番外編
kuro*sanji
外せない鎖
5
決意したら、もう振り返ることは無かった。
サンジは白い腕をクロの背に回していた。
「あっ・・・・はあああっっっ」
サンジに覆いかぶさるようにしてのしかかる体。
貫かれた部分からは卑猥な音が漏れている。
クロは滅多に男娼を抱かない。
商品に手を出す程、
理性に欠けているわけではない。
普段はきっちりとスーツを着て、
冷静に指図をする。
男娼の点検も手を使うことはあっても、
体を使うことは滅多になかった。
サンジはクロが体を使って調べる数少ない男娼の一人だった。
サンジがこの娼館に来てからずっとだから、
もうかなりの回数抱かれていることになる。
薄暗い部屋の中、
淫らな吐息が交差する。
サンジは自分が喘ぐので必死だ。
なじんだクロの体。
脱ぐと以外とたくましく、
独特の色気のある体。
奥にもっともっと欲しくて懸命に脚を開く。
クロは道具は使わない。
もうサンジが道具もいらないくらい調教済だからだ。
クロの道具は言葉。
一言で好きなように動かせる。
目に見えない鎖で繋いでいるようなものだからだ。
クロは久しぶりのサンジの体を堪能していた。
相変わらず、よく締まる。
感度がいい上に、
普段オアズケしているので、
いくらでも欲しがって動いてくる。
命令には素直に従うし、
我ながら上手く仕込めたと思う。
相変わらず表情もエロいし、抱けば抱く程、愛着の増す体だ。
客たちが必死でサンジを買おうとする訳だ。
サンジは必死で腰を打ちつけながら、
クロにしがみついた。
脚をクロの体に絡ませ、
更に体を密着させた。
自分にはこの男の言うことを聞くことが全てだった。
常にクロの顔色を伺い、媚びて生きてきた。
ここに来てからずっと・・・。
それはここでは当然で当たり前なことだった。
何でもした。
オレにプライドなんていらねえってことを身をもって教えた男。
抱かれないと飢えた獣のようになるように作り変えられた体。
ひざまづいて足蹴にされても縋り付くしか無かった相手。
だってオレにはあんたしかいなかったから。
オレの命を握ってるのはあんただから、
オレはあんたの言う通りにするしかねえ。
あんたのお陰でイロイロ覚えたよ。
「あっ・・・・ああっ・・・くっ・・・」
ひっきりなしに漏れる嬌声。
噛み締めた歯の間からは、
涎がこぼれ落ちた。
もっと・・・。
もっと突いて。
オレの奥まで。
・・・ハヤク。
ハヤク・・・・。
もっと突いて。
オレの中にくれよ。
快楽に目の前が真っ白になる。
イ・・・ク・・・。
クロは快楽に溺れていた。
もっと擦ってやる。
もっと乱れさせてやる。
快楽の頂点に達し、
サンジの内部に激しく射精をした。
激しい快楽の中、鋭い痛みを感じる。
だが快楽の方が勝った。
そのまま、クロはすうっと真っ白になっていく意識を感じた。
クロが体の重みごとサンジに突きを入れてきた。
同時にサンジの体内に激しい奔流がたたきつけられた。
どさりと被さってくるクロの体。
サンジの体じゅうを快楽が駆け抜け、
目がチカチカして、
しびれるような感じになった。
サンジも激しく精をまき散らした。
「ああああっ」
嬌声が洩れ、
荒い息が止まらない。
快楽の余韻にしばし浸りながらも、
サンジは自ら放ったものとは違う、
体に落ちる温かい感触を感じた。
・・・ああ・・・血だ。
クロの・・・血だ。
「大丈夫ですか、サンジさん」
ギンの言葉に彷徨っていた意識を取り戻す。
すぐ側にギンが立っていた。
そして今起こっていることを考える。
・・・ああ、オレはギンにクロを殺させたんだ。
「即死です」
ギンは自分が刺殺したクロの体に手をかけた。
サンジさんに突っ込みながら死ねたんだ。
本望だろう。
サンジさんから、
クロを殺したいという話を聞いた時、
オレは一も二も無く承諾した。
このままではサンジさんは死んじまう。
だが、クロは隙のない男だ。
だから一番油断をする方法を使った。
オレだって、同じ方法を使われたらひとたまりもなく殺られるだろう。
サンジさんは恐ろしい人だ。
自分が囮になった。
ギンはぐったりした体をサンジから引き離した。
オレはこの男に嫉妬している。
死体となった今でも許せねえ。
サンジさんの中に入ってた、
男の証はまだ力を持ってる。
だけど、それももう終わりだ。
サンジさんはあんたの奴隷じゃねえんだ。
ずるりと抜けていくクロを離すまいとしてサンジは無意識に体を締め付けた。
「ん・・んんんっ」
体は異様に昂っていて、
治まりがつかないが、
精神は覚めている。
クロが死んだ。
ギンが殺した。
いや、オレが殺した。
オレはここから逃げる。
ギンがうまく手はずをしてくれた。
自由だ。
もう鎖は外された。