R20
悪の華
XS

第1章  遠い昨日の記憶  

運命の出会い(XS)
Xanxus16-Squalo14
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「ゔぉおおい、ザンザス、いるのかぁ!!」
テラスの下から、耳障りな大声が聞こえてくる。
ザンザスは飲みかけのコーヒーカップを置いた。

また、あのドカスが来やがった。
ある日、剣を捧げると勝手に言う、妙なガキがやってきた。
聞くとどうやら学校の後輩にあたるらしいのだが、
後輩のガキになんぞ関心があるわけでもなく、もちろんこんなやつは知らなかった。

オレの近くに寄ってくるやつは、ボンゴレの権威や富を欲しがるやつばかりなのだが、
どうやらこいつは少し違うようだ。

ヴァリアーに入るとかで、隊服を着ていたところを見ると、
まったく使えねえわけでもなさそうだが、
みなが遠巻きにして怖がるオレにずかずかと近づいてくるあたり、
アホとしか思えない。
言っていることもしていることもかなりずれている。

「お前の怒りに惚れたんだぁ」
「お前についていくと決めたんだぁ」
殴っても、蹴っても、物を投げつけても、こいつはやって来て、バカの一つ覚えのように繰り返す。
いちおう、ボンゴレのセキュリティもあり警備員もいるはずなのに、
こいつはすり抜けてやってくるようだ。
ヴァリアーの隊員にはなるようなので、それぐらいはできて当たり前なんだが、
どうやら、警備員どもには、オレの舎弟か何かのように思われているらしい。

「今度、テュールと戦うんだぁ」
ドカスは嬉しそうに言う。
テュールってのは、ヴァリアーのボスだ。
剣帝と言われ、ボンゴレの誇る剣士だ。
老いぼれの守護者たちは、たいした相手ではないが、テュールはやっかいだ。
やつの存在は、老いぼれを倒す時にじゃまだ。
どうしたものか。

どうせ、このバカなガキなど役に立ちはしない。
この野良犬みてえなガキが使えなくても、オレにはなんの影響もねえ。
使い捨ての駒にすぎねえ。
必要なくなったり、裏切ろうものなら、かっ消せばいい。

「おい、カス。オレが何をしたいか知りたいか?」
「お゛ぉ、知りたいぜえ!!」

「九代目の地位を奪い、ボンゴレを手に入れる」
ザンザスの言葉に、スクアーロは驚きをかくせなかった。
ふん、驚いたか。
ザンザスは予想通りの反応に心の中でせせら笑った。
かりそめの忠誠などいらねえ。
オレはもう誰も信じねえ。

「ついていくぜぇ」
それでも、ドカスはそう答えた。

歯車は、動きはじめた。
もう、誰にも止められない。





 
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