R20
悪の華
XS

マフィアの血
Xanxus24-Squalo22
X×S ほか S受

選ばれざる者




5



ザンザスが時々パーティーに出かけるようになって半年が過ぎた。
幾人かの女を相手にする中で、
ザンザスに入れこんだ敵マフィアの娘が縁談話を持ちかけてきた。
とりあえず現在出かける時も、その女をパーティーに連れて行くことにしていたが、
マフィアの親父とともにザンザスに干渉しはじめたため、
そろそろファミリーごと始末をしてもいいと思っていたころだった。
スクアーロはその相手の女を見たこともなかった。
ボンゴレ本部では、ザンザスがどうするかが話題になっていた。
付き合っているらしいし、結婚もありえるかもしれない。
誰もがそう思った。
「なあ、ボス、お前が結婚する女ってどんなだぁ?」
スクアーロが突然言い出し、その場にいた他の幹部は思わずザンザスを見た。
「はぁ? 何のことだ?」
「今日、本部で聞いたんだぁ。
前にベルから聞いたこともあったしなあ」
スクアーロは意を決して尋ねたのだ。
ボスの未来のためでもある。
「ぶはっ!!  そいつはおもしろい!!」
ザンザスは吐きすてるように言ってから、スクアーロをじろりと見た。
「だったら、てめえはどうするんだ?」
「その女を守るぜぇ!!!」
「ちょ・・・スク・・・」
スクアーロの答えを止めようとルッスーリアが立ち上がったが、遅かった。
「ほう。なら、てめえの命をかけてオレの女を守れるというのか?」
ザンザスがせせら笑った。
「ボスの命令なら」
「なら、てめえに命じてやる。オレと結婚予定のマリアって女を守れ。
データはルッスーリアから聞け」
ベルがナイフを手に立ち上がった。
「ボス、何それ? ちょーむかつく!! 王子聞いてないし!!!」
「今、言った」
ザンザスは楽しそうだった。
「ボス、おめでとうございます!!!!」
レヴィが直立不動で祝いの言葉を述べた。
「待ってくださいな、ボス!!」
ルッスーリアの声は無視された。
「ジジイに連絡しろ」
ザンザスも結婚の意志ありという連絡に、九代目たちは沸いた。
あの面倒ばかり起こしていたザンザスが大人しく結婚するというのだ。
新郎新婦のために、すぐ九代目から新居として格式ある古城が準備され、
新郎新婦は挙式の一ヶ月前からその城で住むことになった。

新婦のマリアは、地位も権力もある男に夢中になっていた。
マフィアの勝ち気なわがまま娘として溺愛され、
これまで思い通りにならなかったことはなかった。
ボンゴレ九代目の息子ザンザスは影のある美しい男だった。
顔に傷があり、そのけがの影響とかで人見知りらしいが、
長身でスタイルもよく、見せびらかしたいほどのいい男だった。
無口で静かだが威厳があり、赤い目で見つめられると息をするのさえ苦しくなった。
ボンゴレ十代目はジャッポーネの子どもに譲ったらしいが、
ザンザスが十代目になるのが妥当だから、私がうまく立ち回って地位をもぎとるのも素敵かもしれない。
父親もこれを足がかりにボンゴレに食い込みたいと思っている。
マリアは、美しく格式ある城に着き、さっそく城の中を見て回った。
城の回りには美しい森と、美しい湖があった。
派手好きのマリアにとっては退屈な景色だ。
そのうち、派手にパーティーでも開いてやるわ。
寝室は豪華な赤で統一されており、
ひときわ立派な鏡台を見つけ、マリアはそこに座って脱色した長い金髪を解いた。
本当は栗毛なのだが、ザンザスには隠している。
金髪のほうが、目立つし、男は好きだから。
このウエーブをつけるのもいろいろ苦労した。
ここに来るなら、専用の美容師も連れてこないと。
それから、専用のコックに、専用のマッサージ師に・・・。
うっとりしていると、鏡の向こうに、人形のような姿が映った。
精霊のように見えて、マリアはどきっとした。
「ゔぉおおおい、お前がマリアかあ!!!」
銀の髪の美しい男が大声で叫んだ。
耳が痛くて、思わず耳を塞いだ。
「ボスに、お前の護衛を任されたんだぁ!!
オレの名はスクアーロ。スベルビ・スクアーロだぁ!!」
精霊だと思ったのは、声の大きい男だった。
「あなた・・・ザンザスの部下?」
聞きながら、ザンザスの一番の部下でスクアーロという名の剣士がいるというが、
なぜか一度も会ったことがなかったことを思い出した。
カスの中のカスだとしか聞いてなかったので、
これほどの容姿だとは思いもしなかった。
抜けるような白い肌と、うすい灰青の目、それに見事な銀の髪をしていた。
女でも嫉妬するものをその男は持っていた。
「しばらく警護する。お前は好きにしていればいい」
「奥様って呼んでくれないかしら?」
マリアはむっとした。
たかだか部下じゃない。
私はザンザスの妻。
敬って当然だわ。
「何だとぉ!! 偉そうな口利くんじゃねえ!!」
スクアーロが怒鳴ると、マリアはザンザスの携帯に電話をした。
電話は繋がらなかった。
繋がらないのでメールをした。
「スクアーロという部下が私に無礼を働きました。クビにして!!!!」
メールの返信はなかった。
マリアは何度か電話とメールをし、それから、あきらめた。
部下のくせに、何よ!!
絶対、クビにしてやる!!
父親にも電話して、クビにするように頼んだ。
「スクアーロは、ボンゴレを代表する剣士だ。
それを護衛につかせたということは、お前をそれだけ大事に思ってのことなのだ。
不遜な男だろうが、我慢してくれんか」
父親はなだめすかすように言った。
「とにかく気にいらないの!!
視界に入るといらいらするの!!
ザンザスのまわりで今まで一度も見た事ないのに、一番きれいなのも気にくわない!!」
マリアが言うと、父親は口ごもった。
「確かに・・・ザンザスとスクアーロの噂は聞いたこともあるが、
スクアーロにはキャバッローネの御曹司が熱を上げていると聞いている」
キャバッローネの御曹司はその目立つ美貌で有名だ。
華やかできらきらしていて、いるだけでその場が明るくなる。
気に入らない。
私ですら自信をなくすキャバッローネの御曹司があんな部下を?
男のくせにあの髪は何?
私がザンザスと結婚したら、あんなやつ絶対にどうにかしてやるわ。






TOP