CM のページ
1Min. 7 秒 アニメ
登場動物: 森のりす君
考えた時期:2025年3月
スイスの製菓会社が作ったチョコ・バーの CM と思われます。ユーロの値段も公開されているので、ドイツにも製品が輸入され、販売されていると思われますが、私はまだこの会社の製品を食べた経験はありません。ですのでここではアニメの CM についてだけご紹介します。
★ ストーリー
全体で1分強の短いアニメなのですが、物語性があります。
森に住む、ヘーゼルナッツが大好きなりす君が真っ赤なクッションを手にナッツが木から落ちて来るのを待ち構えています。落ちて来るとそこへ飛んで行って、ナッツが着地する前にクッションを下に置き、ナッツが壊れないようにします。次々落ちて来るナッツを、サッカーのゴールキーパーのようにキャッチしようと一生懸命です。
カメラが引いて、森全体の様子が見える場面になると、そこいらじゅうに赤いクッションの上に乗ったナッツが映ります。1つ1つのナッツを抱いて、キス。りす君はナッツが大好きです。
場面が変わり、湖で木製のボートに乗っているりす君。背景には雪をかぶった高い山が見え、いかにもスイスという景色。力いっぱい両手で、オールで漕いでいます。足元には1個ナッツが。ボートが揺れるので転がるナッツを足で止めるりす君。カメラが少し後ろへ引くと、恐ろしい数のナッツが積まれているのが見えます。
湖の向こう側に上陸して森の別な場所。赤いクッションに殻を取り除いたナッツを乗せてゴルフ・クラブを手に、ポーンとナッツを打ちます。ナッツの実が飛んで行った先は近所の家。上の階の窓からナッツは調理室に飛び込みます。次に見えるのは溶けたチョコレートの鍋の中に入る細かく割れたナッツ。このシーンは100年ほど前の会社の宣伝ポスターを暗示しています。
最後にこの会社が売りたいチョコ・バーが登場。ガチのスイス方言で話すおじさんの声で「Von wahren Nussliebhabern empfohlen (ナッツが大好きな人からの推薦)」と言うのが聞こえ、画面にその台詞と、会社名と思われる MINOR、そして Ein Stück Glück(「小さな幸せ」という感じのニュアンス) というメッセージが映ります。幸せそうなりす君の姿も見えます。
これ全部で1分と7秒前後。(https://www.youtube.com/watch?v=b-4p-n12FcI)アドレスの欄に入力すると見られます。
★ 私への宣伝効果
このアニメを作った人はとても才能があります。このビデオを発見した頃は毎日見てしまいました。こんなかわいい CM は久しぶりです。ただ、それで私がこの会社のお菓子を買ったかというと、・・・買っていません。CM 効果は私にはゼロ。
子供の時家で最初の6年ほど果物以外の甘い物は食べたことが無かったので、小学校の遠足に参加するために解禁になってもほとんど食べたいと感じなくなっていました。お菓子の会社に取っては非常に困ったことですが、子供が自分からあまり甘い物を欲しがらなくなるという意味ではいいかもしれません。
★ 何が私を惹き付けたか
アニメに登場するりすの姿と、短い時間に語られるストーリーです。
ベルリンにも結構な数のりすが住んでいて、私たちも時々目にします。いつもクルミを買ってあり、散歩に出かける時はりすにあげるために持って行きます。そのベルリンの町中に出没するりすと同じ種類の赤茶色のりすがアニメになっています。アニメーターは体の動きをよく観察しています。本物かと思うようなしぐさをします。耳、目、口、歯、手、爪など細かい所まで本物そっくりに描かれています。
そしてたった1分7秒の間に森へヘーゼルナッツを探しに来た、見つけた、集めた、大喜びした、ボートで向こう岸に運んだ、チョコ・バーの調理室にゴルフをする要領で届けたという物語が語られます。
本物のりすを何年も知っている私はすっかり CM のりすの虜になってしまいました。
★ 別な会社のCM − 巧みな市場開拓
ずっと以前ある煙草会社の宣伝に魅せられたことがあります。
その会社は長年様々な宣伝をしていましたが、あるポスターを見るまで私は全く関心を持っていませんでした。生まれてこの方1本も煙草を吸ったことが無いのです。周囲で男性が吸っていても気になりませんでしたが、自分は吸いませんでした。まだ女性の喫煙者が非常に少ない時代のことです。高校1年の時クラスメートから勧められて1本貰ったのですが、未だに火をつけていません。家族の男性軍も喫煙者なのですが、私はなぜか始めませんでした。なのでその会社の宣伝にも無関心。
ある日その会社は社のトレードマークを象徴するぬいぐるみを登場させ、ポスターとビデオの CM を作りました。私は急にそちらに目が行き、魅せられました。会社はドイツでキャンペーンを行い、雑誌などにも登場。応募するとその人形の写真付きの名刺やポスターが当たりました。なぜか私が住んでいる通りにやたら大型のポスターが出るようになりました。駅の入り口にも出ました。まさかとは思いますが、ドイツの宣伝会社が私の住所を手掛かりに家の近くで力を入れて宣伝を始めたのかと思ったぐらいです。商業パラノイア(!?)。
色々なプレゼントの懸賞に当たりました。会社は私が煙草を吸わないことは知らないと思います。いずれにしろ私を通じて他の人にも商品が伝わることを期待していたのかもしれません。
(我が家には喫煙者が1人もいないのですが、貰ったポスターなどは感謝しつつ、部屋中に飾ってあります。我が家には子供が訪ねて来ないので、悪影響もありません。)
★ 禁煙傾向
皆さんも想像できると思いますが、何年かしてこの宣伝は禁止になりました。ぬいぐるみがあまりにかわいいので、小さな子供の関心を集めます。将来その人が喫煙者になりかねないです。そりゃ、商業効果を狙うのですから、会社としてはそういう作戦も立てるでしょうが、当時からそろそろ煙草は有害だから止めようという動きになって来ていました。
その後大人を対象にした「煙草を止めよう」というキャンペーンが大々的に始まり、かわいいぬいぐるみの CM は出番が完全に無くなりました。その代わりに煙草の外側には癌で手術を受ける人の生々しい写真が貼られたりする時代に入りました。
煙草よりフィルター、紙、香料の方に発癌性があるのではないか、葉巻やツィガリロにも発癌性があるのかなどと考えたこともあるのですが、自分が吸わないのでそれ以上のことに関心が沸くでもなく、分からずじまいです。いずれにしろ、小学校の子供が気に入りそうな図柄で煙草の宣伝をするのは止めた方がいいと私も思いました。
女性解放運動の始まりの頃、アメリカで女性を集めて、煙草を口に銜えさせてニューヨークの大通りでデモをさせて、ジャーナリストに写真を撮らせたという話を読んだことがあります。「進歩的な女性は煙草を吸う」という趣旨だったようですが、1度だけ見た話でバックアップが取れていません。それまで男性だけだった煙草市場を女性にも広げようと考えての作戦だったとその記事の筆者は書いていました。なので次は子供を狙ったのかと私も考えてしまいました。
まあ、企業は自分たちのシェアをどうやって拡大するかを必死に考えていた時代で、公害とか健康被害にはまだ十分に目が届いていない頃です。法律なども作っている最中でした。
それにしても私の目を惹くかわいらしい CM ですが、私をその製品の消費者にするのは成功しませんでした。
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