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参加作品
開催予定:2010年8月
今年もファンタの季節となりました。参加予定の作品が発表になっています。現在のところ50本のタイトルが発表されていて、アジアからは日本の参加が目立ちます。今年も2館3ホールらしく、全体ではまだ20〜30本ぐらい増えると思います。
今年の目玉は鉄男 3 でしょう。ドイツには鉄男シリーズの根強いファンがいます。この日だけは客層ががらっと変わるのではないかと思います。
・・・などと書いてアップするつもりだったのですが、数年前の事故の後遺症らしきものが出て、体を動かすと激痛が走るようになりました。医者だ、治療だとやっているうちにファンタのラインアップはそろいました。
今年は最近数年に比べると規模が縮小した感じです。これまでが「えええっ!?」と驚くような豪華さだったので、縮小と言うより、やや普通になりつつあると言えるでしょう。去年まで合計で2ホール以上だったのですが、今年は2つ。1つはドイツでも最高の音響設備です。ちょっと不便なのは、2ホールなら1館にしておけばいいのに、なぜかライバル館2軒で各1ホール使用。なので時々大通りをはさんで向こう側に移動しなければなりません。そうなると休憩時間が短くてきつい。
今年は概ね開始が午後1時なので、移動と食事を休憩時間に上手に組み込まなければなりません。日数はなぜか今年もベルリンは1日多くて、火曜日から始まります。その日にすでにオープニングの作品の他にもう1本見られます。
例年とやや違うのは2日目がダブル・プログラムになっていない点。これまではオープニングの翌日から1コマに2本入っていて、1本選ばなければなりませんでした。今年は2日目は各1本なので、1日中同じ映画館に座っていられます。
これが3日目からのスケジュールに大きく影響します。何しろオープニングの日と、2日目に見た作品合計7本はもう1度見る必要がないので、3日目以降のダブル・プログラムではこれを除いた作品を選ぶことになります。というわけで最初の7本がその後見る作品を強制的に選ばせるという形になります。それが凶と出るか吉と出るかは終わってみないと分かりません。
終わって見て考えると今年のファンタはいくつかの点で異例でした。
★ 会場変更
過去にも会場の変更、追加はありましたが、今年は去年も使ったベルリンで最高の設備の2館。異例なのは各館1ホールずつの開催だった点。そのため私たちは例えば1日6本見るのに5回大通りを渡って向こう側とこちら側の館を行き来しなければなりませんでした。8月ということもあってか、現在ポツダム広場は工事現場だらけ。ファンタの会場の1つも館内が工事中で開催に間に合わないかと危ぶまれるほど。館外も工事中なため、大通りを横断するのもちょっと骨。休憩時間は平均15分なので、その条件を合わせるとかなり骨です。去年までは多くの場合同じ館の隣のホールに移動するだけ。真隣なので、1つのホールを出て、すぐ横のドアから隣に入るだけです。休憩中にトイレに行ったり、食料を仕入れたりしながら、ロビーや映画館の前で友人との意見交換もするのですが、今年はそんなのんきな事を言っている時間はありませんでした。
こうやってわき目もふらず通りを横切る黒装束の大行進を2時間ごとにやるのですが、インフラについて言えば、今年の対策は1つ良い点がありました。黒装束については後述。
★ 工事現場で開催
これまで使っていた小さい方のホールは空調が悪く、会場が満員になると酸欠状態。なので眠くなってしまいます。今年はライバル館の1番いいホールを使ったので、空調は良く、小さい方のホールより多めの人数を収容できるのに空気は良い状態。椅子もあまり大柄な人でなければ(ファンタでは190センチを越えた男をちょくちょく見かける)、すわり心地が良くリラックスできます。開催当日にようやく工事が間に合ったトイレもホテル並の豪華さ。これまでのトイレもみすぼらしいわけではなく、一流館に相応しかったですが、今度はそれ以上になりました。
ドイツは日本と違い、デパートの内装工事などでも営業時間終了後でなく、営業中にやります。映画館も同様で、ファンタ開催にはこぎつけましたが、同じ館内ではまだカフェや階段の工事をやっていました。
★ 黒装束の異様な移動
ファンタの参加者は男性が圧倒的に多いのですが、黒装束の男たちというのは、ファンタが10年以上前から通しのパスを予約した客に無料でTシャツを配ったことに起因します。どうやらスポンサーからの支援だったようなのですが、毎年黒い地に恐怖の1シーンをデザインしたシャツが配られます。最初のうちは時々それを着て来る人がいた程度ですが、そのうちに枚数が10枚を越え、ファンタ開催中の8日(9日)間、毎日違うTシャツを着て来るのが伝統になりました。私もその1人ですが、皆が Fantasy Filmfest (通称 3F、または FFF)と書かれたシャツを着てその辺をうろつきまわっているという状態でした。
それが今年はうろつきまわったり、井戸端会議をする暇など無く、1つの作品が終わったら、出演者の名前を見る暇も無く脱兎のごとくホールを抜け出し、大通りを渡ってもう1つのホールへと向かうわけです。その様子を知らない人が見たら、黒装束、大荷物抱えた男たちが一斉に目の色変えて銀座4丁目か新宿の大通りを横断するみたいな状況です。
実はファンタには映画に出て来るような黒装束で危険そうな男たちも多いです。体格が良くて、普段は無口(を装い)、できるだけ鋭い目つきをしようと試みています。中にはオートバイに乗って来る人もおり、「その辺の馬鹿な女には関心も無い」ってな様子です。ところがこういう人に限って、燻し銀のオートバイ・ヘルメットになぜかクマの耳がついていたり、日本のアニメの目の大きな女の子に夢中だったりするのです。無口を装っているのは映画館から100メートル離れた所から先の話で、館内と映画館の前の通りでは積極的に井戸端会議にいそしんでいます。煙草を吸わない人も多く、生活は健康そのもの。
★ 同権社会
今年開催中に知らない女性から話し掛けられたのですが、その女性たちは一般人のおばさん。私をバスで見かけたとかで翌日館内で話し掛けて来ました。ファンタには元々女性の参加者が少ないのですが(女性も黒装束)、その普通に見えるおばさんたちから見ると、黒装束の男たちでは話し相手にならないだろうというので私に目をつけたのだろうと想像しています。私はたまたま健康上の理由で黒でないズボンをはいていました。私はちょっとだけ話して、また黒装束の群れの中に入って行ったのですが、黒装束内の男女同権、年齢同権はその女性たちには思いもよらなかったのか、私が2人との話を切り上げて群れに入って行ったのを見てちょっと驚いた顔をしていました。
大分前にはファンタには強そうに見える男性にくっついて来る女性というパターンもあったのですが、自然淘汰されたのかほとんどいなくなりました。8日、9日の間に40以上50弱のコマ数をこなす上(概ね午後1時から翌日の午前1時、2時頃まで + 映画館への行き来にかかる時間)、通しのパスを買えば安くつくとは言え、大失業時代に3桁(円に換算すると5桁)の大金を払うので、この期間休暇を取って気合を入れて参加するか、参加作品の中から数本だけを選んで見るかの選択を年明け、春が来る頃までに迫られます。
その結果残るのは強そうな男にくっついている女性でもなければ、女をはべらせている男でもなく、映画が好きな人のみ。ファンタ以外でも映画をたくさん見ている人、リメイクの元ネタを知っている人、原作に使われた小説を読んだ人、特定の監督に関心のある人、無名の新人監督を見てやろうという人、理由は何でもいいですが、観客として関心を持った人だけが残ります。オタクの人権も尊重されます。オタクとオタクでない人が対等に話す井戸端会議でもあります。オタクは日頃の豊富な知識を披露、オタクでない人はオタクを生き字引として尊重。言わば歩くデーターバンクですので。
★ グループの縮小拡大
以前はいくつかの対立の無いグループに分かれていたのですが、一時期ハードコアの人数が減り始め、それをきっかけにいくつものグループが横の交流を始めました。それがここ数年の間に井戸端会議の規模を大きくし、ハードコア全体が仲良くなっています。1つの作品を見てそのホールにとどまり次の作品を見る人に、その前の時間別な作品を見る人が座席の確保を依頼するという実際的な面もあります。しかし話はそれだけでは終わらず、自分が見なかった同時上映の作品の感想を聞いたり、その人がこれまで見た作品の情報を仕入れたり、そんなこんなで友達が増えて行きます。私は社会がどんどん孤立化し、人との付き合いの下手な人が増え孤独な人が溢れる様子をずっと見ていたので、ファンタの仲間の逆方向への発展を喜ばしいと思って見ていました。
ラブ・パレードなどにはドラッグを持ち込む馬鹿がいるので、いくら若者の交流だと言っても賛成できなかったのですが、ファンタでドラッグをやっている人は見たことがありません。ビールは売っていますし、飲んでいる人もいないわけではありませんが、ハードコア派はほとんど手を出しません。
なぜか・・・。自明の理なのです。
平均的に見て、午後1時に映画館に来る人は昼の12時半頃家を出ます。それから翌日の午前1時、2時まで映画を見て、帰宅は夜バスなので1時間弱。睡眠、朝食、食料調達などを午前3時前あたりから始め、12時半にはまた会場に向かいます。ハードコアは年齢が高くなり(90年代半ばから参加している人も多い)、職業を持った人が多いので、ドラッグなどやっていたら現在まで続いているはずがありません。それを抜きにしても、1日12時間映画を見て、その内容を理解し、記憶するにはドラッグやアルコールの入る余地がありません。平均年齢が上がったハードコア派は皆10年前と比べ太ってしまいました。そのため今年の会場移動は主催者が「ちょっと運動をして贅肉を落とせ」との気配りをしたのかという冗談もあります。
★ 異例のスケジュール
スケジュールの組み方も異例で、オープニングの翌日は組み合わせプログラムは無く、用意された作品を5本連続で見る形でした。普段はオープニングの日にオープニング作品ともう1本を出されるまま見、翌日からは組み合わされた2本の中から1本選ぶ形式です。今年は2日目にも選択無しで5本見るため、3日目以降の作品選択で強制的に最初の2日に見た作品が抜けます。スタート時にその後見る作品を決められた形になりました。
★ 異例のプログラム
そして何よりも異例だったのは参加した作品のかなりの部分がファンタらしくない作品だったこと。同じ事を感じた人がハードコア仲間にも多く、普段は1作も逃さず見る猛者も今年は何箇所かでパスしていました。私は体調を崩してファンタに突入したので、所々で休養するつもりでいましたが、予定以上の数パスしました。
今年は社会ドラマにいくらか犯罪を交えた物と歴史物が目立ちました。ファンタはどちらかと言えば犯罪内容や犯罪者にスポットライトを当て、時には少し社会情勢にも触れるスタンスでした。今年は社会情勢がよく見えるように作られ、プロットの詰めなどにはあまり気を使っていない作品がいくつもありました。英国系の作品にそういうのが多かったため、結果として英国がどんなに怖い国かという点が表にはっきり見え、英国がわざわざ自分でお金を出して、世界に「我が国にはこんな危険な人物が住んでいるんだよ、我が国の一般市民の社会はここまで崩壊しているんだよ、英国には近づかない方がいいよ」といったメッセージが発せられてしまいました。あのマイケル・ケインも友人を殺されて切れてしまう危険な男を演じていました。私がこんな恐怖心を感じたのですから、俳優はすぐれた人たちだったと思います。映画の内容より、そこに描かれている普通の人の方が怖かったです。これがどこまで英国社会の実情を反映しているのかはそこに住んでいないと分からないでしょうね。
その他を見渡すと、《これこそファンタ》という作品が少なく、《これがファンタに来る必要があるのか》といった作品が目立ちました。ここ数年ずっといい作品を持ち込んでいて、「この調子でどこまで行けるか」と危惧していましたが、今年はそれが初めてはっきりした形になって表われたことになります。業界が斜陽傾向で、主催者がいい作品を見つけられなかったのか、来年が25周年なので、今年は少し弱い作品になったのか、理由は不明です。ハリウッドとは趣を異にする欧州の作品も弱く思えました。私1人がそんな風に考えたのかと思ったのですが、最終日に仲間と話していて、皆同じ意見だったことが分かりました。原因をどれかに絞るには至りませんでした。
オードブル(2010年3月)
参加予定作品
オープニング
冬のほとんど誰もいない道でヒッチハイカーを拾った女性の災難話。子を思う母親がお腹を空かせた子供のために食料を調達するという聞くも涙の物語も、ハイカーを拾った女性がその食べ物だとなると、これはもうファンタの領域です・・・。
後記: これがオープニング作品かと訝る意見が飛び交いました。はっきり「ダメ」と言う人も出ました。「お腹を空かせた子供のために食料を」というのは与太噂で、とんでもない母親とそれに協力する息子、そして息子が最終判断に至るという話です。「子供のために」の子供が息子を指していないというところで捻りが効いています。とんでもない母親に呆れることはありますが、特にインパクトが無く、あのフィリップ・ナオンも恐怖を醸し出すでもなく、これまで見たフランス・ホラーの方が怖かったです。
これまで一言も発さず血も凍るような役でしか見ていなかったフィリップ・ナオンが珍しく台詞もあり、普通のおじさんだったのが唯一注目に値する点でした。
特別上映
アレックスでファンタでは絶賛の監督。主人公が日本に滞在するという形で日本が登場する幽霊話。この作品を選ぶとプリビューが見られないので、選択が難しいです。なにしろ2時間半ぐらいの長さ。
後記: 幽霊話というのは何かの間違い。全然幽霊は出ませんでした。
アレックスに比べると届くメッセージがボケています。今年は描写が大部分で、監督がそれを使って何を言いたいのかが分からない作品が多かったです。アレックスがあれほどはっきりしたメッセージを届けたのに比べ、ドラッグ・シーンの描写が長く、主人公兄妹の家族関係が描かれているのに、それがどの方向にも向かっておらず、ただ描かれているだけという結果でした。
監督には「なぜ妹を自分で自分を護らない女性に描いたのか」と聞いたのですが、答は「彼女が馬鹿だからさ」でした。私は監督が妹をそういう人物に造ったと思ったので、何を思ってそういう人物を造ったのかが知りたかったのですが、こういう答でした。逆に監督は私に自分が日本をこういう風に描いたことについてどう思うかと聞きました。答える時間が無かったのですが、私は日本のドラッグ・シーンはかなりひどいと思っていたので、まあこの程度の描写はアリだろうと思っていました。
私は自分が大切にしている人をこういう世界に引き込んでしまう人(ここでは兄)の方に腹がたちましたが、この主人公の場合私なりの解釈をすれば、早くに親を無くしてこういう事が危険だと学ぶ機会を逃したのかということになります。その辺監督がどういう意図だったのか知りたかったです。
ファンタというのは時々監督が招待され、私のような記者でもキャスターでも何でも無い人間が本人に目の前で直接疑問をぶつけることができるので、その辺は贅沢だと思います。ずいぶん色々な人と話す機会がありましたが、ヤン・クーネン、ギレルモ・デル・トロなどは今思ってもうれしいハプニングでした。
注目の作品
お金は英国から、出演者も外国で賄っています。
後記: ファンタが好きな日本人監督の1人。全部外国の俳優を使って、それなりに上手くまとめてありますが、ファンタにはちょっと弱い。ティーン向きです。これを日本人の俳優で作ったらもっとみっともないことになっていたかも知れないので、この企画には賛成ですが、日本人が外国で作った作品としてはミッドナイト・ミートトレインにかなり水をあけられています。
ベルリンとハンブルク終了時点では、評価が大きく分かれ、満点に近い評価と、10点満点中5前後になっています。私も低い方の評価です。
注目の監督
名前を見ると日系の監督。南カリフォルニアののどかな町に起こる大学1年生のホラー事件。
後記: 事前の説明を見て避けた人がハードコアに多かったのですが、ベルリンとハンブルク終了の時点ではかなり高い評価で、満点に近いです。
アジア特集
ドニー・イェンには香港のギャングか乱暴者の刑事をやらせておくのが1番だと思うのですが、最近時代劇に動員されています。明朝の時代に武術などを身につけ皇帝の特殊部隊錦衣衛の一員となった男が陰謀に巻き込まれて行くという話。英語のタイトルは14種類の武器を指しています。
後記: 今年なぜか多かった歴史物の1つ。やはり見た人はドニー・イェンに向いた役ではないとの意見でした。ファンタにはイェンのファンは多いです。私もその1人で、コメディーもシリアスでも好きですが、歴史物でシリアスというのは彼に合わないように感じます。
かなりえぐいとの前評判。過去に犯罪を目撃したことでトラウマを抱えた女性が都会の職場を離れ暫く休暇を取り、親戚の住む島にやって来るという話。無論それだけで済むはずは無く、幼馴染の妙な境遇、起きた事件を隠そうとする島民など事件に発展。
後記: 自国の様子をこういう風に描いて作品を海外に出すと、韓国はひどい国だ、韓国人はひどい事をする人たちだというメッセージを自ら発してしまいます。今年の英国の作品にもこのスタンスが目立ったのですが、どういう意図でやったのかは見終わっても分かりませんでした。何も作る映画全部で自国を褒め称えなくてもいいですが、その辺のバランスはこの2国、どうやって取るのでしょう。
島に住む友達が女王のように振舞ってやりたい放題やっているという事前に読んだ資料とは話が違い、都会から来た女性の友達は島の男たちからも女たちからも奴隷のように使われているという設定でした。都会の女性に助けを求めても無視され、最後は切れてしまいます。現代の韓国でこんな事が可能なのかという話ですが、あれだけひどい目に遭ったら切れるのは当然だろうという風に筋が進みます。ただプロットの必然性の点で説得力に欠け、辻褄が合うように伏線を引いたつもりのようですが、詰めが甘いです。《切れる》ありきで、後からその理由をくっつけたような印象を受けます。
前回見たベトナムの作品はそれなりにおもしろかったのですが、今回はどうでしょう。
後記: 仲間内ではこれが1番弱い作品との声も聞かれました。私はそれなりにおもしろかったという前回の感想を今回も持ちました。無論ピカピカのアクション映画を作れる映画大国と比べると見劣りしますが、アクションにトリックを使っていない、センチメンタルに作っていても甘過ぎないなど、全体のバランスのいい作品と感じました。次回にも期待しています。
しがない不動産屋のサラリーマンが武道の達人の老人の元に弟子入り。説明を読むと安っぽそうなのですが、こういうのが実はおもしろかったりするので、油断なりません。
後記: ファンタでこういう作品が出るとハードな作品の合間の清涼飲料のような作用があるのですが、今年は他の作品が期待を大きくはずしたので、この作品はマジで上位に食い込んでいます。
香港の立場を深読みして見ると、現在の香港人の誇り、苦労などが垣間見え、私もちょっと悲しくなってしまいますが、そこまで深読みもできる作品です。
韓国名の監督ですが、出演者名には日本人の名前が多いです。どういう話かは分かりませんが、吸血鬼が出て来ます。映画化に先立ちゲームか漫画か何か別な原作があるようです。
ウィルソン・イップ作品はいくつか見ていますが葉問と比べるとずっとおもしろいです。去年葉問を見ましたが、ドニー・イェンの良さが出ておらず、作品の枠組みに押しつぶされたような印象を受けました。なので今年続編を見るかはまだ分かりません。
後記: 私は去年1を見た結果今年はずしたのですが、同じ決定をした人が多かったです。
ジャッキー・チャン出演。
後記: 見た人は満足していました。
本人のインタビューも含めいくつか情報が入っていますが、出て来る人は全員悪人だそうです。監督としては普段あまり悪役をやれない人にも思い切って悪役をやってもらおうと努力したそうです。
後記: 北野の犯罪者なので強いインパクトを期待していましたが、それは無し。隣に座っている日本人の女性は血を見るシーンで顔を覆い、指の間から見ていましたが(笑、怖いなら見るなよ)、北野の冗談を良く知らない人かも知れません。ファンタのドイツ人常連は笑うべきシーンでは笑っていました。外国でもそれなりに理解されているようです。
欧州には北野を盲目的に支持する向きもあるのですが、ファンタでは8点、9点をつけた人が少しと、北野にしては低い評価(5点前後)が多数。
長い間アニメの原画を作ったり、アニメ関係のスタッフをやっていた人。
後記: ハードコアのアニメ・ファン数人からは受けていました。「もう1度見るぞ」と言っています。2度目は音声を切って、画面だけを楽しむのだそうです。どういう楽しみ方なんだ、君たち。
本業はお笑いの監督。しんぼるが処女作でないところが凄い。巷に出ている解説をまとめると、実験映画のようで分かりにくい内容だそうです。
後記: 私にはこの作品が今年のファンタの中でかなり分かりやすい、主張のはっきりした作品に思えました。解説を読んだり、井上さんから仕入れた情報などを総合して分かりにくい、あるいはついて行きにくい作品と想像していました。しかし「監督はこうやりたかったんだ」という内容がはっきり出ていて、私にはついて行きやすかったです。今年は他が勝手に地盤沈したしたこともあり、この作品は個人的にはかなり上位に評価しています。
後日知った評価ですと、世界的な評価で10点中7点、ファンタのベルリン、ハンブルク公開の範囲では8点。絶賛されています。私も賛成。ファンタの人はこういうのが好きです。
満を持してというか、長く待たせた後の新作です。これが3本目。この作品には特殊なファンがいます。今年もそういう人が大挙して押し寄せるかも知れません。その日だけファンタの会場は異様な雰囲気になるかも知れません。
後記: ファンタのファン層とは違う人が大挙して押し寄せるだろう、かなりインパクトの強い作品だろうなどと想像していたのですが、きれいにはずれました。まず鉄男2の時のような異様な雰囲気の男性が大挙してということはありませんでした。座席が取れるかすら心配していたのですが、楽勝でした。
そして作品は仲間がいみじくも言ったように、「これ作らない方が良かった」。監督はかなり出世しましたし、その気になればスポンサーは見つかると思います。なのですからもう少し筋を考えて、最初の2本の路線にすれば良かったのにと思います。私の趣味ではありませんが、最初の2本にはそれなりの方向があり、美学もありました。3本目は何もかもが平凡になったというのがファンタ仲間と私の意見です。
血の滴るコーナー
タイトルの通り女性が誘拐される物語。
後記: 後で見たので解説を入れておきました。
後記: 体調を崩していたので全部は理解できませんでした。きちんと見た部分だけでも爆笑で、笑うと咳が出る、咳が出ると近所に座っている人に迷惑がかかるなどと気にしながら見ました。プロット良し、出演者は役にぴったりで、風刺の辛子はピリッと効いており、最後にちょっと悲しいショーダウン。この作品は私のベスト5に入り、ファンタの投票でもベスト作品に選ばれました。友人も皆賛成しています。
この作品も普段ならたくさん見る残虐な犯罪ドラマ、お先真っ暗のSFの合間に清涼飲料のような効果を出す類の作品ですが、今年は他が地盤沈下したためこういう作品がマジで上位に入りました。
後記: 投票でベストに選ばれるかと思っていたら意外にもフォー・ライオンズに抑えられ、2位。
引退した元海軍の軍人が、親友の惨殺を機に切れてしまい、友達を殺した無軌道な若者を自らの手で片付けて行くという話。ダーティー・ハリーを演じるのがマイケル・ケイン。
今年の英国の作品は英国がいかにひどい国か、一般人がいかに危険か、愛情や思いやりの無い社会かという点を強調した作品が目立ちました。その1つで、マイケル・ケインほどの俳優も一枚噛んでいます。《これほどひどくなってしまった》の後に《だからこうしよう》が来れば見る側はほっとしますが、まだその段階には及んでいない様子。映画の世界なので現実をどの程度反映しているかは見ただけでは判断できませんが、夢を届けるのが映画という時代は終わったようです。いや、悪夢も夢の1つか。
後記: 一応ファンタ向きの作品ですが、弱かったです。メキシコの半分がエイリアンの汚染地区に指定されてしまい、そこから娘を脱出させろと社長から命令を受けたジャーナリストの冒険物語。
後記: 女の子の方が男の子より先に大人になるがために起きる幼馴染の悲劇。説得力のある話に仕上がっています。
ほのぼのとした友情、青春の始まりが詳しく描かれ、事件は後半にエスカレートします。作品の重点は事件そのものよりそこに至る過程。そういう意味で監督の意思のはっきりした作品です。ただその結果ファンタ向けではなく、一般向けに仕上がっています。
後記: タイトルは主人公の名前。低予算でも基礎的な部分がしっかり安定した作品に仕上がっています。主人公は監督の従兄弟。そうやって資金を節約したのでしょうが、トニーを演じた俳優はかなり実力があります。70分台というかなり短い時間に大きなドラマをしっかり描き切っています。
映画作りという意味では足が地に着いた手堅い作品として次にも期待が持てます。英国をどういう風に描くかという意味では、これまで何度か触れたように、国の印象は悪くなります。
後記: 虐げられた人、仲間はずれになる人を人肉を食らう人々という形にした、シンボル的な作品。家族の役割、それまでの安定していた役割分担が、一家の主の死によって崩れる。その後どうやって生きて行くか、緊急に自分たちで父親がやっていた事を継がなければ家族が死ぬ・・・んですかねえ。
真夜中の狂気
後記: 体調を考えてパスしたのですが、後で評価を見たらけちょんけちょんでした。
タイタニックで全世界の女性から憎まれたゼーンですが、キャリアはその後もある意味で順調。ディ・カプリオのようなスターにはなりませんでしたが、間もなく出演作が100本に達します。当分失業はなさそう。
ベルリンには参加しません。
後記: ・・・と言っておいて、プリビューに出して来ました。
同じタイトルの続編も作られています。
日本人の名前も見られます。アイスランド人には一般的に苗字というのが無く、-dóttir という名前の女性は何とかさんの娘さん、-son という名前の男性は何とかさんの倅という意味です。
ファンタにミュージカルというのは珍しいですが、皆無ではありません。しかしマルコム・マクドウェルというのは意外です。
後記: ミュージカルではなく、バンドが出る作品でした。思ったほどおもしろくありませんでした。
その他参加予定作品
普段は俳優として有名な監督。出演者に家族と思われる名前も登場。友人に裏切られた男の復讐劇のようです。タイトルは体内に撃ち込まれた銃弾の数。
後記: 今年の作品としては比較的気合の入った作品でしたが、例年のレベルで見ると平均的。
後記: アメールというのは苦い、ビターという意味。まさにその通りの作品で、ちゃんとそう言われていたのに引っかかった私たちが悪いというのがハードコア派の反省。
ジェニファー・ロペス、アントニオ・バンデラスのボーダータウンと同じテーマを扱った作品。
後記: デモン・ラバー、ボーダータウンと予習をし、その後でこの作品を見、最後に Rubber を見るとフルコース完成です。
ここに挙げた作品名の中で1番真剣に問題に取り組んでいます。ボーダータウンもそれに負けずまじめに取り組んでいますが、大スターの名前のせいでそのまじめさがいくらか見過ごされるかも知れません。
厳格な数え方では400人から600人、映画で示された統計によるといつの間にか犠牲者は4桁の数になっており、この町は悪党のディスにー・ランド状態になっているように見えるので、どんな形にせよこの問題にスポットライトを当てるのは良いことだと思います。ジェニファー・ロペス版でもプロットが甘いとか批判はありますが、バンデラスやロペスのような有名人が主演をしたというだけでも何かしらの助けになると思います。
Backyard の難点は組織的に起きた事件である可能性があるのに、1人の女性と数人の男の子の問題にしてしまい、女性を暴行した人が死体をあそこに捨てるのだという次元で終わっているところ。そしてフィクションなので生真面目な青年を誘惑した無謀な田舎の女の子という設定になっているところ。しかしながら、政治家に話を持ち込んでも効果が薄いというようなシーンではロペス版よりつっこんであり、1つ前に進んだように思います。しかしショーダウンでまた女性が間違いを犯したことになっていて、事件にスポットライトを当てることがプラスだとすれば、他の描き方でマイナス要素もあります。
現実の事件で犠牲になっているのは中学生の年齢から25歳ぐらいの女性。多くが近くにある国際コンツェルンの工場労働者。容疑者は時々挙がりますが、稚拙な捜査方法、ずさんな証拠が貯めが理由で結局ほとんどが釈放になっています。
監督は Severance と 0:34 レイジ34フンでファンタに参加している。タイトルはそのものズバリ黒死病。中世に欧州で大流行したペストのことです。映画では1300年代。騎士、僧侶などが出て来ます。
後記: 今年はなぜか監督の目指す方向がはっきりしなかったり矛盾する作品が目に付きます。この作品も「結局どちらを向きたかったか?」という疑問が残ってしまいました。何かを批判したかったのか、時代を描写したかったのか、キリスト教の当時の力を示したかったのか、誰かが正義を守っていると言いたかったのか等など。どこに重点があるのか、何が映画の主張なのかが分かりませんでした。
ドッグ・ソルジャー他でファンタに何度か参加している監督。
後記: 今年比較的多かった歴史物の1つ。時代を描写したものとしては時代考証が甘いのではないかという感じがします。撮影に使われた場所も英国と見えにくいです。テーマは今年のファンタで何度か見られた《裏切り》。
紀元117年の英国。侵入して来たローマとの戦いで大幅に兵士を失った百人隊は将軍も失い、這々の体で脱出を試みます。逃亡中に仲間に犠牲も出、敵の女兵士には徹底的に恨みを買い、逃げ切れるかどうかが焦点。第9軍団ヒスパナの物語。
おもしろそうなのですが、鉄男と重なるので困っているところです。
後記: 通年で考えるとレベルが低かったですが、今年だけのレベルで見るとまあまあ。同じ材料でもう少し詰めのきっちりした作品を作る監督もいると思います。しかしショーダウンのところでペーター・ストルマーレの見せる視線は評価します。この作品の本当のホラー部分は事件ではなく、主人公の女性の近所付き合いの仕方の方。
後記: フランスはもっと凄いスリラーやホラーも出せる国なので、そういう意味では平凡。しかし今年のファンタの中では他が地盤沈下したので上の方に入ります。大スター2人を起用してキャスティングは成功しています。プロットが簡単に分かってしまうので、あとは Howdunit しか楽しみが残りませんが、それもスリラーとしてはちょっと詰めが甘い。一般の映画館向けです。一般相手なら十分お薦めできます。
後記: この作品も今年目立った社会派系。何か事件が起きて、その解決を目指すのではなく、この人がこれをやった、こうなったというだけの話なので、ファンタ向きではありません。一般のインテリ向きの映画館に出す方が受けるのではないかと思います。舞台となった国、社会の崩壊のひどい現状だけははっきり伝わりますが、だからどうするという方向に話は進まず、登場する人物もこういう(いい)人もいる、こういう(悪い)人もいるという両論併記型で、この作品を見ても後ろ向きになるか、現状のままにとどまり、良くする助けにはなりません。外国人が見ると「こういう国、こういう所には行きたくない」と思うばかりです。
後記: 他の地盤沈下のおかげで皆が期待をかけていた作品でもあり、今年の平均から見ると上半分に属します。しかしベルギーやフランスは過去にもっといい作品も持ち込んでいるので、その基準から見ると平凡。
それでも見ていて退屈しないという点は評価。タイトルは警察に保管されているファイルの名称。フランスが過去にトルコの地下組織と絡んだ警察物を作っていますが、こちらはベルギーがアルバニアの地下組織を絡めた警察物です。ザ・ヒットマンに出て来た刑事が登場するので、続編と見ることができます。全く別の新しい事件を前のメンバーが担当したと考えて下さい。 テーマは《裏切り》。
ドイツがアメリカの事件を映画化したもののリメイク。オスカー受賞者を含む有名俳優出演。
冬のスポーツの観光地でリフトが立ち往生。しかもそれを知っている人がいない!?オープン・ウォーターの雪山版のようです。
後記: コンピューターで特殊部隊兵士の戦いをシミュレーション中に、計画からずれて・・・という話。部分的にはマトリックスのアイディアをパクっています。
後記: 今年の作品の中ではまあまあの部類。ちょっと話が長過ぎるとは思います。10分ぐらい縮められるのでは。
後記: 原則として3Dの作品は見ないことにしていますが、行きがかり上見てしまいました。3Dを上映できるホールに移動。無料で配られた眼鏡は例年のより使いやすかったです。しかし作品は3Dにする必要のないものでした。古い時代のアクション映画を評価する人にはこの作品は2Dで見ても評価されるかも知れません。とにかく出演者は体を張って戦います。
ベルリンには参加しないようです。
スター出演。
後記: この作品は去年の In the Electric Mist と並んで一般の作品としては賞を争えるぐらいのいい出来です。アフレック(弟)が兄ちゃんの助けを借りずともちゃんとやれる事を証明する作品の1本に数えられます。
あちらはB級、こちらはA級ですが、ヘンリー・シリーズやテッド・バンディーなどと並ぶ人物描写の作品です。元から犯人は分かっていて、その男の軌跡を観客と一緒にたどります。南部の暑そうな土地の描写、暑苦しそうな人間関係も良く出ています。
監督が主演、脚本、音楽などを担当。オランダがコメディーというのはファンタでは珍しいのですが、監督がほとんど全てをやっているので、統一は取れた作品ではないかと思います。
後記: 統一は良く取れていました。監督とスタッフの1人が出演していますが、後であれが監督だったのかと唖然とする人物が監督です。キャスティング、台本などで手を貸している人がその夫人ですが、それも比較的びっくりの人。特にキャスティングが良かったので、出るべき効果が出ています。
この種のコメディーはデンマークがお得意ですが、さすがデンマークは処理が上手くて上品。オランダは似たような乗りですが、ビターな(苦い)終わり方をします。
スターが声優をやっています。
後記: なかなか良かったのですが、体調を崩していて、良く集中できませんでした。いずれDVDを借りて見直さないと、良いシーンを見逃していると思います。ベルリンの色々な場所が描かれています。
2024年の抵抗運動がメイン・テーマ。大コンツェルンが社会を支配、監視しているのですが、支配、監視されている側は上手く丸め込まれていて気づいていない人が大方。その手段として各家庭の中に入り込んでいるある物と、シャンプーが使われています。知らない間にそうやって支配されている中で、本気で抵抗している僅かな人々がいる・・・という設定。暗い話ではありますが、良い方に進む様子が見え、他の作品に比べるとちょっとほっとします。
監督デビュー。
後記: デビュー作品としては頑張っています。観客はしかしフェイントを食らいます。組合問題の社会派として始まり、全然違う方向で終わります。
後記: ベルリンが始まるまで全く話に出ていなかった作品。ベルリンには参加していません。
1978年のピラニアの 3D リメイク。
後に見ましたが大笑い。続編が2012年のファンタに出るので見たいのですが、スケジュールの都合で難しそう。見る方法が無いか検討中。
アッタルは時々ファンタに参加。誘拐事件。アッタルはドイツでは好まれる人のようですが、この作品はベルリンからははずされています。
後記: ベルリンには出ませんでした。
小さな町の警官の話。
デビュー作
今年はウルグアイの当たり年なのでしょうか。サッカーで名を上げた後はファンタに登場。おもしろそうなので見たいのですが、重なるのがこれまたフランスのおもしろそうな作品。迷っています。
有名な小説の映画化。
後記: 16世紀の清教徒の傭兵の話。元々は高貴な家の出で、兄は家を継ぎ、弟のソロモンは聖職につくよう父親に命令されます。それが気に入らず家を飛び出し悪漢の傭兵になっていました。兄とは家を出る直前に揉め、死んだと思っています。
ある出来事がきかっけで180度生活態度を変えたソロモンは真人間として生きていましたが、ある人を助けるためにまた武器を手にすることに。時々どこかの国が言いそうな台詞が飛び出すので笑ってしまいました。見終わってすぐ内容を忘れてしまうような作品で、私も仲間もこの話をするにはまず「どういう筋だったっけ」と思い出すところから始めなければなりませんでした(笑)。それでも続編の可能性はあるそうです。
後記: スフィンクスは人を凶暴に変貌させるドラッグの名称。2人の刑事が同僚を1人失い(殉職)、自らの潔白も証明しなければならなくなり、私的な囮作戦を練り、シンジケートに潜り込むという筋。
なぜ公的な立場の刑事が私的に潜入しなければならないかと言うと、刑事を1人殺し、自分も撃たれて重症を負った犯人が、警察の過剰防衛だと言い出したため。有力者の子供でもあり、はっきりした証拠がないと2人の刑事も処分を受けることになります。そこでこの犯人が撃ち合いの時そのドラッグを服用していたことを示さざるを得なくなったのです。
ファンタに出て来る犯罪物としてはプロットに穴の目立つ作品(「あり得ね〜」という設定がある)ですが、今年の地盤沈下の中ではわりと楽しめる作品です。
後記: オリジナルのタイトルは当を得ています。英語ならあのかわいい魔女ジニーに使われる jinn という言葉が合っています。場所はアルジェリア、イスラム教が関わります。ジンはイスラム教の霊。時はアルジェリア・フランス戦争のさなか。この戦争は1962年に終わりますが、映画ではフランスが劣勢になっているところ。ドゴールは政界に進出しており、アルジェリア戦争中はまず首相、その後大統領になり、任期中に戦争を終えています。
Djinns が今年作られたのは1960年2月13日から数えて50周年に当たる出来事があったため。戦争を終えるという歓迎すべき事もやっていますが、ドゴールの決定には陰の部分もあります。
私はアラビアの砂漠が出て来るというので、景色見たさにこの作品を選んだのですが、意外や意外、かなり深い内容でした。雰囲気はギレルモ・デル・トロのデビルズ・バックボーンと似ていますが、作品の方向は全く違います。日本人にはこちらの作品の方が重要です。
後記: 今年のベルリンにはファンタらしくない作品が多かったのですが、これは普段のファンタの血みどろの作品の中にポツっと1つさわやかな青春物が混ざる、そういう時に登場しそうな作品です。
SFと言えないこともないのですが、SF的な部分は僅か。近未来の話で、ぴったりの結婚相手を見つけると反応するカウンターのついた時計が発明され、商業ベースで売られています。それ以外の生活は現代のアメリカの中産階級として描かれています。巷で大々的にコマーシャルをするので、この時計を装着している人が多いです。これはと思う人を連れてカップルでTiMERという会社に行き、時計をつけさせようとしたりするのが、三十路へ向かってカウントダウンが始まった主人公。
時計に頼り切りで人生設計をする人、時計を拒否する人、時計をつけたふりをする人、普段は時計を信じていたのに、ある人に出会って時計を無視して決心しようとする人、時計を無視していたのに後でつけてしまう人など様々な人間が入り乱れます。デスモンド・ハリントンが重要な脇役で出ますが、人が死んだり怪我をしたりする物語ではありません。呪いもありません。あの世も関係ありません。ほんわかとしたハッピーエンドが待っていますが、ちゃんと物事を考えるように作られています。
後記: 爆笑コメディーで、私の今年のベスト3、しかも1番上に入りました。フォー・ライオンズが体調不良できちんと見ることができなかったので、きちんと見る機会があれば、もしかしたらそちらに抜かれるかも知れませんが、大いに楽しめる作品です。例年ならこの種の作品がシリアスな優秀作品の間で清涼飲料のように笑いを誘い、良い気分転換ができる、そういったタイプの作品なのですが、今年はシリアスな方が大巾に地盤沈下したため、こういった作品が上位に上がって来ました。
善意の男2人と都会から来た典型的なアホ学生の集団が田舎の森で出会います。典型的な偏見で見ると、2人の男は怪しく、もしかしたらチェーン・ソーで若い女性を襲い、死体をばらばらにして隠してしまうかも知れない・・・。しかし男たちの1人はちょっと晩稲で女性に弱いけれど善意。もう1人の男はそういう親友を元気付け、話をして見ろと薦めるのです。そんな2人が、たまたま事故っぽく偶発的に起こったトラブルで中の1人のかわいいおなごを助けることに。これから改装しようといううらぶれた小屋に連れ込み、休養させます。目を覚ました彼女は最初典型的な偏見にとらわれ悲鳴をあげますが、間もなく2人は自分を助けてくれたと分かり、3人は和気藹々。ところが彼女が消えたと思った他の仲間が彼女を気味の悪い悪漢2人から助け出そうと試み、特に中の1人は危険なほどテンションが上がってしまい、事は思わぬ方向へ・・・。
気分が下向きの時にはお薦めの爆笑ホラーです。
短篇
短編特集コーナーの作品は追ってお知らせします。
2006年に共同でコメディーの短編を監督をしたコンビ。単発で長編 Kaboom と一緒に上映。
後記: Kaboom を見なかったためパス。
制作国がドイツという説とオーストリーという説があります。
後記: 今年はプログラムとの不一致が目立ち、主催者側から特に言及が無かったのですが、この作品は上映されなかったのではないかと思います。
後記: 台詞は無く、全てテロップ。のっけに主人公が映り、テロップに、「彼は映画が終わるまでに死にます」と表示があります。それがそのままタイトルになります。
ストーリー: コンピューターに向かう主人公にどこからか質問が飛び込んで来ます。色々彼についての質問があり、時々「正直に答えていますか」という質問もあります。イエスというボタンをクリックしながらさらに質問に答えて行きます。例えば「あなたは今1人ですか」などセキュリティーに関する質問も。そうやって次々に答えて、最後は殺されてしまうのであります。
後記: スプーン男が法医学者を襲うのですが、人を殺すには他にいくらでも方法があるのに、この男はただひたすらスプーンで法医学者をぶつのです。しつこく世界中を追って来ます。相手はゾンビなのか、ナイフで喉を刺しても死にません。
ロケのためにかなりお金を使った様子です。ワン・パターン、あまりのばかばかしさに爆笑。
後記: 住宅街に死体がたくさん転がっています。若者と少年の世代は生きています。ある家の庭にはゾンビがゾンビーノのフィドのように繋がれています。子供たちはそのゾンビを苛め始めます。家の女性は怒ります。実はそれはかつて彼女の父親だった人。苛めの中心になっている少年はゾンビにガソリンをかけて焼いてしまいます。怒った女性はその少年をシャベルで殺し、父親にもとどめを・・・。
後記: 男とのつき合い方を知らない女の物語。子供の頃キスをしようとして男の子の舌を噛み切ってしまうという極端な少女だったのですが、大人になると何事も1人でロマンチックに解釈する癖が。友人に注意されますが、つかまえた男が意のままにならないと切れてしまう性格になっています。なのでトラブルが多いですが、《本人は小説を書いており、師匠に当たる年配の先生に励まされる》といったショーダウン。
今年のテーマの1つは普通の人間関係が築けない若者や、そのまま大人になってしまった人。70年代頃から自ら崩して来た家族関係、隣人関係、友人関係のつけが今回って来ているわけですが、それを映画にしてしまう商魂のたくましさに感心するべきなのか考えているところです。その視点で見ると、座席を確保するためとか、映画情報を交換するためとは言え、ファンタ開催中の人間関係にはちょっと救いを感じます。
後記: スペイン映画ですが、英語。ダグが車で若い女性アリーをボリビアのウユニ塩原に連れて来て、婚約指輪をプレゼントしようとします。アリーはあまり乗り気で無く、静かに断わろうとします。ムサい男ダグは断わられてもしつこく説得しようとしますが、アリーは静かにノーと言い続けます。するとダグが切れてしまい、アリーにひどい暴行を加えます。血だらけになり、瀕死のアリーにさらに承知しろと迫るダグ。彼女は最後の力を振り絞って「私はエイズの患者です」と言い、息絶えます。
絶望的な自分の状況に最後の力を振り絞って復讐したとの解釈も可能ですが、彼女の元からの冷静な対応を見ると正直に病名を告げたという解釈も成り立ちます。いずれにせよ、ダグは静かに引き下がればよかったのにと思います。
後記: タイトルは日本語ですが、監督は外国人で、お金は日本とタイから出ています。
後記: The story of two というタイトルも見ました。知らない中年男がピエールと名乗り、アレッサンドラになれなれしく近づいて来ます。彼女について良く知っているとかで、30年前に会ったとか、あれこれしつこく言います。ピエールが何を言おうとアレッサンドラには心当たりがありません。「あんた、もう5分も話している」と彼女が言うと、「普段ならもっと早く始末する」と言い、直後に彼女は事故死。男は《死》でした。
欧州人は死を出来事とせず、人間の姿をし、頭巾のついた長いガウンのような服を着、大きな鎌を持っている男と信じています。ピエールはモダンな死なので背広を着ています。
後記: タイトルは世界的に有名になったドイツ映画ローラ・レント(ラン・ローラ・ラン)のパロディー。ローラ・レントは《ローラが走る》という意味ですが、オマ・レントは《ばあさんが走る》です。
2人の老女が歩行補助の車を使って喧嘩のように競い合うのですが、自分たちが休憩しようと思っていた湖畔のベンチが若者に占領されているのを見ると、2人で協力して若者をぶちのめすというショーダウン。
後記: 19世紀末期の発明家。映写機、フィルムを開発していますが、スランプに陥っています。上流の出の夫人が励ましまた仕事にいそしむ夫。夫人は結核にかかっており、死が近づいているのですが・・・。
フィナーレ
後記: 体調を崩していたので十分楽しめませんでしたが、愉快な作品です。フランス映画ですが、英語です。筋は比較的単純で、見ていれば大体分かります。自動車のタイヤがなぜか謀反を起こし、人や動物を気力で殺す能力を持ってしまうというもの。なぜそうなるのかなどは質問しても答は返って来ませんが、そういうものだと思って筋の中に入ると爆笑です。
今年は他の作品の大部分が地盤沈下を起こし、オウン・ゴール風に評価が低くなってしまったため、この作品は比較的上位に入ります。
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