R20
悪の華
XS

遠い明日の誓い
Xanxus34-Squalo32
X×S ほか S受


慈雨



4





スクアーロは4ヶ月以上も意識を失っていたことを知り、しょぼくれていた。
寝たきりだったので、剣のほうもいまひとつ冴えない。
「ししし。もうお前は用なしじゃね?」
ベルは菓子を片手にバカにしたように言った。
「ゔぉおおおおい、そんなことはないぞぉ!!」
まだ声量はやや少ないものの、いつものスクアーロに戻りつつあった。
レヴィはからかいがいがないから、
やっぱりスクアーロをバカにするのが一番楽しい。
ボスも落ち着いてきたみたいで、
いつものヴァリアーに戻ってきた。
スクアーロの意識が無い時の、ぴりぴりした息が詰まるような空気はこりごりだ。
王子ですら気を遣ってしまった。
ボスとスクアーロは、一見そんなに変わらない。
けれど王子は知っている。
ボスは見舞いに来た沢田家光に、「ドカスに二度と触れるな」と言った。
あの親父は肩をすくめただけだった。
あいつもスクアーロに悪さをしていたらしい。
王子は子どもだったから気づかなかったけど、
ルッスーリアあたりは何となく知っていたみたいだった。
あんなオヤジ、殺してやってもいいのに。
ボスの怒りは以前より治まったみたいだ。
怒りの炎を鎮めたのは、
スクアーロだったみたいだ。
スクアーロが雨属性だと知った時、みんな大笑いしたが、
渇いたボスの心を潤わしたのは、あいつだった。
絶え間なく忠誠の雨を降らし続け、
とうとうボスの心を溶かした。
ぶったまげ。
バカのくせに、ボスを癒すことができるなんて。

「ゔぉおおおい、ベル、退屈だから手合わせしないかあ?
じっとしてたら、身体がなまっちまうぞぉ!!」
スクアーロが怒鳴ると、背後に影がゆらめいた。
「ドカス、そんなに暇か?」
「ゔお゛お゛お゛、ボス、いたのかぁ」
「来い」
命じられて着いてきたものの、
行き先が寝室だと気づいたスクアーロは、
顔を赤らめた。
スクアーロが長い眠りから目覚めてから、
ヴァリアーには小刻みに仕事が入り、
結局ザンザスとは何もしないまま一週間が過ぎていた。
スクアーロはぎくしゃくしながら、ザンザスの寝室に入った。
ここに来たからって、昼間っからやるとは限らないぞぉ。
ザンザスは知らんふりをしていた。
まだ体調が万全でないようなので、
何もしていなかったのに、
ドカスはベルと手合わせをすると言い出した。
そんなに元気なら、オレがやってやる。
さっきまでむかついていたが、
赤くなってぎくしゃくしているスクアーロを見ていると、自然と笑みがもれた。
こいつは本当におもしろい。
ザンザスが手を伸ばすと、
スクアーロの身体は簡単にころがってきた。
いつもさんざんな目に遭わしているのに、
いっこうに学習せず、無防備だ。
いろいろな物を投げても、おもしろいように当たる。
この髪が他の奴に汚されたと思うと猛烈に腹が立つが、
自分がする分には構わないのだ。
ザンザスは慣れた手つきでスクアーロを裸に剥くと、
いつものように腰を引き寄せた。
「ゔぉぉ・・・ボスぅ・・・」
カスの分際で困っているのが分かると、よけい昂ってしまうのだ。
「てめえは、オレのもんだ」
「そぉだぁ」
「なら、もう他のやつにヤらせるな」
「・・・おお。そうするぜえ!!」
スクアーロはザンザスの熱い昂りで貫かれながら、
ぼんやり考えた。
そうかぁ。
他のやつとヤらなくていいんだぁ。
ボスとだけでいいんだぁ。
ボスだけ。
そう思うと、胸の中が何だか分からない熱でいっぱいになった。
ぎゅうぎゅうに押し込まれた想いが、
溢れ出して止まらなくなった。
ずうっとザンザスだけに着いてきた。
オレは側にいてもいいのかあ?
てめえなんか要らねえとか、かっ消えろとか、
どうにでもしろとか、
いつも言われていたけど、
いいのかあ?
スクアーロはザンザスにしがみついた。
ザンザスが許してくれたから、
スクアーロの罪と罰は全て消えた。
あんなもの、何でもなかった。
オレはお前から離れない。
どんなことがあっても、これからも着いていく。

ザンザスは意識をとばしたスクアーロの身体をじっとながめていた。
殴らずにカスザメを抱いたことなどほとんどない。
怒りは欲望に変わり、欲望は暴力に変わった。
怒りにつき動かされて蹂躙する身体はただの欲望処理の道具だった。
壊れても、使い物にならなくなっても、どうでもよかったが、
たまたま頑丈だったので、スクアーロは生き延びた。
同じ身体のはずなのに、
今日はつい籠める力を緩めてしまった。
殴るのを控えた。
壊してしまうと困るからだ。
忌々しいことに、このオレが困るのだ。
カスザメがいないと、つまらねえからだ。
こいつがいると、つまらねえことを考えなくてすむ。
不思議といらいらもしねえ。
怒りで塗り潰された世界に、ぽつんと浮かんだドカスがいる。
すべてを破壊し、破滅させるとカスザメもいなくなってしまう。
怒りが消えたわけではねえ。
ろくでもねえ過去は消えることはねえ。
だが、未来までそうはさせねえ。
今度こそオレは全てを手に入れる。
欲しいものは全てオレが支配する。
このカスザメは髪の毛の先まで全部オレのものだ。
オレだけのものだ。









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