終焉への序曲





一方、平民服の少年と邪神教団の司教の妹は
新婚旅行に偽装された、邪神降臨の儀式を行わされていた。

これを新婚旅行だと信じて疑わない妹は、愛する男性と過ごすひと時の幸せをかみ締めていた。
しかし……対する少年は、どんよりと濁った虚ろな瞳で、そんな少女を見返すだけだった。

「私、ダーリンと過ごせて本当に幸せ」

少女が夢を見ているようにささやく。

「でもダーリン、なんかいつもと違う。私、ダーリンの素顔が見たいのに……
どうして、ゴーグルを取ってくれないの?」

少女の何気ない質問を、少年は深い口づけでさえぎった。
この上なく甘いと伝えられるそれは、確かに甘かった。
まるで、柘榴の粒のように。

「……そんなこと、関係ないではないですか」

虚ろな眼差しを少女に向けたまま、少年は口元に笑みを浮かべる。

「貴方は何も考えなくていいのですよ、マイレディ」

優しい言葉。しかしその響きはどこか暗いものを帯びて。

「……さぁ、蜜の月はこれで終わり。皆の許へ帰りましょう」




儀式を終え、仲間の許へ戻る二人。
仲間に出迎えられる二人を、邪神の神器たる漆黒の仮面と、カマキリが見つめていた。



 

戻る