人俳優や監督もいたのですが、数が少なく、英米のスターに比べると大成功しているわけでもありません。補助金の問題があるのかもしれず、私は事情に詳しくないので、今後の予想も立てられません。
元ネタ: 1981年、サム・ライミ監督の死霊のはらわた。この作品は続編が何本か作られており、今回の作品はリブート版。ドタバタ、スプラッター形式から、今回はシリアス・ドラマに模様替え。
監督: 劇映画2本目。
ストーリー: 疎遠だった姉妹が再会。妹ベスが1人で3人の子育て中の姉エリーを訪問。エリーの住むアパートで奇妙な本を発見。その後は悪魔との戦いに発展。
トレイラー: エクソシストなど色々なホラー作品のシーンを寄せ集めた印象。ストーリーが面白ければいいのだが、そこは不明。この種の話に典型的なティーン・エージャーを主演にせず、子育て中の母親とその妹としているところが新しい。
後記: オープニング作品。世界初公開だったらしく、会場で携帯電話を取り上げられました。「金(きん)はどこだ?」ではなく、「携帯はどこだ?」と聞かれたのですが、「買ったことが無い」と答えると、信じられないような顔をされました。「固定電話が家にも職場にもある。人には直接会うことにしている」と言うと納得したらしく、入場できました。
この日の作品2本はぱっとしませんでした。力をこめて作ってあり、俳優の努力には敬意を表しますが、楽しめる作品ではありませんでした。せっかくいいキャスティングをしたのだから、もう少し何か工夫して、メリハリをつけて、楽しめるようにすればよかったのにと思いました。緊張と緩和の繰り返し方が上手いと楽しい作品になると言った趣旨の発言をした人がいましたが、そのメリハリがこの作品では上手く機能していませんでした。監督はまだ長編2本目なので、もう少し練習したらいい作品が生まれるかも知れません。
バスク版時代劇。現代のスペインにもアラビアの文化の痕跡が見られますが、778年と言うと、スペインの地でキリスト教徒イスラム教がぶつかる時代。その上バスクには地元の信仰や文化もありました。バスク語は周辺地域の言語と親戚関係が無いとされており、謎の多い言語。
ストーリー: 8世紀のスペイン、バスク地方。ここにカール大帝の財宝が隠されていると思われており、イスラム教徒とキリスト教徒が睨み合っています。加えてバスク人は独自の神を信じています。子供の時に数奇な運命に翻弄され、後にキリスト教徒となって故郷に戻って来たエネコがそこに登場。
監督: 長編2作目
トレイラー: この種の時代劇は好みではありませんが、かなり大掛かり。それをバスク語でというところが珍しいです。
後記: 会場では色々違う数字が飛び交っていましたが、いずれにしろバスク人というのはそれほど大勢ではありません。それにしてはずいぶん大勢の人を集めて撮影したと思います。バスク語を話す俳優もそれほど多いはずは無いのですが、この作品はバスク語で作られており、スペイン語なら多少単語ぐらい分かる私でもさっぱり分かりませんでした。かなり文法が複雑で、周囲の言語からは孤立していると昔から聞いていました。
ごくわずかなシーンですが、サラセン人かなと思われる人も登場。その人物の語ったごくわずかなアラビア語が理解できたという不思議。まあ、とにかく大掛かりで、人件費も馬鹿にならなかっただろうと思います。
初日の2作目。
ストーリー: ティーン・エイジャーのハウス・パーティーをエイリアンが襲う。
監督: The ABCs of Death の Y など短編、その後テレビのドラマ制作を経て、劇場長編デビュー。
トレイラー: 最近よく話題になる英国王子妃に似た顔の女性が主演。映画祭の最後に上映されるポップコーン映画タイプ。
後記: 本当に最後に上映したらよかったかも知れません。
ストーリー: 下手を打ったジャーナリストが失ったキャリアをポッドキャストで回復しようと画策。とは言え簡単には行きません。そこにエイリアンが絡むので話はややこしく・・・。
最近ポッドキャストやブログで一旦インフルエンサーになり、その後地位を失う人をテーマにした作品が出始めています。新しいジャンルになるでしょうか。チャンスはあるように思います。
監督: 詳細不明。インディー系らしい。
トレイラー: 結構金のかかっているような家に女性が1人。最近はこういう家に住みながらリモートなどで1人で仕事ができる時代。毎日会社に出向いて同僚と話しながら仕事をすることは大切だなあと感じるこのごろ。
後記: 見る前の期待を上回る出来。出演するのはリリー・サリヴァン1人で、他は全部声だけ。彼女1人でストーリーを背負い、進めていかなければなりませんが、その力はありました。
子供の時に実は問題を起こしていた女性。周囲が間違った思いやりを示したため、本人は自分がどういう間違いをしたのかを理解しないまま大人になり、職業的に一旦は成功。ですが、子供の頃のことが心に引っかかっていた様子。自分ではそのことと現在の自分の行動の間に接点が見つけられていません。携帯を通じて当時の出来事に関わりのある人と話しているうちに、何かしら思い当たった様子。ですが、それを正面から受け止め切れないうちに突然自分と全く同じ姿の女性が現われます。恐らくはドイツ語でドッペルゲンガーと呼ばれる兆候でしょう。
海外ではこの言葉は変な解釈をされていて、超常現象扱いされています。ですがドッペルというのは単にダブルと言う意味で、全体の意味は(想像で作り出した)分身みたいなものです。
恐らくは自分が過去に起こした問題の責任を負うのが負担で、逃げ道として想像上の分身を生み出したのでしょう。ただ、映画として謎が残るのは、彼女がとっさの怒りでダブルを殺してしまい、死体に重石をつけて湖に沈めてしまうところです。実在しないのなら彼女が死ねばもう1人も死ぬはずですが、1人は残ります。もし本当に双子の別人が現われたのだとしたら、その日、その時の服装までそっくりということはあり得ません。なのでやはり現われたのは想像上の分身。そういう人を物理的に殺して、死体遺棄ができるかは謎のまま。
これを機に主人公は逃げを打つのを止めることに決めたのか。もっと怖いのは逃げを打ちたい側が生き残り、正直な側が消滅してしまうこと。そういう余韻を残して終わるのは、なかなか巧み。
ストーリー: アニアと婚約しているエメットの母親が死去。エメットが幼少期を過ごした家を手放すため2人は家に来ます。ところがアニヤの振る舞いがだんだん亡くなった母親に似て来ます。そのためエメットは自分の過去と向き合わなければ行けなくなります。
監督: 長編2作目。
トレイラー: 登場するのは死んだばかりの母親(の死体)と、隣人と、若いカップルだけ。人里離れた家に滞在するうちにアニアの振る舞いがエキセントリックになって行く様子が描かれています。しかし筋から考えてどちらがおかしいのかはまだ分かりません。心理ホラーの典型のよう。
後記: 初日の作品がぱっとせず、2日目もやや失望だったのですが、3日目、最終日と徐々に良くなって来ました。この作品は最終日上映。
極端な演技をするのは俳優としては簡単なのですが、それでも主演のホランド・ローデンが母親になり切っている時間の演技は力仕事だっただろうと思います。アニアのままの時は比較的自然で感じのいい人ですが、母親になるとエキセントリック。
母親は舞踏家だったらしく、バレリーナのような姿の写真が家に飾ってあります。父親らしき人の姿は無く、母親が1人でエメットを育てたらしいのですが、母親らしい事をしておらずエメットは母親のやさしさを求めていました。エメットがこの家に住んでいてまだ子供だった頃は隣人の男性が2人を実務面でサポートしていた様子。
今回のファンタではいくつか親子関係の問題が描かれていました。女性が職業に就き、成功する時、子供の面倒を見ている暇が無いという問題に直面します。それを補っていたのが祖父母。ところが戦後日本だけでなく他の国でも核家族化が起き、隣近所の付き合いも激減し、長屋の長老でも、うるさ型のおかみさんでもそういう子供には助けになったのですが、そういった近所の付き合いも減る一方。
謎が残るのはアニアがどうやってエメットの母親の行動を真似できたかです。服装は家に残された衣装を着ればよく、写真の真似も出来ます。しかし性格、話し方などは直接知り合いでなかっアニヤには分からないはず。そこは謎のまま終わります。
疲労困憊でブラックアウト。
原作: 監督のアイディア。
ストーリー: 完全にブラックアウト状態で記憶にありません。
トレイラー: ホラーに分類されているのですが、現代的な若者が時代に合った美男、美女という姿で現われ、どこがホラーなのかは分かりませんでした。トレイラーを見ても内容が記憶に蘇りませんでした。
後記: もしこれが犯罪アクションだったりしたら、多分疲労困憊でも記憶に残ったでしょう。恐らくは私の好きなジャンルでなかったと後から想像。
時代が変化している時に日本にいなかったためだろうとは思いますが、かたぎの女性がちょっとしたきっかけで売春婦になるハードルの低さに驚きます。
ちゃんとした会社に勤め、自分はかたぎだと思っている女性でも仕事のために枕営業をするという話も最近は聞くようになっています。また、ドイツの日本人社会の中で目の前で男性に媚を売る女性を目にしたことが自分の職業を変えるきっかけになったこともありました。私は美人でも、エレガントでもありません。また、実力以上の物を手にすると、それを使いこなせないだろうと予想しており、媚を売ってでも上へ上へという考えにはついて行けませんでした。なので今も貧乏暮らし。
あえてそういうことをやる人は両親や先生から「物事には限度がある」と教わっていなかったように見えます。教わった世代は時代遅れなのかもしれません。
ストーリー: 事故で娘を失い、離婚した女性。現在は売春で生活。客の1人から背骨の写真を撮らせて欲しいと言われ、話に乗ります。次は足。そうやって体の写真を撮らせているうちに体を死んだ娘が触れているような感覚に陥ります。
監督: デビュー作らしいです。
トレイラー: 上に書いた事を無視して考えれば、ホラー映画としての条件は整っているように見えます。
後記: 退屈して途中で帰ってしまった観客約1名。居眠りした人はもっと多かったでしょう。ビデオで監督が始まる前に挨拶をした時に、嫌な予感がしていましたが、当たってしまいました。
日本の劇映画は最近韓国に負けっぱなし。この作品は競争のスタートラインにも立てない駄作。
監督は主演女優をきれいに撮ろうと非常に努力しています。どの場面を見ても絵になっています。1つ1つのシーンがそのまま写真集に出来そうなアングル。その代わりにおろそかになってしまったのが、ストーリーの進行。映画監督を辞めて、写真集のカメラマンになった方が成功するのではないかと思います。
監督: 長編3作目。
ストーリー: 子供の時にひょんな事から妹が事故死。自分も近くにいたためこだわりができ、村を去っていた女性。母親の死に伴う遺産相続(家)の手続きのために帰郷。出身の村は閉鎖的で、まだ古い価値観や迷信が残っている。同調圧力、村八分など、田舎で考えられる様々な困難に改めて直面する。
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実は死んだと信じていた妹は生きている。姉に会うためもあって、母親の死をきっかけに遺産手続きに入る。公的手続きを済ませるために姉は帰郷。しかし彼女が戻って来たことで村には波風が立つ。
トレイラー: ストーリーに沿った内容。
後記: フランスあたりでも作りそうな内容。部分的に無駄なシーンもあるが、普段あまり来ない国からの作品で、長編3作目としてはまあまあ。
チェコにはアメリカも使ういい映画スタジオがある。頑張れ。
Xの続編。
原作: 主演女優が脚本を監督と一緒に執筆。
ストーリー: 最初から3部作の予定。X はチープな作りで、1970年代が舞台。殺人現場を警察が検証するところから始まる。
Pearl は X で映画制作の一行が借りた農場の持ち主だった老夫婦の妻が若い頃、1918年の話。
当時パールは両親とこの農場で暮らし、夫は兵士としてヨーロッパ戦線に派遣されている。母親は支配的な性格、父親は病弱で、パールは母親の命令で家事、農業一切をやっていた。
いずれここを出て華やかな都会で暮らすことを夢見ていた時にちょうど映画のオーディションの一行が近くの町にやって来る。親友や自分も応募する。採用されたのは親友の方。この後パールの深層心理に潜んでいた凶暴性が発揮されるため死者続出。
監督: 2014年春のファンタにサクラメント 死の楽園で参加。
トレイラー: 無論1918年現在として描かれているので1970年代に撮影隊が訪れた時より家が新しく、何もかもがまだ寂れた感じでないのは理解できるが、1918年としては近代的過ぎる印象を受けた。人物のメイクも現代的過ぎる感じ。
ただ、彼女の考え、行動を舞台装置も含めもっとリアルに描くと、背筋が凍るために一般受けしないかも知れない。
後記: X で解明されていない話もあるので、3作目が楽しみ。
かなり前からファンでした。イェンは香港をこよなく愛している人でしたが、香港の情勢が大きく変わり、政治に翻弄されている大スター第2号という印象です。最近親中発言があったとかで今年のオスカー授賞式の頃に激しいバッシングに遭ったとも聞いています。ネームバリューのあるスターは政治に使われ易いので何かあったのかも知れません。
俳優になる前母親から武道、父親からピアノを習ったとかで、この家庭では一般と男女の役割が逆だったようです。彼の憧れはブルース・リー。ジェット・リーは武道の先輩。仕事場が政治に巻き込まれて現在も苦労しているようです。
原作: 金庸/Louis Cha の小説。時代劇の作家。おもしろい経歴の人物。
ストーリー: 契丹出身の喬風は幼子の頃孤児になる。大人になると乞食教団を率いるようになる。しかし策略に落ち、教団から破門される。無実の罪を着せられ、脱出。怪我をした女性を助け、距離が縮まるが、ハッピーエンドとはならない。恩知らずの登場人物が続出。助けてもらった医者の診療室を焼き払ったりする。
監督: Kam Ka-Wai は助監督、監督と裏方専門。Donnie Yen はご存知のように香港の大スター。監督は6本目。
トレイラー: 疲れていて、作品に入って行けなかった。もう1度見てみたい。セットも大掛かり、格闘シーンも十分あり、本来なら楽しめたろうと思う。
後記: 何となくいつもの楽しそうなイェンと違う印象。仲間が多く、香港が大きく変わった後、仲間の仕事口も世話しなければいけなかったのかなと勝手な想像。自分がベースとしている場所、国が大きく変わる時は公私共に大変だろうと思う。同じ事は他の香港スターについても心配している。
見る前の期待を大きく裏切った佳作。
原作: 監督が自分で書いたようですが、スリラー作家として通用するようなおもしろい筋でした。俳優もまあまあ良かったですが、筋の展開が良く、それに島の気候が雰囲気を与えています。
ストーリー: 死んだ父親の跡を継ぎ、入隊して気象予報士を目指すデイヴィッド。父が遺稿を残していた。それに従い無人島に向かう。本当は彼1人しかいないはずなのに妙な出来事。無線機からはデイヴィッドとの連絡を試みる女性の声。
監督: 長編デビュー・・・にしては出来がいい。しかも見終わってから原作も監督が書いたと知った。まだ若い。才能ありそう。
トレイラー: 気象関係の仕事はまだ電気も無い時代からあったらしい。孤島に派遣される男たちの映画がちょっと前のファンタにも来ていた。今回の作品は現代。大自然を上手に生かしての撮影。
後記: 父親の過去が、この家族の現在に大きな影響を与えており、父親が携わっていた仕事とその裏に潜むたくらみの規模が非常に大きい。しかもそれが現在の世界情勢と直接関連しているので、見ていて「おおお・・・」と思った。現実と見比べると非常にタイムリーな作品。
その上、父親の最後、デヴィッドの最後が悲惨。政治の現実を感じる。
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監督が会場に来ていたので暫くおしゃべり。デヴィッドが最後に重要人物から命を狙われ、入院中に殺されて終わったように見えます。ですが、監督は「彼は生きている」と言っていました。
監督は普通の若者。こんな一流のミステリーが書けて、自分で監督できてしまうのは凄い。ミステリー・クラブに特別賞があればあげたいぐらい。
ドイツの Blood & Gold を一歩先に勧めたような印象の作品。
元ネタ: フィンランドに古く伝わる精神的な振舞い方。そこに1944年に起きたラップランド戦争が絡む。
ストーリー: 一匹狼の金鉱探しが金を発見。それをナチ将校と30人の精鋭の兵士に狙われる。しかし相手が悪かった。彼には捨て身のど根性があった・・・。
監督: 劇場長編3作目。
トレイラー: 無し。
後記: この作品もナチを悪者にして話が進むステレオ・タイプの描き方。それをフィンランドがやるのは不思議な気がします。第1次世界大戦から第2次世界大戦までのいきさつが欧州であまり知られていないことには驚きます。なぜドイツがあの時ああいう政治家を受け入れてああいう結果になったかを知っておかないと、将来また似たような社会状況が来て、似たような人が現われて、同じ事を繰り返す危険が残ります。周辺国もそこを承知してそういう状況を生まないようにしないと、知らないうちに協力者になっていたりします。映画の世界でももう少し事情を掘り下げた作品を期待したいところです。
・・・とややこしいことを考えるのを止めて見ると、これは一種のマカロニ・ウェスタン。
原作: 監督のアイディア。
ストーリー: 映画関係のサイトやウィキに非常に長いストーリーが書いてありますが、客席に座っている観客はほとんど何も画面から理解できません。
ざっと言うと、幼子を2人(2人共4歳前後)抱えた父親が行方不明になり、自宅から出入りできる窓やドアが消滅。その中で2人の子供はどういう風に時を過ごすかという話。
監督: デビュー
トレイラー: 無し
後記: 私はそれほど腹を立てなかったですが、ブレア・ウィッチ・プロジェクトと似た、「1回だけ観客を引っ掛けることができる」作風。この監督の名前を聞いたら2度目は騙されないぞと観客は身構えるでしょう。仲間内では全然受けませんでした。
60年代のウルトラマンの登場人物のような衣装が登場。私は知りませんでしたが、フランスでは有名な俳優がズラリ。事前の評ではテーマを詰め込み過ぎとのこと。
ストーリー: タバコ戦隊というのが登場。隊員はベンゼン、ニコチン、アンモニア、メタノール、水銀という5人。ウルトラマンのように正義のために戦う。ティームの結束を高めるために1週間湖の近くで静養。そこで飛び出す恐怖の話。
全体が与太話だという噂を聞いたので、まじめに取らない方がいいようです。喫煙家擁護作品なのか、反喫煙作品なのかは不明。
監督: 2010年以来ファンタでは有名な監督。
トレイラー: 他の作品と大きく違うと思うので期待。シャマランよりはずっこけていて面白そう。
余談: 一生を通して1本もタバコを吸ったことがありません。男性の家族は吸っていました。近くで他の人が吸っていても特に嫌悪感は持ちませんが、普通のタバコよりはシガーとかシガリロの方が受け入れ易いです。以前からフィルター、紙、添加物などが有害なのではと疑っていますが、まだ科学的な分析を見たことはありません。ま、これまで吸わずに来たのだからこれからも吸わないで置こうと思っています。
アメリカ北東部の大都市から始まった女性解放運動は実はタバコ会社が市場拡大を狙い、女性の購買者を増やそうと思って始めた販売キャンペーンだという話を耳にしたことがあったので、自分が特に今タバコを吸っても、喜ぶのは企業だけかと思って始めませんでした。お札を丸めてマッチで火をつけているイメージが頭に浮かびます。それならそのお札で映画に行った方がいいです。
後記: 疲労がどっと出て、ストーリーを追うことができませんでした。時々画面を見てあははと笑っていました。画面を見るだけでも漫画風でおもしろかったです。
原作: デイリー・ピアソン という人が思いついたコンセプトを監督を含む2人が執筆。
ストーリー: 家庭の事情でアフリカ系の主人公ミアは父親と離れて暮らしている。母親は2年前に死去。しかし引き取り手の白人の家庭の同年代の少女ジェイドと仲良しで、本当の姉妹のように不自由無く暮らしている。
同年代の友達の間でオカルトのような会が開かれる。マネキンの手のような物を前に置いて、左手で握手をし、"Talk to Me" と話し掛けるとあの世と繋がる超常現象を体験できる。ただし時間制限があって、1分半を越えると霊が体に残ってしまう。
ジェイドは常識をわきまえた少女で、未成年の弟ライリーにはこういうことをやらせたくない。同調圧力でやらせざるを得なくなった時、それでは50秒だけということで承知する。しかしその時現われた霊がミアの母親らしかったため、会話が長引き、ライリーは入院するほどの重態になる。
ミアは母親と会話ができ、母親の死の謎を解けると思い込み、交霊会に夢中になる。そのため行っては行けない領域に踏み込み、事態は深刻になって行く・・・。
監督: 双子。ダニーは監督と俳優兼業。マイケルは主として俳優業。
ダニーは長編か短編か分かりませんが、かなりの数のビデオの監督をやっています。劇場用の長編はこれが第1作かも知れません。
後記: ポップコーン映画(若者向きのエンタメ性の高い作品)としてフィナーレに持って来ても良かったかも知れません。
ショーダウンのシーンはパンチが効いています。
ストーリー: 妻の自殺後認知症になる夫。気温が極端に上昇。その上超常現象まで起きる・・・。介護など日常の問題と超常現象を普通の人に見える俳優がどういう風に演じて結びつけるか・・・。
監督: Raúl Cerezo は長編2作目、Fernando González Gómez は3作目。
トレイラー: 俳優と撮影場所、建物などは良さそう。
後記: ちょうどファンタに行っている頃にスペインの気温が本当に上昇して40度だと言っています。ベルリンは逆に冬に逆戻りして10度前後をうろちょろ。
スペイン映画で期待しているのはアパート。戦争で国土が爆撃されていないので古い建物がまだ残っています。天井の高いアパートが今でも普通に使われています。とても魅力的です。今回もそれを見ることができました。
監督はどちらもまだ2作目と3作目。それにしては良い出来でした。大ヒットはしないかも知れませんが、上手にまとめてあります。
この作品の超常現象は一種の方便で、あまり関係ありません。家族関係が重点で、妻が自宅のベランダから飛び降り自殺をしてしまい残された夫、親を気にかけて引き取ろうとする息子、コミュニケーションが上手く行かず、折り合いが悪くても夫の父親の下の世話をちょっとはやる嫁など、どの家でも抱えそうな問題を上手く取り入れています。
ネタバレ: 読みたい方はマウスの左ボタンを押しながらカーソルで上をなぞってください。
妻が自殺をしたのには納得の行く理由があります。近所の老人たちがエイリアンの影響を受けて心臓に変な装置を仕込み、凶暴になって行く中、自分の頭で考えて納得の行かないことはやりたがらない妻は、同調圧力を嫌がり、自殺してしまいました。
夫の方は後半近所の人と同じ事をやり、心臓に変な装置を取り付けます。
老人問題は最近時々映画のテーマになります。
今回は凄いと感心する作品は少なかったですが、次回を期待できる監督は何人かいました。
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