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2025年5月8日 〜 11日
2025年春のファンタ、18本見終わりました。
制作の技術とは別に最近少しずつ後味の悪い作品が増えているような気がしていましたが、今回もそういう作品がいくつかありました。観客に嫌な気分を味合わせるという手法で何かのメッセージを伝えたいのか、思想に共感してもらいたいのかとは思いますが、エンターテイメントとしてお金を払って見に来る観客が映画館を出る時に嫌な気分を抱えて帰宅というのは商売としては歓迎できる方法ではありません。
今回は最初の期待値を低めにしていたので、見終わって期待を上回る作品が3分の1ほどありました。嫌な気分が残るとしても俳優が全力で演技していたなあと思えるものや、意外なキャスティング方法が功を奏して音楽部分だけはしっかりしていたというような感じ。
ミステリー・クラブのメンバーとしては、種明かしの部分を上手に隠し、驚きの結末に持って行く手法があまり成功していない作品も目につきました。過去にこの方法を巧みに使って観客が最後びっくりという作品を何度か見ていたので、脚本の力量がやや落ちたかと思いました。
開催スケジュールと会社が忙しい時期が重なり、さらに(今年のみ祭日と言うのがベルリン市に1つ加わったため)祭日が2日入り、2日目から疲労困憊状態。そのため目は開けていても内容が理解できていない作品もありました。
トレイラーの部分加筆しました。
土曜日が6本上映で、合計18本に決定。
全作品取り敢えずタイトルをご紹介。
見た後感想などを加筆します。
特別上映が無ければ4日で17本ぐらいではないかと思います。今日は最初の3本をご紹介。
米国は近年何十年か民主党系の人たちが映画作りなど芸能活動に力を入れていましたが、現在はライバルの党が大統領。大手の映画会社も含め今後芸能界がどういう作品を作るのかは未知数。また、大手の会社とインディー系では作る内容がかなり違っており、今後そういう傾向が変わるのでしょうか。最近のアメリカ映画は今一勢いが無い感じです。
その分アメリカ以外の国にチャンスが来るとも言えますが、現在の政治状況に関わっている国は、映画などのんびり作っている場合ではなく、ここしばらくファンタに来る作品も傾向が変わるかもしれません。
所々です・ます調と、だ・である調が混ざっていますが、ご容赦を。
コール・ミーニーはドイツでは圧倒的にスター・トレックで名前が知られている。ドイツはイギリスの謎の円盤UFOよりアメリカのスター・トレックに宗教かと思われるほどファンが多く、そのためミーニーも有名。私は謎の円盤UFOのファンで、スター・トレックはほとんど見ていない。むしろザ・コミットメンツ の父親役で記憶している。あの時のミーニーは比較的痩せていたが、最近の写真ではかなり太っている。
ストーリー: アイルランドの田舎で繰り広げられるギリシャ風復讐劇。
監督: 長編デビュー。
トレイラー: 田舎の農場の様子がいい感じ。俳優は英語をしゃべっているのに、トレイラーには英語の字幕がついていた。ドイツ人はアイルランドの英語の方が米語やイングランドの英語より理解しやすいのだが、英語圏の人は却ってあのアクセントが苦手なのか。(下記参照)
後記: 冒頭に事故直前のシーンがあり、その事情が分かっていると、106分の作品が6分で片付いてしまう。
ネタバレ ・・・ マウスの左ボタンを押しながらカーソルで上をなぞってください。
ここから 「3人が車に乗っている。母親と思しき女性が「マイケル、止めなさい」と何度も言うが、マイケルが事故を起こす。このシーンではマイケルの顔は映さない。母親はこの事故で死亡。同乗していたキャロラインは大怪我で顔に大きな傷跡を残している。マイケルと母親が親子、キャロラインは当時マイケルの恋人。」 ここまで
この事故が原因でレイ、マイケル父子とキャロラインの家族はうまく行かなくなっている。その上で村に起きる羊をめぐる争い。当時のこだわりが原因で、死人も出る暗い話。
レイ、マイケル親子が地元の言語を喋るため、全編に英語の字幕がついている。ちゃんと会話で使われているゲーリッシュが聞ける数少ないチャンス。
原作: Adam Cesare
ストーリー: 小さな町に引っ越してきた父娘。この町の住民は工場閉鎖後2つに分かれていた。町の再建を図る大人と、現在だけを楽しみたい、でなければすぐ町から出て行きたい若者たち。景気のいい時代の会社のマスコットだったピエロが今は享楽的な若者を殺すのに忙しい。
監督: 2010年のタッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツらの監督。
トレイラー: 古いフォルクスワーゲンを登場させ、ダイヤル式の電話が使われるので、結構前の話。ポップコーン・ホラー。
ドイツ語で分かり易かった。
外国のサーカスを日本で見たことが何度かあるが、ピエロ、クラウンはあまり楽しいと思ったことが無い。最近映画ジョーカーがヒット。フェニックスは嫌いではないので、頑張って欲しいが、ピエロの姿は好きになれなかった。
トレイラーを見る限り演技ではあまり期待していないが、事件の背景がいいと思う。親子が引っ越して来た町が工場を閉鎖したため荒んでいる。こういう問題はアメリカにも日本にも多いと思う。
後記: アメリカの衰退した産業を舞台の背景に使って若者向きの作品を作るという視点はいいと思う。世代の亀裂を扱ったのもいいと思う。タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツらの監督だったので、もう少し行けるかと思ったのだが、ピエロが殺しまくるシーンが多くて、私の趣味には合わなかった。
大学時代アイスランド語を暫く勉強したので、読み書きや文法は分かるのですが、会話の授業でなかったので、話し言葉は挨拶程度しか分かりません・・・と思ったら作品では英語が使われるようです。
原作: 監督。
ストーリー: 19世紀の北極に近い漁村。夫を亡くした女性が船を村の漁師に貸して生活していた。ある日外国船が近くで沈没。冬で村自体が食糧難に陥っていた中、難破船の乗組員を助けるかの決断を迫られる。船からは食料品などや死体が村に流れ着く。
その頃から村人が行方不明になったり、妙なことが起き始め、死者が出る。1人の難破船の生存者が助けを求めるが、村人たちは彼の言葉が理解できず、彼を撃ち殺し時計を奪い、死体を焼却。
監督: アイスランド人。
トレイラー: 北極圏の漁村の人が英語を話すわけは無いが、作品では英語を話している。
ロケーションがいい。
後記: アイスランド語でやって欲しかった。
主人公エヴァが荒くれ男たちのリーダーのポジションにいた。北ドイツの農家などでもありそうな状況。夫が大きな農場などを持っていて、妻が未亡人になると、元々の部下は未亡人の言うことに従うのは珍しいことではない。アメリカの西部でもありそうな話だ。
生魚を食べる習慣が欧州には無いのかと思った。アイスランドなどには乾燥した魚を食べる所はある。
19世紀にまだあった迷信と天候、季節による困窮状況が重なり、話はホラー化というストーリーで、似たような映画は時たまあった。舞台が漁村だったことと、アイスランド人にバスク語が通じないところにこの作品の個性があった。
勧善懲悪式に見ると、彼女が船の乗組員を見殺しにすると決心したので、後で天罰が下ったと言えるが、この状態で彼女が他の結論を出せたかは難しいところだ。船に十分な食料が積んであって、漁民と一緒に春を待てばいいが、それではホラー映画は作れない。
日本の芸能人で髪を金髪に染めている人が時々いるが、止めた方がいいと思う。欧州では日本人の自然な髪が美しいと思われているし、ブロンドにするにはまず脱色が必要で、髪を非常に痛める。さらにブロンドの色は日本人の肌の色にミスマッチで、顔色が悪く見える。自然な髪の色の方が肌の色とのコントラストが良くて外国人にはきれいに思われるようだ。
ストーリー: 売れないパンク・バンドのザ・ゲスイドウズが最後のチャンスに賭けて田舎で合宿。新曲を作れというマネージャーの命令。昼は農村の仕事を手伝う毎日。有名なミュージシャンが27歳で死んでおり、バンドのリーダーは26歳。これが最後のチャンスと思い込んで頑張る。
監督: ファンタ初登場。脚本も担当。
トレイラー: バンドのメンバーを演じている4人は実生活でも音楽をやっているとのこと。トレイラーを見る限り俳優としての役目はちゃんと果たしているようだ。そしてバンドのメンバーは髪を染めていない!日本の家屋、主人公が着物を着ていたり、外国かぶれでない面も見せている。
後記: 初日の2本目。他愛の無いバンドの物語と考えると、いいポジション。
韓国政界は映画をはるかに上回る劇的な展開を見せていますが、犯罪映画やスリラーの分野では絶好調。
原作: 監督が書いたらしいがはっきりしない。
ストーリー: ベストセラー作家が殺される。幼馴染だった容疑者と担当刑事が何年ぶりかで再会。容疑者は作家に誘拐されたと証言。
監督: 長編デビュー。
トレイラー: 韓国の名前に詳しくないので、捜査官と聞いて勝手に男性と思っていたが、女性だった。
昔の出来事で女性が犯人に対して復讐をしたように見えるが、話はもう少し複雑そう。
後記: 今年は韓国から2本参加。こちらの方は解決に至る筋が何重にもなっていて面白かったです。
女性運動が安易に行き過ぎて、何でも男のやることを女にもやらせておけば批判を受けないというような傾向が見られる近年。監督が女性だからと言って、その作品が必ずしもいいとは限らないのが現状。逆にキャスリン・ビグローのようにまだ男性天国の時代にしっかりとした作品を作って見せた人もいますので期待はしているのですが。
監督は長編デビュー。この作品は女性が監督できめの細かさが出ており、それなりの女性起用の意味が見えます。
なぜかネットにはあまり記事が無く、無視されている感がありますが、被害者が女性という設定で、女性を主人公にし、女性が監督することに意味がある作品と言えます。同じストーリーを男性が監督しても別に構いませんが、この種の犯罪への理解力は必要。
ネタバレ ・・・ マウスの左ボタンを押しながらカーソルで上をなぞってください。
ここから 「女性が恨みを抱いている有名作家を殺すというところから始まります。警察に捕まることは承知の様子。現場から逃げず、武器も隠しません。おやっと思うのはある女性刑事と話がしたいと要求するところ。2人は幼馴染。殺人の加害者の女性が実は被害者に子供の頃誘拐され監禁され、苦しめられていたと話し始める。
その筋書きでははっきりしない部分があるため、刑事はその説明を解決とはせず、さらに調べる。すると彼女以外にも誘拐、監禁、虐待犠牲者がいることが分かる。冒頭の殺人では2人目の犠牲者をメディアや裁判から守るために、主人公がその人の罪を自分に誘導していた。しかも話はさらにさかのぼり、子供時代に女性刑事とのかかわりも見え始める・・・。 」 ここまで
将来のことを考えるとこの女性監督がいつも女性に配慮した作品を作らなければいけないと言うつもりはありません。時にはマッチョ男主演の男性天国の作品を作ってもいいです。要は監督業界に女性が増えてくれればいいわけです。
ストーリー: 失業中の映画監督の思い込みで話が進むのか、あるいは本当にエイリアンの来襲か。
監督: 主演も脚本も監督が。
トレイラー: 無し。
後記: 疲労困憊のため、ストーリーにちゃんとついて行けなかった。画面を見ると成功から見放された映画監督ジミーが周囲を見ているシーンは暗く、モノクロに近く、友人が見ているシーンは普通の色になっていた。全体にパンク風の音楽が流れ、ジミーはエイリアンがいると騒ぎまくっていた。
ベソンには商業的に成功した作品が結構あり、いつもファンタに参加するわけではありませんが、最近は DogMan ドッグマン を見ました。
脚本: 監督が。
ストーリー: 平凡で受動的な男と、積極的で限度を知らない女が出会ってしまう。男の人生は彼女に引っ張られて飛んでもないことに・・・。
監督: ベソンは映画監督としては変わった出発をしています。両親がスキューバーダイビングの先生で、自分もダイビングをやっていましたが、事故のためにこちらのキャリアを諦めなければ行けなくなります。
方向転換の先は映画。まだ若いうちから映画の仕事をしたり、勉強をしたり。私が最初に見たのはグラン・ブルーだったのですが、元々自分がダイビングをやっていたので、その知識が行かされている感じです。非常に感銘を受けました。主演のジョン・レノーと監督のベソンはこれがきっかけで私の記憶に強く残りました。
トレイラー: 女性はベソンが好きなタイプで、かなりの美人。男性はかなり普通。極端なことに連れ出されるジョン、思いっきりやりたい放題のジューン。
後記: ベソンのいい作品をいくつか知っている人には失望作。全く知らない人ならある程度楽しめる。主人公に選んだ女優はいかにもベソン趣味。
事情が先に分かってしまうと、エキセントリックなストーリーに理由がついてしまい、内容がつまらなく思えるのでネタバレは作品を見た後に読んでください。
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ここから 「ジューンは最近余命がもうほとんど無いとの診断を受けていて、映画に出て来るのは最後の何週間かという設定。」 ここまで
自分の車が使えなくなり通勤に地下鉄を使わざるを得なくなったボンボンのジョンが駅で偶然出会ったのがジューン。ネットを通じて本人に出会うことができる。正反対の性格の2人は意気投合。エキセントリックなジューンに引っ張られて、強盗までして、警察に追われる身に。
2人の関係はゴダール風というか、ボニーとクライド風というか、刹那的に現在だけを生きるスタイル。ベソンは別な時代ならこの作品で成功したかも知れないが、現実が映画を追い越している現代ではインパクトに欠ける。こういう作品は実生活が安全で、安定していてこそ受けると思う。今ではアメリカもフランスもウクライナ戦争に直接巻き込まれかねない。ドイツでは一般人に万一のための食糧備蓄などが言われ始めている。
映画がおもしろいかは見てみないと分かりませんが、ストーリーの着眼点が独創的。
ストーリー: きっかけは1995年の中国の一人っ子政策。2人目の子供ができた夫婦は次女を隠す。子供が自分を守れるようにと思ってか両親は2人に武道を教える。《以下はネタバレになるので下へどうぞ。》
監督: Lo chiamavano Jeeg Robot というちょっと変わったイタリアの映画を作った監督。
トレイラー: なぜかドイツの映画祭のためのトレイラーなのにしょっぱな日本語のタイトルが日本の文字で出ます。(イタリアのみの一国提供作品。)
重要な役の長老俳優はロバート・デ・ニーロ似。主演女優は顔を強調したシーンが多く、もう少し自然に動いた方が魅力が出るのではと思いました。トレイラーは2分に満たないので、いいシーンがあるのかも知れません。
ちなみに、ドイツに住んでいると、なぜイタリア監督が中国の話をと思いますが、イタリアと中国は繊維産業、服飾関係で結構深くつながっているので、イタリア人(恐らく北部)に取っては見慣れた外国人だと想像。ここで作られた服がフランスなどに出荷されていると聞いたことがあります。
ドイツは今日に至るまであまり洋服に関心を持つ人がおらず、やぼったい物を買ってそのまま着ています。イギリス人は買った物を自分のサイズに合わせて調整するらしいです。フランス人は新品のレインコートを買ってもそのまま着るのを恥じて、わざわざ裏庭で一度雨ざらしにして着るそうです。世界のトップクラスのファッションは有名デザイナーが死んだ現在でもやはりフランスとイタリア。
後記: 初日1本目。
Yaxi Liu は中国人のようですが、詳細不明。スタントの仕事をしていたことが伝わっていて、本編でもさすがという華麗な動きを見せます。
イタリアはドイツ以上に中国に浸透されていて、繊維産業などは中国人の助けが無いと成立しないとまで言われるようになっています。そのためローマに中国人がチャイナタウンを作っているという設定。
ドイツはどうやって防いだのか分かりませんが、フランスやイタリアのように自国の警察も入りにくい地域というのは防いでおり、アパートを1軒を丸ごと1つの国の国民に占領される状態も防いでいます。イタリアは行ったことがほとんど無いので、実態を見たことはありません。
ちなみに私は日本にいた頃は時々横浜の中華街、比較的頻繁に神戸の中華街には食事に行っていました。しかし日本人の警官が中に入れないような状態ではありませんでした。ベルリンにはチャイナタウンと呼べる場所はありませんが、1軒だけ東ドイツにある大使館に近い場所に学生寮があって、そこには中国人がたくさん住んでいました。
ネタバレ ・・・ マウスの左ボタンを押しながらカーソルで上をなぞってください。
ここから 「 2025年武道を身に着けた妹は行方不明の姉を探し、ローマにたどり着く。目を付けたのは中華料理店。手がかかりになりそうな情報を得て、姉とその恋人にたどり着くが、2人は殺されていた。
当然中華街のボスの王(ワン)に疑いが生じるが、姉の恋人はその男のイタリア人の親友が撃った銃の弾が当たっており、姉は絶望して死んだ恋人の目の前で自殺していた。なのでこの件に関しては王は無実。
この作品も妹が姉と恋人の死体を発見した時にもう少し死体の状況をはっきり見ていれば観客には死因が分かるはず。138分も引きずらずに、100分程度で終わっていたと思われる。 」 ここまで
中国市場を狙ったのかは分からないです。
折り紙の鶴が重要な役目を負っており、クレジットに簡略系でない漢字が出たりするので、中国本土で公開できるかは不明。それもあって、主演女優の履歴を少し探してみたのですが、スタント出身という以外出身国などはまだ見つかっていません。一人っ子政策への批判は現代ではやってもいいのかも知れませんが、中国に売り込むのには政治問題をデリケートに扱わないと難しいかも知れません。
リメイク: 2019年のアルゼンチン作品 4x4 のリメイク。
ストーリー: 主人公は裕福な医者と自動車泥棒。普通のダメ男が金持ちの持つ SUV を盗むつもりだったのだが、事態は予想外の展開。
過去にも似たような状況で2人の人物がとことん対決する映画はありました。ニコラス・ケイジなどが好みそうな話。今回の主演の1人はアンソニー・ホプキンスなので、気合が入っていると思われます。《この後はネタバレになりますので、下へ。》
監督: ファンタ初登場。
トレイラー: 主人公が思ったより若かった。あの芸能一家のスカルスゴード一家のステラン父ちゃんの息子。
車に乗り込んだら、ロックされてしまうのでタイトルが Locked。なるほど。アンソニー・ホプキンスはほとんど声だけの出演。
後記:
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ここから 「ダメ男エディーが後先を考えずウィリアムの鍵のかかっていない高級車 SUV を盗もうと、車に乗り込む。実は罠で、近所のマンションからエディーの様子を見張っているウィリアム医師。特注の車にはカメラがついており、ドアは遠隔操作で鍵がかかってしまうので外に出られない。叫んでみても防音機能のため外の人に声が届かない。銃を使って窓を壊そうとしても防弾になっている。食べ物、水もないまま時間ばかり経つ。車の色々な仕掛けで苦しめられるエディー。こうなると泥棒のエディーが悪いのか、手の込んだ罠を楽しむウィリアムが悪いのか見えにくくなる。
その上車は遠隔操縦で非常なスピードで走り出す。ウィリアムは末期癌のため、命は惜しくない。
見終わったら嫌な気分になりそうな作品。 」 ここまで
ホプキンス、ラッシュ、ケイジのようなベテラン俳優ならこの役は軽くこなせるだろうが、1時間半ほどの上映時間の大部分を声だけで演技している。彼の実力を知っていると、まあそんなものかと思うが、手は抜いていない。スカルゴードは狭い車の中でアクションをこなす肉体労働。
自分が死ぬ時に悔しいから他の人も道連れにというのは欧米では時々あるケース。妻子を残すと可哀そうだからと日本人は一家心中をやることがあるが、根本の考え方が違う。日本も最近は欧米型の犯人が出没しているが。世間話でも他の人を道連れにという冗談を時々聞くので、欧米では一般的な考えなのかと思いつつあるところ。
だらしない男がそれでも家族のために一生懸命な部分があるという筋は時々映画で見る。スカルゴードの役はその典型。
この作品は最初から手の内をさらして話が進む。なので俳優の演技と、車についている仕掛けが命。
脚本: Adam Elliot
ストーリー: 1970年代のオーストラリア。元は両親と双子の4人家族。母親は2人が生まれた時に死去。父親と苛められた時に自分を守ってくれる双子の弟がいたが、父親も急死。2人は別々の家に里子に預けられる・・・。
監督: 長編2本目、アニメ専門の監督。制作に8年かかっている。
トレイラー: 手間暇をかけていることが分かる。是非見たい。こういう作り方は今では贅沢と言える。
後記: コンピューター技術が発達した現代に8年も手間暇かけてクレー・アニメを作る監督にはボーナス得点を山ほどあげたいです。
95分の作品なのですが、話に入って行くと、もっと長い作品かと思うようなストーリー。
事の発端は4人家族の破綻。母親が出産時に死去。父親と双子の子供の3人家族に。父親は母親の死とともにアルコールに頼るようになり、現在は下半身不随。その父も死去。孤児になった2人は引き離され、別々な所に引き取られる。まだ2人が一緒だったころは双子の弟ギルバートがグレースをいじめっ子から守ってくれたが、今では1人きり。手紙を出し合う以外会うこともできない。グレースはそんな自分を慰めるためにかたつむりを集め始める。ピンキーという変な事ばかり言うお婆さんとの付き合いも少し慰めになっていた。しかし彼女も後半死亡。グレースは結婚もしてみるのだが、相手が悪かった・・・。
そういう風に元は〇人いたのに徐々に人が減って行く。最初はそれなりに幸せだったのに、それも崩れて行く。それを経験した後のグレースはどういう人生を過ごすのだろうというテーマ。
所々にギャグっぽいことが出来るので、DVDを買って細かい所を見ると楽しみが倍増するかも知れない。
ストーリー: 失業中のダメ男と人魚が出会う。
トレイラー: ナレーターがガチガチの英国訛りで語り始める。確かアメリカ映画だったと思うんだけれど。出演者は米語を話す。水族館では女性がアクロバットを観客に披露。舞台はどこかの海岸地帯。建物を見るとあまりうまく発展していない。主人公は DV も含め現代のダメ男とを体現している。
後記: 疲労困憊でパス。
原作: はっきりしないが、監督が書いたらしい。
ストーリー: 姉妹が新しいアパートに引っ越したが間もなく妹が失踪。彼女を探す姉は聴覚障害を抱えている。使っている補聴器は聞こえないはずの音をキャッチ。その上住んでいるアパートには秘密が・・・。
監督: 長編デビュー。
トレイラー: ファンタに来る韓国映画は絶好調。1番いいのは犯罪映画。それに続くのがホラーだが、女性の台詞のしゃべり方がややワン・パターン。このトレイラーにもそういうシーンがあった。勝負はストリーの方かと思うが、似たような筋は過去にファンタに他の国から来ている。長編デビューの監督、独自性が出せているかが勝負。
後記: もう1本の韓国映画の方がおもしろく、こちらは期待外れだった。
公団住宅のような建物の各階の1部屋で色々妙なことが起き、死人も出る。観客は一旦幽霊話の方向につられて行くが、犯人はいる。
大戦の歴史を知る人が見たら考え込みそうな筋書き。まあ、日英の2人が仲良くモンスターと戦うというのは希望的観測なのかも知れない。
藤岡ディーンというのは福岡出身の日本人で、5か国語を話す俳優。音楽もやる。アジアのいくつかの国で活動。インドネシアでは音楽をやっている。知らなかった・・・。
脚本: 監督が。
ストーリー: 今年のファンタには人魚も登場するが、ここでは半魚人が登場。時は第2次世界大戦中。場所はインドネシア。軍事裁判待ちだった斎藤が乗っていた船が敵の攻撃で沈没。島にたどり着くが、一緒に乗っていた英国人捕虜と2人で生き延びなければならなくなる。そこへ両棲人間登場。(アレクサンドル・ベリャーエフの話ではありません。)
監督: インドネシア人。
オラン・イーカン: 現地では有名な話のようで、映画のように大戦中に日本兵が平泳ぎをしているのを目撃したという話が残っている。地元の人は前から知っていた様子。死体を間近で見た日本人の巡査部長が帰国後学者に報告したが、取り合ってもらえなかった。
水陸両棲人間だが、水の中の方が自由に動ける。残念ながら写真が無いので推測となるが、見たのはこの巡査部長1人ではなかったらしいので、間違いとか、空想とは言い切れない。
アメリカでは戦後の1950年代にこの証言に似た生物を扱った映画が作られている。
トレイラー: 日本人が出る作品はなぜパッとしないのかを考えていたのですが、台詞の発声が素人臭いのが原因かと思い始めました。小学校や中学校の学芸会のような雰囲気が漂います。演劇学校では発声をトレーニングしないのでしょうか。
画面が暗くてよく見えなかった。
後記: 戦時中の両軍の様子については詳細に時代考証をせずに映画化している。兵士の姿勢、口の利き方からして現代風。飛行機の残骸も本物臭くない印象。しかし必ずしもマイナス点とはなっていない。B級の低予算映画というジャンルがあり、そういう作品のファンは枝葉末節にはこだわらない。
この映画のメイン・テーマは時代の描写ではなく、B級映画の雰囲気を出すこと。そこは十分成功していた。あの当時のこのジャンルの映画が好きだった人にはうれしい雰囲気が出ていた。プラス点を数個差し上げたい。
本来は英語が達者な藤岡氏は英語が分からない日本兵役。英国兵ブロンソンの「ロ」の部分を R で発音するか L で発音するかのギャグが理解できたのは上映中私たち2人だけだった。声を出して笑ってしまった。
重大な規律違反をした藤岡演じる斎藤が英国人捕虜ブロンソンと一緒に鎖で繋がれていた。乗っていた船が砲撃を受け沈没。2人は何とか島にたどり着くという設定が、当時の軍規に照らしてあり得たのかは分からないが、シドニー・ポワチエとトニー・カーチスの手錠のまゝの脱獄をパクった様子。オラン・イーカンでは手ではなく、足が繋がっていた。
最後が日英友好で終わるのは予想ができたが、2人で再逮捕される手錠のまゝの脱獄と違い、こちらはキリスト教であろうと思われるブロンソンが日本流に自分を犠牲にして自爆。斎藤が生還し、軍で事情を聴かれているところで終わる。時期から言って、戦争が終わった直後かも知れない。この日英の国民性の逆転は人命に関わる決定だったのでギャグとは呼びにくいが、自決をするのは日本人という既成概念をひっくり返していた。
オラン・イーカンの方も悲劇で終わる。どうやら元々は雄、雌のペアで、子供の誕生を控えていた。夫に当たるオスは洞窟の中で死んでいた。母親と日英兵士は必至で戦い、母親に傷を負わせるまでに来ていた。子供が間もなく生まれることを知った2人は当初子供を殺そうと考えたが、そうすると母親が怒り狂ってさらに危険になるとの判断で、最後近くまでやらない。いよいよこれで決着と言う時に子供を殺し、母親に傷を負わせる。そのシーンはモンスターとは言え、ちょっと気の毒。最後母親は生き残った様子。このいきさつを動物愛護運動家はどういう判断をするだろうか。
パラレルワールドが登場する時は眉にたっぷり唾をつけて見ましょう。
ストーリー: 娘を誘拐、殺害されたので、復讐のために犯人を追って世界中、パラレルワールドを駆け巡っている母親。
監督: 兄弟、長編2本目。脚本も。年齢不詳の2人の兄弟と主演のミヒャエラ・マクマヌス(41歳)は兄弟姉妹。兄弟は一緒に監督と脚本を担当。家内工業。3人ともロード・アイランド州のウォーウィックで生まれているので、もしかして三つ子?
トレイラー: タイムマシンのSFで主人公は色々な所へ移動するようだが、その時その時の舞台は現代のように見える。SFだということに注意を逸らされずにドラマの方に集中できそうな演出になっている。娘の件で怒り狂った母親が激怒で狂暴になっているシーンが出る。しかし現実には女性は男性とスポーツ能力も違うわけで、何か観客を納得させる方法を出してほしい。
ジェフリー・ラッシュはオーストラリア人として史上初のオスカーを受賞。元々は舞台俳優で、1996年にシャインで映画デビュー。そのままオスカー受賞。その後時々脇役で有名な作品に出演。その他に現在でも舞台で活躍。
ストーリー: 舞台は介護が必要な人たちの老人ホーム。主人公は元このホームに勤めていて、現在はここに住んでいるサイコパスと、最近卒中を起こして収容された元判事。サイコパス男は時々入居者を苛めて死に至らせていた。半身不随の元判事は対決を決心。
監督: 長編2本目。
トレイラー: 老人への虐待や差別が増えている昨今、出演者のほとんどが高齢。高齢の俳優にとってはありがたい作品。皆はっきりした英語をしゃべるので分かり易い。
欧州には国、町によって化粧をせずに外出することが少ない所と、ほとんど化粧をしない所があります。ドイツでばっちり化粧をしているのは主として大都市。それでも化粧をしない人を頻繁に見かけます。そのままでも女優かと思う人がたまにいますし、自然さを重んじている人が多いです。
日常生活できれいな人を見ても素直にその人が「きれいだ」と言いにくい時代に入りました。それを言うのが男性だとすぐ「お前は差別をした」と糾弾されかねない時代です。私自身もごく平凡な容姿。幸いなことに子供の頃から現在に至るまで自分の周りには女性の美醜で人を選ぶ人がおらず、幸せな人生を過ごしています。私の話し相手はほぼ全員趣味か職業で繋がっています。顔なんかどうでもいいようです。
リメイク: シンデレラ。
脚本: 監督。
ストーリー: 欧州のメルヘンをブラックなストーリーに焼き直した作品。
スウェーデンとフィンランドを繋ぎ合わせたような名前の架空の王国。連れ子のいる男女が結婚したため、2人の娘は義理の姉妹になる。しばらくして父親が死去。夫には遺産が無く、貧乏に。そこで国中で1番魅力のある王子に狙いを定める。王子は町中の適齢期の女性を舞踏会に招待して、花嫁を決める予定。母親も乗り気で、特訓が始まる。整形の医師を見つけ、荒っぽい方法で矯正。体重も減らさなければならない・・・。
監督: デビュー。
トレイラー: グロテスク路線。デビューとは思えないいいまとまり方。
アフリカの言語はスワヘリ語、ソマリ語やアラビア語などと思っていたのですが、ナイジェリアの公用語は(タンザニアのように スワヘリ語 + 英語 という形ではなく)英語のみでした。俳優は私たちのために特別に英語を話しているわけではありません。
ファンタには最近たまに監督や出演者がアフリカ人で、話の舞台もアフリカという作品が来ます。
アメリカでは最近欧州が舞台の古い話をアフリカ系俳優を使って撮影することがあります。現実味の薄い作品になり、人種差別撤廃の運動をやっているとしても効果が期待できるか疑問です。
仮に資金が欧米から出たとしても、脚本、監督、演技はアフリカ人に任せて、撮影場所もアフリカにする作品の数を増やすという形で非アフリカ人に現実のアフリカの人々や生活を紹介する方が差別撤廃につながるのではないかと思うことがあります。
今はまだ私たちにそれほど知識が無いのでアフリカ人とひとまとめに言いますが、そういう作品が増えて行ったらそのうちソマリア人、アルジェリア人、タンザニア人などと区別がつくようになるのではないかとも。そういう形で徐々に外国の様子に慣れて行く方がいいのではないかと思います。トルコ映画もファンタに来るようになり、ベルリンの町で見るトルコ人とトルコ国内のトルコ人がそう違わないことが分かるようになりました。そうやって少しずつ慣れて行くのがいいと思うのですが・・・。
ストーリー: 孤児だったためボーイフレンドの家族と知り合いたくなる女性と、自分の家族に背を向ける青年の物語。青年は婚約者の願いに賛成できない。
監督: ナイジェリア人。
トレイラー: のっけから中央ヨーロッパかと思える風景。ナイジェリアは気温が高い国なはず。登場する家は欧州風(英国の植民地時代の名残か)。車、家などは欧米の映画とあまり変わらない。服装は民族衣装と思われる物か、その伝統を継いだのではと思われる柄のシャツを着ている人もいる。ってな感じで、映画の筋だけでなく、その国の人たちの生活も知る機会になる。
余談: 人口は2億を超え、若者が多いので将来発展の可能性が大きい。元々は王国などがあった所で、19世紀から英国の統治。東京オリンピックの少し前、各国の独立の動きがあった頃に独立。
文化の違う〇〇人と呼ばれる人たちが3桁の数おり、その数だけ言語もあるため、英語を公用語にしたのは仕方ない解決法だったのかも。どうやら法律では地元の言語は禁止されていないらしく、自宅で英語を話す人は少ない。
日の丸みたいな国旗のニジェールと間違えやすいけれどニジェールは隣国。ドイツ語ではナイジェリアはニゲリア、ニジェールはニガー/ニゲール。ニジェールというのはトゥアレッグ語で「川」という意味で、両国を通って流れるニジェール川から名前を取っている。「川」という名前の川から名前を取っているので、「川川」。
元々は黒人を意味するわけでも、黒を意味するわけでもなかった。フランス人が植民に入って来て、自分たちの知っている言語では「黒」という意味だったので、そういう風に解釈されるようになったらしい。
トゥアレッグにも昔から興味があって、大好きなテーマですが、ここでその話を始めると長くなるので割愛。 いずれにしろこうやってアフリカ人によるアフリカ人が出る映画を作ってくれると、私も興味を持ってその国のことを知りたくなるので、他の国も頑張ってもらいたいところ。
原作: 監督本人らしいが Pablo Hernando Esquisabel と名乗っている。
ストーリー: 依頼を受けて仕事を請け負う殺人者の女性。非常に能力が高く失敗はしないのだが、彼女についての履歴は全く不明。
監督: スペイン人。
トレイラー: 白髪の老人が若い女性に殺人を依頼する。女性は天才的な能力を備えている。その様子が語られるが、彼女の特殊能力の描写を見ると、SFではないかと思う。
後記: イングリッドという名前のスウェーデン、スペイン系の女優が北欧出身の女性イングリッドという役をやっている。写真を見ると可憐なかわいい感じの人だが、作品中ではプロの殺人者にふさわしい無表情な様子で演じている。両方の言語をこなす。
制作はスペインとイタリアなのだが、フランスっぽい雰囲気が漂う。
主人公イングリッドは暗殺を仕事にしている。変わった体をしていて、額あたりから白いねばっとした液体が出て来ることがある。暗殺の技術は非常に優れていて、確実に相手を仕留め、証拠を残さず逃げおおせる。この能力は地球外から得た様子。ちょうど今引き受けた仕事が二重契約になりそうで、話がややこしくなる。
この作品の個性は主人公と全体の雰囲気の静かさ、白黒に近い画面。映画館の大きなスクリーン、そして仕事部屋など明るい所でなく、暗い所で見ないと雰囲気がうまく伝わらないが、成功している。しかし地味過ぎて映画館が取り上げないかも知れない。テレビにはもったいない。
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