◆
102
◆
アルビダは、サンジの変化に気づいていた。
ある日を境に、
サンジはすべてに関心を失ったようになった。
いつの間にか、クロコダイルに対し妖艶な笑みを浮かべ、
進んで脚を開くようになっていた。
落ち込んでいるサンジを見るのは苦しかったが、
淫らにふるまうサンジを見るのも耐えられない。
生まれながらの淫売なんだ。
罰あたりの淫売。
いつもそう思いながらも、
ゾロがサンジのどこにひかれたのか、
なんだか分かるような気もしていたのだ。
それなのに、
ゾロの死を知った時から、
サンジはただの淫売になった。
ゾロの死。
おそらくクロコダイルが知らせたのだ。
籠の鳥のサンジは何一つ自分の意志でできることなどない。
あんな男には二度と出会えない。
バカみたいにまっすぐで、
自分に正直で、
前だけを目指して生きていた。
でも、もう死んでしまった。
クロコダイルに逆らったせいで。
サンジなんかを好きになったばかりに。
クロコダイルは国王になる。
王のために立派な城が築かれている。
城はほぼ完成し、あとは王の到着を待つばかりだ。
アルビダは、
その城の下見に行った先で、
執務室の前にたたずんでいる男を見つけ、
大きく目を見開いた。
ゾロ?
ゾロなのかい?
そこにはスーツを来た緑頭の男がいた。
その男はアルビダを見たが、
何の表情も浮かばなかった。
・・・バカな・・・。
こんな男はゾロしかいない・・・。
でも、アタシを見て何の反応もないはずはない。
アルビダはあわてて姿を隠しながらも、
ゾロに想いを馳せた。
アルビダはすでに存在していないことになっている。
アルビダに指令を与えることができるのは、クロコダイルだけ。
あとは、ニコ・ロビン。
クロコダイルは、ニコ・ロビンにサンジのことを託しているらしい。
そのニコ・ロビンが、
城の下見をしておいたらどうかと言い出した。
サンジが籠の鳥だったように、
このアルビダも籠の鳥だった。
しかも、私のための籠ですらなく、
身を潜め、生きていくためだけの籠。
そこから次の籠に移るだけだが、
ニコ・ロビンは私に自由に行けるようにはからった。
逃げちまえばいい。
でも、逃げられない。
もう、私には行く場所などない。
あれは、ロロノア・ゾロ?
他人にしては似すぎている。
でも、ゾロとはあきらかに違う表情をしている。
・・・誰なんだ・・・、あの男は?