終焉への序曲





聖戦士の女性を無事撃退(?)したカマキリたち邪神教団は
いよいよ平民服の少年に漆黒の仮面を被せるべく、儀式の準備を進めていった。

しかし。

「マスクを被るためには、そのゴーグルをとらなければいけないんだが」

「こ、これはダメです! マスクならこれの上から被りますから!!」

平民服の少年に被せられたゴーグル。それは戦士風の男の術の媒体であり
それを被っている限り、食物繊維の魂は平民服の少年の中に留まることが出来る。

逆に言うと……そのゴーグルと外してしまうと、男の術が解けてしまう。

(ちなみに前日の結婚式に見せかけた儀式の際は
少年の中には戦士風の男が入っていたらしい)

「では何だね。君はゴーグルをつけていないと妹を愛せないというのかね?」

「そ、そういうワケじゃないです! でも、これをつけていないとダメなんです!!」

「何がダメなのかね?」

「あーっと、えーと……とにかくコレ取ると、全部がダメになっちゃうんです!」

「……様子がおかしいな」

「そ、そんなことないです!!!!」

ゴーグルを外すよう迫る邪神教団の司教と、頑なにそれを拒む少年。
しかし、少年の態度がどこかおかしいことを、司教やその妹はいぶかしみ始めた。
この喋り方、まるで……。

「ところで、食物繊維君」

「な、何ですか……?」

「……語るに落ちたな」

「!! しまったああああ―――!!!」

今自分が平民服の少年の身体にいることをうっかり忘れ、返事を返してしまった食物繊維。

「食物繊維君、平民服の少年はどこだね?」

「食物繊維! ダーリンはどこ!?」

兄妹に同時に詰め寄られる食物繊維(IN平民服の少年)。
そのあまりの剣幕に食物繊維は何か縋れそうなものはないかと周囲を見回してしまう。

「やれやれ、ダメじゃないか。ボロだしちゃって」

「……!」

そこには、二人の魂を入れ替えたあの戦士が立っていた。



 

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