そして、いよいよ儀式のとき。
平民服の少年に邪神の神器たる漆黒の仮面が被せられ、邪神を降臨させる。
儀式の場所に選ばれたのは、意外にも町の宿屋だった。
ここなら邪神教団に敵対する集団の襲撃が起こらない、と判断されたのだろうか。
(けれど……私はこの場所を知っている。
先日はカマキリに邪魔されたけれど……今日こそ、惑わされない!!)
手斧と皮盾で武装した聖戦士見習いの女性が、宿の扉を蹴り開け中に踊りこんだ!
「カマーン」
「カマーン」
「カマーン」
そこにはやはりカマキリがいた。
しかも、三匹。
「……」
カマキリの奥に、司教の妹にまとわりつかれた少年の姿があった。
その様子は先日と違い、顔を赤くしてどこか戸惑っているように見える。
何があったのかは知らないが、弟は正気に戻っている。
なら、今のうちに助け出さないと!
「カマーン」
「カマーン」
「カマーン」
「……」
二匹のカマキリがいるであろうことは、女性も想定済みだった。
しかし、まさか一匹増えているとまでは思わなかったらしい。
「カマーン」
「カマーン」
「カマーン」
「…………」
何なんだこのカマキリは。
百戦錬磨の聖戦士であるはずのこの私が、威圧されるだなんて。
「カマーン」
「カマーン」
「カマーン」
「………………」
ダメだ。カマキリには敵わない。
女性は宿の扉を閉め、とぼとぼと歩き始めた……。
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