― 終焉の果てに ―


「……限界だ」

未だに次なる世界へ旅立とうとしない冒険者たちに、冥界の赤き魔王は告げた。

「これ以上汝らの魂をここに留めることは出来ん。
次なる世界が決まらぬのなら、我が以前の世界に最も近い場所へ送り届けてやろう」

「でも、ダーリンが……ダーリンがまだ来てないのっ!!」

「以前の世界はすでに混沌に沈んだ。
もはや我でも、その世界への道を作ることはままならぬ。
もし崩壊までに我が魂の流れに身を委ねていない者がいたとしても……もはや、何の干渉も出来ぬ」

「そんなっ……! それじゃ、彼は……」

冒険者たちの間に、動揺と絶望が走る。

「……そんなの、イヤだよ。僕が助かって、彼が助からなかったなんて……
寝覚めが悪いって、自分で言ってたことじゃないか!」

食物繊維が叫ぶ。目からは大粒の涙。
こんなことになったのも、全て自分が弱いせいだ。
……


「……混沌とは、形定まらぬこと」

そんな冒険者たちの様子を見て、魔王は言葉を紡ぐ。

「全ての存在は、秩序によって形定められた混沌。
もし、その者が混沌の中に在りながらも、己を己たらしめている秩序を失わなければ……
もしやすると、混沌を通じていずれかの未だ形定まらぬ世界へと脱出することが出来るかも知れぬ」

「……」

「……いずれにせよ、汝らも次なる世界へ旅立たねばならぬのだ。
さぁ……望む世界の姿を告げるが良い。
それとも、我が独断で決めてもよいか?」

「――!?」

魔王が呪文を唱えると、冒険者たちの魂が、石造りの天井をつき抜けどこかへ飛んでいった。



 

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