忘却の空

17
 
 
 
 
 
 

ニコ・ロビンはナミと復讐の計画を立てた。

クロコダイルの弱点はどこ?
ワイパーの弱点はどこ?

内部にはもう、
彼女らの意のままに動かせる人物を潜入させている。
期が熟したら、
一気にカタをつける。
それまでは、静観しておくのがよい。

私たちはとりあえず、刺客を送っておいて様子を見る。
その間にきっと、ドフラミンゴやエースが動く。
彼らはクロコダイルやワイパーを動かすための餌となってくれる。

白ひげはよく言った。
力がないものは、頭を使え、と。
欠けているものがあっても、違う方法で補うことができる。
ただ直進するだけでは何も得ることができない。

私たちは、餌をまいて、
その時を静かに待つ。
時がきたら、決してのがさない。

「私たちが知っている殺し屋を数人やといましょう」
二人は殺し屋のリストをあげ、
クロコダイルを狙わせる者と、
ワイパーを狙わせる者とのグループに分けていった。

最後に残った一人の名を見て、ニコ・ロビンは黙り込んだ。

ロロノア・ゾロ。

あのサンジがずうっと食事をさせていた男。

ロビンはサンジの完璧なデータも持っている。
過去のこと、現在のこと。
ゾロ相手に『笑っている』サンジ。
サンジはドフラミンゴが執着する相手。
サンジがドフラミンゴを欲しているのではなく、
ドフラミンゴがサンジを欲しているのだ。

私を捨てた男、ドフラミンゴ。
あなたへの復讐も忘れたわけではない。

サンジはドフラミンゴを愛してはいない。
そう思うけれど、
あれほど執着され、欲されている自覚もない。
それはすでに罪だ。
おそらく、過去のワイパーも同じ。
そこに身体はあるのに、
決して手に入れることのできない相手。

あのドフラミンゴでさえ翻弄されている。
その存在がすべてを狂わせる。
それに気づかないのは罪だ。

物事は因果応報だ。
まいた種は、いつか花になり、実をつける。

ドフラミンゴの罪。
クロコダイルの罪。
ワイパーの罪。
そして、サンジの罪。

いつかは必ず、罰をうける。
 

私も、罪をおかし、罰をうける。
憎むのは罪だけど、
愛するのも、罪なの?

感情は、理性をくもらせる。
分かっているけれど、
止めることができない。

「ロロノア・ゾロのターゲットは、ワイパーにするわ」
 
 
 
 
 

ナミはロビンの言葉に黙ってうなずいた。
ロビンはドフラミンゴとのことをひきずり続けている。
あの男はロビンを変えた。
本と策略にしか興味のなかったクールな姉。
そのロビンが、
ドフラミンゴのことに関してだけ、
憎しみの感情をあらわに反応する。

ロビンはドフラミンゴを愛している。
だから、裏切りが許せない。

きっと、認めないだろうけど、そういうことなのだ。
ロビンの心にささった愛と憎しみの棘。
それが正確な判断力を曇らせる。

ゾロとサンジは特別な関係にある。
というより、
サンジから近づいているのはあの男だけだ。
ドフラミンゴは、
サンジとゾロの事にも気づかないくせに、
いらだってサンジにあたる。
暴力的なセックスという最低の方法で。

いつでもサンジのすべてを支配したいと思っているのに、
そのためには何ひとつしようとしない。
力で支配することしか、
あの男たちは知らない。
それでは決して手に入らないものがあるというのに。

私たちにとってゾロは捨て駒でしかない。
緑の頭の剣にしか興味のない男。
剣の腕はすぐれているけれど、ただの駒だ。

あの男は殺し屋としての駒か、
ロビンの憎しみのための駒なのか、
サンジへの制裁のための駒なのか、
ドフラミンゴへのあてつけのための駒なのか。
どれでもないようであり、
すべてのようでもある。

ゾロはサンジと出会ってしまった。
サンジはゾロと出会ってしまった。

それは運命なのだ。

ロロノア・ゾロはワイパーの過去を知る。
サンジの過去も知る。
それから、サンジの現在も知るわ。
すべてを知り、
ゾロはワイパーを殺しに行く。
 
 
 
 

私たちは、それぞれが信じる愛に生きる。
青い空は、やがて真紅に変わり、争いの時がやってくる。

こんな時もやがては消える。
 
 
 
 
 

信じるもののために全てをすてて戦うしかない。
忘却の空にたどりつけるまで。
 
 
 
 
 

18
 
 

忘却の空
地下食料庫
URA-TOP
TOP