R20
悪の華
XS

遠い明日の誓い
Xanxus34-Squalo32
X×S ほか S受


誓い



2




ルッスーリアは、この前のうまくいかなかった作戦の後からスクアーロに元気がないことに気づいていた。
スクも危なかったようだけど、ボスが駆けつけてくれて、無事に任務は終了した。
情報不足だったからスクに落ち度はなく、
ヴァリアーはちゃんと任務も遂行して、ますます名を上げた。
それなのに、まったく元気がない。
「ルッス、女に嫌がられないようにするためにはどうしたらいいんだぁ」
突然妙なことを聞かれ、ルッスーリアはあわてた。
「ボスの女の護衛をするんだぁ!!
前のやつみたいに嫌がられないようにするんだぁ!!」
スクアーロは真剣に言っているが、何のことだかさっぱり分からない。
ボスのオンナ?
それって、スクじゃないの?
思ったものの、言わないでおいた。
スクアーロは謎の女を首尾よく護衛する気になっており、
女への対処の仕方を一生懸命聞いてきた。
ルッスーリアは呆れながら教えてやった。
「ボスのオンナは、ボスが一番大事と思う人よ。
だから、同じぐらい大切にいないといけないわ。
ボスを大切に思うように、そのコのことも大切にするのよ」
ルッスーリアは説明しながら、こんこんと「ボスのオンナとしての心得」を説き続けた。
「そのコを大切にしないということは、ボスを大切にしないと同じことよ。
ボスの命と同じくらい、そのコの命も大切にしないとだめよ。
絶対に、軽く見てはだめよ。ボスにとってそれほど大事だから、スクに託すのよ。
軽々しく命を扱っちゃだめよ。あまり気軽に決闘するのもどうかと思うわ。止めたほうがいいわ」
スクアーロは真面目にうなずいた。
「おお。強い奴を見たら決闘したくなるよなぁ。してたら、止めたらいいんだなぁ」
ルッスーリアは頭が痛くなった。
普通の女が決闘なんてするわけないじゃない。
そんなことするの、あんたぐらいでしょ。
ボスもボスよね。
この前、よっぽど心配だったんでしょ。
どうして「ケガするな」ってことが言えないの?
スクは元気はないけど、一生懸命「ボスのオンナ」がどんなものか学習しているわ。
しょうがないから、私も協力してあげるわよ。
ボスがどういうふうにして欲しいと思ってるかを推察して教えてあげるわ。
それもこれもヴァリアーの明るい未来のためよーーーー。

スクアーロはルッスーリアから、ボスの女はどんなふうにしないといけないかを聞いた。
それから、どういうふうに我慢させるかとか、止めさせるかとかも聞いた。
ルッスーリアは相手を知っているようなのに、言おうとしない。
ボスさんも、男より、女がいいもんなあ。
オレは側で仕えられるだけで満足だぁ。
寂しくて悲しい気持ちになったけれど、
そんなものは剣士には不要だ。
いつかは要らないと言われる日が来るのも分かっている。
きっと要らないと言われても、ボスの側から離れられないだろうけど、
それまでは側にいる。
気の迷いでも、側にいろと言ってくれた。
それだけでいいんだあ。

ザンザスは、ルッスーリアからスクアーロの勘違いを聞いていたが、
間違いを正すでもなく放ってあった。
本当に、ドカスにやつの命を守らせたいと思った。
今でもそう思っている。
簡単に危ない事をするなと言いたい。
それをあのアホは何を勘違いしたのか、
身を引く決心すらしているらしい。
いまいましいほどアホだ。
だが放っておくと、ますますひどくなる。
ザンザスはスクアーロにいくつか任務を与え、
そのついでに言いつけておく事にした。
「ドカス、この前のことだが。絶対に守らなければいけねえのは誰か分かるか?」
スクアーロは拳をにぎりしめた。
「ゔぉおおい、知らねえぞぉ!!
でも、お前のために全力で守るぞぉ!!
命を賭けて守るぞぉ!!」
必死で言ったつもりなのに、ザンザスに殴られた。
腹が立ったので、ザンザスは立て続けにスクアーロを殴った。
すると少し気が済んだ。
「ふん。だったら、てめえは絶対に死なないようにしろ。
ケガもするな。
その出来の悪い頭に覚えとけ」
スクアーロがぼかんとした顔になった。
ルッスーリアが殴りすぎるともっと馬鹿になるから止めた方がいいとよく言っていた。
しかし、もう遅い。
「うぉ、え、あ? 
オレは死なないぞぉ。
ケガしてもだめなのかぁ?
でも、ケガや死を恐れたら戦えないぞぉ」
スクアーロはしばらく考えた。
・・・?
オレは誰を守ればいいんだぁ?
・・・!!!
オレかぁ!!!
「ゔぉおおおおおおおおい!!」
突然スクアーロは真っ赤になって叫んだ。
身体中が熱くなり、顔がほてってどうしていいか分からない。
ルッスーリアからくどいほど聞かされてきたボスの大切な相手は自分だったのだ。
「そ・・・そりゃ、オレはボスのこと好きだけどなあ・・・。
部下だし・・・そんな高望みできるような立場じゃねえし・・・。
た・・・大切にされるような身分でもねえし・・・」
突然、くずくず言い出したスクアーロを見て、ザンザスはため息をついた。
確かに、こっぱずかしいので、ただの一度も直接ほめたことはないし、
甘い言葉を吐いたこともない。
それにしてもこれは・・・。
「伝達事項は以上だ。とっとと行け」
機嫌をとるなどということのできないザンザスは、むかついてスクアーロを追い出した。
言う事は言った。
これで奴も少しは分かったに違いない。

ルッスーリアは文書を握りしめたまま赤い顔をして突っ立っているスクアーロを見つけた。
んまあ、これは何かあったわね!!
うきうきしながら、何食わぬ顔をして近づいた。
「スク、どうしたの?」
「ボスに・・・死ぬなとケガするなって言われたんだぁ」
「ふうん。それは、守るべき相手だからかしら?」
スクアーロはどうしていいか分からないようで、目を泳がせ挙動不審になっている。
「ゔぉおおおおい、どうすりゃいいんだぁ!!
・・・こ・・・困るんだぁ・・・。
こ・・困るけど・・・うれしいんだぁ・・・」
ルッスーリアは真っ赤に頬を染めたスクアーロをやさしい目で見た。
ボスはこの顔を知っているのかしら。
もったいないわねえ。
こんなにかわいいのに。
でも、不器用すぎるボスの一世一代の愛の告白は、何とか通じたみたい。
よかった。
本当によかった。
ボスみたいな男はこの世に二人といないし、
スクみたいなコも他にはいない。








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