― 終焉の果てに ―
「……よくぞ戻ってきてくれた――」
「!?」
少女と抱き合う少年の後ろに、不意に現れる黒い影。
振り向くと、そこには邪神教団の司教が立っていた。
覆面マントにビキニパンツ、手斧といういでたちで。
「……そ、それは……」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた!
この服装は、この世界の名だたる勇者が愛用していたもの!
この世界における私の使命は、この服装の素晴らしさを隅々まで伝えることだ!」
筋肉を見せ付けるようなポージングと共に熱く語る司教。
背筋に悪寒を感じ、思わず一歩後ずさる少年。
そんな少年に構わず、司教はビキニパンツの中から装備一式をぬっと取り出した。
「さぁ……今日から君も誉れ高き『覆面パンツ連盟』の一員だ!」
「いっ……イヤだああああああ――――――っ!!!!!!!!!」
司教の様子に戸惑った様子もない少女から離れるや否や、
迷わず真っ先に燃え盛る暖炉の中に身を投じる少年。
そのまま煙突の中を駆け上り、屋根へと避難する。
「こ、ここでもか……! まだ悪夢は終わらないのか……っ!」
屋根の上で、かつての世界の恐怖を思い出し身震いする少年。
「ふふふ、私は君にマスクを被せるまで、決して諦めはせん!」
「な……何だってぇ……っ!?」
湧き上がる煙の中からズボっと姿を現す覆面マントの男。
そのあらわにされた筋肉には、火傷一つない。
「この服装をしている私は無敵!
すなわち、煉獄の炎もこの身に焦げ目一つつけることは出来ないということだっ!!」
「そ……そんなアホな――!!!」
「さぁ、いい加減観念したまえ!!」
「断じて断るっ!!!」
屋根から地面へ飛び降りると、そのままひたすら遠くへ走りだす少年。
マントをばさばさはためかせながら、それを追う司教。
「カマーン」
「カマーン」
そんな二人の様子を、カマキリが見守っていた。
「カマキリはかみあってるのにねぇ……」
いつまでもぶつかってばかりの兄と思い人に、少女はため息をついた。
FIN.
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