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【図−1】 |
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(Queen's Gambit Declined:以下QGD)は、1. d4の対応として最も有名な定跡の1つです。
1. ...d5は、2. e4による白のセンター支配を防ぐ目的のほかに、Bc8およびQd8を活躍させる布石にもなります。
ポーンのe4への進出を防がれた白は、GM同士の対戦ではほぼ100%、2. ... c4が指されています。この時点で「クイーンズ・ギャンビット(Queen's Gambit)」といいます。
この手は「序盤での戦略的一手:その後のあらゆる展開を可能とする序盤の妙手」(チェス専用掲示板【615】付近・・・この頁の最後に引用しておきます)といわれているそうです。
ここで黒の指し手によって展開が変わりますが、主に以下の3つです。
A: 2. ... e6 (QGD)
B: 2. ... dxc4 (Queen's Gambit Accepted)
C: 2. ... c6 (Slav Defense)
今回はAについての簡単な紹介を行っていきます。
(BとCは、ほかのかたが詳しく説明するはずですよね。皇帝さん?)
まず本題に入る前に、QGD playerのためのQGD playerによるトランスポーズについて、ちょっとだけ触れておきます。
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【図−2】 |
有名な(?)English Openingです。最近Yahooなどの日本のオンラインチェスゲームにおいて流行しているそうです。ここで黒が従来の1. ... e5と指した場合、白の勝率はよさそうです。
しかし、黒がQGD playerと自負するならば、もちろんこの1手でしょう。
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【図−3】 |
この手により、白がg3 - Bg2とCatalan Openingのように変化しない限り、ほぼQGDのプランで試合が展開できます。メインラインとして、以下 2. Nc3 d5 3. d4 Nf6となります。
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【図−4】 |
これまたオンラインチェスで流行しているReti Opening(詳しくはReti Opening−Benoni Reversedを参照)の主な変化です。
黒の応手によって白が対応するという日和見主義的な人におすすめ(?)の定跡ですが、ここでQGDプレーヤーならば自信を持って指す手があります。
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【図−5】 |
これも、先ほど述べたようにある種の変化を除き、ほぼQGDのプランで試合ができるでしょう。
つまりQGDプレーヤーは、初手d4,c4,Nf3といった、今後の展開に多様な変化が存在する手に対して、QGDだけで対応できるというマルチな面があります。
ここまで読んで、QGDを使ってみようと思いませんか(笑)?
さて、本題に入ります。
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【図−6】 |
先ほど述べたEnglish OpeningおよびReti Openingの場合、トランスポーズによってQGDのExchange Variationになる場合が多いです。
よく知られる展開として、4. Nc3 Nf6 5. Bg5 Be7 Nf3(Systems with Nf3)のプランがあります。
またKasparovはQGD対策として、Ng1をf3の置かずe2に置くプラン(Flexible Systems)を好んで採用しているそうです。
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【図−7】 |
QGDの試合として、この形になるパターンがよく知られています。
そして、ここでの黒の指し手および、そのときの白の対応によって展開が細かく分類されます。
6. ... Nbd7 (Orthodox Variation)
6. ... h6 7. Bxf6 (Systems with Bxf6)
7. Bf4 (Systems with Bf4)
7. Bh4 Ne4 (Lasker Variation)
... b6 (Tartakower Variation)
これらはKasparovやKramnikをはじめとする世界のトップが頻繁に使用しています。つまり、有効戦術である証拠と言えるでしょう。
QGDとしては一般的に上記で示した形になりますが、今回は上記すべての図示および解説については、ただでさえ忙しい皇帝さんの手を煩わせるので割愛させていただきます。
QGDは、主にセンターおよびcファイルでの攻防がメインになりますが、他の定跡に比べて駒の交換が少なく、穏やかに進行する場合が多い定跡です。
c4とd5でポーンがぶつかっているわけですが、白黒どちらから取るのかによっても展開が変化するので、QGD playerにとってはQGDの勉強はおろそかにはできません。
しかし、QGDは幅広く変化するためか、他の定跡をもカバーできることから、お得な定跡といえるでしょう。
最後に、参考文献とさせていただいた本(下記に示す)は、名古屋チェスクラブHPで開催されたチェスクイズ「NEXT MOVE」における当選品です。みなさまも、今後も開催される「NEXT MOVE」にご参加されることを期待しています。
参考文献 Matthew Sadler(2000):queen's gambit declined, EVERYMAN CHESS
[615] 投稿者:Rye 投稿日:2003/03/29(Sat) 17:14
お久しぶりです。実は今度シシリアンを勉強しようと思い、Yahooで「チェス シシリアン」で検索したら、「1996年4月1日号シシリアン・ガンビット」というHP(チェスには直接関係しないですが)が出てきたので、しばらく読んでみたところこんなフレーズがありました。
シシリアン・ガンビットの名称の由来
チェスで”クイーンズ・ガンビット”という言葉があり、「序盤での戦略的一手:その後のあらゆる展開を可能とする序盤の妙手」を意味します。
ほんとにクイ−ンズギャンビットはそうなんですか?
[616] 投稿者:d4プレイヤー 投稿日:2003/03/31(Mon) 00:30
>>>「序盤での戦略的一手:その後のあらゆる展開を可能とする序盤の妙手」を意味します。
その通りです。僕は1.d4と指しますがc筋のポーンをc4には、進めません。c4まで進めればとても世界は広がります。試してみてください。
[617] 投稿者:Genan 投稿日:2003/03/31(Mon) 08:28
シシリアンギャンビットというのは、たぶん心臓の不整脈に関する治療戦略ですよね。かってシシリー島に欧米の心臓内科医が集まって、不整脈に関する治療戦略を発表した時に、この名前を付けました。
日本ではチェスを知っている医学部の教授などほとんど居ませんから、「チェスで”クイーンズ・ガンビット”という言葉があり、『序盤での戦略的一手:その後のあらゆる展開を可能とする序盤の妙手』を意味します」という説明をよくつけてます。
そしてシシリンギャンビットというのはチェスの定跡には無いという説明をよく付けてますが、渡井さんの本に、1,e4 c5 2,b4 をシシリアンギャンビットと説明してますよね。
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