番外編
kuro*sanji
外せない鎖
4
クロはベッドに横たわるサンジを眺めた。
あのアーロンが買い取りを申し出て来た。
余程気に入ったらしい。
すでにアーロンの館に連れていかれて抱かれているサンジ。
帰ってくるたびに体に残る無数の痣。
痕が残るようなら金額は高くなる。
さらに稼げるが、
後々のことを考えると、
肌には痕が残らないように処置しなければならない。
サンジには色々と教え込んだ。
銃の使い方のような関係ないことまで。
クロの知っている様々な知識や情報も教えた。
男のあしらい方から、
媚び方から。
クロはぐっすりと寝込んでいるサンジの布団を剥がして体の点検を始めた。
ギンはハダカのままサンジを連れて帰る。
いつも意識はない。
その姿を調べてアーロンに追加料金を請求するのだ。
胸には摩擦傷のようなものがいくつもついている。
・・・アーロンは鎖プレイが好きらしい。
これは鞭か。
サンジの敏感な部分はとくにきつく責められ血がにじんでいる。
クロは手術用の手袋をはめると、
サンジの乳首に薬を塗りこんだ。
長時間拘束されて、傷の残る性器にも薬を塗り、
アーロンの残滓の残るサンジの体内に指を入れ、
様子を見ながら掻き回す。
冷静な科学者のような冷たい視線がサンジの恥部にそそがれた。
掻き出しながらも内部の手触りを確認する。
いつものように大量の精液が内部からだらだらと溢れ出てくるのも気にとめずに、
中の様子を覗き込み、
出血の様子を確かめた。
・・・切れてるな。
かなりデカいものをぶち込まれたらしい。
それから秘肛にも薬を塗り込めた。
この痕が消えるのにはしばらく時間がかかるな。
アーロンは傷が残っていてもいいので、
連れてこいと言っていたが、そういう訳にもいかない。
いつも吊るされるため、
手首や足首は特にひどい傷になっている。
オレの商品管理は万全だ。
この状態ではしばらく客はとらせねえ。
まあ、アーロンも待たされて余計にじりじりしているのだろうが、
あの男とコイツの体格差やプレイ内容を考えても、
連日はヤらせられない。
こいつは上玉だ。
しばらくは体を酷使しない客にあてがおう。
見てるだけでいいとか、
コスプレだけでいいとかの客もいる。
サンジは体の疼きを感じて、
目を開いた。
見なれたクロの姿が目に入る。
・・・いつもの検査室か・・・。
客をとった男娼の体を調べる部屋。
もの凄く、だるい。
なのに体の奥から、
にじみでてくる欲情。
ああ・・、
またアレを塗られたんだ。
ぼんやりした意識のなか考える。
即時性の媚薬入りの傷薬。
塗られた場所がじんじんして、キモチがいい。
体が疼き、
自分の手で慰めたくなってきた。
でも、クロが見ている。
サンジはすがるような目でクロを見た。
オレはこの男には逆らえない。
初めてここに連れられてきた時からのオレの主人。
こいつは名調教師だそうだ。
たしかにオレはこいつのいいなりだ。
体が火照ってくるけど、
クロは何も言わねえから、
オレはこのままじっとしているしかねえ。
クロは伶俐な視線でサンジを見た。
サンジの目は必死で指示を待っている。
まったく、オアズケ中の犬と同じだ。
薬の効果で、
サンジのモノはすっかり勃ち上がっている。
許可をすると、
こいつは盛大に自分のアナに手でも入れてヨガリ始めるだろう。
徹底的に仕込んである。
男娼は自分で自分の体に触れてはいけない。
プライベートのオナニーもセックスも禁止。
イく時はこのクロの許可を得ること。
オレの目配せ一つで、
サンジはどんな痴態でも演じる。
アーロンのように鎖など使わなくても、
もうこいつの精神はオレによって拘束されている。
今もオレに見られているだけで、
もう勃ったものはピクピクしてきている。
仰向けに寝て、拳をにぎりしめて、唇を噛み締めて耐えている。
そうだ。
もっと耐えろ。
以前、この姿をコイツにつけてるギンに見せたら、
ズボンの前にシミをつくり、
鼻血を出した。
冷徹で残酷な男だが、
あいつはサンジに惚れている。
まるで下男のようになって、
コイツを大切にしている。
ただの男娼の色香に惑わされている。
まあ、そういう男がいるからオレの商売は上手くいくんだがな。
耐えるサンジの姿はなかなかそそるものがある。
普通の好色な男ならひとたまりもなく、
悩殺されるだろう。
コイツはもっともっと働いてもらう。
ガマンしてりゃ、てめえをイカせてくれる親切な客もつけてやる。
「萎えるまで、そのままでいろ」
サンジはクロの言葉に唇を噛み締めた。
イキたくてたまらない。
この前はシャワー室でガマンできずにオナってるところを見つかった。
そして罰を受けた。
サンジは体を強ばらせ、
目を閉じた。
体の中を荒れ狂う欲望。
勝手にイったら、
また罰が与えられる。
まだ、本物の鎖で縛られているほうが楽だ。
ここにいる限り、
見えない鎖で縛られ続けている。
決して逃れることのできない鎖で。
男娼やってたら、
ミホークの幹部が客になって、
隙を見ていろいろできるかと思ってた。
だが甘かった。
あのアーロンですら、
オレに付け込ませるような男じゃなかった。
ただ肉体を嬲り、
放りだす。
便所がわりに使われてる。
分かっちゃいたけど、
もう限界だ。
あいつら、
オレを人と思ってねえ。
だから、
オレもあいつらを人として見ねえ。
殺してやる。
殺してやる。
壊してやる。
全てを。
こんなに憎いのに、
こんなに悲しいのに、
オレの体は一時の解放を求めてる。
惨めだな。
あいつらが言う淫乱そのもの。
男にぶちこまれてる間は憎しみも殺意も悲しみも全て忘れてヨガリまくってる。
今だって、
入れてくれるヤツなら誰でもいいんだ。
気が狂いそうだ。
シて欲しくて。
もう狂っちまってるかもしれねえな。
しようがねえよ。
これしかオレには方法がねえんだから。
この鎖の中から逃れてえ。
もっと狂えばいいのか?
そしたら、逃れられる?
この快楽から。
この絶望から。