あれはチェスを始めて1〜2ヶ月、そろそろオープニングの定跡でも覚えなきゃと思っている時期のことだったなぁ。当時の私は白番ではルイ・ロペスのエクスチェンジ・バリエーションを指し、黒番ではシシリアン・ドラゴンを指すことが多かったのです。まともじゃん、すっげーまとも。王道の組み合わせだね。
そんな時に、いるか師匠の悪魔のささやきがあったわけですよ。
「ラトビアン・ギャンビットは優秀なオープニングだぞ」
「えっ?チェスマスターブックスには『白有利』って書いてあるけど・・・」
「いやいや、かなり使えるよ。これはおすすめだね」
かくして一人のラトビアン使いが出来上がったわけです。まさか、この数ヶ月後に、そのいるか師匠から
「やっぱ、ラトビアンはだめだなー、わはははははは」
なんて言葉を聞くとは思わなかったけどね(爆)。
その後、白番ではエバンス・ギャンビットを覚え(ツーナイツになったらマックス・ランゲだ!)、キングス・ギャンビットを覚え、シシリアン対策にはウィング・ギャンビット・・・。後は推して知るべし。
あたしゃ、JCA公式戦ではラトビアンの試合が一番多いんだ。どうしてくれるねん!?
まぁ、そんな騙し討ちのような理由でGM(ここでは「ギャンビット・マニア」の略)になってしまった私ですが、実際にギャンビット系のオープニングを指していて「うんうん、やっぱギャンビット最高!」と思うことを挙げてみましょう。
まず、第一にはギャンビット系のオープニングはマイナーだってのが良いねぇ。あ、いきなりこんなこと言われても困惑しますね。もうちょっと真面目に書きましょう。
例えばウィング・ギャンビットを指したとき。7.1章に書いたように、私は3手目にb4と突くのですが、b4を突かれた相手の方、ほぼ間違いなく固まりますね。
ごく普通にチェスを指す人なら、このb4が「ギャンビット」だというのはおそらくわかるでしょうが、その後のゲーム展開がわからないわけですから、取って良いかもわからないわけです。この状態になれば、ゲームの心理的な主導権はこっちのものですね。私はその相手が困惑している姿を見るのが好きです(根性悪)。
前述したように、ウィング・ギャンビットを指された相手はかたまっちゃうことが多いわけです。ということは、相手はこのオープニングを知らない。自分は少なからず知っている。これだけで、相手との実力差を埋めることができますねぇ。相手が序盤で間違えてくれたら、それだけで自分が有利にゲームを進められるのですから。おっと、もっとも相手の間違いをきちんと咎めることができなければ、お話になりませんけどねぇ(笑)。
やはり、チェスというのは、相手のキングをメイトしてなんぼです。7.1章にも示したように、ギャンビットというのは攻撃への足がかりをつかむものなんですね。お互いに駒を展開して、ガチガチの局面になる前に、とにかくオープンファイルを作って、相手より先にピースを展開してそのまんまどかどか〜っと攻め込もうっつうわけですな。
つまりはとりあえずの攻撃の主導権はこっちが持っているわけです。成功するかどうかは別にしてね(爆)。でも、これは重要です。何にもできないまま負けるのはイヤでしょ?そういう意味で自己満足的な見せ場を作ることができます。またチェスの実力が向上する、あるいはギャンビットの理解が深まることによって、その見せ場を勝ちに繋げることができるわけです。
ポーン捨てりゃ良いってもんじゃ無いのよ(笑)。
ところで、先日、私がある日本トップクラスのチェスプレイヤーとお話させていただきました。
「もう、いいかげんエンド・ゲームの勉強しないとヤバイと思っているんですよね」
「いや、今のまま突き進んでも良いんじゃないですか?少なくとも、正しい攻めと無茶攻めの境界を理解するまでは。あと、攻撃のバリエーションを増やしたり・・・」
そして、別の日本トップクラスのチェスプレイヤーの方とは以下のような会話をしています。
「こんなにギャンビットばかりやっていて良いのでしょうか(なんちゅう質問じゃ)?」
「良いと思いますよ。少なくとも、攻撃する方法を学ぶことが出来るのですから」
さて、これを私なりに解釈してみましょう。
私は、ギャンビットを中心とした攻撃的なオープニングあるいはバリエーションを序盤で選択しています。これはチェスを学ぶ上で、「攻撃とは如何に行われるべきか」を実戦で試しているも同然なわけです。ところが、いざ攻撃するとなると相手キングを直接アタックにいくことが第一になっているわけです(ネタばらし・笑)。キングをアタックするにしても、逆サイドの攻撃を見せながら、相手キングを狙うとか、攻撃前にピースの組み替え等を行って、いきなり無理な攻めはしないとか、いろいろ考えるべきところはあるわけです。おそらく私にはそれが足りないわけです。
強引に相手キングをアタックにいくから、エンド・ゲームの時点では、圧倒的優勢か圧倒的不利な局面になっていることが多いわけですな(笑)。私のミドル・ゲームでの攻撃オプションの中に、「互角〜やや優勢でエンド・ゲームを迎える」という選択肢がないわけです。この攻撃オプションを理解してからエンド・ゲームを勉強しても遅くはないってことでしょう。
で、これをもうちょっと一般論化すると以下のようになるのではないかと考えます。
ここで注意していただきたいのは、これは全てのチェスプレイヤーにとっての一般論ではありません。私のような、攻撃的なチェスを目指す人における一般論でしょう。
私には良くわかりませんが、例えばエンド・ゲームにめちゃめちゃ自信がある人(チェスの学び方として、エンド・ゲームの研究から入った人)なら、とにかく中盤まで駒損の無いように、そしてひたすら対等な駒交換を目指すような指し方を学ぶべきだと思いますし、おそらくそれに有効なオープニングもあることでしょう(ピルツとか)。
「ギャンビットを指そう!」という人は、私と同様に攻撃的なチェスを目指している人でしょうから、その時には上記のようなことを考えてみては如何でしょうか。もっとも、ある一定のレベル以上では攻撃だけでは勝てませんが(笑)。まぁ、それはもっと先のお話ですね。
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