R20
悪の華
XS

マフィアの血
Xanxus24-Squalo22
X×S ほか S受

選ばれし者
DS



7



   スクアーロが意識を取り戻した時に最初に見たものは、
金髪の男だった。
甘い顔立ちのその男には見覚えがある。
跳ね馬ディーノ。
今はボンゴレの同盟ファミリーのボスだ。
「気がついたか・・・スクアーロ!!!」
「跳ね馬・・・か・・・」
憂いをふくんでいたその顔はぱっと明るくなった。
「こんな結果になるとはな。
水槽に落ちて来たお前は瀕死の重体だったんだ。
手術はうまく行ったんだが、もう目をさまさないかと思ったぜ」
ディーノは昏睡状態のスクアーロのそばにずっといて、動かないと人形のような顔を眺め続けていた。
スクアーロは無言で目を反らした。
「なぜ、助けた?
そのまま放っておけばよかった・・・だろうが・・・」
「今、お前に死なれちゃこっちも困るんだ」
「お前は昔からあめーんだよ、跳ね馬・・・」
「そうかもな。オレはツナこそボンゴレ十代目にふさわしいと思っている。
お前はザンザスのどこにひかれんだ?
自分の剣技を磨くことだけを追求してきたお前が付きしたがうほどの何があいつにはある?」
ディーノにとってスクアーロは孤高の存在だった。
学校ではへなちょこだったディーノと違い、誰よりも恐れられていた。
みなに怖がられていたけれど、
ときどきディーノを助けてくれたりして、やさしいところもあった。
ディーノにとってはあこがれの存在だったのだ。
やがてスクアーロはヴァリアーに入隊し、学校を止めてしまった。
剣帝に勝ったと聞いたのに、ヴァリアーのボスになったのはザンザスだった。
ザンザスの実力は誰もが認めていたため、
スクアーロがボスの座につかなかったことを疑問に思うものはいなかった。
やがてヴァリアーの活動は表舞台から消え、スクアーロを見かけることはほとんどなくなった。
ザンザスはどこかに留学していると言われていた。
ディーノはボンゴレ九代目のパーティーにいつも呼ばれていたけれど、ザンザスを見かけることはなかった。
スクアーロもパーティーの時に見かけたことはない。
スクアーロと知り合ったのは、ディーノの方が早かったはずだ。
でも、スクアーロの目はディーノに向けられることはなかった。
へなちょこだったからだ。
ディーノは強くなろうと決意した。
強くなれば、スクアーロは自分を見る。
リボーンに鍛えられ、
いっぱしのボスになった時には、もうスクアーロはどこにもいなかった。
あの剣帝テュールを倒した実力を持つはずのスクアーロの存在も限りなく希薄になり、
常人離れした実力を持つはずのヴァリアーが何をしているか分からなくなっていた。
何があったんだ?
幾度となく問うたものの答えは出ない。
ボンゴレ関係者が秘かにささやく「ゆりかご事件」とは何なのだ?
ある日突然、どこにいたか分からないザンザスが戻り、マレ・ディアボラ事件でのヴァリアーの活躍が話題になった。
ザンザスがボンゴレ・リングを狙っているかもしれないことは家光から聞いていた。
ディーノの弟分でもある沢田綱吉は、普段はまったくへなちょこだが、死ぬ気になれば強い。
九代目は温和な人だから、
暴力的で荒々しい感じのザンザスより、人のよい沢田綱吉に後を継がせることにしたのだろう。
ザンザスとはパーティーの時に何度か会ったことはあるし、ほんの少しだが話をしたこともあるが、いつも不機嫌そうで恐い存在だった。
スクアーロがザンザスのどこに惹かれたのかは分からない。
たとえ敵でもスクアーロを見捨てたりはしない。
そのままにしておけるはずはなかった。
白い天井だけを見て、何も言わないスクアーロを見ていると、どうしていいか分からなくなる。
スクアーロは敗者なのだ。
その生存を知っているものは誰もいない。
自分だけのものにしたい。
ザンザスはサメに食われたスクアーロを見て笑ったのだ。
どうしてあんな男についていくのか?
怒りと憎しみに満ちた暴力的な支配者でしかない。
あんなボスの部下になったものは大変だろう。
部下は大事にしねーといけないのに。
オレの部下にスクアーロがいたら、大事にするのに。
スクアーロは負けたから、
ザンザスが勝ってもその元に戻れる確率は低い。
そしたらスクアーロが手に入るかもしれない。
ディーノはスクアーロに近づくと、
そっと口づけた。









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