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レポート6  第10回目の訪問  10月24.25日

「せんせいおはよう、みなさんおはよう、ことりもちっちとうたっています、おはよう、おはよう」
 
1.
 10月24日の朝、4才児達は園庭でドングリや木の実を拾って遊んでいた。
 O養護施設の園庭は広く、大きな広葉樹がたくさんあり、適度な藪もあり、バッタやだんごむしややまごぼうやじゅずや、赤い実、緑の実、紫の実、黒い実、きれいな木の実がいっぱいある。
 子供たちはいろいろな木の実を集めることにむちゅうになっていた。
 担当保母のTさんはツタをまいてリースを作る準備をしていた。
 
 子供たちと自然の木の実との関係が、ものを支配しようとする関係から、そのままですてきだなと思い、木の実の一番すてきな姿でお部屋にでも自分の回りにでも置いてあげられるようになること。
 4才児達は、これが素直にできるようになってきたと思う。
 6月に私がはじめて訪ねた頃は、子供たちの一人一人は、自分の外の環境を自分の意志で動かそうとして、苦しみ悶え絶望していたのである。

2.

ここをクリックすると大きな絵が見られます。

 24日の午後はロバとうさぎの手人形を描いた。

 赤と黄色と青と白とほんの少しの藍色の水彩絵の具を使い、大筆と中筆で描いている。
 まず、背景の色を決める。
 「ろばさんの後ろにすてきな色を薄く塗ってあげよう、お空の色、夕焼けの色、草の色、おみかんの色、土の色、ぶどうのいろ、どんな色がいい?」
 赤と黄色と青と白を混ぜて背景の色を作る。白と水をたくさんいれる。
 次に「あいいろをいれて、同じくらいのあかをいれて、同じくらいのきいろをいれて、白をいっぱい入れて」灰色を作り、
白で鼻の先を白く描いたあと、円弧で、頭、前足、後ろ足、背中のこぶ、大きなお尻、しっぽ、を描いていく。
 次に「あいいろをいれて、同じくらいのあかをいれて、同じくらいのきいろをいれて」まっくろくろすけを作り、目を描き、たてがみを鼻の先から尻尾への方向に描く。
 
 背景の色は、HとBとAが夕焼けの色、IとFとEがお空の色、Dはおみかんいろ、Gは肌色、である。
 背景の色は、ろば、うさぎ、くま、の象徴する「自分の他者への感情」に対する自分の気分を現している。
 お空の色は、自分の感情の喜びを表し、  
 夕焼け色は、他者を敬愛している自分の気分を現し、
 みかんいろは、自分を敬愛している他者の感情を表し、
 肌色は、家族を支え敬愛している自分の感情を表している。
 
 Cは、最初背景色を黒で描きたいと言った。
 「黒かい……」といいながら、「赤いれて、黄色もいれて、青少し、青はちょうどいいと思うまで少しずつ入れて」といったら、「茶色にする!」と背景の色を変更した。
 Cは、ろばの目を描くとき、「これ、泣いているとこ」といった。
 実際に背景を塗ってみると、Cの背景色は肌色になった。
 
 ろばは、自分の他者を維持する感情を表し、
 うさぎは、自分の他者を支持する感情を表し、
 くまは、自分の他者を支え敬愛する感情を表しているのである。
 
 Cは心の温かい子である。
 私は、Cの前生での体験の中に、家族(国家)を愛し維持しようとする感情で生き抜いたが、自分の努力にも関わらず、自分の面前で家族(国家)が崩壊していった、絶望と苦しみと悲しみを感じる。
 その現れが、ろばと、背景の黒と肌色と、泣いているろばの目であったのだ。
 
―行きて帰りし物語―
 
 HR Spleltlere の手人形は、動物の形姿を子供たちに伝えるための素材としては最高のものである。
 頭がしっかりと作られており、お尻が大きく綿が入っているために、胸と背中の小さなこぶがはっきり意識されてき、動物の体も、「頭・胸・胴」、の3分節からできていることをしっかりと把握できるからなのである。
 
 哺乳動物、昆虫類、魚類、の肉体は、「頭・胸・胴」、の3分節を持っている。
 この3分節は、「物語の3分節」を現しているのである。
 瀬田貞治は、「幼い子の文学」(中公新書)の中で、
 幼い子供たちが喜ぶお話には、一つの形式というか、ごく単純な構造上のパターンがあるんじゃなかろうか。
 で、その構造上のパターンというのは、「行って帰る」ということにつきるのではないか。
 と、述べている。
 「行って帰る」では2分節ではないか、と思われるかもしれない。しかし、
 おうちから出発し、  :自分の他者への思いが溢れだし、          :感情
 お友達と出会い経験し、:他者と出会い経験が起こり、            :記憶
 おうちへ戻ってくる。 :自分と他者の思いが経験としてまとまり、認識が起こる。:認識
 訳であるから、正確には3分節なのである。
 
 中世まで、人間の心の中心は心臓にあると信じられていた。
 他者を心配すれば胸が熱くなるし、興奮すれば心臓がどきどきする。
 胸(心臓と肺)は、自分の感情が自分と人類の意識界に流れ出る源なのである。
 他者を心配していることが他者に伝わらないときにはお腹が痛くなる。頭の中でイメージが起こってもそれが実現しなくて我慢している状況では便秘が起こり、頭のイメージを自分勝手に行動しているときには下痢が起こっている。
 腹(その他の内臓)は、自分の記憶を管理している器官なのである。
 他者の思いと自分の思いと、その出会い(経験)をまとめ、秩序付け、意識するのが頭・脳の役割なのである。
 
 子供たちの絵に戻ろう。
 どの絵も頭とお尻(お腹)が充実している。
 これは、子供たちが、自分の現在の経験を肯定し、意識が安定している様子を現している。
 B、H、Iの絵の胸が薄いことが見て取れる。
 彼らは、共通して腸骨(骨盤)の形成が遅れ、足の意識が腸骨と仙骨で堰き止められ、足の意識の一部が脳まで届かない状況にある。
 すると、成長痛などが起こりやすくなり、行為障害(噛む、叩く、蹴る、怒る)、痛風(他者の意識を在らせようとし、いらだつ。30代以降に尿酸値が高くなる)が起こってくる。
 そして、この3名とつきあってよくわかることだが、彼らがすねてしまうときに、なぜすねているのかこちらが分からなくなってしまうのだ。(うさぎの絵を描いているので表にでてこなかったが、Fにもこの傾向がある)
 それは、彼ら自身に彼らが何にこだわっているのか訳が分からないからなのである。つまり、彼ら自身の思いの源泉である感情が、足には響くが、腸骨で堰き止められてしまい、脳の意識に響いてこないからなのである。
 
 さて、後で触れるが、J(幼稚園)、S(小学生)、の不登校の大きな原因に、この腸骨(骨盤)の発達遅滞があるのである。 
 
 
3.
 25日の朝、L(幼稚園)に出会った。
 Lは「かきのきのえをみせてあげる」と、私の手をとって彼の部屋に引っ張っていった。
 彼の部屋では、不登校をしているS(小学生)を中心に、不登校気味のQ(小学生)、不登園ぎみのJ(幼稚園)、K(幼稚園)の4人がカードをしていた。
 Lは、彼らの脇に私を連れていき、すわると、「ジージーやって」といった。
 私は喜んで、Lにオステオパシィをした。
 Sは、私の顔をちらっちらっと見ながらカードを仕切っていた。
 
 ひととおりオステオパシィを受けると、LはKに「ジージーやりな」といって、Kを私のところへ連れてきた。
 Kは、いごこちわるそうに少しオステオパシィを受けると立ち去っていった。
 カードはお開きになっていた。
 Qはひとり腹這いになってノートに書き込みをしていたので、私は近寄り彼の腰を治しはじめた。
 Qは逆らわなかったので、ひととおりのオステオパシィを行うことができた。
 
 Qをオステオパシィして分かったことは、彼の側頭骨と前頭骨と第2腰椎が大きく歪んでいることである。
 Qには不得意な教科がありそれが厭で学校に行かなくなったのだそうだが、他者の意志が自分に近づいてくると逃げ出してしまう広義の自閉症が側頭骨・視床にあり、そこから、他者に会いたくないと思う脳性麻痺系の鬱病を前頭骨・前頭葉で繰り返し、その自分のからだに対する命令を第2腰椎で繰り返し、鬱的症状を起こし、不登校となっているものと思われる。
 この意味では、Qは、鬱病から起こるオーソドックスな不登校の事例である。 担当の職員には、側頭骨と前頭骨のオステオパシィの方法と、お腹が痛いと彼が訴えたらお腹を暖めるようにというアドヴァイスを伝えたい。
 
 この日、私は、Sの視線を感じながらSの心と体を探っていた。
 SはJをかわいがっているが、Sの体形はJとよく似ているのである。 骨盤が小さい、体はすらっとしていて、目がぎろっとしている。
 腸骨・骨盤が小さいことは、痛風と行為障害があり、足に響いている自分の感情を脳に伝達しにくいことを現している。
 二人とも大きなぎろっとした目をしているが、交感神経系と副交感神経系がともに昂進しているとこのような目になるのである。
 副交感神経系が昂進しており、他者の気持ちを聴こうとする意識が強く働いているが、足に響いている自分の感情が脳の意識に響かないために、他者の気持ちだけが脳の意識に繰り返される状態になる。
 交感神経系が昂進しており、自分の意識界を形成しようとする意識が強く働いているために、他者の気持ちに同情すると他者を自分の後ろに囲い込み世間と対立を起こす。
 
 不登校の子供たちのごく一部にこのような子供たちがいる。
 神戸の小学生を殺害した中学生の事件、バスジャック事件、等、近年の少年による殺人事件の多くがこのタイプの行為障害の子供たちによって起こっているのである。
 ドフトエフスキーの「罪と罰」は、このタイプの子供たちの心理を描いたと考えてよいのである。
 
 対策は、
 1.腸骨と仙骨及び、蝶形骨大翼のオステオパシィを行うこと、(行為障害、痛風、広義の分裂病の治療)
 2.側頭骨と前頭骨と頭頂骨のオステオパシィを行うこと、(広義の自閉症と鬱病と広義のてんかんの治療)
 3.にがりの入った塩を使った食事をすること。(行為障害への対策)
 4.レタスを食事から除去すること。(広義の分裂病への対策)
 5.胚芽米を食べること。(行為障害、鬱病、神経症の治療)
 6.足と手を共同して動かす喜びを、リズム遊びから子供たちの体に伝える。(行為障害、痛風の治療)
 が考えられる。
 
 
4.
 25日の午前中には、足に鈴を巻いて「そらをみてたら」と「もりのくりすます」を歌った。
 まず、1拍目と3拍目で足を踏みならし、2拍目と4拍目で手を打つ形で、「そらをみてたら」を歌った。
 足に鈴を巻いているので、1拍目と3拍目では鈴が「シャン、シャン」となるわけである。
 E、H、I、D、が、やはりなかなかうまくできなかった。
 
 つぎに、8の字に歩きながら、「もりのくりすます」を歌った。
 子供たちは、9人全員が歌えるように、りす、うさぎ、くま、きりん、ろば、ぞう、たぬき、パンダ、ライオン、が登場する歌詞を用意していた。
 「シャン、シャン」と歩いて鈴を鳴らしながら歌うと、「もりのくりすます」の場合には、こどもたちは自分の感情が聴こえる状態に入ってくる。
 床にビニールテープを8の字に貼り、その上を歩けるようにすることとした。
 
 つぎに、タンバリンを一つ使って、一人がタンバリンを打ち、残りが足(鈴)と手を打つ練習をした。
 「シャン、・、シャン、・、」「シャン、・、シャン、・、」「シャン、トン、シャン、トン」「シャン、トン、シャン、トン」「シャン、トン、シャン、トン」「シャン、トン、シャン、トン」
 9人が順番に3回りしても子供たちはやめようとしなかった。
 
 
5.
 2時間もリズム遊びが続いて子供たちも私も疲れたので、その後はフリーで遊んだ。
 左上の写真では、くまさん、ろばさん、うさぎさんと、魔女の人形をお布団に寝せている。
 左下の写真では、看護婦ごっこをしている。
 いずれも、中心になっているのはGである。
 
 私は、子供たちを自由に遊ばせながら、B、E、H、I、をオステオパシィした。
 Bは、仙骨と腸骨と肩胛骨と肋骨と蝶形骨大翼に問題が残っている。
 Eは、頸椎と仙骨と腸骨と前頭骨と蝶形骨大翼と肩胛骨に問題が残っている。
 Hには、肋骨と仙骨と腸骨と蝶形骨大翼に問題が残っている。
 Iには、側頭骨と肩胛骨と仙骨と蝶形骨大翼と肋骨に問題が残っている。Iの手は今冷たいが、肋骨と肩胛骨が治ってくると暖かくなってくると思われる。
 
 この子達に共通しているのは、仙骨と腸骨、そして蝶形骨大翼の問題である。
 仙骨と腸骨に問題があると、痛風と行為障害が起こりやすくなり、自分の感情が聞こえにくくなる。
 蝶形骨大翼に問題があると、鬱病や神経症や躁鬱病や広義の分裂病が起きやすくなり、思考を繰り返すようになる。
 すると、他の子に手を出したり、わだかまり、だだをこねたり、意固地になったりしてしまうのだ。
 
6.
 この日の昼食近くになって、IとEが泣き始めた。
 ごねる彼らを保母のTさんは一人ずつ抱っこして食堂まで運んでいた。
 オステオパシィをすると、今まで聴こえなかった自分の感情が聞こえてきてしまい、一時的にわだかまりがおこってしまうのだ。
 
 昼食が終わりかけた頃、栄養士のAさんが、「学童の子供たちが荒れているようなのですが、なぜなんでしょうか?」と質問してきた。
 「そうだね、荒れているのにはいろいろ原因があるけど、ひとつにアレルギーという問題があるのだよ。
 それはね、食事という観点からアプローチすることができるんだ。
 まず、あなたのアレルギーをOリングテストでテストしてみよう。」
 私はそういって、彼女の右手の親指と中指でリングを作ってもらい、左手に何も触れていない状態で、私の右手と左手のリングでそれが開らき、
 つぎに、彼女の左手にティッシュを持ってもらい、右手のリングを開いた。
 右手のリングは簡単に開いた。
 「どうだい、自分の右手の力が入らないことがわかるだろう?」
 「なぜですか?」
 「そりゃあ、どの人間だって化学物質に対するアレルギーを持っているからさ。
 でも、白くさらしてあるから、ティッシュを清潔なものであると思いこむんだ。それに、僕らの回りはプラスチックのもので溢れているからね、医学者達がこれを使わないことにすべきだと言い出さないことには、一般の人たちはティッシュにアレルギーが起こるなんておもいもおよばないだろ?」
 
 そこにAが近づいてきたので、Aの右手をとAさんの左手をつないでもらい、Aの左手にちゃわんむしのかけらをのせ、Oリングテストを行った。
 すると、Aさんの右手の指の力が少し弱まった。
 「なぜ、私の指の力が抜けるの?」
 「Aの体の情報をあなたの感情が聴いているからさ。
 あなたは、この施設の一人一人の子供たちのことを心配しているからさ。
 女性の方が男性より正確にわかるんだよ、一番はお母さん、次に担当の職員、栄養士でそれが分かるというのはあなたがちゃんとこの施設の子供たちを愛しているからだ。」
 
 「まず、子供たちの嫌いな食べ物を、このようにOリングテストで調べ、一人一人のアレルギーの表を作って欲しいな。
 子供が嫌いでOリングテストでアレルギーがあることが分かる食物は、わがままでたべない訳ではないことがわかるだろう?。
 まずこれをやって欲しい。
 鶏卵、鶏肉、豚肉、牛肉、牛乳、さば、さんま、イカ、タコ、貝類、ほうれん草、にんじん、とうがらし、ピーマン、キャベツ、はくさい、レタス、もちごめ、こめ。
 保育園などでアレルギーの除去食を行っているところもあるのだから、そこを見学に行くこと。
 それから、アレルギーはアレルゲンをちゃんと肝臓・腎臓からおしっこの中に排出できないために起こるのだから、代謝系の機能を高めるための食物を食べること。
 つまり、お米を少し黒くする。米に対してアレルギーのある場合は、雑穀を食べさせるとか、ライ麦パンを食べさせるとか対策をするんだ。」
 
 「荒れている子供たちに対する食事からのアプローチは、次回までに回答を書いてくるよ」
 
 実は、私は、1ヶ月前から担当の職員達には子供たちのアレルギーを調べるためのOリングテストの方法を伝えていたのである。
 しかし、そのときの担当の職員達は、
 「千葉さんのおっしゃることは、私たちはよく分かります。
 でも、給食の担当者の視線を感じると私たちは何も言えないのですよ。
 私たちが言っても、給食の担当者には分からないでしょう。」
と、嘆くばかりであった。
 「いやあ、あなたの言うことがみんなに分かる雰囲気になるまでゆっくり待つのさ」
 私は、そういって彼女たちを慰めていたのである。
 

 今回もまた、私にとって幸せな訪問であった。

★★★荒れる子供たちに対する給食からのアプローチ★★★

 

2000年10月30日

千葉義行

 
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