まず、「ギャンビット(gambit)」の語源を御説明しましょう。イタリア語で「ガンバ(gamba)」とは「足」のことです。ですから、Jリーグのガンバ大阪は「足・大阪」ってこと。いやぁ、勉強になるなぁ。
さて、この言葉から派生したのが「ガンビターレ(gambitare)」です。第一の意味は「足を引っかける」。これがギャンビットの語源です。
チェスにおけるギャンビットでは、自分のポーンを相手のポーンによって取らせるわけですから、相手のポーンの「足を引っかけている」わけですな。
(ここまでは正しい説明、以下は私の思いこみによる)
さて、ギャンビットという戦法は、ポーンを相手に差し出すわけですから、それなりの見返りが必要なわけです。では、ポーンの代償として得るものは何か?私が考えるに、大きく3つあると思います。
(1) ポーンによる盤面中央の占拠
(2) 自分のポーンを取った相手のポーンを、自分のピースで取り返すことによって、早い駒の展開を図ることが出来る。
(3) オープンファイルを作り、攻撃の拠点とすることができる。
まぁ、言葉でぐちゃぐちゃ言うのも面倒なので、具体例を挙げてみましょう。
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【図-7.1.1】 |
さて、シシリアン側のc5と指す意味とは、キングサイドの制圧は白に許すがMクイーンサイドは黒が抑えますよということです。ですから、普通は白からd4として、c5のポーンとの交換を図ります。白としては中央の占拠は不可能になるものの、e4のポーンは残りますし、黒はc5のポーンを失うことにより、低い陣形を築かざるを得ません。
そこでウィング・ギャンビットです。白はb4のポーンを突き、黒のc5のポーンをbファイルへと文字通り「引っかけてしまう」わけですね。これによりd4−e4のポーン配列が可能となり、中央をがっちりと占拠することが出来るのです。
この後の白の戦略としては、中央を占拠することによって得たスペースアドバンテージを有効に活用し、合理的なピースの配置を行うというポジショナルな感覚が求められます。って、自分でも何言っているのかわからなくなってしまいます(汗)。
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【図-7.1.2】 |
5手目の時点で、白はポーン1個どころか2ポーンダウンです。ところが盤面を見ると、黒はeポーンが無くなった他は、何一つ駒は動いていません。これに対し、白は2つのビショップが黒のキングサイドへのにらみを利かせています。つまりはポーン(この場合は2個)の代償として、2つのビショップの攻撃態勢を整えたわけです。
この後の白の戦略としては、さらにナイトやクイーンを前線へと繰り出し、ビショップの利きを利用して、黒のキングサイドへの攻撃を行えば良いわけです。
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【図-7.1.3】 |
6手目の時点で、白は何とピースダウン(ナイト1個)です。ところが黒の陣形はこれまたヒドイものです。f4にポーンがポツンといる他は、これまた何の駒も動いていない状態です。これに対し、白はfファイルをオープンにし、キャスリングをすることによってキングの安全を図り、と同時にfファイルにルークを持ってきました。さらにf3のナイトを取った黒のポーンをクイーンで取り返すことにより、クイーンとルークを同じファイルに重ねることが出来ました。さらに、c4に位置するビショップも黒のf7の地点をにらんでいます。
この後の白の戦略としては、黒の陣形における最大の弱点、すなわちf7の地点への攻撃を考えます。この時、白はオープンファイルとなったfファイルにクイーンとルークを縦に並べた陣形を取っていますから、黒のf7への攻撃態勢は整った状態にあるわけです。
ここまで書くと、ギャンビットという戦法は天下無敵の優秀な戦法であると、書いている本人も勘違いしそうになります(笑)。勿論、私レベルの人間でもここまで考えるわけですから、ギャンビットを仕掛けられた相手もいろいろ考えて、これらのギャンビットの対策が講じられたわけです。
例えば、ダニッシュ・ギャンビットでは図-7.1.2以降、
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【図-7.1.4】 |
と進んだりします。
すなわち、黒は得していた2つのポーンを白に返すことにより、クイーンを交換し、互角の展開へと持ち込むことが出来るのです。
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