R20
                                                                        
悪の華
                                                                        
XS
                                                                        
                                                                        
マフィアの血
                                          
Xanxus24-Squalo22
                                                                        
X×S ほか S受
                                                                        
                      選ばれざる者
                         
DS
             
                                                                   
                                                                    
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   キャバッローネのボス、跳ね馬ディーノは、明るく爽やかで美貌の青年で、誰にでも好感を持たれた。
   青年実業家として一般の業界にも進出している。
   いつもはカジュアルな服装で、嫌みがない。
   その鞭さばきは見事で、誰もがうらやむ将来が待っているように見える。
   将来か。
   明るいといーが。
   ディーノはぼんやりとため息をついた。
   ディーノには、へなちょこと言われた子どもの頃からの想い人がいた。
   子どもの時は、それはそれは強くてかっこ良くて、きれいに見えた。
   意地悪な同級生たちの中で、一人だけピカピカで真っ白で天使みたいに見えたものだ。
   誰にも惑わされない孤高の存在だった。
    それがいつの間にか、わがままで有名な男の舎弟みたいになり、そいつの言うことしか聞かなくなっていた。
   山本武との戦いで鮫に食われたスクアーロは、
   知っていたスクアーロではなくなっていた。
   敬い憧れる存在ではなく、手を伸ばせば届くところ、いや、それ以下のところまでスクアーロは堕ちていた。
   だから、ずっと欲しかった身体に手を伸ばすのを止めることはできなかった。
   スクアーロは拒みもせず、あきらめているようだった。
   「減るもんじゃねえし、別にいいぞぉ」
   と言った。
   ディーノは猛烈に悲しくなった。
   そう思うスクアーロに。
   そう言わせてしまった自分に。
   そんなもんじゃないのに。
   自分は好きだから、触れたいのだ。
   そこにいるだけで嬉しいのに。
   半年、そばにいられた。
   スクアーロは以前のスクアーロではなかったけれど、好きという感情が薄れることはなかった。
   不幸で、心あらずという風だったけれど、ディーノにとってすごく大事な存在だった。
   ディーノはかいがいしくスクアーロの世話をした。
   ロマーリオに小言を言われたし、噂になっているとも聞いた。
   それが何だと言うんだ?
   オレがスクアーロを好きなことは紛れもない事実なのに。
   スクアーロがヴァリアーに戻ってしまってから、
   ザンザスにパーティーで会った。
   会ってくれないから、押し掛けたんだけど、
   ザンザスは「好きにしろ」と言った。
   だから、時々スクアーロがボンゴレ本部に行く時に顔を出してみたり、ヴァリアーに寄ってみたりもしている。
   ヴァリアーの連中は思ったより簡単にオレを受け入れてくれた。
   少し憐れみの目を向けられている気もするが、出入りしやすいのはありがたい。
   けど肝心のスクアーロがいっこうになびいてくれない。
   ザンザスとの関係もはっきりしない。
   ザンザスは少し前に結婚話があり、その女を城にまで住まわせていたが、ボンゴレ反対派のファミリーに殺されてしまったという。
   それ以降は、一切そういう関係の話は出ない。
   パーティーで見かけることはほとんどないが、
   女連れで出ているらしい。
   まあ、オレもそうだけど。
  あたり前だと思われることをしておくと、だいたいのことは無難に切り抜けられる。
  スクアーロがしあわせなら、オレだってあきらめる。
  けれど、この前久しぶりに街で見かけた時は、明らかに普通ではなかった。
  ザンザスが戻って来たのに、スクアーロはしあわせではない。
  ザンザスといるのに、不幸そうだった。
  簡単にオレについてきて、簡単にその身体を投げ出した。
  誰かに抱かれた身体を、毎日の食事を出すように、いとも簡単に差し出した。
  自暴自棄。
  そんな印象だった。
  百番勝負の話になると元気を取り戻し、いつものスクアーロに戻った。
  スクアーロらしくない。
  でもオレの知っているスクアーロは、あいつの中の一部分にしか過ぎない。
  スクアーロの身体の表面はきれいになった。
  オレがきれいにした。
  でも、ザンザスのために切った手だけはどうにもならなかった。
  スクアーロの身体には殴られたあとや、鬱血のあとが残っていた。
  ずっと残る傷にはならない程度の傷もたくさんある。
  ザンザスとて、残る傷はつけたくはないのだ。
  でも、知っているのだろうか?
  スクアーロは心のどこかを怪我したままなことを。
   
    
    
                     
                                                                        
                                                                        
                                                                        
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