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蕎麦湯ぶれいく

知床クルーザー観光

2013年10月1日

 30年近く前の年の初夏、オートバイに乗って北海道を走ってきた。
 あの頃は、もうオートバイで走っていればそれだけでよかった。観光なんかにはまったく興味が無かったと言っていい。羅臼で一泊して、翌朝、知床峠を越え、ウトロに抜けた。ウトロからの知床観光はどうでもいい気になっていて、とにかくオートバイで走っていたかったので、そのまま網走方面に走って行った。

 ただ、そのときウトロで休憩していたら、街の人から話しかけられて立ち話をした事を憶えている。そのとき「今度、北海道に来るなら秋にいらっしゃい」と言われた。秋は風景もいいし、食べ物もおいしいからと。私も「ええ、今度は是非、知床観光をしに秋に来ますよ」と答えたのだった。それ以来、私の頭にはこの時の会話がずーっと残っていた。そしてリタイヤした今だからこそ、そのときの約束を果たしに行くべきではないかと思い始めていた。

 よし、行こう。秋の知床に行こう。こうして私は知床行きを決めた。

 羽田6時55分発の女満別行、JAL1183便に乗るには、早起きをしなければならない。仕事をしていた頃は毎朝4時起きだったのだが、最近は6時に目覚ましをかけても起きられなかったりする。目覚ましを4時30分から10分置きに三つ仕掛けておいたが、一つ目でちゃんと目が覚めた。現金なものだ。

 台風22号が接近しているのが気がかりではある。羽田空港のロビーから窓の外を眺めると小雨が降っている。予報では午後の方が降水確率も高い。いやだなぁと思うが、天気だけはどうすることも出来ない。
 そして、もうひとつ不安があった。今日の13時15分出航のゴジラ岩観光の知床岬観光クルーザーツアーを予約したのだが、昨日電話があって、予約者が4人しか集まっていないというのである。7人以上集まらなければツアーは中止だというので、もし中止になったらどうしようかと思う。「まあ、とりあえず行くだけ行ってみます」とだけ答えておいたのだが。

 8時35分女満別空港に着陸。女満別空港から、網走市内行きの路線バスに乗る。外の景色は広い農場が見られ、「うわーっ、北海道に来たぞー!」という感じ。去年も6月に旭川に行ったが、あのときに空港からバスに乗った時とちょうど同じ感想を持つ。やっぱり北海道はいいなぁ。

 網走駅で降りて、釧路方面行きの電車の時刻表を確認する。次の電車は10時1分発。発車まで30分ほどあるので、近くでコーヒーでも飲めないかと駅前を見て歩くが、どこもやっていない。東横インのロビーでコーヒーが飲めそうなので、入って行って「コーヒーを飲めますか?」と訊くと、「はい」と言ってコーヒーを持ってきてくれた。お金を払おうとすると、「これは宿泊客様のもので、そうでない方にはお売りできないんです」と言われる。そうか、そうだよな。しかし、「もう淹れてしまったものですから、どうぞお飲みください」と言われ、ありがたく頂戴する。すみませんでした、東横インさん。今度、どこか旅行に行ったときは宿泊させていただきます。

 釧路方面行の電車は一両編成。地元の利用客は少ないようで、ほとんどが旅行者。しかもそのほとんどが外国人。真ん中あたりを占拠しているのは中国人のグループ。それにヨーロッパ人のバックパッカーのカップル。高価そうなカメラを持った一人旅の日本人旅行者がいたりしたが、あまり知られていない駅で降りて行った。どうやら趣味の写真を撮りに来たらしい。
 海側の席に座る。ちょっと荒れた鈍色のオホーツクの海岸線を眺めながら電車は進んで行く。なんだか荒涼とした風景だ。
 
 10時41分、知床斜里駅着。知床五湖方面行の次のバスは11時30分。待ち合わせが50分近くある。雨も降っているし、あまり遠くまで行きたくない。駅前のコンビニに入る。そこで暇つぶしをしていたのだが、袋もののインスタントラーメンのコーナーで、懐かしや、S&Bのホンコンやきそばを発見。昔、立川談志のCMで有名だったホンコンやきそばがまだ売られていたなんて。インターネットのWikipediaによると、北海道、仙台市、大分県といった地域限定で売られているのだそうだ。これ、子供の頃よく食べたんだ。隣に置いてあったダブルラーメンも見覚えがあるぞ。マルちゃんの二食ワンパックになっているやつ。やはりWikipediaによると、こちらは北海道限定とのこと。

 バスターミナルに戻ってみるとバスが停まっていたので乗り込む。発車を待っていると釧路方面からの電車が到着した。人がドッと駅から降りてきて、こちらへ向ってくる。なんと全員が中国人。十人くらいのグループと、数人のグループがいる。それまで3〜4人だった日本人だけのバスはいきなり中国人だらけになってしまった。

 バスは斜里町の畑の中の国道を通って行く。一直線に伸びた道を見て、さすが北海道だと、またもや実感することになる。
 やがて道路は海岸へ出た。いよいよ知床半島に入ったのだ。
 と、そこへ携帯に電話が入った。ゴジラ岩観光からで、人数が集まったので今日の午後のツアーは行うとのこと。よかったー。

 12時20分ウトロ・バスターミナル到着。ゴジラ岩観光の事務所へ行きツアー料金を支払う。
 13時に集合してくれというので、それまでに腹ごしらえ。近くの食堂に入り、ウニ・イクラ丼を注文。北海道まで来たんだ。まずは、これを食べないと。

 13時に事務所に戻ってみると、ツアー参加者が集合していた。全部で15名。最低催行人員の倍。よかった、よかった。

 事務所からクルーザーが泊めてある港まで歩く。途中、このゴジラ岩観光という社名になっているゴジラ岩の前を通る。なるほどゴジラに似ている。でもどことなくひょうきんなゴジラだ。

 クルーザーに全員が乗り込むと、定刻よりも5分早く出発してしまった。幸い雨は止んでいたが、空は曇っていて寒い。途中でクルーがお客さんに防寒着を配布するほど。
 クルーザーは、知床岬の突端まで片道1時間半。往復3時間の船旅だ。途中、ところどころの見せ場で海岸近くまで寄せてくれて解説をしてくれる。

 さすがに知床だけあって、少し紅葉が始まっている。来週になったら、もっと進んでいるかも。

 売りは何といってもヒグマ。ただしヒグマが必ず見られるとは限らないのだそうだ。ところが私の乗った回は、ヒグマが随分と見られた。海から川を登っていく鮭を目当てに熊が出てきているせいらしい。ツアー中、トータル6頭のヒグマを目撃できた。こんなことは珍しいとクルーザーのクルーが言っていたから、そうなんだろう。ただし写真に収めようとしたが、私のコンパクトカメラのズームでは捉えきれないのと、船が揺れるので、まともな写真は撮れなかった。

 1時間半後、知床半島の突端に到着。残念ながらの曇り空だったが国後の島影は微かに見ることができた。近くて遠い日本の領土。返還の日は来るのだろうか?

 帰りの航海は寒くなって来たのでデッキから客室へ移動。窓ガラス越しに知床の自然を見る。デッキにいると解説をしてくれているクルーの放送が、エンジン音と風の音でよぐ聞き取れなかったのだが、ここならよく聞こえる。

 16時15分。予定通り3時間の船旅を終えて港に帰って来た。
 今日の宿は、[ホテル季風クラブ]。海岸線沿いにあるホテルだ。港からはちょっと距離があるが、歩くことにする。この夕暮れの海岸線の景色がまた格別だった。なんて雄大な景色なんだろう。これだから北海道旅行は楽しい。

 [ホテル季風クラブ]までは15分ほどかかった。チッェクインして、さっそく風呂に行く。もちろん温泉。やはり海岸沿いなせいか、気のせいかしょっぱい感じがする(笑)。今日は冷えたから、ありがたい。それほど熱くなく、かといってぬるくもない。いつまでも入っていられる。
 風呂上りに缶ビール。北海道限定のサッポロクラシック。うめー!

 18時夕食。メインディッシュは串揚げ。串に刺さっている具に天ぷらの衣をつけてオイルで揚げる。じゃがいも、ホワイトチーズ、茄子、ひら豆、ほたて貝柱、知床地鶏の大葉巻き、南瓜、しいたけ。自分で天ぷらを揚げなくなってから2年経つから、なんだか懐かしい。抹茶塩が付いてきたが、冷たい汁に入った麺が前菜の中にあったのでその中に漬けて食べる。うま〜い。
 ほかにも、カラフトマスのバター焼き、ツブ貝の煮物、お造りなどいろいろ。ゆめぴりかというブランド米のごはんもおいしくて完食してしまった。ぶどうの手作りアイスのデザートは別腹だよ。
 おいしかった。ごちそうさまでした。

 朝早く起きたし、乗り物の疲れもあって、風呂に入って早めに就寝。

10月4日記





















静かなお喋り 10月1日

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