R20
悪の華
XS

遠い明日の誓い
Xanxus34-Squalo32
X×S ほか S受


慈雨



5




ディーノは久しぶりにヴァリアー本部にやってきた。
スクアーロが回復してからしばらくは任務もせずに静養していたらしい。
やっと任務に出られるようになったと聞いて、
やってきたのだ。
「ゔぉおおおおおおい、跳ね馬ぁ、迷惑かけたなあ!!」
スクアーロは以前と同じように騒々しく、元気いっぱいだった。
「もうすっかり元気そーだな。
そうだ、マグロのうまい店を見つけたんだが、今度行かないか?」
「おお。行くぞぉ!!」
スクアーロが即答し、側にいたルッスーリアはあわてた。
「ちょっと、スク、跳ね馬について行ったらだめよ!!」
「何でだぁ? メシ食うだけだろうがぁ」
「ししし。王子も行くし」
「いーぜ。みんなで行こう」
便乗してくるベルもあっさり許可するあたり、ディーノも器が大きい。
ルッスーリアは急いでザンザスに報告した。
「ボス、びしっと言ってやってくださいな。
スクは自身のセキュリティは全くなってないから!!」
ザンザスは舌打ちした。
スクアーロがディーノに甘いのは昔からだ。
同級生ということもあり、信用もしている。
関係を持っていたのも確かだ。
ディーノはザンザスに宣戦布告してきた。
この際、応えてやるか。
ザンザスが顔を出すと、それまでなごやかだった空気は一変した。
「スクアーロを食事に誘ったんだが、いいだろう?
っていうか、許可がいるのか?」
ディーノが探りを入れてきた。
「そんなもん、いるかあ!!」
スクアーロがでかい声で叫んだ。
ザンザスは思わず手にしていた書類を投げつけた。
「ゔぉおい!!」
相変わらずだな・・・。
雨降って地固まる的なことを聞いていたのに、これではこれまでと変わりない。
ディーノは二人を交互に見た。
「カスザメ、てめえの誓いを教えてやれ」
「おお。もうオレはボスとしかヤらねえぞぉ!!」
ディーノは耳を疑った。
そういう事は、密やかに言うべき事柄だ。
しかもそれは、愛の宣言に等しいものなのだ。
「お触り禁止だ」
ザンザスが補足した。
カスザメはそれがどういう事なのか、今ひとつ分かっていない。
分かってないが、説明してやるのもバカバカしい。
「ししし。魚類だから、脳みそが少ないんだよ。
残念だったな、跳ね馬」
ベルが少し同情して言った。
跳ね馬はいつもいい菓子を持って来てくれる。
バカなセンパイの事を本気で好きだったみたいだし。
「そーか。それなら、あきらめる」
ザンザスに言われ、ディーノも決心がついた。
とうとうザンザスがスクアーロを側に置くことに決めたのだ。
そうなったら、ディーノの入り込む隙などない。
「跳ね馬ぁ・・・マグロの店には行かないのかぁ?」
何か様子が変わったことは分かるものの、
空気の読めてないスクアーロは首をかしげた。
うわー。まじ信じられない。
本当に、脳みそ足りないんじゃね。
ボスはむっつりした顔をしてる。
バカは治らないからどうしようもない。
もめごとはごめんだが、王子には関係ないし。
「ししし。王子も行きたいし」
ベルも言い、ディーノは困ってしまった。
裏心があって誘っていたから、希望のもてない今、食事だけというのも微妙だ。
それでも、側にいることはできる。
スクアーロとザンザスの宣言は確かに聞いたから、手出しのしようがない。
「ザンザス、食事はいいよな」
ザンザスは何も言わない。
「ザンザスもどうかな? お祝いも兼ねて」
スクアーロの好みはザンザスとは違うことは知っていた。
でも、礼儀として言ってみた。
「何かめでたいことでもあるのかぁ? ボスも行こうぜぇ!!」
スクアーロはザンザスに近づくと、見上げながら言った。
ちっ。
ザンザスは舌打ちした。
こんな時に、妙にしおらしく願い事など言いくさって!!
「行かん!!」
「そぉかあ。ボスと一緒に行きたかったけどなぁ」
少ししゅんとするスクアーロを見て、ディーノはがっかりした。
ああ、オレにこんな顔をしてくれたらなあ。
ザンザスの奴、何でもっとかわいがらないんだ!!
「私も行きたいわぁ!! ボス、いいでしょ?」
様子を見ていたルッスーリアが素早く場をまとめた。
ベルでは役に立たないばかりか、かき混ぜかねないので、監視係として名乗りをあげたのだ。
「いーぜ。じゃ、そういうことで」
ディーノは素早く立ち上がった。
ザンザスはまだまだ言葉が足りない。
これまで憤怒だけしか知らなかった男だ。
しょうがないのかもしれない。
あの様子ではスクアーロはあまり分かっていない。
でも、以前とは明らかに雰囲気が違う。
空気を震わすような怒気がない。
それはスクアーロの鎮静の雨の効果だろうか。
ザンザスのためだけの安らぎの雨。
オレが祝福する必要はない。
きっとそれを一番知っているのはザンザスだから。







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