top地下食料庫knockin'  on  heaven's  door

■ knockin  on  heaven's  door
       
■  ZORO*SANJI
 

 

■7■
■挑戦■
 
 

ゾロはいつものように昼寝をしていた。
賑やかな声が聞こえる。
甲板ではルフィとウソップとサンジが何かギャアギャア騒いでいる。
ゾロも時々はやる。やる気はないのだが熱くなりやすい性質は皆知っており、それを利用すればいいのだ。
だが、あまりに不機嫌そうなので今日は皆声をかけようとしない。
はー、あいつら、またか。どうでもいいことであれだけ大騒ぎできるなんざ、呆れ果てる。

「ねえ、ゾロ。取り引きしない?」
ナミの声に振り返るとキッチンにゾロを手招きしている。
この女は曲者だ。航海士としての腕が一流なのは認める。だが守銭奴、そして策士としても一流。

「ねえ、このお金。うまく稼いだみたいね」
ナミは腹黒い笑顔を浮かべる。ゾロは何の金だ、と一瞬考えたが、思い当たる。
「サンジ君って思った以上にお金になるのね。それともゾロが脅したのかしら」
あのヤロー。金はいらないといってサンジにやったが、見ると全額近くをナミに渡しているようだ。

「ねえ、ゾロ。サンジ君はあんたの何?」
ナミは魔女のような笑顔を浮かべる。
「彼、性的にだらしなさそうだもんね。アンタには金ないけど、陸にいる男は金持ってるわね。アンタ、私と手を組まない?」
ゾロは無表情でナミを見返した。
ふざけるな。オレは人に指図されるのが一番嫌いだ。たとえそれが誰であっても。

「斬られたいのか?」
腹の底からしずかな声が出る。
ナミはその迫力に汗を流すが言い返すことは止めない。
「まさか。斬ったらどうなるかは考えなさいね」
オレはルフィやサンジとも戦うことになる。そしてまた放浪だ。だが、この女。とんでもねえ奴だ。
緊張の時間。ゾロはゆっくりと殺気を解く。
ナミは心の中で安堵の溜息をつく。
すごい迫力。殺されるかと思ったわ・・・。たかが、これだけの事で。だからこいつは嫌なのよ。
何にも興味がない。「剣豪」以外には。
やっぱりゾロを動かしてお金にするのは無理みたいね。

「あんたは何もしなくていいわよ。でも、サンジ君が何してても口出ししないでくれる?」
ナミの言葉にゾロの目が暗く輝く。
あのアホコックはナミの奴隷みたいなもんだ。ナミに言われたら、本当に何でもしかねない。
罪悪感もなしに。バカだから、あいつは何でもするだろう。
人の為に自分を捨てる。そんなくだらねえことはねえ。自分のためにしか自分を捨てるべきではない。

「ふざけるな」
ゾロの言葉にナミは笑って言う。
「サンジ君はアンタのものだなんて言う気? なら取り引きが必要よ。だって・・・」

ナミが何か言いかけた時だ。
キッチンのドアが勢い良く開けられた。
「ゾロ!!てめえ、ナミさんと二人きりで悪さしてたんじゃねえだろうな!!!ああ、ナミさん。午後のナミさんもお美しい。はあと」
サンジは言うだけ言うと、険悪な二人の雰囲気を無視して、何か作りはじめた。
「ナミさんにはみかんジュースを。野郎共にはレモンジュースだ!!!」

・・・。
いっぺん死んでこい、このアホコック。
この権謀術数うずまく妖気が分からねえのか。
「ささ、どうぞ」
勿論ナミに一番にすすめる。
「ありがと、サンジ君」
ハート目でぼーっとしているサンジ。
ゾロは頭が痛くなってきた。今、コイツのせいで、ナミを斬ろうとしていたというのに・・・。
世の中は広い。だが、ここまでバカは初めてだ。飛んで火に入る夏の虫・・・確かこんな言葉あったよな。
ナミの奴は虫も殺さぬ笑顔ってやつを浮かべサンジを翻弄している。

「好きにしたらいいさ」
ゾロは言いすてて立ち上がった。
ちっ。なんかすっきりしねえ。
サンジが誰と寝ようとオレには関係ねえだろ。
だが、このもやもやは何だ。イライラする。最近ずっとだ。
イライラ解消の為に、より修業の時間を伸ばし、サンジを抱く回数が増えた。
ヤツを抱かなくてもどうってことない筈だ。オレに必要なのは天国の扉ではなく地獄の扉。
誰も開けない扉を開く。己の力で。

「オイ!!!ジュース飲め!!!」
サンジの声がしている。
ゾロは振り返りもせずに、剣を手にした。
剣を持ったゾロに声をかけてはいけないことは皆が知っている。
精神統一。強くなる。剣豪になる。オレは求めるものをこの手で掴む。
この剣で世界を斬る。この険で迷いを斬る。
迷いをもたらすものはオレには必要ねえ。白か黒か。はっきりしていると物事は分かりやすくていい。
 
 
 
 
 

8■