皇帝の正しくないチェス

8.1 キャスリングしたキングへの攻撃


 果たしてこのようなテーマが、「ミドルゲーム」に分類されるんでしょうか(自爆)?ま、細かいことは良いやね。

 ここで持ってくるのは、「Attacking the King」という本の8章「Attacking the castled king」からの抜粋です。

 この本、はっきり言って初心者向きですが面白い。英語も難しくないし(とはいえ、私は研究社の新英和中辞典が手放せませんが)、攻撃的チェス大好き人間には欠かせない基礎知識がきっちりと書いてあります。

 ということで、今回はこの中から「キャスリングしたキングを如何に攻めるか」というところをちょっと押さえてみましょう。

 まずは、一般的に「キャスリング」によってキングの周辺はどのような状態にあるかを再確認してみましょう。ということで、図−8.1.1です。

図-8.1.1 【図-8.1.1】

 この図−8.1.1がキャスリングの一般的な配置と言って良いでしょう。では、この初期配置はどのような状況にあるかということですが・・・。

(1) キングを中央(戦闘区域)から待避させる。
(2) キングの頭を3つのポーンで守る(後述)。
(3) ルークを繋ぐ(お互いに守りあう状態)ことにより、バックランク(自分のキングがいる、一番手前のランク)を守る。
(4) f6のナイトでh7のポーンを守り、かつ相手クイーンの進出(g4,h5)を防ぐ。

と、まぁこんなところでしょうか。

 でもって、この章で重要なのは(2)で書いたところの「3つのポーン」なのです。

 この3つのポーンてのは初期配置の状態にあるわけですが、g8のキングに対して、f7-g7-h7と並べられたポーンが大事なのです。つまるところ・・・、

 

(1) キング自身によって、3つのポーンを守っている。
(2) この3つのポーンによって、e6-f6-g6-h6への敵の侵入を防いでいる。

という状況なんですな。つまり、この3つのポーンが初期配置の状態にあるからこそ、キャスリングしたキングは安全な状態にあると言えるのです。

 裏を返せば、この3つのポーンのどれかを動かしてしまうとそこに弱点が生まれる。そこをどう攻めればよいのか?というのが、ここでの主題となります。

 とここで、実は「キャスリングの一般的な配置」について、もうひとつ触れておかねばなりません。ということで、図−8.1.2です。

図-8.1.2 【図-8.1.2】

 g7のポーンを1マス動かしまして、そのg7の地点にはビショップが居座っています。いわゆる「フィアンケット・ポジション」です。

 g7のポーンを動かすことによって、f6とh6のマスに対するポーンの利きは失われましたが、その地点はビショップで守っています。またこのビショップは、f6の地点だけではなく、a1-h8のダイアゴナル(斜めのライン)までにらみを利かせることとなり、盤面中央での戦いや、敵陣に位置する駒の動きを牽制することにも役立っています。

 さて、では相手のキングがキャスリングした後に、その頭上に位置するポーンが動いたとします。そこを攻めるコツですが、6つのパターンに分けて説明してみましょう。

フォーメーション−1

図-8.1.3 【図-8.1.3】

(1) h6にビショップのサクリファイスができないかどうかを考える。
(2) 相手がgポーンを動かすように誘導する。
(3) g7やh6のポーンを攻撃するために、f5の地点にナイトを配置する。
(4) g2-g4-g5とポーンを突く。この時、相手と同じ方向にキャスリングしている場合には、自分のキングの守りが薄くなるので注意が必要。

 

フォーメーション−2

図-8.1.4 【図-8.1.4】

(1) a1-h8やc1-h6のダイアゴナルを通じて攻撃をかける。
(2) 黒マスを利用する。特にf6とh6。
(3) 相手の黒マスビショップを移動させる、あるいは交換してしまう。
(4) f2-f4-f5あるいはh2-h4-h5とポーンを突く。

 

フォーメーション−3

図-8.1.5 【図-8.1.5】

(1) 図−8.1.4の場合と同様に黒マスを利用する。
(2) g6へのサクリファイスを考える。
(3) a2-g8のダイアゴナルにビショップを配置し、f7のポーンをピンする。その後にg6のポーンへ攻撃をかける。
(4) fポーンあるいはhポーンによる攻撃を仕掛ける。但し、g4-g5とポーンを突いたりすると、h6-h5と突き返される場合があるので注意。

 

フォーメーション−4

図-8.1.6 【図-8.1.6】

(1) 図−8.1.4や図−8.1.5の場合と同様に黒マスを利用する。
(2) g6やh5へのサクリファイスを考える。
(3) a2-g8のダイアゴナルにビショップを配置し、f7のポーンをピンする。その後にg6のポーンへ攻撃をかける。
(4) g2-g4とポーンを突く。

 

フォーメーション−5

図-8.1.7 【図-8.1.7】

(1) a1-h8やb1-h7のダイアゴナルを通じて攻撃をかける。
(2) g5へのサクリファイスを考える。
(3) クイーンあるいはナイトをh5に配置する。
(4) h2-h4とポーンを突く。

 

フォーメーション−6

図-8.1.8 【図-8.1.8】

(1) a2-g8のダイアゴナルを利用してチェックをかけ、キングをh8へと押し込める。
(2) f6にナイトがいないことによって弱くなっているh7に攻撃を仕掛ける。
(3) ナイトをf5かh5に配置する。
(4) g2-g4-g5とポーンを突くと、f6-f5と突き返される場合があるので注意。また、ポーンでの攻撃は時間を要する

 

 パクリまくりですが、こんな感じです(笑)。

 今回の説明は、キャスリングした黒のキングに対する白の攻撃法ですが、勿論白黒が逆でも基本は一緒です。

 お互いのキングが共にキングサイドにキャスリングする、というのは一番良くあるパターンです。こういったキングへの攻撃法を応用してみましょう。