― 終焉の果てに ―
「……あの世界は終焉を迎えたか」
石造りの宮殿の中、鎮座する赤い魔王が呟いた。
魔王の前には、複数の光球が浮遊している。
今し方終焉を迎えた世界から流れ込んできた、冒険者の魂だ。
「さて……どうやら汝らで最後のようだ。
汝らを次なる世界へ送り届けよう。自らが望む未来を告げるが良い」
「……」
魂たちは、自分たちの無事を確かめ合うように辺りを左右に漂い始めた。
(食物繊維、無事か?)
(う、うん……何とか逃げ切れたみたい)
(これも、俺の愛のおかげだね!(キリッ))
(こんなところでまで……エロスはほどほどになさい)
(カマーン)
(ふん、あんなゲテモノ野郎に俺の食い物を取られちゃたまらんからな)
(らぶ☆)
冒険者の魂たちの会話が聞こえる。
どうやらすぐに次なる世界へ転生するつもりはないようだ。
魔王は彼らの気が済むまで、彼らの好きにさせることにした。
彼らが次に赴く世界が同じ場所とは限らないのだ。
(……あれ? あれれ??)
(どうした、妹よ)
(……いない……)
少女の魂の絶望に満ちた呟き。
(……ダーリンが、いないっ……!!)
← →